表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

80/86

6-12:南へ

忙しくて間に合いませんでした。誤字とかすごく多い気がしますので先んじてごめんなさい。

 アセリア姫がなんとなくやらかしてしまった手合い改め魔法披露の場、ひとまずミリアム神官術士長が手合わせを諦めてくれた後。


 場の空気は今までの、どことなく険悪になりかけていた者から一変し、今はアセリア姫を何か恐ろしいもののように見つめる者が増えていた。


 もちろんその空気はフィルメリアの二人も感じ取り、やらかしてくれた自国の姫君の元に、すこしあわてて騎士団長が駆けつける。


「アセリア、あれはちょっとやり過ぎだろう。」

「すみません姉様。最近セラ様のお陰で色々覚えたものですから、ホーリー・レイなら納得いただけるだろうと、そう考えましたの。」


 義理の姉妹は小声で話をして、ああ確かにそうだけど、とか、春紫苑の輪舞(アスター・ロンド)は少し高度過ぎますわ、とか。


 どこかのお姫様のせいで常識がズレてしまった現在のお姫様は、なんとなくホーリー・レイならちょうどいいと思ってしまったようである。



 全然ちょうどよくなかったが。



 それでもなんとか親睦を深めたいお姫様は、最初に相対した時の自己紹介で聞いた名から、違う形でアプローチをとることとした。



「ミリアム様、まずは無作法をお詫びいたしますわ。ですがわたくしが全力で戦う相手は魔獣になるのです。どうかこの場はご容赦を。」


 一国の姫君として頭を下げる事は無いが、とりあえず国土の一部を破壊したことは間違いないので謝って、その上で自分の力、その矛先がなんであるかを分かりやすく伝えておく。


