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第四の二章 「そして」 

第三節『最後の舞台』

3・最後の舞台



「教授たちは、どこに行ったんですか?」


 その日の夜。僕たち…僕と・オッちゃんと・ケーコさんに・かなえチャン…は、トランプをしていたのだけど、ひとゲームが終わったところで、和男さんに訊いてみる。


(勉強道具がいっさいないので、たまには「頭の体操」。でも・これで、かなえチャンも、ずいぶんオッちゃんと打ち解けてくれたみたいだ)。


「たぶん…神月山だよ」


 本州のヘソ。ほぼドまん中にある・そこは、例の消滅してしまった街があった所だ。


「まさか、二人だけで行ったんじゃないでしょうね?」


 僕が、そう訊くと…


「一個小隊がついてるはずよ」


 ケーコさんが、答えてくれる。


「一個って…それだけで大丈夫なんですか?」


 相手が・どれだけいるのか、わからないのに…


「まあ、特殊部隊(スペシャル・フォース)だからな」


 そう言いながらも和男さんは、ちょっと不安そうだ。


「なんで神月山なんですか?」


 オッちゃんも、心配そうに訊いてくる。


(なにせ、事の経緯(いきさつ)を、まったく知らない僕たちだ)。


「あそこの地下では、『太平洋戦争』敗戦の直前、大本営を移す計画が進められてたんだ」


 なんでも、戦後の『昭和』の中頃には、その近辺を震源地とする群発地震が長期間に渡って続き、「地下で、何かやっているのではないか?」という噂が立ったと云う。


(また、「UFO(ユーフォー)目撃多発地帯」でもあるそうだ)。


「たぶん…アジトでもあるんだろ」


『アジトって…』


「あそこは、パパとママの生まれた場所なの」


 それを聞いていたかなえチャンが、ポツリと言う。


『なんだか、イヤな予感がする』


 僕が、そう思った時だ。


「ガルルルル〜」


 雨戸(あまど)を閉め切った縁側の近くに寝そべっていたクロが、頭をもたげて・唸り声を上げ始める。


「嗅ぎつけられたみたいだな」


 和男さんは、そう言いながら雨戸のフチまで行って、聞き耳を立てる。


「警報が入らないところをみると…」


 ケーコさんが言ってるのは、廻りを警護してくれているであろうセキュリティー()ポリス()の事だ。


「ヤラれたみたいだな」


 まとめるほどの荷物も無い僕たちは…畳の上で土足になり…用心して・あらかじめ用意してあった水と携行食を背負い…手に手に武器と弾薬を取る。


(こんな状況なので、結局オッちゃんも、僕たちと同行することになった)。


「ソッチじゃない!」


 当然ぼくは、裏山へ向かう「抜け穴」に入るのだとばかり、思っていたのだけれど…


「SPがヤラれてるくらいだ。そんな所に入ったら『袋のネズミ』だ!」


 そう言いながら和男さんは、横の白壁(しらかべ)の前に立ち、横木をスライドさせる。


「クルリ!」


 年季の入った壁を押すと、白壁が回転する。


『回転トビラ?』


 他にも、絡繰(カラクリ)があったみたいだ。


『忍者屋敷みたい!』


 感心してる場合じゃないけど…


「コッチよ!」


 そう言われて、ケーコさんを先頭に、シロとクロを連れたかなえチャン・オッちゃん・僕・そして最後に和男さんと、地下に続く・切り通しのトンネルに降りて、裏山とは反対方向に向かう。


「ヨイショッ…と」


 海沿いの道路の下をくぐって、最後に突き当たり。そこで積まれた玉石をどけて、人一人ぶんの穴を開けて外に出れば、ガレ場の浜辺。


「ふい〜!」


 そこからは夜の闇の中、火山の方に向かって海伝いに歩く。


『大したもんだ』


 僕はドレス姿の、かなえチャンの体力を心配していたのだけど…


『体重が軽いから?』


 終始、遠足かピクニックでもするかのような、軽やかな足取りだ。


(こんな環境で育っている子だ。普段から鍛えているのかもしれないし…案外、武器だって操れるのかもしれない)。


 火山の(ふもと)からは、登山道へ。


(火山活動が活発になっていたので、入山規制がかかっている。登山者やハイカーなど、人気(ひとけ)は皆無)。


『着いた〜!』


 朝日が昇る頃…人っ子一人いない…噴煙を上げる・噴火口を見下ろす、開けた頂上へたどり着く。


(和男さんとケーコさんは当然として…体育会系でもあるオッちゃんに、かなえチャンにクロ。一人の落伍者も無かったけど…シロだけは、岩をはい上がる時など、誰かが交代でダッコしてあげた)。


『ダイジョブなの?』


 間近に見える噴火口は、茶灰色を濃くしたような黒い噴煙を猛々(もうもう)と噴き上げているけど…


『今は非常事態。それどこじゃない』


 でも、僕のそんな予感は…ソチラ方面じゃないけど…即、的中!


