1-7:ズレたお姫様と侍女のお悩み相談室
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「それではあらためまして。わたくしはセラフィーナと申します。よろしくお願いしますね。」
「わ、私はミリエラ…と申します。このたびは危ない所をお助けいただき、本当にありがとうございますっ!」
テーブルについて向かい合って座り、お互い自己紹介と軽い挨拶を済ます。
本来であれば街にある、手近な雰囲気の良いお店にお邪魔してお話を、としたかったが。
ミリエラを知る市井の者も多い街ではリスクが高い。そう判断し、セラフィーナは自宅へと誘った。
自宅というのはシェルンと過ごす、カヤック村近くの鉱山に作った隠れ家である。
ミリエラは少し頬を赤らめて了承し、転移魔法で自宅へと移動した頃には、夕日は沈む直前だった。
転移魔法という、そんなものはセラフィーナ以外誰も使えないトンデモ魔法を、何も考えずに使ってしまいミリエラを驚愕させたが、このお姫様は気にもせず。
目立ちたくないと言いつつ、その姿も行動も色々と目立ちまくる。セラフィーナの日常である。
席に着いてからはセラフィーナの方を見て、目が合うと顔を伏せる。そんなやり取りを何度か繰り返し、
「ふふ、緊張しないでくださいね。それとも、もしかしてわたくし、怖かったりします?」
「い、いえ!そんなことは!」
話が進まず、少し困ったような顔をして、ミリエラに問うセラフィーナ。
そんなリラックスしているセラフィーナの前で、ミリエラはガチガチに固まっていた。
確かに荒くれっぽい男たちを一瞬で寝かしつけたし、抑止力とするために、少しだけ攻撃魔法も見せた。
使った魔法はどれも今の魔法体系には存在せず、そんな魔法を目の前で見せられたのだから、恐れを抱かれても仕方ないとは思う。
「お待たせしました。お茶とお菓子、お持ちしました。」
会話が続かない二人の元に、侍女がティーポットとお茶菓子を載せたワゴンを運んできた。
テーブル横にワゴンをつけると、そのままにこやかに給仕を始める。
「いつもありがとう、シェルン。あなたのお陰で急なお客様でも安心してお招きできますわ。」
「はい。セラ様のお役に立てるなら何よりです!でも今度から、もう少し早めに教えてくださいね。」
主人と侍女、というにはかなり仲がよさそうな二人の雰囲気に暖かさを感じ。
ミリエラは少しずつ緊張の糸が和らいでいく。
(まるで私とレアニールみたい。お互い大切に想っているのですね)
そんな事を考えていると、侍女が突然話しかけてきた。
「ミリエラ様!私、お茶にもお菓子作りにも自信があるんですよ。ぜひ感想をお聞かせくださいね!」
ニコニコと微笑みながら、ミリエラの前にティーカップを置き、お茶を注ぐと、お菓子も並べていく。
「あ、は、はい。ありがとうございます。」
主人の許可もなく、接客に関わらない話を客に振る侍女はあまりいない。
使用人は普通、前に出ず控えるもの。この世界における貴族の一般常識である。
多少面食らった表情になっているミリエラを見て、苦笑しながらセラフィーナが注意する。
「シェルン、初めてのお客様に対してはまずご挨拶から、ですよ。」
「あ!そうでした。失礼しました!」
ミリエラに向き直ると、侍女がピッと背筋を伸ばして自己紹介を始める。
「初めましてミリエラ様。セラフィーナ様の侍女をしております、シェルンと申します。よろしくお願いします。」
ゴシック調のメイド服。そのスカートをつまみ、貴族のようにカーテシーであいさつをするシェルン。
「はい。改めまして、ミリエラと申します。こちらこそ、よろしくお願いしますね。」
元気に楽しそうに挨拶するシェルンにつられ、ミリエラもにこやかにあいさつを交わす。
高貴な方が連れてきた客人に対しても、この侍女は緊張感がまるでなく。
それどころかお茶とお菓子を三人分並べ終わると、自分もちゃっかりと席に着き、嬉しそうにお菓子に手を伸ばす。
この国に限らず、貴族の侍女は普通、主人と同じ席についてお茶や食事をしたりはしない。
(いいのかしら?
