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5-12:旅立ち

すみません。ちょっとおくれました。

「あの、セラフィーナ様?本当にわたくしのお部屋で?」


「ええ。それともう、わたくしの事はセラでいいですわ。アセリア様とは遠く離れておりますが、家族のようなものですし。」


「は、はい!それではセラ様と。それと、わたくしの事は呼び捨てでお願いしますわ。さすがにお父様よりも目上の方に様付けされるのは、ずっと抵抗がありましたの。」


 この国のお姫様に宛がった部屋へと突入したセラフィーナ。


 実は今まで宿泊するたびに突撃して、いつもセティスに停められはしていたが、セラフィーナはアセリア姫と、プライベートでゆっくりと話をしたいと考えていた。


 フィルメリアに来た当初は、この時代において類まれなる才能を持った魔法使いという認識だった。

 それが出会った直後に、まさかの自分と同じ血を引いている末裔だなどと分かってしまい、悠久の時を生きるセラフィーナとて色々と内心では想いが溢れ纏まらず、接し方も決して打ち解けた感じではなく、シェルンに接するのと比べて少し距離を置いていた。


 自分の事を慕ってくれているというのは分かっているが、どうしても皆の前でなれなれしく接することも出来ず。

 だからできれば二人の時間が欲しかった。


「目上、というのは少し違いますわね。ですがお気持ちもわかりますわ。アセリア様、いえ、アセリアにとってのわたくしは、直接ではありませんがご先祖様みたいなものですわね。」


 言いながら、少し頬を掻くような仕草をする。


 自分で言うのもなんだが、殆ど姉妹と言っても通じそうな二人なのに、ご先祖様。言ってみて違和感がハンパナイ。


「そ、それはそうですが、セラフィ、セラ様がご先祖様と言うとなんだかとてもおかしなことになりますね。わたくしの両親よりも明らかに若いお姿ですし。」


 その違和感はアセリア姫も同じで、互い顔を見合わせ少しおかしそうにふふ、と笑い合い。


「そうですわね。自分で言ってご先祖、というのは少し、何と言いますか、つらいですわ。姉という事でお願いしますわ。」


「はい。私もその方がまだ落ち着きます。それでセラ様、最初の質問に戻りますが、どうしてわたくしのお部屋に?」


「もちろん、貴女と色々お話をしたかったからですわ。」


 アセリア姫の疑問に、とても嬉しそうに切り出すセラ様。その雰囲気にアセリア姫も軽い気持ちになる。


「お話ですね。はい!私もセラ様とはお話したいことがたくさんあるんですっ!魔法の事も、エルフィリア様の事も!ぜひっ!ぜひたくさん聞かせてください!教えてくださいっ!!」


 今まで聞いたセラフィーナの過去は確かにとても凄惨なものだったが、それでもその過去から今までの時を絶えず研鑽し続け、高め続けた魔法の知識。

 そしてセラフィーナの語った悪夢でも、自分が語ったティアラの内にあるエルフィリアの事についても、まだまだ知らないことだらけ。知りたいことがたくさんある。


 魔法マニアで勤勉なお姫様にとって、セラフィーナの知識も悪夢以外の過去の話も興味がある事ばかり。


「え!?ええ、そ、そういうお話もたくさんありますね。」


 ものすごい勢いで食いついてくるアセリア姫に、セラフィーナはちょっと引き気味で。

 確かに魔法のお話も、妹のお話も色々あるが、ちょっと思っていた事とはズレているのだが。


「それとですね、何よりもセラ様!シェルンさんのアレです!スイーツですっ!!あれの元になった知識のお話もっ!」


 なんだかアセリア姫の勢いが止まらない。というか、シェルンのスイーツを食べてからずっと変なスイッチが入っている気がする。

 常に冷静で前向きなみんなのアイドルたる姫君が、まさかスイーツひとつでここまで変わるとは思わなかった。


「お、落ち着いて下さいアセリア。貴女がお話したいことは分かりましたわ。そ、それでわたくしはですね、もしアセリアがわたくしと共に暫く過ごせるとしたら、どんな場所に行ってどんなことをしたいか、という事をお聞きしたかったのです。」


