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6-6:セラ様行動開始!

「な、なるほど。たしかにおじいさまの事をよくご存じですね。」


「ええ。あの御仁は王宮で話をしている時はずっと及び腰だったのに、戦場に連れて行った途端にとてもお元気になって。」


「ストラス様、本当に突撃しちゃいそうでしたもんね。法王様が先陣切って吶喊とか、見ててなかなか爽快でしたよー。」


 クリス王女と、ついでにシスターグレイスが落ち着くために少し間を置いてから、セラフィーナとシェルンが最初にお話をしたのは昔話。


 本当に目的の人物なのかという疑いを払しょくするため、クリス王女に分かるように、おじいさまの話題を最初に話し出した。


 その法王は魔法に長けた武闘派の人物だったため、隣国との争いを停めるという選択肢を取れない人物だったのだが。


「わたくしの威圧に兵の皆様は為す術もありませんでしたが、あの方は気力で耐えましたからね。立派な御仁でしたわ。」


「い、威圧・・・ですか?」


「ええ、こうみえて、わたくしとても強いですわよ。」


 お転婆王女から見れば、線の細い深窓のお姫様。そんな雰囲気のセラフィーナがとても強いと言い出して、そのギャップに混乱する。


 確かにおじいさまから聞いた話では、かつて隣国との戦を仲裁して、延々と続く戦火を消した方はとてつもない力を持っていた、とか。


 傷ついた兵たちをストラシャペルから見て敵も味方も問わず、とんでもない範囲を同時に癒した、とか。


 この人物の見た目だと、その癒したという話の方は納得できる。


「それで、わたくしが貴女のおじいさまと知り合いで、お探しの方だという事はご理解いただけましたかしら?」


 慈愛の微笑で、とても信じられない事を聞いてくる。


 だが聞いた話も、宿屋の主人の反応も、全ては25年前にこの国と隣国を救ったものという事を示していた。だからもう仕方なく。


「に、俄には信じられませんが。ですがお話しいただいた内容や今の状況から、それが事実と、今は納得しておきます。」


 クリス王女は自分の感情を置いておき、話を進める事にした。


 そこからはまた、王女の話になるのだが。


「えっとね、グレイス。申し訳ないのだけれど、貴女には席を外してほしいの。まずはこちらのお二人にお話を聞いて欲しくて。」


 少し申し訳なさそうに、シスターグレイスに願い出る。


 シスターは少し思案して。


「はい。承知いたしました。では私は外でお待ちしてますね。」


 王女の申し出を素直に受け取り、外へ向かう。


 そこで宿屋の主人、の父親パーシルが、さすがに外で待たせるのは忍びないと宿内で場所を用意して、一緒に離席してくれた。


 このノースチャペルで政務をするシスターすら離席を求めるのだから、一国民が聞いていい話ではないという判断である。




―― 二人が離席して。


「それで、えっとこちらのお二人は?」


「わたくしの大切な、信頼できるパーティメンバーですわ。」


 クリス王女は先ほどまでのやり取りで、セラフィーナとシェルンがお願いを伝えたいという探し人だという事は理解はした。

 おじいさまからも二人の若い女性だと聞いている。


 ただ、その二人以外に、もう二人の女性。しかもまだ一人はフードを被ったままという状況で、信頼できると言われても・・・。


「ね、お二人とも。クリス王女様の素性も聞いてしまいましたし、ここで繋がりを作った方が後々よさそうな気がしません?」


 なんとなく疑念の眼差しを向けるクリス王女の気持ちを汲み取り、シェルンが変わらず人懐こい笑みで提案する。


 セラフィーナも「そうですわね。」と同意する。


「繋がりですか?それはどういう・・・」


 ますますわからないという顔のクリス王女の前で、アセリア姫がフードを取って顔を出す。


「え?」


 その姿を見て、また言葉を失うクリス王女。


 セラフィーナとよく似た面影の、それでもどことなく元気というか、若々しいというか。幼さ?を感じさせる、もう一人の人物。


「ふふ。よく似てますでしょう。この子はわたくしの妹で」

「セラ様、嘘はダメですわ。」

「う・・・」


 セラ様の言葉を速攻で遮るアセリア姫。敬愛しているしとても大切な人だけれど、1800年以上生きてる人の妹というのはちょっと・・・。


 姫の言葉にちょっぴり悲しそうなセラ様は置いておき。


「クリスティン様、初めまして。わたくしはフィルメリア王国第一王女、アセリア・エル・フィルメリアと申します。」


 立ち上がり、優雅に一礼して見せる。旅をするための装束ではあるが、その振舞いは王女としての気品に満ちたもので。


「あ・・・アセリア王女様って。あの原因不明の疫病を壊滅させたという、現代最高の魔法使いと言われている、あの!?」


 今現在、各国からお相手候補が乱立している言われている、今世最高のお姫様。この時代、間に2国も挟んでいればほとんど国交は無いのだが、それでも噂が伝わってくるほどの人物。


