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6-2:ノースパレスのトラブル

この場を借りて。

誤字報告をくださった皆様、ありがとうございます。

本作は執筆時間があまりとれておらず、現状ほぼノーチェックで投稿しており、大変助かります。

「我らはこの世界、この地に生まれ、共に生き、共に過ごし、そしてこの地に還ります。

 魂は我らの内にあり、外にあり、世界と共に・・・」


 大理石の柱に、美しいステンドグラスと高い天井。


 荘厳な雰囲気が漂う礼拝堂の中、落ち着いた男の静かな、しかし礼拝堂内に行き渡る言葉だけが響き続ける。


 セラフィーナ達が街の中央にある神殿、ノースパレスに到着した時、既に朝の礼拝は始まっていた。


 礼拝堂には多数の礼拝客が訪れ、神父と思しき人物の言葉を目を伏せて静かに聞いている。


(わたくし達は信者ではありませんし、途中からお邪魔しては悪いですわね。礼拝堂の見学はあとに致しましょう。)


 セラ様の言葉に三人は頷いて、広大なノースパレスの中を、観光客のように見回しながら歩みゆく。


 宗教国家の神殿でもあり、街の行政機関でもある建物は白亜の大理石を中心に、白基調に複雑な彫刻が刻まれた柱が並び立ち。


 床には赤に金の縁取り、刺繍が施された絨毯が一直線に伸びて、廊下を行きかう人々の足音をかき消している。


「とても美しい建物ですね。わたくし近隣諸国へは、何度か公務で訪れておりますが、この国の建築様式は初めて拝見しましたわ。」


 そもそもあまり宗教色が強くないないフィルメリア。国として特定の神を信仰するようなしきたりはない。


 それゆえ教会や神殿といった建物もあまり存在せず、王宮以外に大きな建物もそれほど多くはない。


 そんな国の姫君は、自国よりも遥かに優れた建築物、ノースパレスの素晴らしさに心奪われたように辺りを見回す。


「これほどの建築物が、これほどの規模を誇る。ストラシャペルの建築技術はすさまじいな。」


 セティスもアセリア姫同様周りを見回しながら、フィルメリア城よりはるかに巨大な、重厚で美しい神殿に感心する。


 一方、この国に前回来たのは25年程前と、割と最近来た二人は当然しっかり覚えているので、初見の感動はまるでなく。


 25年。普通に考えればかなりの時間ではあるが、永遠を生きる姫君とその侍女にとっては、まだつい最近という感覚。


「ここはほとんど変わりませんね。人々も世代交代はしてそうですが、服装はあまり変わり映えしませんね。」


「そうですわね。ストラス教の信者様は皆、神殿では白の服に黒の上着、見分けがつきませんわ。」


 礼拝に訪れている者たちはだいたい出で立ちも同じで、セラフィーナには誰が誰だか分からない。


 知っている人がいても、たぶん見分けがつかないだろう。


 ただその中で。


「シェルン、気付いていますか?少し何かあったようですわ。」


「はい。表沙汰にはならないようにしているようですが、明らかにトラブルが起きていますね。調べますか?」


 災厄の魔女をやめてから1000年以上、人々と接し続けているセラフィーナとシェルンは、空気感には非常に敏感である。


 物静かな神殿をゆっくり見学していた歩みを止め不審にならない程度に周囲の状況を確認し、焦っているような空気を感じ取り。


 見た目としては何も変わらないまま。セラフィーナが周囲を監視するように、魔力検知を発動する。


 当然二人の雰囲気が変わった事を、アセリア姫もセティスも感じ取り、広大な建物の各所を繋ぐ広い廊下で端に寄り。


「セラ様、シェルン。どうされましたか?」


「詳細は分からないけど、何かあったみたいですね。お二人も気配を感知すれば分かると思いますが。」


 シェルンの言葉に、二人は周囲の気配に気を配り。


「これは、上の階ですね。かなり慌てているような。」


「戦闘という雰囲気ではないな。どちらかというと捜索か。方々で何かを探しているように感じられる。」


 セラ様とシェルンはおいておき、人としてはとっくに規格外の二人もすぐに状況を察知する。


 ただその目的が何なのか、雰囲気はつかめても原因は分からず。


(ん。あの方がよさそうですわね。シェルン、彼女に。)