「ガルルルル…」


 岩陰に隠れて、ひと息入れていると…


『?』


 クロが反応しはじめる。


「きやがったな!」


 和男さんの一声(ひとこえ)で、岩陰からソッと顔を出せば…


『!』


 横一列に並んで登ってくる、六人の黒いコート姿の男たち。


「バサッ!」


 一条の朝日が差すと同時に、揃ってフードをかぶる様が…


『戦闘態勢突入!』


 そんな感じで、いっそうの不気味さをあおる。


「まかせとけって!」


 和男さんが、肩に掛けていた・愛用のカービン銃を構えて…


『戦闘開始!』


 引き金を絞る。


「バシュ〜ン! バシュ〜ン!」


 身を隠していた岩陰から連射で…まず・真ん中の二人を、アッサリ仕留める。


「そろそろ来る頃よ!」


 ケーコさんが叫ぶような口調で、でも小声でそう言うと…


「ブロ〜ン…!!!」


 やがて上空に飛来したのは、空挺隊(くうていたい)の垂直離着陸型ティルト・ローター機。


(双発のエンジンごと可動させていた旧式と違い、プロペラの向きだけを水平〜垂直に変えられる最新型だ)。


 着陸に充分な広さはあったけど…


「こんな開けた場所じゃ無理だ」


 和男さんの言葉通り…着陸している余裕なんて、無さそうだ。


(全員が乗機するまでの時間を考慮すると…乗り込んでいるところを、航空機ごと「狙い撃ち」されるおそれがある)。


空中挺進作戦(ヘリ・ボーン)?』


 でも、ロープで宙吊りになった状態では、それこそ「絶好の(マト)」になってしまう。


「全員、討ち獲るしかないな」


 和男さんは、そう言ってから…


「ケーコ、みんなを頼むぞ!」


 岩陰をはい出して行く。


「バシュ〜ン!」

 「バシュ〜ン!」

  「バシュ〜ン!」


 途切れ・途切れに轟く、『一撃必中』の銃声。


「あと一人」


 ケーコさんが、そう言った時だった。


「ガラン!」


 ま後ろで、石が崩れる音がする。


「ハッ!」


 岩陰に入っていた全員が、一斉に後ろを振り返ると…僕たちを見下ろすように、背後に立つ黒いコートの男!


「しまった!」


 ケーコさんが、あわてて振り返ろうとするけど…


「ニヤッ!」


 先に・そちらに顔をむけた僕の目に映ったのは、「ニヤッ!」と笑った黒いフードの男!


『絶体絶命!』


 全体の光景が、スローモーションのように動いていく中で…


「パンッ!」


 そんな軽い響きの音で…


「エッ!」


 急に目覚めた瞬間のように、通常の時間の流れが戻ってくる。


『なに? なにがあったの?』


 我に返ってみれば…まるで器械体操選手のように、上体を真後ろに振りかぶった・かなえチャンが、最後の一人の脳天に風穴を開けている。


『マジ?』


 どこに・そんな物、隠し持ってたの?


(きっと…それで、いつもドレスを着ているのだろう。その中には…『いったい、どんな物が隠されているのか?』。考えただけでも、ゾッとする)。


 でも…


『シビレる〜!』


 感激だ!