 もちろん王族として、クリス王女もその存在は知っているが、アセリア姫の場合は王族として以上に、その偉業が有名である。


「いえ、まだまだ未熟ものです。今はお忍びでセラ様と共に旅を始めたところでして。まさかこうしてこの国の王族の方にお会いできるとも思ってはおりませんでしたが。」


 右手を差し出し、微笑んで。


「遠い国ではありますし、正式な形ではございませんが。よろしければ今後を考え、友誼を結んでいただきたいと、そう思いますの。」


 それはクリスとって、とてもありがたい申し出。


 ストラシャペルの周辺国は北のラグラシア連邦と東のキャスタブール魔法王国、そして南のマルス共和国の三国。


 それぞれの王家と交流はあるが、先代まではキャスタブールと戦争していた国でもある。各国の目はそれほど友好的ではない。


 例外的にキャスタブールは兵士と国王同士が和解している為、未だ悪感情を持っているのは戦地を知らぬ上級国民くらいだが、それ以外の国はやはり、戦争をしていた国家とはある程度距離を置いている。


 そこへ来て、疫病の撲滅という世界的に見ても平和に貢献してるとしか見えない偉業を成し遂げたお姫様。

 しかもその国は他国への侵略を一切しない、平和主義国家。


 そんな国と友好を結べれば、それはストラシャペルにとって非常に大きな意味を持つ。


「は、はいっ!あ、申し訳ありません。神聖ストラシャペル法王国、27代法王の娘、クリスティン・カーディナルです!」


 快活でお転婆なお姫様から見れば、その実態を知らないアセリア姫は深窓のお姫様そのもの。

 手を取り握手して、とてもお淑やかなお姫様なんだろうなぁ、なんて勝手に想像する。


 二人が互いにしっかり挨拶したのを待って、隣に控える剣士も立ち上がり、一礼してから自己紹介する。


「クリスティン王女、初めまして。私はフィルメリア王国騎士団、筆頭騎士団長のセティス・エル・クレーディアです。今は姫の近衛騎士として、そしてセラ様の供として同行しております。よろしくお願いします。」


 その自己紹介にも、また驚く。クリスにとって遠い国ではあるが、姫君の偉業と共に、その武勇が遠い国まで届いている騎士団長。

 そんな人物までなぜこんなところにいるのかは分からないが、こちらもしっかり握手して礼を交わし、一通りの挨拶を終えて。


「あ、あの。フィルメリアのお方がなぜ、その。貴女方と共にわが国にいらしているのですか?」


 至極当然の疑問をもつ。


「そのあたりは追々。これで自己紹介も済みましたし、二人が信頼の置ける人物とご理解いただけたかと思いますわ。ですからまずは、貴女のお話をお聞かせください。」


 セラフィーナの言葉にクリス王女も頷いて、そこからは一度パーシルにも伝えた話を進めていく。


 弟の思想が好戦的になっていること。


 吹き込んだのは恐らく、ノースチャペルのマイアス司祭であること。


 ただその人物が、クリスから見ても決して悪人に見えないこと。


 一通り掴んでいる話を伝え、そこから本題に。


「このままいけば、弟がこの国を継いだ時、再びかつてのような戦争を仕掛ける国となりかねません。」


 クリス王女の懸念は、今ではなく未来。諫められたあとは出来る限り隣国と友好を深めようとした祖父と、その方針を継いでいる父。


 だが争いを好むように吹き込まれているとしか思えない弟が国を動かした時、今の平和は崩れ去ってしまうかもしれない。


「なるほど。それでかつて戦を鎮め、両国を取り持ったというセラ様を頼ろうとしたわけですね。」


「はい。ですがおじいさまのお話では、ノースチャペルの一般宿で長期滞在されていたとしか聞いておらず。」


 動き始めてからは何度もノースチャペルを訪れ、その度に情報を集めて宿を絞り込んでいき、ようやくたどり着いた『北の最果て』。


 だがそこを訪れた時には、既に廃業していて。


「それで半ばあきらめていた所を、貴女方にここをお教えいただいて。いえ、ご本人などとは全く思っていませんでしたが。」


 あまりにも偶然な出会いに、宗教国家の姫君であるクリス王女は、これこそが神の思し召し、なんて割と本気で考えている。


「んー。話だけを聞くと、なかなか今回も調査が大変そうですねー。まあそれは私のお役目ですが。」


 一通り聞いて、最初に口を開いたのはシェルン。セラフィーナの責務、戦争の火種を潰して全国を巡る中で、情報収集はつねにシェルンの役目である。お姫様は高貴過ぎて使い物にならない。