 セラフィーナはこの状況に危うさを感じ取り、周囲にいる人々の魂を視て、比較的透き通った神殿の関係者を探し。


 神官服を身に纏った一人の女性、まだ年若いシスターに状況を確認するよう、シェルンに内緒話・・・念話でお願いする。


(はい。聞いてきますね。)


 シェルンも念話で答え、ごく自然な雰囲気を装ってそのシスターへと近づいていき。


「あの、すこしよろしいですか?」


「え!?はい!あ、観光で来られた方ですね。どうされましたか?迷子にでもなられました?」


 シスターの第一声に、思わずぷふっと笑うセラ様。たしかにシェルンは子供には見えないが、その面立ちは幼さも残し。


 それでも迷子と間違えられるとは思っておらず、つい吹いてしまった。シェルンに分かるくらいの声で。


「いえ。私こうみえて18ですから。迷子というわけではないのです。」


「そ、それはもうしわけございません!」


 少し困った笑顔のシェルンに、慌てて謝るシスター。


 表向きにはにこやかにお話しつつ、裏では。


(ちょっとセラ様!今笑いましたよね!?)


(え?い、いえ。そんなことは・・・)


(聞こえましたからね。まったくもう。あんまり笑うと今日のおやつは抜きにしますよ。)


(そ、それは!!ごめんなさいシェルン。おやつ抜きは勘弁してください!)


(まったく、どっちが子供ですか・・・)


 しっかりセラフィーナに釘を刺す。


 とりあえずそれはおいておき。


「いえいえ。顔立ちが幼いとはよく言われますから。えっとそれでですね、お聞きしたいことがありまして。」


「はい。観光のご案内でしょうか?」


「いえ、なんだか神殿の中が慌ただしく感じまして。もしかして、何かお困り事でも起きていませんか?」


 特に取り繕う事も隠すことも無く、気になったことをどストレートに確認する。


 もちろん初対面でそんなことを言われても、聞かれたシスターはどう答えればいいかもわからず。


「あっ!い、いえ。そんなことは。」


 表向きは何事も無いように、否定の言葉を口にする。


 シェルンは普通はそういう反応になりますよねー、なんて思いながら、笑顔のままでシスターの挙措をばれない様に観察する。


 セラフィーナがそのシスターに聞くこととした理由を、最初からしっかり分かっているから。


 誰に聞くかをセラフィーナが選び、それをシェルンに任せる。


 その場合、だいたい純真な人物を選ぶ。


 透き通った魂の持ち主であれば、その人物は良くも悪くもあまり嘘が得意ではない。


 例え話してはいけない事であっても、信徒に気付かれないように振舞っていても、そのことに直接触れれば反応が見れる。


「実は私達、冒険者パーティなんです。突然ではありますが、もし困ったことがあればお力になりますよ。」


 シスターの反応に、間違いなく何か困りごとがあると判断したシェルンは、さも当然のように人懐こい笑顔で話を進め。


 もちろん初対面の人にいきなりこんなことを言われてもお願いする人は普通いないので。


「あ、ありがとうございます。本当に大丈夫ですから、あまり気になさらず、ゆっくりと観光をお楽しみくださいね。」


 シスターは明らかに緊張と焦燥を織り交ぜた気持ちを隠し、シェルンに一礼して歩み去る。


 その姿はどこか急いでいるようにも、逃げているようにも見え。


「って感じみたいですねー。」


「一般の方には知られてはいけない問題が発生中、という事ですわね。それもかなり火急のようですわ。」


 戻ってきたシェルンの言葉に、セラフィーナも頷いて。


 だが二人の会話は流石に色々端折りすぎていて。


「セラ様。火急とは?それに今ので何がお分かりなのですか?」


 とりあえずセティスは分からないまま聞いてみる。


 その質問にセラフィーナは。


「いえ、特に何も分かりませんわ。」


「はい?」


 分かったようで、全く分かっていなかった!