(実のところ僕は…「ロリータ・コンプレックス」ではないけど、「ロリコン趣味」ではあるようだ)。


 戦い済んで・ホッとして、忙しそうに立ち回る処理班を横目に、ティルト・ローター機に歩み寄る。


「ありがと」


 着陸したヘリに向かいながら、ケーコさんは、そう言ってかなえチャンの頭を撫でている。


(クロは、近くに六体もいたのだから仕方ないけど…責任を果たせず、すまなそうな顔をしている)。


『なんなの、あの子?』


 オッちゃんは、そんな驚きの表情を見せているけど…


『相手は人じゃないし…』


 笑顔のまま絶命している男の顔を見て…


『まあ、イイんじゃない』


 僕は、そう思った。


     ※     ※


「バラッ・バラッ・バラッ…」


 僕たちを乗せた機体が上昇を始めたところで、機長さんらしき人に話しかけていた和男さんは…


「なに? 先遣隊と連絡がとれない?」


 続けて…


「それに…教授と博士の消息も不明?」


 そんな・やり取りが、漏れ聴こえてくる。


「どこに行くんですか?」


 僕たちが並んで座る、後部の座席に戻ってきた和男さんに尋ねると…


「あそこしかないな」


 そう答えてから、僕やオッちゃん・かなえチャンの方を見る。


『?』


 教授たちが消息を断った時刻との時間差を考えると、グズグズしてるヒマは無さそうだ。


「君たち(※※)のことを、途中で降ろしているヒマはないんだ。むこうに着いたら、そのままコレに乗っ…」


 和男さんが、提案しかけたところで…


「キャン!」


 シロの、制止のひと鳴きが入る。和男さんは、「君たち」と言ったけど…


「パパとママを、助けに行かなくちゃ」


 と、シロを抱きしめた、かなえチャン。


「わたしも着いて行きます!」


 オッちゃんも、強いことばで、そう言うし…


『オッちゃんが、そう言うんじゃ…』


 逃げ出すわけにもいかないし…


「プイッ!」


 クロは「当然!」といった顔をして、窓外の方に顔をむけているし…


『仕方ないわね』


 ケーコさんは戸惑う和男さんに、そんな意味のこもった「にんまり」とした笑みを浮かべて…胸の高さで・上に向けた手の平を、すくめて見せる。


「しゃ〜ないか」


 全員の同意の合図を受け取った和男さんは、そう言って・正面を向き、座り直した座席から立ち上がると…


「まずは…」


 そう言ってから…「ヨイショ!」っと、アクアラングにでも使うような、鈍い灰色の・大きな鉄製のタンクを背負う。


「何ですか、それ?」


 それを眺めながら、訊いてみる。


「酸素ボンベだよ」


 そして、それを手伝っていたケーコさんから…


「二人にも、一応これを渡しとくわ」


 僕とオッちゃんは、スポーツ大会や登山の時などに目にする、どこにでも売っている・市販の酸素缶を手渡される。


「吸うんですか?」


 それを手にしながら、オッちゃんが言うと…


「いやいや…奴らに向けて、スプレーするのさ」


 和男さんは、先端に長いノズルの付いたエアー・ガンで酸素を噴きながら…


「決定打にはならないが、一瞬、ヤツらの動きを封じられる」


 そう言うけど…


『これで?』


 僕の怪訝(けげん)そうな表情を見て…


「効果は実証済みよ」


 ケーコさんも、そう言うけど…


『こんな物で?』


「アイツらは…と言うより、あのウイルスは、酸素が嫌いだからな」


『なるヘソ!』


「狭い場所でなら、ゾンビよけの効果も見込める」


  準備が整った和男さんの最後の言葉で、ひと段落。


「さて!」


 そんなワケで、機内で昼の「腹ごしらえ」を終えた僕たちは…『神月山』の麓にある、「立入禁止」と書かれた・トンネルの入口のような場所の前に立っていた。


(と言っても、一面コンクリートでふさがれていて、鉄の(トビラ)がひとつ、あるだけだ)。


「ここから入る気?」


 ケーコさんが、和男さんに問いかける。


「今さら小細工しても、仕方ないだろ」


 和男さんは、そう返事する。


「やけに静かですね」


 と言いながら僕は、妙に落ち着いている自分に気づく。


  奴らが待ちかまえてる事は、百も承知だけど…

  自分で望んだモノではないけど…

  たまたま、人とは違ったモノを持って生まれた…


『これも、僕…いや、僕たちの運命?』


 それを受け入れたからだろうか?


「ワナかもしれないわ」


 ケーコさんは(いぶか)しむけど…それも当然。だいたい、入口のドアは、開いたままだ。


「かもな」


 でも…


虎穴(こけつ)に入らずんば虎児(こじ)を得ず』


「行くしかないだろ」


 シャキーン!

 和男さんは、カービン銃をリロードする。


「そうね」


 カシャン!