「アセリアもセティスも、さすがに調査は厳しいですねー。今回も私が全力で頑張る感じですね。」


 内政能力とか統率力とかは非常に高い二人も、調査には不向き。アセリア姫はセラ様と同じで高貴過ぎるし、フード姿は怪しまれる。


 セティスはにじみ出る強者感ゆえにフィルメリア国内ならばいざ知らず、他国での聞き込み調査は非常に厳しい。


「あ、あの!シェルンさん、仮にもフィルメリアの王女様と騎士団長様を呼び捨てというのは、それはちょっと。」


 ここでお転婆姫様が、自分よりも明らかに年若そうに見えるシェルンに物申した。一応話の流れでセラ様のお供と理解はしているが。


「あ、そこ気にしなくて大丈夫です。なかよしなんで。」


 そんな言葉にも全く憎めない、とても人懐こい笑顔で返される。仲良しの一言で片づけていい問題でもない気もするが。


 出会ったばかりで知らないことだらけだが、謎が多い四人である。よくよく考えればフィルメリア王家というのもそこまで信じてしまっていいものか分からない。

 ただ、セラフィーナがかつて国の問題を解決した人物というのは宿屋の主人が保証してくれるし、今はこの人に頼るしかない。と思う。


 そしてなにより。


「あ、あの。私の話をそこまで疑いも無く、信じてもらえるのですか?」


 四人は話を聞いて、そこに一切疑いを持たず、聞き終わったらすぐに調査をどう進めるか、といった話を進めている。


「あら?貴女のお話は、どこかに疑う要素がありますの?」


 聞いてみれば、逆に問い返され。


 なんで初対面で、しかも自分の弟が何かをしでかしたわけでもなく、思想がおかしくなっているというだけの話。

 色々と質問されるかと考えていたクリス王女は拍子抜けしてしまう。


「なんか思ってたのと違いますね。アセリアの話では、とてもお転婆なお姫様って聞いてましたが。」


「え!?」


「ちょ、ちょっとシェルン!お転婆なんて言ってません!ただ幼少の頃はとてもお元気だったと聞き及んでいるだけですっ!」


 どうにも、自分についても何かしらの情報を持っているっぽい。


 それも、なんというか恥ずかしい方向で。


「あ、あの。今のは。」


「いや、小さなころはとてもお元気と聞いてましたし、今もたしか神殿の皆様をとても困らせてましたよね。だからもっとお転婆な王女様かと思ってましたが、とても丁寧ですし思い違いかなと。」


 ・・・。


 なんだろう。周りからはそう思われているのだろうか。


 そんな事ないはず。最近は控えめだし。狩りとか行ってないし。


「そういえばさっき、弟さんのお部屋に忍び込んだってお話もありましたよね。やっぱりとてもアグレッシブなお方?」


「え!?あ、いえ、そんなことは。」


「そういえばここに来る道中で小さな子に呼び止められた時『だーれがおばちゃんですか!』って迫力ありましたよね。」


「み、みてたんですかっ!??」


 なぜか、追い詰められている気持ちになってきた。


「ねえシェルン、クリスティン様がお困りですよ。仲良しになりたいとしても、もう少しオブラートに包んだ方がよろしいですわ。」


 え?それ面と向かって話してる時に言う?


 というか、なかよしになりたい??


 だんだん混乱してきて、この人たちが一体何を考えているのかもよくわからなくなってきて。


「まあまあ。ひとまずクリスティン様の懸念を解決するのが第一でしょう。それにセラ様、もし懸念通りだとすると。」


 セティスが落ち着かせるように口を挟む。


「ええ、わたくしの責務になりますわね。お話頂いた内容に嘘偽りは一切ありませんし、クリスティン様の杞憂であればよいのですが。」


 それをセラフィーナが引き取って、その言葉にはクリスを一切疑ってないという言葉もしっかりと織り交ぜる。


「そ、その。なぜ私の言葉をそう簡単に信じられるのです?」


「わたくし、人が嘘をついているかどうかは、だいたいほんのりと分かりますの。貴女はとてもお元気ですが、綺麗な心をお持ちです。」


 あなたの事は、分かってますよ、という感じで。


「それに先ほどのシスターも、嘘偽りは出来ない方ですね。」


 クリスが渋々疑っているシスターグレイスについても、全く疑っていないようである。


「さて。こうなるとやはりシェルン頼りですね。それとシスターさんにも手伝って頂きましょう。」


 そのままどんどん話を進めていくセラフィーナ。

 だがシスターグレイスは、クリスの中ではまだ白に近い灰色。


「それはちょっと。グレイスはノースパレスの者です。もし仮にマイアス司祭が弟に干渉しているとして、彼女は立場上その部下。そうなると疑ってかかる方が良いかと思います!」


