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5-10:ディナーを頂きながら。え!?スイーツですか!??

すみません。まにあいませんでした。

和気藹々とした感じのお話が続きます。

 急遽開催することになった、フィルメリア王国防衛戦の祝勝ディナー会。

 時間を操るというチート能力を駆使して異常な速度でコース料理をどんどん作っていくシェルンには、調理に参加した者たちの内ソレを知っているレアニール以外の度肝を抜き。

 ホール係のように動いた元騎士団長アルヴィンスを筆頭とする男性陣は意外と?繊細な気配りで綺麗にテーブルを整えた。


 ディナー会を開く発端となったいにしえのお姫様は参加するとポンコツがさく裂して色々やらかすことを恐れられ、あらゆるお手伝いを却下されていたため、少ししょんぼりしつつ。


「わ、わたくしができる事をするしかないですわね。」


 と、皆がティールームで頑張っている間に大浴場に向かい、今は殿方、姫方共に浴槽へ暖かいお湯を満たし、そこにいい香りの花びらを浮かべて準備を整える。

 洗い場も綺麗に整頓し、魔法で窓も綺麗にして男女どちらの浴場からもシェフィールドの海が見えるようにして。


 一通り終わるとティールームに戻る。そこには何となく燃え尽きた感じになっているアセリア姫とセティスがベランダいて。


「あら、お二人はどうされましたの?」


「いえ、お母様にお料理をするよう言われて手伝おうとはしたのですが、わたくしには少し難しくて。」


「ああ、私も料理だけは全くしたことが無くてな。シルヴィア様に呼ばれていったはいいが、何の役にも立てなかった。」


 元々王家のお姫様と侯爵家令嬢、魔法や剣術のレベルは非常が高いが、お料理スキルについては壊滅的だったようである。


 だが同じ貴族でも伯爵家令嬢は違っていた。なぜなら彼女はもうすぐ結婚する予定。そのため領の問題が起きる前は、事前に仕える侍女にお願いして、料理の練習していたのである。

 他に厨房に入った三人のうち、マリアリスは言うまでもなくシェフィールド邸の料理長としてその実力を遺憾なく発揮し、お休みの日は旦那にご飯を作ってあげているクラリスも言うまでもなく即戦力である。

 そして王族とはいえ国王に見初められて平民初の王妃となったアセリア姫の母、シルヴィア王妃は当たり前のように料理スキルも持ち合わせ、結局二人だけがお荷物状態となっていた。


「自分が一切役に立てないというのは、なかなか堪えるな。」


「姉様もわたくしも、戦いや癒す力以外にも修行が必要なことがございましたね。」


 燃え尽きた二人は少し諦めた感じでそんなことを言っている。


 そんな二人を「わたくしもお料理だけは・・・」なんて一緒に黄昏れた感じになっているセラフィーナ。

 だが他の皆は着々と準備を進めて、


「セラ様、準備整いましたよー!アセリア様もセティス様も、そろそろ席についてください!」


 シェルンの言葉で三人はテーブルに戻る。


 人数が増えたのでテーブルの割り振りは、王家組にクレーディア家の二人も加わり5人で囲む。

 騎士団組はレイノルド、グラツィオとラムザス、クラリス夫妻、レイノルドの許嫁であるミリエラの5人。

 シェフィールド邸から参加したものは領主グライスと使用人のリッチェル、レアニール、マリアリスという形となった。


 セラフィーナは主催的な感じでシェルンと二人。そんな形でささやかな祝勝会は始まって、給仕組も落ち着いて、まずは美味しいコースを暖かいうちに皆で頂く。


「なあレアニール、こういうのっておまえ作れるのか?」


「材料さえあればできるけど、そこが難しいかな。」


 リッチェルはもうすぐ妻になるレアニールに聞くが、シェルンのような鮮度抜群の海産物を入手する手段が無いので厳しい。

 海に住む魔獣さえ駆除できれば何とかなるのだが。


「なあクラリス、お前こんな美味いモノを前も頂いたのか。」


「そうよ。私がまた食べたいって言った理由、分かるでしょ。」


 夫に頼み込んだシェルンのコースをまた食べたいというお願いがホントに実現してしまい、すごく嬉しそうなクラリス。

 もちろんそれを口にして騎士団長の耳に入れていたラムザスは奥さんにとても喜ばれたので満更でもない。


「旦那様、これをうちの屋敷で出すのはちょっとハードルが高すぎます。せめて新鮮な食材が入れば近づけられますが。」


「そうか。いや、そうだな。無理にとは言わんよ。マリアリスの料理に活かせるところがあったら活かしてくれればいい。」


 せっかく料理長がついて来たので屋敷のお料理にも採用できないか聞いたグライスは、レアニールがリッチェルに伝えたのと同様の現実的な問題に少し諦め気味である。


「お父様、お母様。シェルンさんのお料理はとても美味しいしたくさん食べれますけど、お二人はわたくしやセティス様と違って最近は前線から退いてます。

 だからしっかり運動しないとダメですよ。」


 昼夜と美味しすぎるコース料理を頂いて、騎士団を引退して内政にいそしむ二人には娘の心配が飛ぶ。


「そうだな。俺もセティスも前線だが、陛下とシルヴィア様は流石に気を付けていただかないとな。」


 アルヴィンスからもそんな言葉が出て、国王夫妻はちょっぴり運動不足になっている最近を気にし始めたり。


 全体的にはこんな感じで談笑しつつ、シェルンの作った海鮮フルコースを皆で美味しく頂いて、その間にセラフィーナは相談事があった為シェフィールド邸のものが囲むテーブルに赴き。