 ひとまず自分の言いたいことも挟んでおかないと、なんとなくずっとアセリア姫のターンになりそうで、セラフィーナは困惑しながらもここに来た理由を話す。


 どうどう、という感じのジェスチャーををしながら、少しひきつった笑みで話すセラフィーナを見て、姫君もようやく気付き。


「ご、ごめんなさい。わたくし少し舞い上がっておりましたわ。共に暫く過ごせるという事は、フィルメリアに暫くとどまって頂けるのですか?」


「いえ、もちろんそれもありますが、今日お話ししましたエルの件で調査に向かう際に、もし可能でしたら貴女とセティス様もお連れしたいと、そう考えておりますの。その時に少し、色々な地で見聞を広めるというのは如何かしら?」


 以前アセリア姫の部屋に侵入しようとしたときも旅の供に誘うつもりでいたが、今回はエルフィリアを現代に呼び戻すという明確な目的がある。

 その調査を行う際に併せて世界各地を巡り、アセリア姫にも世界を見てもらいたいというのが、セラフィーナの想いである。


「な、なるほど。わたくしとセティス様・・・姉様にも協力をと仰ってましたが、わたくし達を想ってのことだったのですね。」


「ええ、それもありますわ。ですがお二人を誘う理由は、調査の際に単独行動を安心して任せられるから、ですわね。調査する地にはまだ稼働している魔法兵器もあるかもしれませんわ。」


 あの少年、ファウストが過去の遺物を現世に蘇らせてしまった過去の遺跡だから、状況により危険なことにもなりえる。

 セラフィーナとシェルンの二人で行くのが最も安全ではあるが、調査範囲が広ければ人手も欲しい。

 さりとてもし魔法兵器が存在して戦闘となれば、並の騎士や兵士ではとても対抗できない。


 その点、アセリア姫とセティスの二人はセラフィーナがこの長い人生の中で会った人物の中でも、並ぶものが無いほどに強い。

 この二人であれば、何も心配しなくていい。


「それは確かに。特にアルヴィンス様が仰っていた兵器が出てくれば、セラ様の加護無くして戦えるものはおりませんわね。」


「ええ。それができるのは貴女とセティス様だけですわ。ですからぜひお力添え頂けるよう、陛下にもお伝えくださいね。」


「はい、それはもちろん。」



 それから二人は調査をいつ頃しようか、とか、その時に見て回りたい地はあるか、とか。

 まるで楽しい旅行に行く計画を立てるように寝る前のひとときを楽しんで、時は過ぎ。


「では、そろそろお休みしましょう。ベッドは広いですし、わたくしもご一緒させていただきますわ。」


「え!?せ、セラ様・・・?」


 こうしてお姫様二人は、仲良く?おねんねして。



―― 同じころ、それぞれのお部屋では。


「なるほど!そんな風にしてあのお肉の柔らかさを出していたのですね!勉強になります!」


「んふふ、セラ様は変なレシピをいっぱいご存知ですからね。私も今日まで知りませんでしたが、きっとアレグレット様がこちらの世界に来られる前は、さぞ名のある料理人だったのでしょう。」


