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1-8:誠実な少女

誠実って大事ですよね?

「それはつらかったですね。そして今まで、よく我慢されましたね。」



 ミリエラに一部始終を聞き、気が付くと、横に座って優しく頭を撫でているセラフィーナ。


 話の途中からあふれる涙が止まらなくなった少女は、あやされる幼子のようにセラフィーナに身を預けていた。



「まずは現状の打開からですね。何としても、あなたのお父様はお救いしないといけません。」


「え?父を救うって、どういう事でしょうか。」



 まだ涙の残る声で。

 セラフィーナの一言につよく反応する。



「ミリエラさんには、つらいお話ばかりで申し訳ないのですが。お父様が変わられたのは、何者かに操られているからになりますわね。」


「何者かに、操られる?」


 確かに父の変化、特に今日の豹変は、あまりにも変わりすぎてて、そう言われても、不思議ではないが。



「そして、お父様を操ろうと考えた何者か。

 工作員が、ミリエラさんのおうちに紛れているかと。」


「紛れて!?まさか、そんな。

 屋敷に、お父様を変えたものが居る。」


「そうなりますわね。ですので、まずはお父様には元に戻っていただいて。」


「父が、父が元に戻る。昔のお父様に戻るのですか!?」



 あんなに、あんなに変わってしまった父が、元の優しいお父様に?


 セラフィーナは微笑みながら頷き、言葉を続ける。



「それとお話にありましたレアニールさん。状況を考えると、彼女に危害が及ぶ可能性も高いですわ。」


「そんな!?レアニールはなにも。」



 確かにミリエラの行動を促したのはレアニールだ。


 だが、ただ侍女が仕える主人と話しただけ。狙われる理由が分からない。



「ええ。ですが先のお話を聞く限り、あなたとのやり取りは気取られているかもしれません。」


「あ!あの時傍にいた衛兵が?」



 思い出したのは、レアニールに声を掛けられた時。

 傍にいる衛兵に聞かれぬように注意はしたつもりだが、傍から見れば怪しいかもしれない。



「見られていた、という事ですわね。ですが、こういった工作をする者は抜け目がありませんから。」


「で、では私がレアニールに事情を説明して。」


 いきなり面識もないセラフィーナかシェルンが行っても、門前払いなのは目に見えている。



「いえ、そこはわたくし達にお任せください。仮に気取られていたとすれば、貴女が戻るのは危険です。」


「そ、それは確かに。ですが。」



 自分が戻らないと、レアニールが危険な目に遭うかもしれない。物心ついてから今まで、ずっと傍にいてくれた大切な、姉のような存在だ。


 彼女がそんな目に遭うくらいなら自分が。



「おそらくですが、事の首謀者は、先にあなたをどうにかしようと考えるでしょう。」


「そ、それは何故でしょうか?」



「貴女が計画を破綻させる可能性があるから、ですわね。」


「私が、ですか?私にそんな事が出来るとは。」



 正直に言って、わからない。

 父への声も届かず。私が何の役に立つのか。

 伯爵令嬢という肩書も、衛兵につまみ出された時点で役に立たないと痛感した。



「そのあたりは、後々お話しますわ。

 そして貴女が戻らなければ、レアニールさんも貴女を探すでしょう。」


「それは、もちろん探してくれると思います。」


「ですから、あなたの居場所を突き止める為、事の首謀者はレアニールさんを泳がすかと。」


「そうなんですね。こういったこと、私は分からなくて。」


 それはそうですわね、と頷き。

 セラフィーナは話を進める。



「ひとまず彼女の、レアニールさんの事は、わたくし達にお任せいただけませんか?」


「はい。お願いします。」



 この方であれば。こんなにも優しくて、そしてあれだけ強ければ、きっとレアニールも護ってくれる。

 今はそう信じて、ミリエラは申し出を素直に受けることにする。



「セラ様。レジスタンスはどうします?

 反乱が起きる前に止めないとまずいですよ。」



「ええ。状況を改善するためにも、まずはお父様に掛けられた術の解呪ですね。」


「お、お父様が何をされたか、お分かりになるのですか?」


 セラフィーナの言葉は、父が変わってしまった理由に気付いている風で。

 ミリエラも今日、執務室で父と相対した時、確かに操られているように感じたが。


「確実ではありませんが。お話を聞いた限り、疑われるのは魔法による精神の支配ですね。」


「精神の支配!??」



「ええ。お父様の性格や領の運営は急激ではなく、徐々に変わっていった。急変による発覚を恐れたか。それとも。」


「そ、それとも?」


「お父様のお心がとても強靭だったため、時間をかけてじっくり刷り込みを行うしかなかったか、ですわね。」



確信したように話すセラフィーナ。


そういった知識の無いミリエラは疑問を口にする。



「で、では。ですが、人の心を操る魔法や技術など、あるのでしょうか?」


「そうですわね。簡単な魔法だとチャームがあります。ですがそれは、一時的に相手を魅惑するだけ。」



「は、はい。私もチャームは聞いたことがあります。ただ、その。」


「ええ。ご想像の通り一時的な魅惑では、お父様のようにはなりません。」



 ミリエラもその認識である。チャームは長くて数時間しか持たない上に、何度もかけると耐性が付くらしい。


 しかし父は、本当に性格が変わったように感じられる。

 魔法でそんなことが?



