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虚栄  作者: 竹取夜鷹


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13' 先輩 Day2

「国破れて」

「そして誰もいなくなった」

「なにを頼みたいんだ?」

こんな電話をかける日が来るとは思わなかったな。

「し、調べてみて欲しい人がいる。高馬君、高馬悠太君のことを調べて欲しい」

「・・・わかった。期限は?」

「なるべく早く」

「どれくらい知りたいんだ?」

どれくらい・・・?全部だけど、彼ってもしかして何か悪い事に関与してたりしないよね?

「家族関係や交友関係。あったら犯罪歴とかそれくらい」

「わかった。また連絡する。前金で5万、終わったら10万だ」

そんなに手軽に人の情報って買えるんだ。

「安いね。分かった」

電話を切る。デートの前にコンビニに行って振り込まなくっちゃね。初めて細君を頼ったけど、思ってたより手軽にお願いできるんだ。・・・高馬君、愛してるよ。だから君のことを全部知りたいんだ。君の過去も傷も未来も栄光も全部全部私の物なの。彼のこと、誰にも譲らないの。しばらくは煙草を吸いながらインスタでデートの必勝法でも見て落ち着こう。私がリードしなくっちゃ。彼は私が初彼女って言ってけれど、本当にそうなんだろうか。バイト中、お喋りがあんなに上手でイケメンで優しい男の子を誰も手を出さないなんてありえないからね。でも、高馬君は清廉潔白だから安易に女性と付き合わなかったのかな。聞いてみないとわからないけど、聞くのは怖い。細君、お願いね。

1本目の煙草をベランダの縁に当てて揉み消し、2本目に火をつける。高馬君、私が煙草吸ってるって知ったらどんな反応するのかな?もしかしたら引かれちゃうかな。引かれちゃったら煙草はやめよう。

缶コーヒーのプルタブを引き、口を付ける。微糖なのにひどく甘い。煙を吐き出し胸に残る充実感に笑みが零れる。私、すごい幸せだな。

2本目も灰皿に捨て、部屋に戻る。デートの準備なんだからどれだけしても足りない。大学に行ってた時の化粧を落とし、洗顔。化粧水も忘れない。そうしたら、彼のために可愛くなろう。パウダーで整えて、クリームチークを薄っすらと肌に乗せる。お気に入りの優しい色の口紅をそっと引き、そのまま眉を可愛く書き足す。温まったアイロンで髪の毛をくるくると巻き、ヘアスプレーを吹きかけ固める。・・・ん、完璧。鏡に映る私はいつも以上に蕩けた顔をしてる。・・・ちょっと順番間違えちゃったな。なのにいつも以上に上手く仕上がってるし、恋の力ってすごいんだね。

さっきまで着てた部屋着を洗濯機の中に投げ込む。少し迷ったけど下着も持ってる中で1番色っぽいのに変えて、白い新品のシャツと色々迷ったけど、高馬君と1番最初にご飯を食べに行ったときに着た藍色のタイトスカートを身に纏う。最後に煙草の臭いを歯磨きして消し、一応服にファブリーズ。最後に首にホワイトムスクのフローラをほどほどつける。さぁ、行こう!

家から出て、車を開ける・・・煙草臭いな。駅までは歩いていこう。ワイヤレスじゃない形見のイヤホンを付け、歩き出す。お姉さん見ててね。私は初めて、こんなにも人を好きになったんだ。幸せになるんだ。アップルミュージックで姉さんの好きだったグリーンデイを流そうと思ったけど、高馬君の好きなバンドを聞こう。確かバンド名は・・・なんだっけ。聞いておけばよかったな。


待ち合わせの駅に着いた。時間は11時30分。30分も早く着いちゃった。とりあえずお金を渡さないと。細君へ再び電話を掛けたが、出なかった。どうしよっかな。前金と言ってるし、渡さないと調査を始めてくれないかな。別にペイペイで送ってもいいけど、そんな露骨に履歴が残る方法なんて使わないだろうし。そう思ってたらメールが届いた。

「名古屋駅。コインロッカー」

これだけだ。どうして私のメールアドレスが割れているんだろう。まぁ情報屋にとっては朝飯前か。最悪消せるし、まあいっか。財布には7万円入ってる。空いてるコインロッカーに6万円を隅に寄せて置き、鍵を閉める。暗証番号は高馬君の誕生日にしておこう。

「入れた。304。暗証番号は高馬君の誕生日」

・・・えーっと、メールってどうやって送信するんだ?eメールなんて今日誰も使ってないよ。こ、これかな?うん、たぶん送信できたはず。待ち合わせのコンビニに戻り、ATMで20万円を下ろす。こんなけあれば大丈夫だね。

店から出て彼を待とうと出たら、丁度やってきた。

「あ!」

嬉しさのあまり足早に近づく。

「久々です。今日はいきなり呼び出してすみません。どうしても会いたくなっちゃって」

久々って昨日あったばっかりじゃん。そう言おうとしたけど、彼の緊張したような顔を見て揶揄えなかった。もうね、大好き。

「いやいや、全然うれしいよ!とりあえず時間も時間だし、カフェで昼食がてらコーヒーでも飲まない?」

「いいですね。近くにカフェってあるんですか?」

「うん、さっき調べたんだ。こっちだよ」

高馬君の横に並びゆっくりと歩く。高馬君私のためにゆっくり歩いてくれてるけど、もうちょっとだけ早くて大丈夫だよ。私そんなに足短くないよ。小道に導き、喫茶店に入った。