 シェフィールド邸の料理長が、万能型戦闘メイドにお料理の指南を全力で受けていたり。



「ね、あなた。今日はありがとね。まさかホントにシェルンさんのお料理を再び食べられるなんて思わなかった。」


「いや、おまえのお陰で俺もあんな美味いモノが食べられた。むしろ礼を言うのは俺の方さ。」


 妻のお願いをまさかの!という感じで実現してしまった夫が、妻に惚れ直されていたり。



「レアニールのお陰で、全然関係ない俺までがいい思いを出来たからな。今度また、行きたいところに連れて行くよ。」


「うん、ありがと。そうだなぁ、国外とかもあり?」


「国外か。言葉の通じる所なら。」


 もうすぐ一緒になる二人は、なんとなく新婚旅行になりそうな旅の予定を立て始めたり。



「ん・・・」

「・・・」


 言葉少なに見つめ合う、こちらももうすぐゴールイン予定の子爵家令息と伯爵家令嬢がいたり。



 あとは一人でベッドに入る四人と、姫君の両親と。


 それぞれ、今日一日の素敵な料理と大きなお風呂の、とてもいい思い出と。

 聞いてしまった凄惨な過去に、人としての在りようを考えたりもしながら。


 それぞれの部屋で、それぞれの夜を過ごして。




―― 夜が明けて。


「おはようございます、セラ様、アセリア様。」


 ノックの音と共に、シェルンの声が聞こえてくる。


「おはようシェルン、あいてますわ。」


「失礼します。」


 今日もまた、一日が始まる。


 もちろん最も早く目を覚ましているのは、セラフィーナ同様睡眠自体は極端に短くても支障がないシェルンであり、その声ですぐに目が覚めるセラフィーナであり。


 なお、セラフィーナと同じベッドで寝ているアセリア姫は、すやすやと幸せそうな表情で今も爆睡中である。


 そんな現代のお姫様はおいておき。


「今日はこちらの半発酵茶です。桃の香りを付けました。」


 シェルンが用意したのは、乾燥白桃をブレンドしたウーロン茶。甘い香りとすっきりとした味わいが特徴のお茶である。


「ん、とてもいい香りですわ。甘くて芳醇で。んん、お味はとても飲みやすいですわね。シェルン、今日もありがとう。」


 二人の間では完全に日課となっている、毎朝のお茶。基本的にシェルンの出す料理や飲み物は未完成品を除きすべて美味しい。

 セラフィーナの好みに合わせているというのもあるが、このメイドは長い年月をかけて、様々なセラフィーナの知識を掛け合わせ独自のブレンドを多数創り出している。


 そのお味はセラフィーナの好みだけでなく、万人受けするものも当然数多創り出されており。


 部屋を満たす甘い桃の香りに、もう一人のお姫様が反応し、幸せそうだった寝顔が徐々に変わって。


「ん。あれ?いい香り。わたくし、あれ?」


 今まで感じた事のない、素敵な香りに包まれた目覚め。まだ寝ぼけている感じのお姫様は、それでも大好きな甘い香りに鼻腔を刺激され、徐々に意識がはっきりとして。


「あれ、セラさま・・・あれ?あ、あああっ!」


 自分より先にセラフィーナが起きているどころか、既にお部屋にシェルンまでいる事に慌てる。


 だってつまり、自分の寝顔を二人に見られているわけで。


「お、おはようございますっ!申し訳ございません。わたくし寝過ごしてしまいました?」


「いえ、だいじょうぶですわ。」

「セラ様も先ほど起きたばかりですよ。」


 焦っているお姫様を、二人で優しく落ち着かせ。


「アセリア様のもありますよ。どうぞ。」


 シェルンが人懐こい笑みで、もう一人のお姫様にソーサーに載せたカップをそっと手渡す。

 アセリア姫は今までベッドの上でお茶を嗜むなんて経験は一切なく、少しお行儀も悪い気もするが、セラ様も飲んでるので。


 熱そうなので、そっと口に運び、一口。


「ん。この香り、好きです。あ、凄く飲みやすいですわ。それにとても変わった渋みといいますか、風味といいますか。」


 紅茶が一般的なこの世界において、いわゆるウーロン茶はあまり多くなく、フィルメリアではそもそも出されない。

 その味もまた、アセリア姫には新しい。


「あの、セラ様。昨日のお話ですが。もし同行できましたら、わたくしフィルメリアとは違う食文化の国を回ってみたいですわ。」


 シェルンの料理は少しズルいので無理だけれど。アセリア姫は今初めて、フィルメリア以外の食事というものに興味を持ち。

 セラフィーナの調査行に同行する際も、主にそちらの方面で新しい発見をしたくなっていた。


 二人の姫君がしっかりと目を覚まし、身支度をしてからティールームへ。今日はシェルンがしっかり身支度を整えてくれたので、うっかりセラ様もしっかりと寝着から着替えている。

