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虚栄  作者: 竹取夜鷹


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11 高馬 Day2

クラゲのコーナーを離れ、順路通りに水族館の中を通っていく。水槽の中を煌びやかに魚は入り乱れ、先輩は楽し気に笑っていた。俺も愛想笑いを続ける。水槽に反射して写る自分の顔にまた嫌気がさす。

「楽しかったね!もう1周しちゃう?」

「俺は別に構いませんが、もうすぐショーか何かが始まるみたいですよ」

「イルカショーか。見る?見たい?」

「感情を隠しきれていないですよ。観に行きましょうか」

水族館の中を出て、ショーが開催される大きなプールに向かう。平日なのにそこそこの人がいる。・・・カップルまみれだな。きっと周りから見れば俺も同じように見られているって考えたら、やっぱり嫌な気分になってくる。俺はいつまで先輩を騙したままでいるんだろう。先輩を好きになろうとしても、どうも上手くいかない。チラつくのはやっぱりアイツの顔だ。後ろめたさが後ろ髪を引き、チャンスの女神の前髪を掴めない。ハゲめ。励めない。

「この辺に座る?」

「うーん、もう少し後ろの方がいいと思います。水しぶきで濡れちゃったら着替え持ってきてないですよ」

「別に買ってあげるよ」

「いやいや、わざわざ買ってもらうのもアレですし。それに最悪俺は濡れても構いませんが、先輩が濡れるのは嫌っす」

先輩は白いTシャツと藍色の長めのスカート。名称はよくわからない。多分大丈夫だけどもし濡れて下着が透けて見えたら理性を保てる自信がない。理性がねぇ!正気じゃねぇ!人がどうかもわかねぇ!・・・自己紹介かよ。

「それじゃあ、イルカショースタートです!」

ガビガビの音声が頭上のスピーカーから響き、イルカの飼育員が入ってきた。俺はせめてこれくらいは楽しもうと先輩の右手を握る。

「冷た!」

「え」

「高馬君、なんでそんなに手が冷たいの?」

「なんでって聞かれても。両手をポケットに入れてないからかな?」

「もう片方の手、出して」

言われるがまま右手も出す。両手をぎゅっと両手で包まれた。

「あっためてあげる」

「・・・ショー、始まってますよ」

「それより君のが大事。一応聞くけど風邪とかじゃないよね?」

右手でおでこを触られた。ちょっと恥ずかしい。

「うーん、わかんない。別に平熱ってこれくらいだと思うし。体調悪かったりしてないよね」

「絶好調ですよ。ちょっと冷え性なだけかもしれないです」

「もしかして寒がり?」

「人並みには」

「じゃあ、水族館の中に戻る?」

「確かに寒いですけど、先輩が見たくて来たなら観ましょうよ」

「・・・いや、戻ろう。君に風邪をひかれたら合わせる顔がない」

ショーはこれからなのに、先輩は立ち上がった。俺もそれに倣う。

「ごめんね。寒がりだなんて知らないままここに連れ出しちゃって」

「いや、言ってなかった自分も悪かったんで気にしないでください。むしろ楽しみにしてたショーを奪って申し訳ないです」

「いいよいいよ。実を言うと私が寒かっただけだし」

先輩は俺に気を使わせないように笑った。なんていい人なんだ。俺にはもったいなさ過ぎる。

「じゃあ、どうする?深海魚のコーナーもふれあいコーナーもあるけど、どっちに行きたい?」

「うーん、ふれあいコーナーの方が俺としては行きたいですね。先輩はどう思いますか?」

「私はどっちでもいいよ。じゃあ、ふれあいコーナー行こうか。確か建物の2階だったはずだよ。行こう!」

先輩は無邪気に俺の手を引き、歩き出した。少し躊躇ったが、俺も歩き出した。


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