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第14話 卑弥呼の慈悲!再生の勾玉!

マサチカ「ハルノブ離れろ!危ない!!」


ドスンッ‼︎…


ハルノブ「ゴポッ…何で…頭は落としたのに…」


鋼百足はバタバタと暴れてハルノブを空中へ放り投げた後、しばらくして活動を完全に停止した。


地面に落とされたハルノブは白目をむいて、そのまま意識を失い激しく痙攣し始めた。


ユイ「どういうこと!だって頭は落としたのに!」


マサチカ「鋼百足は生命力が強くて、首を落とした後もしばらく身体は活動し続けことがあるんだ!あの針は麻痺性の毒がある!このままじゃ呼吸困難と出血で最悪…」


ユイ「ダメよ!そんなの絶対にダメ!止血しなきゃ!私の調合した魔草じゃ腹の穴はどうにもできない!ハルノブが死んじゃう!」


マサチカ「分かってる!でも…でもどうしたら!」


ユイ「お願い死なないで!気をしっかりもって!」


その時、ハルノブとマサチカの首にかけていた勾玉が淡い緑色に輝き始め、身体が光に包まれるとハルノブの腹部の損壊やマサチカの左足の骨折などの重症箇所を、瞬く間に治癒していった。


マサチカ「これはいったい…怪我が治っていく」


ユイ「マサチカ見て!ハルノブのお腹が!うっ…うぅっ…卑弥呼さん……こうなることも全部わかっていたのね。だからコレを私たちに」


ユイは涙をながしハルノブの手を握った。


ハルノブが目を覚ましたのは夜ご飯の前だった。


ハルノブ「あれ、俺…なんで」


 「これだ、これ」マサチカが勾玉に指を指す。


ハルノブ「勾玉?」


マサチカ「これはどうやら怪我を治すアイテムだったらしい、ほんと何でもありだな卑弥呼さんは」


ハルノブ「マジかよ…俺ほんとに死んだかと」


ユイ「ハルノブ!目が覚めたのね!怪我が治った後も目を覚さないから、もしかしてって心配したんだからね!」


ハルノブ「ごめんごめん」


ユイ「さ!気を取り直して食事にしましょ!」


〜本日の食事〜

ククルンバードの塩焼き

ナワルキノコの味噌汁


マサチカ「美味しかった、ご馳走様!」


ハルノブ「だぁ〜お腹いっぱい!それにしてもあの鋼百足…何から逃げてたんだ?」


卑弥呼「ワシじゃよ」


「え!卑弥呼さん!?」背後からの声に3人は驚いて振り返った。


卑弥呼「ワシが其方らに送り込んだのじゃ。死ぬ恐怖も怪我の痛みもまた其方らに必要な経験じゃからの、魔物を捕らえて食す、それも生きる術じゃが、魔物と戦って食す。それが出来なければこの先命がいくつあっても足りぬわ!!それに其方らが戦った鋼百足は、邪馬台国の子供でも遊びながら倒せる低級の魔物じゃ!それにやられるようでは、まだまだ上に上がれん!仲良しごっこをしに来たのであればココで永遠に楽しく過ごすがよいわ!」


マサチカ「危険を回避することの何が悪い!リスクをとってまで戦うことにメリットはない!死んだらもともこもないじゃないか!」


卑弥呼「訳のわからぬコトを申すな!危険を回避する?出来ていないではないか!こんなコトに言い訳を並べようとは!呆れる!友が死ぬやもしれぬ恐怖にマサチカは何も学んでおらぬのか!」


ハルノブ「マサチカ、ユイ、大丈夫だ。俺たちはここにジャングルで生きる術を身につけに来たんじゃない…強くなりにきたんだ。途中から狩とか楽しくなってたから…俺も忘れてたな…。卑弥呼さんありがとう、俺もっと強くなりたいよ!マサチカとユイが死んだら旅の目的も忘れてしまうぐらい悲しかったと思うから」


マサチカ「…卑弥呼さん…助けてくれたのに取り乱して申し訳なかった…俺も仲間の足を引っ張るような漢にはなりたくない!」


ユイ「卑弥呼さんは全て分かっていたんですね。こうなるコトも、だから勾玉を私たちにくれた」


卑弥呼「そうじゃ、そして勾玉は其方にも渡しておる!ユイ!女子(おなご)だから戦わぬのか?自信がないと、私には出来ないと諦めているのか?確かに役割分担は大切じゃ!じゃが!皆が役割を入れ替えて動けるようにせねば、連携は瞬く間に崩れてしまうし、今もこの先もそれは死を意味する。男どもはなぜユイにばかり料理をさせる?魔草の採取をさせる!出来ない・分からない・やりたくないと諦めてしまう癖をつけるでないわ!」


3人は返す言葉がなにも見つからなかった。


卑弥呼「邪馬台国では剣術は魔物と(たわむ)れるついでに身につくものであった。其方(そなた)らにもそれができるようにその勾玉を持たせた。残りの60日間、ワシは毎日中級の魔物を其方らに送り込む!鋼百足よりも強き獲物ばかりじゃ!全て倒して強くなってみせよ!」


マサチカ「毎日だって!?」


ユイ「いきなり中級の魔物?!私、戦えるかな…」


卑弥呼「なに…戦えねば死ぬだけよ。その勾玉は怪我や状態異常は治すが死人を蘇らせることはできぬ。即死すれば終わりじゃ!しかし怪我も状態異常もすぐには治癒を開始せぬようにしてある。攻撃をくらえば一定時間は苦しみが続くということじゃ!戦え!戦わねば死ぬぞ!今の其方らに足りぬのは危機感と戦闘経験じゃ!戦え!戦って自分に合った戦い方を見つけよ!」


ハルノブ「分かりました、俺戦います!」


マサチカ「俺も!仲間が傷つくのはもう嫌だ!」


ユイ「私もまだ死にたくない!自分に出来る戦い方…絶対見つけます!」


卑弥呼「世話の焼ける駄犬じゃのぉ〜ワシはもう喋り疲れた!今日は其方らの拠点でやすむ!…あ、そうだマサチカ、ハルノブ夜中の猿とは戦うでないぞ。其方らでは即死故な、よいな〜」


そういうと卑弥呼はハルノブ達が大きな葉とツルで作ったハンモックの上でスヤスヤと眠り始めた。


ユイ「こうして眠っていると中学生の女の子くらいに見えるのに、優しくて…とても強い人なのね」


マサチカ「アレを子供が遊びながら倒していたってのか…戦闘を行うための肉体づくりとかの意味もあったのかな。明日からはアレよりも強い中級の魔物か…」


ハルノブ「とにかく明日からは戦おう!戦って強くなろう!卑弥呼さんはいつ襲わせるとかも言ってなかったし狩は早めに終わらせておこう」


ユイ「それじゃあ、私たちも寝ましょうか」


マサチカ「そうだな、おやすみ」


ハルノブ「おやすみ」


そして翌朝、ついに戦いの日々は始まった。

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