 もっとも彼女の服は魔法なので、シェルンに言われてサクッと別の魔法に切り替えただけであるが。



「「おはようございます。」」


「おはようございますミリエラさん。昨日はよく眠れました?」


「あ・・・えっと、はい。その、はい。」


 挨拶の後、少し赤くなっているミリエラとレイノルドとか。


「シェルンさん、おはようございます。いつの間にお布団から出られたのですかっ!?」


 昨夜は一緒にお料理談義で盛り上がり、一緒に寝たシェルンが朝は消えていたことに気付かなかったマリアリスとか。


「アセリア、おはよう。昨日はセラフィーナ様とゆっくりおはなしできましたか?」


「おはようございますお母様。はい。そのことであとから相談がございますの。お父様にも。」


 母と挨拶して、さっそく探索旅行、もとい出張の予定がいれたくて、朝から母に相談するアセリア姫とか。


「あー、なんつーか寂しいぜ。俺の相手はいったい何時になったら見つかるんだか。」


 朝から黄昏れているグラツィオとか。


 寝起きもみんな、それぞれの想いを抱きつつ。


 朝食はシェルンがまた朝から豪華なのを用意して、みんな大満足の時間を過ごし。



 こうして一泊二日となった、メルヘン城お泊り会は無事終わり、賑やかなひと時は解散となった。



―― 後日、フィルメリア城。


 謁見の間・・・ではなく、国王執務室。


「わかりましたわ。必ずエルフィリア様を呼び戻せるよう、しっかり調査してまいりますわ。」


 メルヘン城でセラフィーナに提案された、エルフィリアの現世における身体を探す旅。

 フィルメリア王国中枢はその調査を非常に大切なものと認識して、王国の至宝と最強騎士を出張に出すことを決め、その出発の日を迎える事となった。


「それとアセリア、セティス。セラフィーナ様のご厚意だ。多くの国を見て、どんな想いがあるかをしっかりと感じ取って。


 フィルメリアが今後も多くの国と友好を続けられるように、人々の想いを汲み取ってきてほしい。」


 国王陛下はこの機に、娘と騎士団長には多くの経験をしてもらいたいと願って、それは母も同じ想いである。


「はい、もちろんですわ。」「心得ております。」


 その言葉には二人もしっかり頷き。


「セティス、見聞を広めるのも大事だが、あのお二人との旅だ。願えるのであればしっかり指南してもらえ。」


 義兄の言葉に「ああ、もちろんだ兄上。」と騎士団長は凛々しく返し、お姫様も「わたくしも鍛えていただきますわ。」とやる気満々である。


 一通り準備を整え、出発前の挨拶と言葉も受けて。


「さて、ではこれからセラフィーナ様のところへ。」


「その必要はございませんわ。わたくしはもうここにおります。」



 お城を発とうとしたら、あっちからもう来ていました。



 フィルメリア城は最初のご挨拶に始まり、騎士団の上位を招集したり、全員にバフをかけたりと、セラフィーナは既に何度も来ているので、当然ワープポイントが設置されている。


 なので割と早起きのセラ様とシェルンはお迎えに上がり、その場にいる国王夫妻と騎士団長代理に軽く挨拶をして。



「それでは参りましょうか。まずは調査をするために彼の地に近い国のポイントまで飛びますわ。」



 ファウストから事前に聞いていた情報から、セラフィーナがかつて設置したもっとも近いワープポイントへと、四人を連れてあっさり転移して。



 女子四人の調査行が、これから始まる。


もう少しネンネ前のキャッキャした感じを囲うかとも思いましたが話が進まないので。


本章はこれにて完了です。


次回からはメイン四人の旅が始まります。

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