 確かにあの火力、魔獣向けだと言われれば納得するしかない。


「い、いえ。その、高名なアセリア姫様の御力を、こうしてお見せいただけただけでも身に余る光栄です。」


 対するミリアムはガチガチである。


 あろうことか一国の姫君に対して無礼にもあたるよな態度を取ったうえで、そのお姫様がトンデモ破壊力を持っていたのである。


 聞いた噂では、このお姫様は癒しの力に秀でていて、疫病の撲滅とか、とんでもない効果のヒーリングが使える凄腕の魔法使い。


 ミリアムの中でアセリア姫はそういう認識だった。


 だがまさか、攻撃魔法が常識の範囲を遥かに超えていたなんて、認識が無いどころの問題ではなく。


 もしかしたら、次は自分が消されるかもしれない。


 少なくともアセリア姫のホーリー・レイは、そのくらいの恐怖心は植え付けてしまったようである。


 それゆえアセリア姫にとっても今この場での出来事は、ある意味いい薬になったのかもしれない。


 今まで自国の兵たちにとって、神の鉄槌だった魔法。


 それを敵に回すということが、どれだけ恐れられるものか。


 人に対して使ったのは、後にも先にもセティスが魔石ルーンに籠めていたものを、シェルンに放った一撃だけ。


 その一撃をあっさり無効化されたという事実もまた、姫君と騎士団長にあらぬ認識ズレをさせていたかもしれない。


 そこまで想い至った姫君は、いつもの優しい微笑を浮かべ、一切害意が無いことをアピールしながら話を進めていく。



「先に申しました通り、あの力は人に向けるモノではございませんわ。そう緊張なさらずに。それとひとつお伺いしてよろしいですか?」


 実力を見せた前後であまりにも態度が違う神官術士長に、アセリア姫も少しやり過ぎたことを反省しつつ。


「貴方のお名前はミリアム・レーテ様と仰いましたが、もしかしてノースチャペルの、マイアス司祭様の身内の方、でしょうか?」


 最初に名乗りを聞いたときに気になった事、ファミリーネームが同じことについて、ひとまず聞いてみる。


 その答は、アセリア姫の想定通りで。


「は、はい。マイアスは私の父になります。あの、父と何かあったのでしょうか?」


「いえいえ。色々とためになるお話を頂いただけですわ。それで・・・」



 マイアス司祭はとてもよく出来た人物だった為、アセリア姫もとても好印象である。

 そのこともあり、とても民想いで平和を愛する方ですわね、とか、ストラス教の教えを真に説かれている素晴らしい方でしたわ、とか。

 とりあえずマイアス司祭の考え方には姫も賛同ばかりだったので、自分も司祭同様、平和主義な事を伝えていく。


 それを聞くミリアムも、姫の穏やかな物腰と、その話の内容に。


 父が話したことを、このお姫様はしっかりと受け止めて、とても好印象を持ってくれていると、話しの端々に感じ取っていく。


 徐々にミリアムの緊張が薄れていくことを感じれば、そこからアセリア姫は自分が神聖魔法の使い手と伝え、徐々に魔法談議で意気投合して。



 気が付けば、二人で話がとても盛り上がっていた。


 こういうところは自国の騎士団、第三大隊長のクラリス同様、魔法が好きな者同士、打ち解けるのは非常に速いようである。



「セラ様、ホントに模擬戦で戦う必要ありましたかね?」


「アセリアはフィルメリアでもアイドルですからね。あの優しい雰囲気と真摯な姿、魔法への姿勢を見せれば、戦う必要などありませんわね。」


 セラフィーナはアセリア姫がすぐに打ち解けていく姿を感心しながら見つめつつ、隣にいる王子様にも話しかける。


「それでエデュアル様、もし貴国の防衛に不安があるようでしたら、少しの間アセリアとセティス、二人と共同訓練をしては如何でしょう。」


 かねてから目論んでいた、二人を指南役として親睦を図る計画。


 そもそもエデュアル王子の懸念は国土の防衛である。


 いたずらに兵を増やせば他国からは侵略のための軍備強化と思われかねないが、個々の兵を鍛錬するのであればそうとは捉えられにくい。


 そう言った事もエデュアル王子だけでなく、クリス王女も呼び寄せて二人にしっかりと説明する。


 その説明が功を奏したのか、あるいは姉の手前なのか。


 エデュアル王子もセラフィーナの提案を一通り受け入れて、フィルメリアの二人はここからしばらくの間、ストラシャペルの中枢、そして神官戦士団、術師団との親睦を深めていくことと決まり。