 少し肩透かしを食らったようなセティスだが、そういえばセラフィーナ様はそういう方だった、という事も思い出す。


 ただもちろん、セラフィーナは無策ではなく。


「分かりませんが、先ほどの方は何かをご存知というのは確かですわ。ですから彼女の行動を追えば、何かはつかめますわね。」


 いつもの微笑で、優しい口調で。


 セラフィーナはいつでもどこでもトラブルウェルカムである。


 もちろんトラブルそのものはない方がいいが、トラブルがもし身近で起こるのであれば、基本的に首を突っ込む。


 ここ500年はそうやって、様々な問題を解決してきた。


 子供がおもちゃを無くしたという、大人にとっては些細な問題でも、その子にとっては重大な問題を解決したり。


 付き合っていた彼女に振られたと落ち込んでいたのを慰めるも、結果セラ様に惹かれたその男のフラグをへし折ったり。


 悪徳貴族の裏情報に辿り着き、とある国の一地方領主を左遷させるような結果を齎したり。



 国家同士の争い、戦争の勃発や拡大を、未然に防いだり。



 戦争の火種を消す。



 セラフィーナの根幹にあるその行動理念は、小さなトラブルや噂を放置しないことが重要と、長い人生で理解している。


 そして今回は宗教国家であるストラシャペルの中核でもある、神殿内で発生している何らかのトラブル。


 それは決して放置してはならないものと、直感で気付いている。


 セラフィーナはその判断の元、先ほどシェルンが話しかけたシスターの存在を、自身の鋭敏な感知能力で追い続ける。


 フィルメリアから海を挟んだ向こう、シュタイムブルグから遠隔人形を操作していたファウストすら追跡した感知能力である。


 同じ建物内でどこにいるかを掴む事など造作も無い。


「それでは少し、あちらの中庭に参りましょうか?」


「あちらに何かあるのですか?」


 突然提案したセラ様のお言葉に、何かがあれば私が力になる!と内心やる気になっているセティスに。


「いえ、お天気はそれほどよくはありませんが、あちらのお庭は綺麗ですから。」


 また肩透かし。のような言葉に続き。


「セ、セラ様!」


「最後まで聞いてくださいね。綺麗ですから、神殿内の状況が把握しやすいですわ。中心ですから動きも取りやすいですわね。」


 すでにシスターが神殿の一区画、二階にある行政区画へと向かったことに気付いているセラフィーナは、中庭に監視の場を移す。


 中心だからというよりは、本当にいざという時、屋根があると飛び立てない、というのが一番大きな理由である。



―― その監視先。


 街の行政区画にあるひとつの部屋で、会話する二人がいて。


「すみません。アルフレート大司教はまだお戻りには?」


「ああ、神殿内は10人がかりで探しているがまだ見つからん。アルフレート様は3人ほど連れられて、街へ出たままだ。」


 朝イチと変わらない状況がやり取りされる。


「そうですか。どうも観光に訪れている冒険者が、神殿内の慌ただしさに気付かれたようでして。」


「それはマズいな。街に出られていたらどうしようもないが、出来る限り表沙汰にはしたくない。」


 報告内容に少し焦った雰囲気になる男。


「あの、クリス様も?」


「ああ、まだ見つからん。クリス様が使われていた部屋にも、どこに行ったか分かる様な手掛かりはなさそうだ。」


「そうですか。マイアス司祭も礼拝堂のお勤めをできる限り早く終えて、捜索されると仰っていました。」


 二人の会話が続き、クリスと呼ばれた者の身を案じ。



―― 少し離れた、中庭で。


「なるほど、クリス様、という方がお姿を消されて、皆様で探されている、という事ですわね。」


 セラフィーナが小声で囁き、近くの三人も頷く。


 実はシェルンがシスターに会話している間に、セラフィーナは短距離通信の魔法をシスターにこっそり仕込んでおいた。


 アセリア姫の春紫苑の輪舞(アスター・ロンド)を見せてもらった時に使った、離れていても会話できるアレである。