 ケーコさんも、散弾銃(ショット・ガン)に散弾をセットする。


「狭い一本道の方が、相手にしやすいぜ」


()』も『()』も無い。


『ここは戦いの場。「闇の勢力」との、戦争なんだ!』


 でも、その前に…


「あの…」


 僕は、口を開き…


「はじめに言っときたいんですけど…」


 そう切り出すと…


「ん? 辞世(じせい)の句でも()む気か?」


 和男さんは、そう言いながら振り返り…


「どうしたの、オシッコでもしたくなった?」


 ケーコさんは、フザケてるけど…


「みんなにも、言っときたいんだ」


 そう言って、左隣りにいるオッちゃんや、右隣りにいるかなえチャンを見回す。


(シロにクロも、黙って僕の方を見ている)。


「もし…もしも僕が、理性を保てないようなら…その時は…」


『その人の本性がわかる?』


「最後の手段で…僕のことを」


 僕が、そこまで口に出すと…


『?』

 オッちゃんが、僕の手を握ってきて…


「キャン!」

 シロが、ひと声。


「バ〜カって言ってるのよ」

 ケーコさんは、振り返りもせずに、そう言ってきて…


「…」

 かなえチャンは、ジッと僕を見上げていて…


「プイッ!」

 クロは相変わらず、ソッポを向いて…


「そんなことには、なりゃしないさ」

 和男さんが、最後にそう言うけど…


「でも、こうして見ると、へんな組み合わせですね」


 マッチョな二人は、マジっぽ過ぎて、かえって滑稽(コッケイ)だし…


(戦場以外で、こんな格好をしていたら、通報されかねない)。


 左右を固めるのは、普段着で自動小銃を構えた、いかにもフツーな男女の浪人生に…


(なんだか・とっても、「場違い」だ)。


 白黒・大小のイヌを連れた、フリフリ・フリルの女子小学生。


(なのに、手には機関拳銃を構えてる)。


「まるで、『桃太郎の鬼退治』みたいだ」


 僕が、そんな感想を述べると…


「ハハハハッ! それならダイジョブそうね」


 ケーコさんが、そこまで言い終えると…


「ヨシ! 行くぞ! 突撃だ!」


 和男さんが前を見て・左腕を振り上げ、前進の合図を送る。


「ガルルルル…」


 中に一歩、足を踏み入れるや(いな)や…速攻でクロが、低いうなり声を上げはじめる。


「いやがるな」


 でも、シロが反応しないところを見ると、いるのは「ニンガイ」…ゾンビどもだ。でも…


「なんかヘンね?」


 要所・要所の(ドア)が開いていて、まるで導かれているかのようだ。


「たしかに…気味悪いですね」


 左右に続いている・扉という扉の内側から伝わってくる、ザワザワとした・ザワつく空気。あの時…初めてコイツらに遭遇した時の、あの路地と同じ雰囲気が漂っている。


「いるのは間違いないですよ」


 クロも、ずっと反応し続けている。


「シュ〜ッ!」


 監獄の独房のような鉄のドアの上方に、鉄格子のはまった小窓。そこから酸素を吹き込むと、ザワザワとしたざわめきが、一瞬、静まるけど…


「奥まで引き込んでおいて、一斉に…かもね」


 ケーコさんがそう言う頃に、大きな扉が開け放たれた・突き当たりの部屋に到着すると…


「ワン!」「キャン!」


 今度はシロとクロが、同時に反応した!


「ソッ!」


 と僕たちが、中に入れば…白壁に赤い絨毯の敷かれた、広い円形の部屋。


『誰もいないの?』


 奥には半円形の、一段高くなった舞台(ステージ)が、こちらに張り出してきている。


(そこをグルリと取り囲んだ、奥行きの広い・低い階段が三段)。


 ステージの上には、大きな背もたれの付いた、豪華な真紅の天鵞絨(ベルベット)貼りの回転椅子が、向こうを向いて据え付けられている。


「やっと全員揃ったみたいね!」


 と突然、椅子の向こうから、声がするけど…


『女?』


「先着の二人も、お待ちかねよ!」


 その声が・そう言うと、右手の壁の一部が、自動で上にスライドし…


「パパ! ママ!」


 教授と博士。二人は、駆け寄るかなえチャンの前に、しゃがみ込む。


「ひさしぶりね、教授・博士。いえ…倫太郎(りんたろう)桜華(おうか)


 そう二人の名前を呼びながら、回転椅子がクルリとこちらを向くと…


「ハア〜?」


 普段は、多少の事では声の出ない僕だったけど…さすがに、こいつには、声を上げてしまう。だって…


(まあ女性だとしても、華麗な髪飾り(ティアラ)でも着けて・引きずるようなハデなドレスを着た、女王様みたいな姿を想像していたのだけど…)。


「こうこうせ〜?」


 それも、ショート・カットの…


「じょすぃ〜?」


 どんなスゴイ奴が出てくるのかと思っていたのに…


『アングリだ』


 開いた口が、ふさがらない。


『しかも…』


 薄での白地に、エリやソデが鮮やかな青色の上着に、スカートもブルー。夏服の制服みたいな格好の、まんま女子高校生。なのに…


「ああ、ひさしぶりだね、社長」


 教授は真顔で、そう声を掛ける。


「しゃ・しゃちょう?」


 って…あの、会社の社長とかの「しゃちょ〜」?


『いったい、どういうこと?』


「教授」に「博士」に「先生」に…最後は「社長」ですか〜?


『なんてこったい!』


『死』まで覚悟して、まさに「決死の思い」で気合を入れて、ここまでやって来たっていうのに…


『なんだか・とっても、拍子抜け!』


(この時の僕には、ほかの四人が・どんな表情をしているのか? 確認している心の余裕が無かったけど…『だいたい僕と同じ反応をしていたんだろう』と思っている)。


 なのに…


「先生は元気?」


 そんな・こちらの驚きや落胆(?)など、まったくお構いなしで…社長は続ける。


「キンタは、あの島での大爆発以後、消息不明だよ」


『キンタ?』


 教授がそう答えると…


「あら残念!」


 プイと頬をふくらませて…豪華なイスの上で「体育座り」。


「高校の同窓会ができるかと思って、コスプレまでしてきたのに…」


 おまけに…


『こすぷれーや〜?』


 でも…


『同窓会って…じゃ先生は、教授たちと同い年?』


「見かけよりは若いだろう」という僕の予想は、大当たりだったみたいだけど…驚き連発だ!


「ニーナは、あの頃のままなのね」


『ニーナ?』


 今度は博士までが、真顔で話し出した。


「そう。死んだ時…いえ、人間じゃなくなった時のまんま」


『じゃ、やっぱりアナタも…』


 僕はやっと、正気に戻ってきた。


「でも何でアタシがって、思ってるんでしょ? 女なのに…」


「クスクス」と、含み笑いをしながら言うには…


「男と女を区別する『三つの条件』って、なんだか知ってる?」


 まず姿…付いてる物が、あるとか・ないとか。

 次に中身…これは、どっちがあるかね。

 そして最後に…


「遺伝子ね」


 博士が、そう答える。


「そう。そのみっつが揃って、はじめて『男』とか『女』って言えるんだけど…」


『なるヘソ!』


 つまり…遺伝子が『(メス)』ではなく、『(オス)』のもの。


(ごくマレに、この三つの組み合わせが、揃っていない人がいるらしいけど…聖女や生贄の少女も、この(パターン)に該当するのかもしれない)。


「そういう事だったのね」


 と博士も、「なるヘソ!」な表情を見せるけど…


『一億分の一の確率の人間と元人間が、こんな身近な所で出会うなんて…』


 だいたい、現在「約一億人の人口の日本」に、僕と父と弟の三人がいる(いた?)っていうのに…

 分布に偏りがあるのか?