どう見てもセラフィーナ様は高貴なお身分の方。主人の許可もなく同席して、しかも先に頂くなんて…)
「どうぞどうぞ。
私の事はお構いなく、お話続けてくださいね。」
いえ、お構いするのは貴女では?などと言うわけにもいかず、侍女の態度に不安を感じ、ミリエラはセラフィーナをチラチラと伺う。
セラフィーナはそんな侍女の態度もまるで気にすることはなく、ミリエラに笑顔を向けるばかり。
「あ、あの。私はかまわないのですが、セラフィーナ様はその、侍女の方が同席されるのは問題ないのでしょうか?」
貴族の娘として、さすがに看過してはいけないと考えたミリエラは、セラフィーナに伺いを立てた。
「ええ。問題ございませんわ。お話もお食事も、皆で一緒にした方が楽しいですよ。」
「そ、それはそうかもしれませんが。で、でもセラフィーナ様って、どこかの国の王女様。お姫様では?」
「え?」
「え!?」
なぜか驚いたような顔で反応するセラフィーナに、同じように驚くミリエラ。
「え?って、違うのですか?わたしはセラフィーナ様が王族か、それに近しいご身分の方とばかり。」
混乱しつつ、言葉を続ける。
「それにそんなに美しいドレスをお召しになられて、振舞いにも気品があるし、何より高貴なオーラが。」
「ほら~。絶対にそのドレスだと誤解されるって言ってるじゃないですか~。」
「え?えっ??」
セラフィーナはどう見ても高貴なお方。
貴族であり、自国の姫君とも親交があるミリエラは、そう確信していたが、誤解?
身に纏ったドレスは素材、光沢、なめらかさ、縫い目が分からない程の精巧な縫製と、どう見ても最高級の一着だ。
そんなドレスを日常的に着こなせる者など、高位の貴族でもありえないのに。
「えっとですね、そのあたりは、追々。ひとまずは、ただのセラフィーナ、という事でお願いいたしますわ。」
「は、はい。わかりました。」
触れてはいけない事なのかな?ミリエラはどこか納得はいかないものの、ひとまずは了承する。
「それと、シェルンの事もお気になさらないで。」
美味しそうに、自分で運んできたお菓子を頬張る侍女を見やり、
「わたくしは身分で立ち位置を決めるような、そんなしきたりは好みませんの。」
セラフィーナの一言。その言葉が自分の理想、子供のころのように、身分差なく接したい。
昔から抱いていた理想を思い出させ、今の自分の有り様を見つめ直す。
私は、理想と現実を、分けて考えてるんだ。
今の貴族社会に抵抗を感じてはいるが、だがその中で何も言わず、変えようとせず。
「申し訳ありません。
セラフィーナ様のお考え、私も素敵だと思います。」
出過ぎた事を言った、その気持ちを謝罪と控えめな称賛として口にする。
「大丈夫ですわ。お気になさらないで。」
「私もごめんなさい。ミリエラ様には一言先にお伝えするべきでした。」
特に気分を害することもなく、行き過ぎた発言も責めることもなく。
本当に優しい方。セラフィーナ様も、シェルンさんも。
「ところで、差し支えなければ。ミリエラさんはどうしてあのような場所へいらしたのですか?」
「そ、それは。その、少し悩み事がありまして、考えながら歩いていたらいつの間にか。」
「ふふ、不用心ですわね。
お美しいのに、周りを気にせず一人歩きだなんて。」
心の中で、それは貴女も、と思いかけ、すぐにあの強さを思い出して思いとどまる。
「考え事に没頭して、彼等のような方々に囲まれるまで気付かなかった。仕方ないですわね。」
ミリエラ自身も失態と自覚している。ただあの時は、とても周囲の状況など気にしていられない位に。
深刻に悩んでいた。失意の底にいた。
「いえ、だからその、悩み事がありまして。」
「つまり、自分の身を案じれない程に、とても深刻な悩み、という事ですわね。」
「は、はい。」
「それは困りましたね。
ミリエラさんさえよろしければ、お伺いしても?」
「え?」
初対面というのにまるで気にせず、ストレートに聞いてくるセラフィーナ。
普通、お悩み相談というものは、それなりに親しい間柄の者にしかしないものでは?