 当然音声は一方通行にした。じゃないとこちらの会話がシスターに聞こえちゃうので。


 魔法そのものも見破られないよう隠蔽して、シスターの肩に。この世界ではありえない、盗聴マイクを付けた感じである。


「アルフレート大司教というのは、おそらくこの街を治めている、中央から来られた方ですわね。」


「ですね。それとマイアス司祭というのは、たぶん礼拝堂にいた司祭さんですね。」


 その盗聴マイク・・・通話魔法越しに会話に出てきた名前から、セラフィーナとシェルンはそれぞれについて推測する。


「セラ様とシェルンは、あれだけで分かるのか。」


「お名前と肩書だけで、そこまで分かるものなのですね。」


 分かっている二人に、分からない二人が感心する。


 セラフィーナとシェルンはかつてこの国に来た時に、この国の政治システムはおおよそ把握している。


 東西南北の街を治めるのは、それぞれの街に派遣された大司教。


 その下に司祭が1~2名付き、ストラス教の司祭として役割を果たす傍ら、政治の面でもサポートする。


 行政機能と宗教機能が一体となった宗教国家。治世を担当するのはフィルメリアのような貴族ではなく、司祭や聖職者となる。


 先ほど話を聞いたシスターもそういった、行政にも携わっているひとりであろう。


「ええ。以前この国を訪れた時に、この国の統治や宗教についてはおおよそ把握しておりますわ。」


「この国は宗教国家なので、大きな街は大司教が管理する形なんですよねー。フィルメリアで言えば侯爵様みたいな位置づけです。」


「なるほど。では捜索されているクリスという者は、この街のトップですら捜索に乗り出すほどの者か。」


「姉様が直接捜索に当たるようなものですね。」


 会話に出てきた名前と立場を一通り聞いて、セティスが思ったことを口にして、アセリア姫も頷き。


「それにしても、ストラシャペルのクリス様・・・わたくしどこかで聞いた記憶がありますわ。」


 フィルメリアのお姫様は立場上、各国要人と話をする機会も多いし、直接の面識が無くとも知識として知っている者が多い。


「わたくしは存じませんわね。一応この国の法王様、ストラス・カーディナル26世とは直接の面識がありますが。」


 前回この国に来た時に、直接面会した法王。


 ストラス・カーティナル26世。


 国のトップを務める法王は基本的に同じ名を受け継ぎ、セラフィーナが会ったのは26代目。


 1000年以上続く、長い歴史を持つ由緒ある国である。


 もっとも面会というか、セラフィーナが諫めたというか。


 隣国キャスタブール魔法王国と小競り合いを度々繰り返し、両国の民を無駄に消耗していたのがちょうど前回の訪問時。


 片や世界は神々が治めるモノと、宗教国家らしい主張の元に相手国の考え、正義を悪と見做し。


 片や魔法という具現化されたものこそが全て、神の力とは魔法そのものという主張から、宗教国の正義と真向から対立して。


 結果的には双方が信じるものが違うだけ。それでも国の意向、人々への偏った教育で多くの民が命を失う。


 そんな、信じる神の違いから、長きに渡り争う二つの国。


 かつて本当の絶望を味わって、全てを失って。


 神々など存在しないという結論に達しているセラフィーナにとっては、それが理由で人の命を失う等、とても見ていられない。


 それからセラフィーナは民を護る為に両国を奔走し。


 両国のトップを空間転移で戦場まで連れて行き。


「あなた方の仰る神などおりませんし、魔法もただの技術です!」


 と、自身の正論をぶちかました上で金色の力を以て双方の攻撃を全て無効化し、更に圧倒的な範囲の兵を癒し、安らぎを与えて。


「神が実在するというのでしたら、魔法が神というのなら、わたくしの力を越えて見せなさいっ!!」


 子供のケンカを力尽くで仲裁する感じの、脳筋な解決法ではあったが、その行いは両国の兵達に絶大な支持を受けた。