 あまりにも性急な進展に、クリスは自分の中でわだかまっている懸念をしっかりと伝えてみる。だがその言葉に対し。


「あの方は潔白ですわ。おそらく物心がついてから、一度も嘘はついてませんもの。そんな方が貴女に隠し事をするわけがありません。」


 ここでも断定するように、シスターグレイスを白だと言われる。


 あまりにも早く話を進める姿に、この人はいったい何が見えて、何が分かっているのだろうと、少し疑念が湧き始めるクリス。


 ただ、それも次の一言で。


「ではシェルン、ノースパレスをお任せしますわ。わたくしは城の周辺を探ります。早ければ今夜中にでも手がかりは見つかるでしょう。」


 え!?この人もう、ココだけじゃなくセントラルパレスも調査をはじめようとしてる?この少人数で?


 疑念が不安に変化する。この人、行動が速すぎる。


 放っておいたら、自分の知らない所で話が進んでしまいそう。


 そんなクリス王女の懸念をよそに、


「そうですねぇ。アセリアとセティスはどうします?」


 今度はシェルンがのんびりした雰囲気で確認する。


「わたくしは、そうですわね。クリスティン様、よろしければわたくしにこの国の事を、色々とお教えいただけませんか?」


 フィルメリアの王女と名乗った少女は、クリスとの対話を望み。


「もちろんわたくしはフィルメリアについて、出来得る限りお話しできることをお伝えしますわ。」


 両国の情報について相互交換を提案し始めた。


「私はアセリアの護衛として共に居よう。クリスティン様が神殿に戻られるなら、そこまでの護衛にも付こう。」


 騎士団長を名乗った者は、勝手に護衛を始めようとする。


 いや、有名な方だけれど。護衛を付けなかったことについては、さっきグレイスにも釘を刺されたけど。


 実はクリス王女は、自分の実力にはちょっと自信があった。


 魔法はずっと鍛錬しているし、こっそり剣技の訓練もしている。


 だから襲われても何とでもできると、本気でそう思っている。


「え、えっと。もう動き始めるのですか?私の話は」

「あら、まだ続きがありましたの?ごめんなさいね。」


 その一言で、ようやく動き出そうとしていた四人が止まる。なんだか本当に、何かしらの行動を起こすつもりでいたようである。


「い、いえ。続きというほどでは。ただあまりにも性急に動こうとされてますので、少し不安が湧きまして。」


 放っておくとどんどん置いてかれそうなので、もうこの際、正直に自分の胸中に在る不安を表に出す。


「ですからもう少し落ち着いて、今まで得られた情報を吟味して。」


「マイアス司祭様に被疑があることと、弟君が何者かに話を吹き込まれている、というのは事実ですわよね。そこにまだ情報はありますか?」


「い、いえ。先ほどお伝えしたのが、私の知る全てです。」


 伝えられることは、確かに全部伝えた。でもそれだけを鵜呑みにして動くのは、あまりにも早すぎて、何か見落としてそうで。


「ではこうしましょう。貴女はそのお考えも含めてアセリアと情報を交換してください。その間にわたくし達は、先ほど聞いた話から思い至る点について、先に調査をしておきますわ。」


(それに、前に来た時はまだ若かった現国王も、わたくしの事はご存知ですからね。直接お話した方がはやいですわ。)


 現国王。ストラス・カーディナル27世。


 25年前に前国王を諫めた時に、外見年齢はセラフィーナよりほんの少しだけ年上に見えた青年。


 息子に仕事を継いだパーシル同様、今はもうクリスティン王女という大きな子を持つ親でもある彼に、どこまで気付いているかを直接聞く。


 この国の問題は、この国のトップに報せた方が速い。


「それでセラ様、あのシスターさんにはどう動いてもらいます?」


 クリス王女が懸念している人物の話が出ると。


「そうですわね。シェルン、貴女の調査するノースパレスで、現地諜報員として動いてもらいましょう。彼女相手なら心ぐらいモノを持つ者たちでも、少しは油断するでしょう。」


 クリス王女の懸念もぶっちぎって、直接関わらせるつもりのようで。



 結局クリスの不安はそのまま残し、セラ様一行は本来の目的もそっちのけで、情報収集をいそしむのであった。



「わたくしの責務は、戦争を起きないようにすることですわ。わたくしの本来の目的は常にコレですわっ。」


「セラ様、それ誰に向かって言ってます?」


ちょっとまとまりが無いので、余裕がる時修正するかもしれません。

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