13 高馬 Day2
俺は先輩の手を引いて歩き出した。さっきも言ったが土地勘なんてあるわけもないから道をまっすぐ歩くだけだ。近くにカフェでもあったらそこに入ろう。
「先輩、落ち着きましたか?」
「うん、ごめんね」
「全然構いませんよ」
貴方よりもっともっと面倒くさい女が身近にいますからね。
「高馬君って私の事どれくらい知ってるの?」
「・・・ごめんなさい、正直に言いばフルネームと仕事のクセくらいしか知りません」
「だよね。知ってるよ」
先輩は繋いだ手を少し引っ張った。
「ねぇササグラコーポレーションって知ってる?」
「勿論。大企業ですよね。土地とか売買してる会社でしたっけ」
「うん。建設業の大手の会社なんだけどさ、私、その社長の隠し子なんだ」
「・・・・・・」
なんて言えばいいんだ。
「・・・その、それは・・・」
「ううん、慰めなくていいよ」
先輩は天に貫くビル群を焦点の合わない目で見つめていた。
「私はさ、居場所がなかったんだよ。ちっちゃい頃からおっきくなるまで」
握られた手に少し力が入れられた。弱々しいのに酷く痛い。
「俺は、あなたの居場所になるなんて言えません。でも今は、少なくても今は話をいくらでも聞きますよ」
「ふふっ、君は嘘が嫌いだよね」
・・・・・・ああ。嘘をついている自分を殺したくなる。
「高校に入るまでは、米川さんっていうお姉さんに育ててもらってたんだ。授業参観にも来てくれて、卒業式では泣いてくれて、本当のお母さんみたいに育ててくれたんだ。でも高校入学初日・・・」
先輩の手にさらに力が入る。痛みを飲み込むように大きく息を吸った後、こう続けた。
「お姉さんは自殺したんだ。睡眠薬のオーバードーズで」
・・・・・・・・・・・・。
「・・・ごめんね。付き合って2日目なのにこんなこと言って。幻滅した?引いた?」
俺は何も言えずただ握った手に力を入れただけだ。
「だからさ、私は怖いの。君を失うのも、君をもっと知るのも。またお姉さんみたいにいなくなるんじゃないかなって。だからさ、今ならまだ耐えれるから、私から逃げるなら今が最高のチャンスだよ」
先輩はぱっと手を離した。
「高馬君、今までありがとう。会話相手になってくれて。ゲームを一緒にしてくれて。デートしてくれて。ときめかせてくれて。恋させてくれて。愛させてくれて。今までずっとずっとありがとう」
先輩は目を閉じた。
「高馬君、君さえよければ私と一緒にいてください。これから先もずっとずっとずっともっともっともっと一緒に人生を過ごさせてください。愛してます」
俺は・・・
「私のこの重い愛を受け取ってください。受け取れないなら、私の目の前から消えてください」