しかもこの悩みは自領の事であるし、家族の事である。
おいそれと人に、それも初対面の人物に話せるような内容には思えない。
確かにこの人物、ミリエラにとっては危機から救ってくれた恩人ではあるが。
それでもお互いの素性も何も知らず、いきなり聞かれるとは思ってもみなかった。
(こ、この方、すごく優しくてお淑やかに見えるけど、なんか、なんとなく、ところどころズレてるような。)
少し失礼な事を考えつつ、悩みを打ち明けるのはまだ早いと考えているミリエラに、セラフィーナはさらに言葉をかけてきた。
「お悩みというのは。
このシェフィールド領のこと、でしょうか?」
「え!?」
いきなり核心を突かれる。
一気に心の中で動揺が広がるミリエラには構わず、セラフィーナは言葉を続ける。
「数年前まではとても素敵な領地だったと聞き及んでおります。ですがここ数年はひどい状況で、今年に入って生活も苦しくなったと。」
「は、はい。ですが、なぜそれを?」
「街の様子をみて、市井の方々の声に耳を傾ければ、どなたでもわかることですわ。」
「そ、それはたしかに。で、でもなぜそれが、私の悩みだと考えられたのですか?」
言いつつ、思う。
そう、街の様子を見て、市井の方々の声に耳を傾ける。
レアニールに聞いて初めて街の実情を知ったが、自分で動けばすぐにでも分かるはず。
それ以上に、母が亡くなってから三年程、私はなんで今まで、民の声を聴いてこなかったのだろう?
考え始めると自分の行動が不思議でならない。
母が存命の頃は、一緒に街へ出て、多くの人と話をして、それを父に伝えて。
お母様の死がつらくて、悲しくて、一緒にしていたことができなくなってしまった?
思考の海に沈みかけたミリエラに、セラフィーナから質問の答えが返ってきた。
「貴女を襲おうとしていた方々が、領主の娘、と仰ってましたわ。」
「あっ!」
(確かにそんなことを言っていた男がいた。
でもあの時はまだ、セラフィーナ様は。)
「そのような声が聞こえたものですから、わたくしも気になりまして。」
そういえばそれなりに大きな声だった。
少し離れた角の向こうくらいなら聞こえるほどには。
「通りを伺うと、貴女が彼等に囲まれていた、ということですわね。」
「な、なるほど。」
(領主の娘が悩んでいて、領地がひどい状態。確かにそこまで分かれば推測はできるわ。)
セラフィーナの言っていることに不自然さを感じた気もするが、言われたことに納得もする。
でも、これは私の、シェフィールドの問題。
「そこで、おせっかいかもしれませんが、わたくしがお力になれることはないかと思いまして。」
ミリエラを気遣うように見やり…
ふと気が付いたように、用意されたお茶菓子のフィナンシェに手を伸ばす。
「ん。これは美味しいですわ。シェルンの作るお菓子はいつも絶品ですわね。」
上機嫌にフィナンシェを味わい、続いてカップに手を伸ばして紅茶を味わう。
「お茶もとても美味しいですわ。ミリエラさんも、お召し上がりになってくださいね。」
深刻な表情に戻りかけたミリエラに、話題を変えてお菓子を勧める。
明らかに気遣ってもらえていることが伝わる。
セラフィーナの隣に座り、静かに、邪魔しないようにしていたシェルンも、お菓子の話となると。
「ミリエラ様。このフィナンシェ、力作なんですよ。レーベルグ産のバターを使って…」
嬉しそうに説明を始める。
「小麦粉はカーランドのものを使いました。ここの小麦で作ると、とても口当たりがいいんですよ。」
レーベルグは王都の南東に位置する、フィルメリアで一番酪農、牧畜が盛んな地域だ。
そしてカーランド。ここシェフィールドの西に位置する、広大な農業地域である。
そしてカーランドは、ミリエラにとってはそれ以外の点でも、とてもとても大切な。
「ありがとうシェルンさん。私も頂きますね。」
侍女にも気遣いされていることが分かり。
抱え込みそうになった私を、シェルンさんもセラフィーナ様とは違う形で。
楽しそうに明るい話題を振ることで気遣っている。
そう、助けられた時も、そして今も、この方は、そして仕える侍女も、ずっと私の事を気遣っている。
そう気付いたとき、一人悩むしかなかったミリエラの、固まった気持ちが解きほぐされて。
「あ、あの。出来れば他言無用でお願いしたいのですが。」
今日の出来事はあまり聞かれたくない。
でも、一人で抱え込んだら、きっとまた、すぐに沈みこんでしまう。
「ご安心なさって。わたくしもシェルンも、口は堅いですわよ。それに。」
「そ、それに?」
「正直に申しますと、他言できるお相手がおりませんわ。」
(な、なるほど。それはそれで不思議なのですが。)
「で、では。」
初対面ではあるが自分を助け、そして支えて下さった優しい方。
そう信じたミリエラは、セラフィーナに会うまでの、つらい出来事について語り始めた。
シェルンのお料理スキルを充実させたい…
知識が無くて薄っぺらくしか書けません…
セラ様のスキル?お姫様に生活スキルは求めちゃダメです。ポンコツです。