「よくこんなわかりにくい店を御存じですね」

「知り合いがここでバイトしてたんだよ」

知り合いでもなければ今働いてるわけでもないけどね。姉さんが働いてたカフェだ。姉さん、見てる?私、幸せになったんだよ。

店員さんにご飯を注文する。高馬君はアイスコーヒーとカツサンド。私は癖でクリームソーダとサンドイッチを頼んだ。

「高馬君、お腹減ってる?別にもっと頼んでよかったよ」

男の子なんだからもっと食べないと。私はポケットから財布を出し、ワザとらしく確認する。21万円ある。ふふふ、お姉さんに任せなさい。最高の1日にするんだから。

「や、俺が払いますよ。そんなに腹が減ってないだけです」

「何言ってるのよ。私が払うよ」

年上だし。君のことが好きなんだから奢って当然だよ。

「男として払わせて下さい。お金を払ってもらう男にはなりたくないです」

高馬君、なんていい子なの。また好きになっちゃう。でも今日は私が奢るの。明日も明後日もその次も。だから大丈夫。君は私の寵愛を受ければいいの。

「君ってちょっと古臭いね」

そんな古臭い価値観も大好きです。見ると古臭いと言われ露骨にがっくりとしていた。何言ってんの私!

「ご、ごめん、そんな落ち込まないでよ。大丈夫、高馬君はださくないよ」

子供をあやすような口調になってしまった。

「べつにきにしてません。おちこんでないです」

「ごめんって」

「冗談です」

丁度頼んだカツサンドとかが流れてきた。バスケットのサンドイッチはいちご、ブルーベリー、マスカット、オレンジの4種類だ。クリームソーダを光が当たるように位置を変え、まずは食べ物だけで1枚。高馬君を撮ろうとしたらいつの間にか写らないように席を移してた。

「なんで動いちゃうの?そこだと写らないよ」

「や、お邪魔しないように」

お邪魔しないように?主役が何を言ってるんだか。

「何言ってんの?デートなのに彼氏が写真の邪魔にわけないんだから。なんなら積極的に映してみんなに自慢しなくちゃ。ほらほら、隣座って」

高馬君は素直に私の隣に座った。肩と肩がぶつかるほど近づく。

「はいちーず」

撮った写真では高馬君はぎこちない真顔だった。

「もっと笑ってよ。真顔で写真に写っちゃだめだよ。遺影用じゃあないんだから」

「ふふっ、遺影て」

珍しく高馬君が笑った。それを逃さないよに撮影ボタンを3回押す。

「よし、いい顔で撮れたよ」

高馬君に写真を見せる。高馬君は笑ってんだかよくわからない表情だった。

スマホの電話が鳴った。私じゃあなくて高馬君の。高馬君はポケットからスマホを取り出す。覗き見ると相手は小倉という人からだった。高馬君は手にスマホを持ったまま固まっている。

「・・・電話、出なくていいの?」

誰なの?女の人なの?私の知らない彼の知り合い。誰なんだろう。誰なんだろう。

「いや、大丈夫です。きっと学校をサボったことへの言及ですから。

高馬君は再びスマホをポケットに仕舞いなおし、私の隣でカツサンドを食べ始めた。私もイチゴのホイップサンドを口に入れる。甘くて、その中のイチゴがピリピリしておいしい。2口で食べちゃった。クリームソーダにスプーンを刺し口に入れる。甘い甘いバニラアイスだ。おいしい。

「おいしいね」

「はい、絶品です。片方あげましょうか」

「いや、1口で大丈夫だよ」

口を小さく開けて、高馬君の方を向く。これ、結構恥ずかしいな。顔が赤くなっちゃう。高馬君は口を付けた逆側を私の口にゆっくり入れた。・・・緊張で味がわかんないや。ほんとは口を付けた場所を食べたかったけど、さすがにそれを要求するのは卑しいかな。

「どうです?おいしいですか?」

緊張して味がわかんなかったって言ったら、もう1口あーんしてくれるかな?

「おいしいね。高馬君も食べる?私のフルーツサンド。何が好き?」

「マスカットで」

ふーん、高馬君はマスカットが好きなのね。覚えたよ。

「ほら、口開けて。あーん」

高馬君の口にサンドイッチを入れる。まるで子育てをしているみたいとゾクゾクして軽く身震いした。あぁ、愛しい。

「どう?おいしい?」

私は高馬君のヨダレが少しついていそうな部分を乾かない内に急いで口に入れる。・・・今まで食べたどんなものよりも甘くておいしい。

「おいしいですね」

「よかった。また来ようね」

「是非」

そこからは2人で下らない話をしながら食べた。MMOの次のイベントの話だったり、もうすぐ上映されるみたい映画の話だったり、小さかった頃の思い出だったり。そんな話をしてたらいつの間にかお互いのお皿は空っぽになってた。

「ごちそうさまでした」

「ごちそうさまでした」

高馬君が流れるように伝票を手に取ったが、私はその手を重ねて奪い取った。

「だーめ、今日は私の奢りの日だからね」

「すみません、ごちそうになります」

いいんだよ。むしろ払わせてくれてありがとう。高馬君の体の1部は私が食べさせたご飯でできてるって考えたら、それだけで、それだけで幸せなんだから。

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