 誰一人傷付けることなく、重傷者を含む多くの兵たちを全て癒すというそれこそ神の偉業を見せつけ、皆を救ったからである。


 結果両国の兵はなんとなくセラフィーナの信奉者となってしまい、民同士が分かり合うという結果を齎し。


 要するにセラフィーナは長きに渡る二国間の争いに、終止符を打たせた張本人である。


 もちろんセラ様はその後、両国の王ともしっかり対話し、その上でそれぞれの国に滞在して、国の内情も把握した。


 したのだが、その情報は四半世紀前。


 セラ様から見れば最近でも、実際には結構前である。


「セラ様、この国の法王、今は27世です。たしか4年前に先代の国王が崩御されて、代替わりしたはず。」


 セラフィーナの言葉をセティスが訂正する。


「あら、そうでしたのね。ではもう、あの方にはお会い出来ないのですね。残念ですわ。」


 本当に残念そうにするセラ様だが、それとは対照的にアセリア姫が、なんだかピコーンという感じで。


「思い出しましたわ!法王ストラス・カーディナル27世。確かその御息女がクリスティン・カーディナル様。愛称がクリス様だったかと。」


 法王のファミリーネーム「カーディナル」を聞いた事で、なんとなく引っかかっていた名前が、すっと思い出せた。


 法王の娘、アセリア姫と同じ王女。


 そんな人物が、中央から離れた地で消息を絶つ。


「あまりよくない状況に思えますね。そんな方の身に何かがあれば、この国にとっての一大事です。」


 まだ確定したわけではないが、大司教すら捜索に乗り出しているという人物。その可能性は非常に高い。


「ねえアセリア、その方がどのような見目かはご存知ですか?」


「いえ、わたくしも直接お会いしたことは無いのです。ただ聞いた話では、幼い頃はかなりお元気な方だったと。」


 言い方はオブラートに包んでいるが、要するにお転婆である。


 そうなるともしその人物である場合、そして性格があまり変わっていない場合。


 この件が事件性のあるものか、それともお姫様の気まぐれか。


 それすら絞り込めない感じになる。


「仕方ありませんわね。これは少し緊急事態かもしれません。」


 本来であれば物見遊山というか、見分を広めるために色々まわる予定だったのだが。


 セラフィーナはフィルメリアでも利用した監視魔法、お手紙魔法のカメラ部分を上空で生成し、自身の中に投影する。


 今回は魔獣や魔人ではなく、人の捜索。範囲はフィルメリア全土を見ていた時ほど広げず、人々の動きが見える程度の距離で。


「皆様も目を閉じてください。上空からの視界を共有しますわ。」


 言葉と共に、目を閉じた三人に情報を共有する。


 ノースチャペルの街を、今いるノースパレスを中心にしたそれなりに広い円周上で見渡して。


「わたくしは北西を注視しますわ。シェルンは南西を。アセリアは北東、セティスは南東をお願いしますわ。」


 上空からの映像をリアルタイムで見ているとはいえ、その全体を把握するのは難しい。


 とりあえずノースパレスを中心に担当を割り振って、何かおかしな動きがないかをそれぞれが見続けて。


 そんなことを数分やっていると。


「おまえたち、そこでじっとして何をしている?」


 神殿の警備兵だろうか。神官服と鎧を纏った神官戦士が二人、誰何の声をかけてきた。


 その姿は既に剣に手をかけ、警戒しながら近づいてくる。



「あー、考えて見れば当たり前ですねー。」


 当たり前。不審者と思われて当たり前。


 あまりこのあたりで見ないような、冒険者姿の四人が、中庭でじっとして目を閉じている。


 トラブルが発生している状況で、これは確かに怪しい。



 もちろん四人がトラブルを解決しようと、街の様子を監視していたなんてことを知る由も無く。



 四人は二人の神官戦士に、全力で怪しまれて。


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