 データーか解析方法に誤りがあるのか?


『もっと、たくさんいるんじゃない?』


 冷静に考えれば、そちらの方が大問題だと思うのだけど…


「社長から連絡が入ったときは、驚いたよ」


 と教授も、それどころでは無いようだ。


「まさか生きてるなんて」


『生きてる?』


 まあ・それは、いったん置いといて…


『ところで…みなさん、お知り合いなんですか?』


「でしょ〜! ビックリさせようと思ってさ」


『ん〜、モロ女子高生』


「ひさしぶりに会ったんだから、ついでに・ひとつだけ、教えてあげるわ」


『これだけ大変な思いをしてきたっていうのに、「ついで」ですか?』


「どうしてワタシが、正気を保っていられたか」


『ぜんぜん話が見えないんですが?』


「たぶん怨念(おんねん)じゃない」


『?』


「あのゾンビたちみたいに、突然、変異していたらわからなかったけど…」


『ギョッ!』


 とても怖そうな目つきになって…


(うら)みを感じてる時間は、たっぷりあったわ」


 と、にらみつけてくる。


「…ごくり!」


 教授と博士は二人そろって、何かを悔やむような表情を見せて黙っているけど…


『いよいよ始まる!』


 銃を握る手に、力が入る。


「でも…許してあげる」


『エッ?』


 一転、表情を和らげ…


「あの時の・あの状況じゃ、仕方ないものね」


 そう言って社長は、背もたれにふんぞり返る。そして…


「あなたが娘さん?」


 二人の間に立っていた「かなえチャン」の方に視線を落として、声を掛ける。


「コクン!」


 声を掛けられた「叶ちゃん」は、コクリとうなづく。


「こっちにいらっしゃい」


 そう言われて、黙って立っている両親の手から離れて、前に進み出ようとすると…


「だめよ!」


 オッちゃんが引き止めるけど…


「だいじょうぶ」


 それを、振り払うようにして…


「だって…」


 そう言うオッちゃんに…


「クロが怒ってないもの」


『なるヘソ!』


 あのクロが黙って、成り行きを見守っている。


『大した子だ』


 一人で・ゆるい階段を、一段・二段・三段と、登っていく。


『もしかすると、ヤツらの中でも、違ったタイプがいるのかもしれない』


 そんな考えが浮かんだ、僕だったけど…


「さすがに教授と博士の子供だけあって、賢そうな子ね」


 社長は・そう言って、かなえチャンの頭を撫でながら…


「どっちにしろアタシじゃ、子供なんて(さず)からなかったでしょうけど…」


 小声で・ポツリと、つぶやいた。でも…


「だまされないぞ!」


 僕は、声を張り上げる。


「だって、僕の父さんや母さんや友達を殺したり、事件を起こしたりしてるじゃないか?」


 すると社長は、あっけに取られた顔をして…


「何のこと?」


 そう返してくる。


「アタシは、ただの・ここの管理人。名ばかりだけどね」


『?』


 僕は・まだ、半信半疑だった。


「じゃあ…先にここに来た人たちは、どこに行ったんです? どうなったんです?」


 そう問い詰めると…


「あら? アタシは知らないわよ。招待客じゃないのに無断で入ろうとしたから、ニンガイたちが怒ったんじゃない? かわいそうだけど…」


『無責任な管理人だ』


「とぼけるな!」と、怒鳴ってやろうと思ったのだけど…


「ああ。もしかしてアナタが、『ハイパー・ニンガイ』候補生ね」


 機先(きせん)(せい)された。


「勝手に仲間にしないで下さい」


 僕は反論したけど…


『アレ?』


 そこで、フト気がついた。


『そう言えば「ニンガイ」って表現…なんで社長が知ってるの?』


 たしか名づけ親は、とある高校生って言ってたけど…


『ひょっとして…』


 そこで突然…


八百比丘尼(やおびくに)のお話、知ってる?」


 なんだよ急に!


「いえ!」


 即座に否定すると…


「人魚の肉を食べて、不老・不死になったとか、800歳まで生きたとか云われてる、悲しい(アマ)さんのお話よ」


 話をそらすなよ!


「噛んであげようか?」


『ゾクッ!』


 今度は悪戯(イタズラ)っぽい目つきになって、そう言ってくるけど…


「結構です!」


 冗談じゃない!