「三年近くかけて。しかも急激にではなく、徐々に性格が変わるとなると。」

「ソウルドレインで弱らせてから、マインドドミネーションで支配ですね。」



 横から話を聞いていたシェルンが口を出す。どちらもミリエラが知らない言葉だ。


「え?な、なんですかそれ?魔法、ですか?」


「そうなりますわね。ん、シェルン。お茶のおかわりをお願いしますわ。」


「はい。ミリエラ様のも熱いのとお取替えしますね。」


「あ、ごめんなさい。先に頂きます!」


「あらあら、慌てなくても宜しいですわよ。ごゆっくり頂いてくださいね。」




(すみません。横やりを入れてしまいました。)


(いえ。わたくしも貴女の考えどおりかと思いますわ。妻を亡くしたばかりの殿方なら、陥れやすいですし。)


 念話。思念伝達。


 長き時を共に過ごし、魂の深い所で繋がっているセラフィーナとシェルンは、いつからか言葉に出さずとも念話で会話できるようになっていた。


 お茶を頂く客人を尻目に、二人は状況を整理し。

 これからの方針についてやり取りを続ける。



(ミリエラ様、おかわいそう。

 三年前にお母様も。そして今、お父様も。)


(傷心の殿方を篭絡する。

 女性の魔法使いなら分かりやすい話ですわ。

 今回の件、三年前とは違う者が絡んでますわね。)



(確かに。聞く限りミリエラ様のお父様、とても高潔な方のようですし。あの件とは違うタイプですね。)


(余程フィルメリア侵略を正当化したいようですわね。わたくしの嫌いな手口ですわ。)



(私もです。ところでセラ様、これからどうされますか?ミリエラ様も。)


(ミリエラさんは、傷心の中、つらい事もお話くださいましたわ。それにお応えするのが淑女の嗜みですわね。)



(わかりました。私も全力でサポートします。

 反乱回避のための仕込みに、二日ほど独自で行動してもよろしいですか?)


(おねがいしますね。アセリア様にお会いする前に、この件は形を付けましょう。)



(ではその間、ミリエラ様はどうしましょう?

 私達が傍に居るのが一番安全かと思いますが。)


(そうですわね。ご本人の意向にもよりますが。

 できればわたくし達で保護するのが一番ですね。)



(ん~、せっかくだから、アセリア様にお会いするのに、協力してもらう、というのはどうでしょう?)


(協力ですか?何か良い考えがありまして?)


(はい。私たちで誘拐したことにしちゃうんです。)




(誘拐、ですか。なかなか大胆な発想ですわね。)


(貴族の御令嬢が誘拐されたとなれば、間違いなく騎士団くらいまでなら動くかと。)



(騎士団ですか。王国の膿を出すのが狙い。それはなかなかいい案ですわね。)


(ついでに災厄の魔女の名を出せば、あの評判の騎士団長様とも全力で手合わせできるかもです。)


(それはぜひ!シェルン、素晴らしいですわ!愛してますっ!)


(セラ様、相変わらずですね~。それはそうと、あとは)



(・・・・)

(・・・・・・)



(大まかな予定はこのあたりですわね。それと。)


(それと?)


(あなたが別行動の間、自衛以外の戦闘行動。並びに状況次第では魔力の二次開放を許可します。)



(よろしいのですか?)


(領都シェフィールドは既に彼等の手の内かと。どのような状況でも対応せねばなりません。)


(はい。それでは明日は)



(シェルン。明日の最優先任務。聖王国王女、セラフィーナとして命じます。)



 今まで一度も使っていない、しかも聖王国の王女という肩書での命令。

 自らが仕える魔女が発したその言葉を聞き、シェルンの中で何かが切り替わる。



(はい!何なりとお申し付けを!)


(明日は第一にレアニールさんの保護を。

 ミリエラさんの元へ必ずお連れしなさい。)


(御意!必ずっ!)




