第10話 第31層ーマヤの密林ー
ハルノブ「ここが31層…すげぇ見渡す限りジャングルだ!」
マサチカ「まるで南米だな!」
ユイ「かぁ〜!暑いわねぇ〜…!」
卑弥呼「お主らは外から来たのよな?何も疑問に思わぬのか?」
ハルノブ「そういえば、ここは塔の中なのに何で空も太陽もあるんだ?」
卑弥呼「それはここがそなたらの住まう星の上だからよ。塔の中は時間も空間も違う場所へと繋がっている。上層の獣神や神々の国ともなれば星すらも移動しなければならない」
マサチカ「何だって!?じゃあここはどこなんだ!」
卑弥呼「ここはかつてマヤ人という民が栄えた場所じゃ、あやつらは知識欲の塊みたいな国民だからな。神の眷属になって上層へと上がっていった。そして狩も間伐もされずに残された大地は、今や低級な魔物の巣窟じゃよ」
ユイ「マヤって、あのマヤ文明!?オルメカの?」
卑弥呼「そう、故に31層に入れば塔から出るのも困難…其方らの時代に戻るのも工夫がいるというコトじゃ」
ハルノブ「そうなのか…卑弥呼さん!ここでは何をするんだ?」
卑弥呼「ここでは魔物と魔草を喰らいながら90日間そなたらだけで生き抜いてもらう」
ユイ「え!サバイバル生活ってこと?しかも3ヶ月も?えーーーー無理無理!」
卑弥呼「は?サバ…なんじゃ?美味いのかそれは?とにかく着いてまいれ!」
卑弥呼は密林の入り口に3人を連れてくると
・簡単な罠の仕掛け方
・食べられる魔草と魔物
・無理だと思ったら逃げること
などを伝えると3人にそれぞれ玉鋼の短剣と瑪瑙の勾玉の首飾り、マサチカに肩掛け袋を渡した。
卑弥呼「その勾玉を肌身離さず持っておれ!密林の中は日陰も多く涼しい、しかしその分魔物も影に潜みやすくなっている。狩る側が狩られる側にならぬよう、せいぜい生き抜くがよい!案ずるなここの魔物はだいたいが食えるやつばかりじゃ!慣れれば美味な奴もおる!魔物の素材は後々加工する故、その袋に入れて持ち歩くように!以上!では行け!」
ユイ「卑弥呼さんはその間どうしてるの?」
卑弥呼「自分の心配より他人の心配か?わしは適当に時間を潰しとる。90日したら其方らのもとへ参る故、今は自分達の心配をせい。そら!さっさと行かんか!行かぬのなら密林のど真ん中まで吹き飛ばしてやるが?」
ユイ「はいーーーー、行ってきます!」
ハルノブ「ゴクッ…何だかこのジャングル不気味だなぁ、怖ぇ〜」
マサチカ「ビビってないで行くぞ、魔物なら俺の専門だ。実は引越しの片付けの時にお前の曾爺さんの保管室から魔物図鑑も持ってきているんだ。分からないところはこれをみよう」
ユイ「マサチカもなの!私も魔草図鑑持ってきたわ!はぁ…まさか天界植物なんて綺麗な名前じゃなくて"魔草"だったなんて学会でなんて説明しましょうか」
ハルノブ「ははは…そこは重要なのか?」
ユイ「考古学でいう遺跡が"魔境"って言われてるみたいな感じよ」
ハルノブ「あー…なるほど…」
マサチカ「(ははは…こいつ絶対分かってないんだろうなー)」
3人が少し話をしながら密林の中で歩みを進めると、奥の茂みから「ガサガサッ」と大きな物音を立てて何かが忍び寄ってきた。
マサチカ「何か来るぞ!」
ハルノブ「魔物か!」
ユイ「もぉ早速私の専門外なんですけどーー!!」
3人の前に現れたのは黒く光る鱗に覆われたオオトカゲだった。
マサチカ「テレビでみたワニよりもでかいぞ!」
ハルノブ「オブシディアン・リザードだ!鱗と素早い噛みつきに気をつけろ!毒とかはないが噛まれたら一瞬で持っていかれるぞ!小回りはきかないはずだから、とにかく動き続けろーー!」
ハルノブ「こいつに刃物通るのか?」
マサチカ「何度も何度も攻撃を当てないと無理だ!」
ユイ「ヒィ‼︎…無理…私むり!!」
ユイは恐れから動けなくなってしまった。
マサチカ「とにかく攻撃だ!」
ハルノブ・マサチカ「うぉーーー!」
しかし2人の短剣は簡単に弾き返されてしまう。
ハルノブ「マサチカ!無理だ!逃げよう!」
マサチカ「木の上だ登れ!急げ!」
ハルノブ「ユイは!ユイが来てない!」
マサチカとハルノブが木に登っている時、オブシディアン・リザードが真下で震えるユイにゆっくりと迫っていた。
ハルノブ「ユイーーーーーーーー!!」