「アタシにかじられたら、アナタだって…今なら・今の姿のままで、永遠の命が手に入るのよ?」


 実のところ…


『それも悪くないかな』


 一瞬、そんな思いもよぎるけど…


『?』


 一心に、まっすぐ・こちらに注がれるオッチャンの視線に気づくと…


「いりません!」


 オッチャンがいなくなった・その後も、ずっと・ずっと生きてなくちゃならないなんて…


「なあ〜んだ! つまんない」


 それに、もしかして生まれてくるかもしれない娘にも先立たれ、ましてや女系家族の系統で、続々と誕生する子孫が女の子ばかりだったら…


(ちなみに、「男か女か?」は、男の方が持っているもので決まるらしい。だから、僕が持っている(タネ)が女性用の物ばかりだったら、僕みたいな男の子が生まれてくる心配は、しなくて済むのだけど)。


 孫・曾孫(ひまご)玄孫(やしゃご)etc(エトセトラ)たちを次々と見送りながら、永久に生き続けるなんて、そんなの考えられない。


「どうぞ、お構いなく!」


 僕は、オッちゃんと一緒に歳を取っていければ、それだけで満足だ。


(しかし・それ以上に、それとは反対に、もしも生まれてくるのが男の子ばかりだったら? そして本人が、永遠の命を望んだら…そのとき僕は、いったい『どんなふうに応じたらいいの?』。まあ・それは「今後の課題」という事で、いったん保留にしておくけど)。


「じゃあ…もし永遠(とわ)の命を手に入れたら、アナタならどうする?」


 いきなりの質問に…


「さあ?」


 いったんは、そう答えたけど、すぐに思いついたのは…


「とりあえず、世界中の本を、読み(あさ)りますよ。外国語を勉強している時間だって、タップリありそうだし」


 今の人間の寿命じゃ、とても・そんな事は(かな)わない。


「あら! いいわね」


 パッと笑顔を見せ…


「アタマ、良くなり過ぎちゃいそう!」


 でも・すぐに、肩をすぼめて…


「でもアタシ、そんなに本、好きじゃないしな〜」


『それなら…』


「それに、地球のすべての道を、歩いてみるのもいいかな」


 それも、今の人類のライフ・スパンじゃ、実現不可能だ。


「そっちの方が、アタシの(しょう)に合ってるかな」


 少し元気を取り戻すけど…


「あなたには、まだわからないでしょうけど…」


 一転、今度は深刻そうに…


「不老・不死なんて、そんなに楽しいものじゃないわ」


喜怒哀楽(きどあいらく)』が激しいみたいだ。


「生きる理由や目的が無かったら、長生きなんて、苦痛なだけよ」


『きっと退屈してるんだな』


 そんな感じがした。


「今回みんなに来てもらったのは…昔の友達が懐かしくって…みんなが元気なうちに、もう一度会っときたかったから」


『なんだか、悲しくなってくるような話だ』


 けど、その時…


「ガサ・ガサ・ガサ…」


 通路の方が、騒がしくなる。


「チェッ!」


 社長は舌打ちして…


「班長の見回りね」


『班長?』


「抜き打ちの巡回が来たみたいだわ」


 コッチの世界にも、そんなものがあるの?


「ニンガイどもが、目覚めたみたい」


 それを聞いた博士は…


「ニンガイが目覚める?」


 不思議そうな顔をすると…


「あら? 桜華しらないの? 冷凍しておけば、保存が効くのよ」


 って、冷凍食品じゃないんだから。


「なるほど! そうなのね」


 って博士まで。


『感心してる場合じゃないでしょ!』


 しっかりして下さいよ! あなたは・もう、高校生じゃないんだから!


「アタシ、こんなでしょ…組織の中じゃ、跳ねっ返りだったから」


『でしょうね』


「目、つけられてるの」


『わかります』


「もっと、ユックリしていってもらいたかったんだけど…」


 と、とても名残り惜しそうに…


「そろそろ、帰った方が良さそうね」


『帰っていいって言ったって…』


 僕たちが今さっき・やって来た方角から、今までにない数のニンガイどもが、後から後から・続々と現われる。


「チッ!」


 和男さんは舌打ちしてから、降ろしたボンベをヤツらの方に向けて、バルブ全開で酸素を散布し…

 僕とオッちゃんは、教授と博士に、護身用に酸素缶を手渡してから…

 みな各々(おのおの)夫々(それぞれ)の銃を構えるけど…


「これじゃキリが無いわ!」


 ケーコさんが嘆く。


「一発・一発、確実に行こうぜ!」


 弾の数にも限りがある。と、その時…


『バサッ!』


 最初の一人が、(おど)りかかって来る。


「ブシュ〜ン!」


 和男さんの第一弾が、ソイツの脳天を撃ち砕くと…


「ザワ・ザワ・ザワ…」


 それを合図に、ヤツらが一斉に襲いかかってきた。


「武器を置いて、先に行け!」 ブシュ〜ン!

「いや!」 ズドン!

「なに?」 ブシュ〜ン!

「もうこれ以上、愛する人を()くしたしないの!」 バン!

「なんだって?」 ブシュ〜ン!

「また一人ぼっちになるくらいなら、わたしも死ぬわ!」 バン!