「ではアセリア、セティス。わたくし達は火種の調査に戻りますわ。お二人はフィルメリアの為にも、ストラシャペルの皆様としっかり親睦を深めてくださいね。」


 結果的にフィルメリアの親善大使のような位置づけにもなって、後日正式に表敬訪問し、法王と謁見する機会も創って。


 この日を境にフィルメリア王国と神聖ストラシャペル法王国は、遠く離れた立地にありながらも友好国として、新たな関係を築いていく。



―― フィルメリアの二人が別行動となって。


「やっぱりわたくしも戦いたかったですわ。」


「言うと思いました。でもぶっちゃけセラ様だと、アセリアやセティスくらいの力が無いと戦いにもならないんじゃないですか?」


「ちょっとお二人とも!待って下さいっ!!」


 シェルンと二人、城を後にしたセラフィーナは、なんとなく物足りないと言った風情で常に共にある侍女と話をしていたが。


 そこに大慌てで突いてきたのはクリス王女である。


「あれ?クリス様、どうしたのですか?」


「どうしたって。貴女方お二人で調査に行くおつもりですか!?目当ての人物はご存知ないでしょうし、約束も取りつけれないでしょう!」


 聞く限り、二人を心配して来てくれたようである。


 もちろん昨日までの話から、これからサウスチャペル、ウェストチャペルの調査に行くことも分かっている。


 ここまでで既にセラフィーナはエデュアル王子、弟の懸念を払しょくするため、フィルメリアの二人に親睦と指南もさせるように話を通した。

 そのやり方はちょっと微妙なところもあったが、あの時クリス王女も見た、アセリア姫の魔法は本当にとんでもなくて。

 更に神官戦士長を、結果的には歯牙にもかけなかったセティスの実力を見て、あの二人なら確かに指南も務まると納得もしている。



 自分から相談を持ち掛けてまだ二日目。それなのにもう、国レベルで色々と変化が起き始めている。

 ずっと自分一人で動いていて、何も進展させられなかった問題が、色々な形で動き始めている。

 クリス王女としては、今はもう二人の行動力についていくのがやっとといった感じだが。


「私がいれば、どこの街でも面会は簡単にできると思います!ですからお二人の調査行に、私もご一緒させてください!」


 自分自身がお転婆と言われるくらいには行動派のクリス王女にとって、たとえ自分が願ったとはいえ人任せにはとてもできない。


 ならばストラシャペルの王女として、力を貸してくれるこの方に、出来る限り自分も協力すると心は決めている。


 父王にも話を通し、この件は言い出した自分が解決する。その意気で二人を追ってきた。


 そんなクリス王女の目を見て。


「とても素敵な、まっすぐなお気持ちですのね。ええ、クリス様がいらっしゃれば、わたくしも助かりますわ。」


 セラフィーナは即、受け入れる。


 その気持ちが、とてもよくわかるから。


 きっとこの王女は、最初は藁にも縋る想いだったのだろう。


 全く情報がつかめない中、弟が何者かの意図で変わってしまいそうなのを防ぎたくて。戦に繋がりそうな未来を懸念して。


 それでも全く手立てが無くて。


 だからセラフィーナが動き出した今、出来る限り自分も力になりたいというその気持ちは、痛いほどよくわかる。


「ではクリス様、シェルン。まずは何処かでお食事でもしながら、少し情報を整理しましょうか。」


 セラフィーナの言葉に二人も頷き、まずは昼食へ。



 だってそうしないと、お姫様の食欲魔人がそろそろいい感じで暴れ出しそうな時間なのである。


 もとよりクリス王女が追ってくる前は、法王国の王都セントラルで、美味しいお店を探していたところである。


 なお、セラ様の服装は通常の旅人装備へと戻している。


 ストラシャペルの王宮、セントラルパレスで何かするならいざ知らず、普通の町中を歩くのにお姫様スタイルはやっぱり頂けない。



 三人は普通に旅の冒険者と言った風情でお店に入り、外見に似合わない量の食事を二人ががっつり食べながら、今後の予定を相談する。


「まず、今気になっているのは、南のカズア神父と西のアマンダ司祭ですわね。お二人ともマイアス司祭のご友人、でしたわね。」


「そうです。三人は古くからの知り合いのようでして。話に聞く限りですが、カズア神父もアマンダ司祭も、とても良い方のようですが。」


「そういえば、それぞれの街を今納めている大司教様ってどんな方なんですか?クリス様がいるなら面通しはした方がいい気がしますよ。」


「大司教ですか。まずはカズア神父の見えるサウスチャペルですが。」


 二人はこれから向かう先、西と南の街について、クリス王女の知っている情報を確認していく。


 南、サウスチャペルの街を治めるのは、バルエル・サウザンド大司教。


 北のアルフレート・ノーティス大司教と同じくらいの年齢で、民からも慕われているこれと言って非のない人物らしい。


 その下にはミトス司祭という、こちらも温和な司祭が付いている。


 クリス王女の話では、二人ともそれほど戦を起こしそうな、好戦的な人物ではないということである。


「それで西、ウェストチャペルなんですが。」


 ウェストチャペルの街を治めるのは、フローレンス・ウェスター大司教という女性の大司教。


 歳はアルフレート大司教やパルエル大司教よりは若いが、とても優しく、慈愛に満ちた大司教ということである。


 そしてその補佐に、大司教と同じ女性のアマンダ司祭。


 司祭になってからはまだあまり長くはなく、民の人気は上々という話らしい。


 クリス王女からの情報を、幸せそうにご飯やおかずを上品に書き込みながら、どんどんおかずを食べ尽くしつつ、しっかり受け止めるセラ様。


 まだ今のところ、見えているのはマイアス司祭との繋がりだけ。


 それだけの手掛かりで何がつかめるかは分からないが。


「おおよそはこんな所ですわね。ではクリス様、南に付いたらまずはカズア神父との面会をさせてください。」


「分かりました。それで出立は何時になりそうでしょう?」

「貴女の準備が終わり次第、ですわね。」


「え・・・?あ!はい。すぐ食べますっ!!」


 気が付けば、セラフィーナとシェルンはあっという間に全てを食べ終わっていて、残っているのはクリス王女のお皿だけ。


 目の前でそれぞれ四人前を頼んでいたというのに、二人は一体どんな体の構造をしているのか?


 変な事を気にしながら、クリス王女も食べ終わり、店を出て。



「な、なんだったんだあの二人。」

「あんなに細いのに、一人で四人前食べていったぞ。」

「そういうのが流行ってるのかしらねぇ?」

「ご一緒にいらしたの、クリス様だったよな。あの二人は一体誰なんだ?」



 同じ店内に居た他の客に、ちょっとアレな感じで見られたりもしていたが、そこはお店から出た後の話。二人には関係ない。



 こんな旅を、数百年も続けているのだから、どれだけ変な噂や言葉が聞こえていても、基本的には気にしない。



「で、セラ様。先にどちらから行きますか?」


 お店から出てシェルンが放った一言目がそれで。


「では南から参りましょうか。お二人とも、もう少し近くへ。」


 受け取ったセラフィーナは、早速向かう気満々。


「え、ちょ。またあれですかっ!?」


 今朝方自分の部屋にワープされて、ちょっと思うところがあるクリス王女ではあるが、それでもそんなことを気にしている余裕もなく。



「はい。いきますわよ。目を閉じてくださいね。」




 三人は一気に、サウスチャペルの街へ。




「だから、この魔法は何なんですかっ!?」

進行が遅めですが、ちょっとずつ解決に向けて進んでまいります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