マサチカ「待て!ハルノブーーーー!!」
無我夢中で飛び降りたハルノブはオブシディアンリザードめがけて短剣を振り下ろしていた。
短剣は奇跡的にもオブシディアン・リザードの額を貫き即死させることができた。
でもユイはまだ身動きが取れないでいた。
「無理…あれが魔物?…」
マサチカ「素材を剥ぎ取ろう、コイツの肉も食えるだろう。どこから刃を入れたらいいんだ?」
ハルノブ「急げマサチカ、長居もしてられない」
マサチカ「腹が柔らかい、ここから開けばいいのか!なるほど!なるほど!」
ユイ「なんで目をキラキラさせてんのよーーー!こいつ食べるの!いやよ!無理!絶対無理ーーッ」
マサチカ「わがまま言うな、持ってきた缶詰と合わせて味付けすれば味もマシかもしれないだろ?料理はカップ麺で生活してた俺たちにはできないからユイに任せるよ」
ハルノブ「空気の湿度が上がった…雲行きも怪しいな…雨が降ってくるかも!どこかに拠点を作らないと!」
マサチカは上を見上げて
「木の…上…しかないだろうな」
ハルノブ「ユイは木登りできるか?えーっと、ここから登れるかな!こうやってロープで登るんだ!」
ユイ「あんた詳しいわねぇ」
ハルノブ「父さんが林業やってるから、昔教えてもらったんだー」
ユイ「分かったやってみるわ!教えて!」
マサチカ「誰かクギとかノコとか持ってるか?」
ハルノブ「俺持ってる!」
マサチカ「そうか!助かる。枝が太いから上の方の枝を落として足場の素材にしよう」
ハルノブ「結構切らないとだな!」
ユイ「あんた達、案外逞しいのね〜…マサチカも手慣れてるじゃない…(チラッ」
3人で丸一日かけてウッドデッキの床を完成させ、皆それぞれで持ってきたテントを樹木に固定し、夜は乗り越えることにした。
卑弥呼は遠目から3人を見ていた。
卑弥呼「どれどれ…黒曜蜥蜴か…ははっ!まぐれで倒しよったわ!ん?なんじゃ…木の上に…エルフみたいなコトしとるのぉ。さて…31層は低級の雑魚ばかりじゃが高さと床だけで安全を確保できるほど甘くはないぞ〜」
ユイはというと今日の食材オブシディアン・リザードと向き合っていた。
ユイ「綺麗に解体されてるけど、これトカゲなのよね?もぉ〜トカゲなんて料理したことないわよ〜。とにかく煮る・焼く・茹でるの3つから試してみましょうか。いや、水は貴重ね!茹でるは辞めましょう。味付けは全部基本にのっとってやるしかないわね〜もぉ私も料理得意ってほどじゃないんだけどなぁ〜調味料も消耗品だからこの先すぐ使えなくなるわね…考えておかないと」
ハルノブ「ユイ〜腹へった〜夕飯にしようよ〜」
マサチカ「今日はあのリザードだけだからな栄養補給のタイミングは遅い方がいいだろ」
ユイ「そうね〜保存用の干し肉も試作したいからそれも考えると、食量は少ないから明日も調達しないとだわ。とりあえず20時くらいのタイミングで食べましょう」
そして、夜ご飯の時間になった。
ユイ「できたわよ〜夜ご飯にしましょ」
31層初日の料理
・オブシディアンリザード肉の塩焼き
・オブシディアンリザードの和風煮込み
3人「いただきま〜す」
ハルノブ「んーこの煮込み独特な臭みはあるけどちゃんとツユが滲みてて美味しい!」
マサチカ「塩焼きもサッパリしてて美味しいぞ!」
ユイ「そうね〜このジャングルの食材でどこまでやれるのか、もっと考えてみるわ〜」
ハルノブ・マサチカ「ご馳走様!」
ハルノブ「1匹でも結構足りたな、毎日カップ麺2個の日々に比べたら贅沢な感じだ!」
ユイ「アンタそんなんでよく病気にならなかったわね」
マサチカ「ははは!ハルノブは研究室に住み込んでたからな!俺は腹5分目くらいって感じだな、初日にしてはいい感じだと思う」
ハルノブ「ぁ〜食べたら眠くなってきたな。今日は早めに寝もうよ」
マサチカ「そうだな、真っ暗で狩どころじゃないしな」
ユイ「待って!見張り番とか火番とかいた方がいいんじゃない?」
マサチカ「そうだな、俺の時計は手巻き時計だからここでも動作するし、この時計で3時間交代でどうだ?最初は俺がやるよ」
ハルノブ「次は俺が!」
ユイ「了解、私がさいごね」
マサチカ「よし、なら先に休んでくれ。おやすみ」
ハルノブ・ユイ「おやすみ〜」
そうしてジャングルに入って初めての長い夜が始まった。