「嬉しいこと、言ってくれるじゃね〜か」 ブシュ〜ン!

「帰ったら、結婚しよう!」 ブシュ〜ン!

「ば〜か! だからアナタはアナタなのよ」 バン!

「なに〜?」 ブシュ〜ン!

「そんなアナタが、大好きってこと!」 バン!

「あ〜ん! いま何て言った?」 ブシュ〜ン!

「ほっときなさいよ!」 バン!

「ほ〜んと、タイミング悪いんだから」 バン!

「このマヌケ!」 バン! バン!


『やってる・やってる』


 ま後ろにいた僕には、二人のやり取りは、丸聞こえだったけど、その時…


「コッチにいらっしゃい」


 社長が、かなえチャンの手を引きながら…


「逃げ道を教えてあげる」


 そう言って、イスの(ヒジ)掛けに付いていた「隠し(ブタ)」を開く。中は、スイッチ・ボックスになっているようで、ボタンを押すと…


「ガコン!」


 舞台(ステージ)全体が、右回りに回転しはじめる。


『回転舞台?』


「上に載ってる奴らを全員、撃ち払うんだ!」


 和男さんが叫ぶ!


「ブシュ〜ン!」「ブシュ〜ン!」

「バン!」「バン!」

「ガガガガ〜ン!」

「ババババ〜ン!」

「パパパパ〜ン!」


 僕たちは全員、横一線に並んで、弾の限り撃って・撃って・撃ちまくる。


「コッチよ!」


 社長の声で振り返れば、上の方にむいた・洞窟のようなトンネルが見えてきた。


「入って!」


 社長に言われて、かなえチャン・博士・教授と、ステージから降りて、奥へとむかう。


「頂上の(ホコラ)の下まで続いてるわ」


 そう言って、僕たちをうながすと…


「あなたも、一緒に行きませんか?」


 オッちゃんが、振り返って社長に声を掛ける。


「あなた、案外、変わってるのね」


 社長はキョトンとした顔をして…


「人間だったら、友達になれたかもしれないな」


 そう言ったけど…


「ニンゲンを入れたのがバレたから、今度こそ、ただじゃ済まないわ」


 そこに、ケーコさんに続いて…


「どっちにしても、もうアタシは、向こうには帰れないの」


 閉まりかけたスキマから、最後に和男さんが飛び込んでくる。


「こんなふうになるくらいなら、消えた方がマシなの」


 僕たちが全員トンネルの中に入ると…


「それじゃね」


 と、回転舞台は再び回りだして、社長は姿を消していった。


     ※     ※


「バラッ! バラッ! バラッ…」


夕陽の中を飛ぶ、ティルト・ローター機。


 まるでタイム・マシンにでも、乗ったみたいだったよ。

 あの子、昔のままだったわね。

 いや、ちょっとワガママがひどくなってたよ。

 でも昔から子供好きで、老人には優しかったわ。

 変異する瞬間に、なにか強い想いがあれば、正気を保っていられるって、言ってたね。

 ええ。そうね。

 あのとき…最後に、何を考えてたんだろう? 怨念って、言ってたけど。

 恨みなんかじゃないわ。きっと、あなたのことよ、倫太郎。

 僕たちは、歳を取ってしまったね、桜華。

 そうね。


前に座る二人は、なんだか・とっても良い感じで…声を掛けるのも(はばか)られた。


     ※     ※


 結末は、しごく「アッサリ」したものとなった。


(まあ、「核爆発」を、「アッサリ」と表現していいならの話だけど…)。


『どっから・そんなモン、手に入れたの?』


 米軍の「大気観測用航空機」の測定結果によると…あの瞬間、急激に跳ね上がった、大気中に飛散した放射線の量からすると、まだ「核融合」型の『熱核爆弾』=『水素爆弾(水爆)』ではなく、「核分裂」型のようだけど…地下に核開発施設を建設中だったようだ。


(幸い、僕が予想した日…「11月9日」・「1月19日」が来ても何も起こらず、時は過ぎて行った)。


「ところで教授」


 僕はフッと思い出した疑問を、教授に投げてみる。


「『わっく』って、どういう意味だか知ってますか?」


「ん?」


 窓際のデスクの向こうで横向きに座り、書類に目を通していた教授が…


(帰る場所の無かった僕は、現在「居候(いそうろう)」になって、この事務所に寝泊まりしている)。


 掛けていた老眼鏡を下げながら、こちらに向き直って…


ウイメンズ()アーミー()コープ()のことじゃないかな?」


 そう教えてくれる。


「なんですか、それ?」


 そこまで聞いても、僕にはサッパリだ。


「陸自の婦人部隊のことだよ」


『ああ、なるヘソ!』


 納得だ。


(ここで「(タネ)明かし」をしてしまえば、ケーコさんは、オートバイを使った斥候(せっこう)…つまり、偵察部隊にいたみたいだ)。


「そうそう、それで思い出した」


 教授はそう言って、デスクの引き出しをガサゴソやっている。


「コレ。君たち二人に渡しといてくれって、頼まれてたんだ」


 白い封筒を手渡してくれる。


「なに・なに?」


 と、僕を訪ねてきていたオッちゃんも、右肩越しにのぞき込む。


『ハテ?』


「白鳥武尊様・橘内乙様」と連名で書かれた封書。


『なにコレ?』


 開けて開いてみれば…僕とオッちゃんに届いた、結婚式の招待状。


『式を挙げるのは…?』


「桐木原九州男」と「鸛池惠光」


「誰ですか、これ?」


 どちらも、初めて聞く(見る?)名前だ。


「ん? 和男くんと恵子さんだよ」


 教授はメガネを掛け直しながら、サラリと答える。


「はあ〜?」


 和男さんとケーコさんのケッコンシキ〜!