 多少いつもと違うところもあるが。

 これからの予定について、念話で会話を続ける二人。


 とはいえ、言葉ではなく心で伝えるのは高速であり、さほど時間は経っていない。




 お茶を飲み終えたミリエラは、二人が声なき会話をしているとは知らず声をかける。




「お茶、すごく美味しいです。これは何の茶葉ですか?」


「これはですね~、南西のメルシア共和国で採れる、そのままメルシア茶ですね。」



 嬉しそうに答えるシェルン。

 お茶は彼女の生き甲斐のひとつである。


「メルシア。ここからだととても遠い国ですね。私は行ったこともないです。」


「馬車で半年がかりですものね。留学か、それこそ嫁ぐときくらいしかなさそうです。」


 ひとしきりお茶の話題で場の空気を換え。


「お話を戻しますわね。シェルンの言葉通りだとして、これからどうするかも考えまして。」


 そういって居住まいを正すセラフィーナ。つられてミリエラも姿勢を正す。


「ミリエラさんのお考えにもよりますが。」


「は、はい。」



「わたくし達でよろしければ、最後まで貴女のお力になりたい。そう思いましたの。

 お父様をお助けし、街をもとに戻すために、ですわね。」


「え?セラフィーナ様がご助力くださるのですか?」



 突然の申し出に思わず喜びそうになり、そこで前のめりになりそうな気持ちを無理やり抑える。

 先ほどまでのやり取りで、既にこのお姫様然とした方は、ミリエラを助ける事を前提に話を進めていた。



 しかしセラフィーナ達にとって、まだミリエラの一方的な状況説明を聞いただけである。状況の真偽もしらべず、自分の言葉だけでそのまま協力とは。



 あまりにも都合のいい申し出が、かえってミリエラに警戒心を齎す。スラムで襲われかけたところを助けてくれたのは確かにセラフィーナだが。


(でも、あのタイミングで助けに来られたのは、なぜ?)



 そこで襲われた状況自体が仕組まれたことという可能性にも思い至ったミリエラ。


 もちろん、上空でふよふよ浮いて、チャンスを待っていたなんてことは知らない。確かにここまで、ミリエラにとって都合よすぎるようにも感じられる。

 だが、憔悴しきった自分に優しく接してくれて、泣いている自分をずっと見守ってくれて。



 助けを乞うべきか、警戒すべきか。自身の気持ちに揺らぎが生じ、思わずセラフィーナの様子をうかがってしまう。


(変わらない微笑に、とても優しく包み込むかのような雰囲気。こんなに暖かさを演技で出せるものなの?)



 先程全てを打ち明けることにしたのも、常にミリエラを案じ、慈しむように接してくれたこの方を信頼すると決めたからのはず。それにこの状況で、自分一人でできる事など、何も思いつかない。



 そんなミリエラにとって、セラフィーナの申し出はとてもありがたい。相手を疑う事をしないのであれば、すぐにでも申し入れを受け入れるべき状況だ。

 ただ、それでもやはり確認すべきことはある。



 この方がなぜ私を助けるのか、何が目的なのか。



「ミリエラさん?」




 よし、既に一度信頼すると決めた。

 そしてここまで話が進んだ。


 ならばもう、疑うのではなく、包み隠さず思ったことを全て話してみる!



 気持ちを固めたミリエラは、セラフィーナの目をしっかりと見据えて切り出す。


「その、今日出会ったばかりの。それも何の関係もないセラフィーナ様に、見返りもなくご助力を頂いてもよいのか、と思いまして。それに。」



 そこで一度言葉を切り、失礼に当たるかもしれない、気分を害するかもしれないという気持ちを押しとどめる。




「それに?」


「私を助けて下さった事や、こうして私のお話を聞いてくれたこと。今思うとすごく出来過ぎていて。まるで。」


その言葉を聞いて、セラフィーナはその笑みを深めた。



「まるで、あなたの事を陥れるために、わたくしがスラムでの件を仕組んだかもしれない、と思われたのですね。」


「はい。助けて頂いた方に対して失礼な事は、重々承知しています。」


まっすぐセラフィーナの空色の瞳を見つめ、話し続ける。


「ですがこのような状況で、これほど幸運に恵まれるというのも信じられなくて。」



 あなたが罠にはめたのではないか?と正面から確認されたも同然である。しかしそれを聞いても、セラフィーナは気分を害した風でもなく。



「そうですわね。そう考えられるのも当然ですわ。」


 変わらぬ優しい表情で頷く。その姿をみて、ミリエラはさらに言葉を続けていく。



「でも、セラフィーナ様がそんなことをする理由も分かりませんし、私にとても優しく、暖かく接していただいて。」



 既にここまで、その優しさと暖かさには今日だけでも何度も救われている。


「だから、セラフィーナ様がなぜご助力下さるのか。」



 セラフィーナは無言で頷き、先を促す。



「あそこで何をされていたのか。何か目的があるのか。

 出来ればそれをお聞かせいただきたく。」




 疑うのではなく、真実を求める。

 ミリエラという人物の誠実さに、セラフィーナもひとつ、心を決めた。



 この子なら、大丈夫。そう確信して。


ほんの少しだけ、セラ様とシェルンのネタばらし。

セラ様はバトルジャンキーではないはずだけど、気が付いたらこんな性格に…


それにしても、魔法とか、かっこいい名前考えようとしても厨二感満載になるだけで…

諦めてストレートに和声英語とかそのままにしてるので、薄っぺらいですね^^;

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