27/35
14 高馬 A Half-Forgotten Day
俺は離された手をポケットに仕舞えず、話されたことも理解できず立ち尽くした。口を開き何か言おうにも息だけが通りすぎるだけだ。
「支倉さん・・・」
何とか声を出したが続かない。俺は・・・俺はなんだ?支倉さんは目を真っ赤にして俺を見ている。
「・・・なんてね。冗談だよ。びっくりした?高馬君?」
支倉さんは目を揺らしながら笑った。宙ぶらりんの手は震えたままだった。車も通らず風も吹かず。沈黙と俺と支倉さんだけがあった。
なぜか母親のことを思い出した。
「お母さん、なんで泣いてるの?」
「ゆう君。ごめんね。ごめんね」
「お母さん、どうしたの?」
「ごめんね。ゆう君はなんにも悪くないの。ごめんね」
「お母さん、大丈夫?」
「ゆう君は幸せになってね。パパとママを許してね。怖い思いさせててごめんね」
「お母さん、どこに行くの?」
「ごめんね。ママはもう行かなくちゃ。この紙がママだからね。この紙に書いてあることを守ってね。ごめんね、ごめんね」
この紙はどこに仕舞ったんだっけ。