「キリキハラ・クスオ」と「コウノイケ・メグミ」って、読むんだそうだ。


『北海道出身なのに、なんで九州?』


 なんでも…御先祖様が『明治維新』の時の「戊辰(ぼしん)戦争」に従軍して、「函館戦争」で北海道に渡り、そのまま・その地に住みついたらしい。でも、家系の出自の地を忘れないようにと、お爺さんだか・ヒイお爺さんだかに付けられた名前だそうだ。

 それと…『(こう)』は「コウノトリ」。『光』とは「ミツ」とも読む。そのままローマ字式に音読すれば「コーイケ・ケイコー」。まあ、大きくはずれてないけど…


『二人とも、難しくて・珍しい名前』


(世の中には・今どき、「社内恋愛禁止」なんて会社もあるみたいだけど…「アメリカ中央情報局(CIA)」などは、機密保持の観点から・職場結婚を奨励しているみたいだから、ちょうどいい)。


「それと…」


 教授が続ける。


「君には、特別な奨学金を用意した」


『奨学金?』


「ここでアルバイトしながら、受験勉強に励んでもらう」


『チェッ!』


 オッちゃんは見事、志望校の・目指していた学部に合格したけど…


『あんな事してたんだもん、大学なんて受かりっこないでしょ!』


「二浪か〜」


 すくなくとも「あと一年」は、おあずけだ!


     ※     ※


「本性があらわれるって、言ってたよね」


 ヘリ・ポートがある、早春の夕焼けの屋上。


(実は・ここの床面には、「垂直離着陸型戦闘機」が離発着できる耐熱処理が施してある)。


「あれが、あの人の本性だったのかな?」


 オッちゃんと並んで・手すりに前向きにもたれて、夕陽を眺めていた。


(当然オッちゃんは…「左方神聖」…僕の左側だ)。


「そうそう、オッちゃんも、ここでバイトしたら?」


 続けて、そんな提案をしてみた。


(教授にも薦めてみようと思っているのだけど…和男さんとケーコさんに、子供ができた。これから産休に入るケーコさんの代役の「秘書見習い」。もちろん、戦闘行為みたいなフィールド・ワークは、ご遠慮願いたいけど…教授の元には、世界中からいろいろな情報が集まるし・海外雄飛を目指すオッちゃんには、ピッタリだと思う。そうすれば僕だって、オッちゃんと一緒にいられる時間も長くなるし…『一石二鳥』。いや、三鳥・四鳥?)。


 ちなみに和男さんは、ついに自分の夢を実行に移し、ただいま身籠(みごも)のケーコさんと、サイパンに新婚旅行(ハネ・ムーン)中。でも…


「さっきから、ずっと黙ってるけど、どうしたの?」


 そう言って左を向くと、突然…


『なに?』


 いきなり爪先を伸ばすように迫ってきたオッちゃんの顔が…


「チュッ!」


 僕に唇を重ねてきた!


『なに? 何が起きたの?』


 でも、「ヘヘ」って顔をして、離れていく。


『え〜!』


 一瞬の出来事で、感慨にひたるヒマもなかった。


「あ・あの…もう一回?」

「ダメ〜!」

「いいでしょ?」

「ダメッ!」

「なんで?」


 僕の『ファースト・キス』を、一方的に奪っといて、それはないでしょ!


「こまでなら、許してあげる」


 そして続けて…


「だって、80億人に1人しかいない存在なんだから」


 そう言うけど…


「1億人に1人じゃなかったっけ?」


 僕の言葉を受けて…


「ニブイな〜。世界中に、アナタは一人だけってことよ!」


 嬉しいこと、言ってくれるけど…


「それに、合格したらって、言ってたじゃないか?」


 そう反論すると…


「わたしは受かったからいいの!」


 と、一方的な理屈。


「わたしは解禁!」


 たしかに、二浪の身としては、返す言葉も無いけど…


「ほっぺでもいいから、も一回?」


 あきらめきれない。


「解禁のわたしが、したい時だけ!」


『なるヘソ〜!』


 しばし・そうやって、イチャイチャとイチャついていたけど…


『でも、いなくなった弟は?』


 それに…いまだ本当の姿を見せないあの連中。


『まだまだ深い闇は続きそうだ』


 そんな事に気づくと、なんだか気が重くなるけど…やっぱり、To Be Continued!




《第一部 終了》


後書き∶もう少し、おつきあい下さい!

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