 ちなみにセラフィーナは持ち前の食欲魔人っぷりで自分のコースはとっくに平らげている。

 とても優雅で清楚な挙措で、驚くほどの速さで。


「グライス様、少しよろしいですか?」


「ああ、セラフィーナ様。またお呼び頂けた事、感謝いたします。うちの者も大変気に入っているようで。」


 しっかり味わいながら食べている屋敷の使用人達に目配せして、皆軽く頭を下げて。


「堅苦しいことは無しで参りましょう。皆様ももっと砕けた感じでよろしいですわ。それで、お願いがあるのですが。」


 セラフィーナがグライスをここに呼んだ理由。兼ねてから相談したいことについて話を切り出す。


「ここを観光のために開放する、ということですか?」


「ええ、わたくしの部屋やアセリア様の部屋は普段は入れないようにしてありますの。ですからここを娯楽施設として頂いて。」


 かねてより計画していた、メルヘン城のテーマパーク化計画。


 ウィンストの件が片付いた後、騎士団の者たちが子供を連れてここに来た記憶はとても幸せなものだった。

 その記憶を伝え、メルヘン城の内装についても一通り娯楽施設となる様に改築したことも伝えて。


「なるほど。ここでの働き手が欲しい、という事ですな。商業施設としても今までにない施設。それなりの収益も見込めるのであれば働き手への給金もしっかりと出せそうだ。」


「ええ、それに上階には展望大浴場がありますの。今日のお食事が終わりましたら皆様にはそちらも使って頂いて、大浴場からシェフィールドの海を愉しんでいただく予定ですわ。」


 大浴場も娯楽のひとつ。こちらももちろん開放する。利用する湯についてはセラフィーナが魔法で循環ろ過装置や近くの海から海水を真水にする魔法を付けた装置でくみ上げる仕組みも作り。


「それとですね、先ほど少し聞こえてきたのですが、この城周辺だけにはなりますが海に魔獣除けの結界を張ろうと思いますの。」


 元々海に住む魔獣が問題で海産物は陸からの網や釣りでしか調達できない現状だが、魔獣除けの結界があればその範囲内だけは船や潜っての漁も可能となる。


「なるほど。鮮度の高い海産物を現地で調達してここでの食事に出せるということですな。それに領内にも流通できれば。」


 セラフィーナの提案は領主にとって非常に大きなビジネスチャンスであるとともに、大規模魔法陣の影響で多くの失業者を出してしまった現状、領民をより豊かにできる施策にもマッチする。


 もちろんグライスは今までずっと善政を敷き、民を第一に考えて領を治めてきた男である。セラフィーナの申し出は領民が良い暮らしをできるように、領の立て直し真っただ中にあって非常にありがたい申し出となり、ふたつ返事で引き受ける。


「ミリエラ、ちょっとこっちへ来てくれ!」


 そうなればもう、この男はすぐに動く。今は美味しい食事を自分が頂いている。ならばこれに近いものと民にも味わってほしい。

 この地で皆に楽しいひと時を過ごしてほしい。その想いは呼び寄せたミリエラにも伝わって、料理については料理長も巻き込み、更に商業施設の警備もちょうど警備員を任せている男がいるので色々と意見を聞いて。


 気が付けばシェフィールド邸のものが集うテーブルは、いつの間にかメルヘン城商業施設計画についての打ち合わせの場となった。


「あっち、なかなか熱いな。」

「俺も行ってくるわ。お前はどうする?」

「行くに決まってるだろう。」


 レイノルドは近く妻になるミリエラが父と熱戦を繰り広げるかのように議論している姿を見て、領政の時と同じように参加する。

 幼馴染のグラツィオもそれに参加し、こちらはリッチェルと共に警備関係の話を熱く語りだし。

 結果としてセラフィーナがグライスに話してすぐに、メルヘン城に関する計画はあっという間に手を離れて独り歩きを始めた。


 その状態で、騎士組のテーブルに二人となったラムザスとクラリスのライト夫妻。

 セラフィーナはそちらに気付くとシェフィールド邸組のテーブルを後に、今度は夫婦の元へ。


「セラフィーナ様!今回も素敵なディナーにご招待下さってありがとうございます!」


 近づいてきた姫君に気付くとすごく嬉しそうにお礼を述べるのは当然クラリス。シェルンの料理が再び食べられる日が来るなど思っていなかった為、とても上機嫌である。


「ありがとうございます!まさかこれほど美味しいなんて思ってなくて。俺・・・自分もお招きいただき光栄ですっ!」


 ラムザスは直接話すのは初めて。王族よりも上に位置すると認識しているセラフィーナに少し緊張もしているが、妻のお願いを実現してくれた事には感謝しかない。


「わたくしも喜んでいただけて嬉しいですわ。それでですね、お二人はご夫婦と伺いましたので、少しわたくしから祝福して差し上げたいと思いまして。如何でしょう?」


 この二人の元に来たのはこれ。仲の良い夫婦であれば、この先も幸せに過ごしてほしいと思うのがセラフィーナの性質。

 レイノルドとミリエラには既に施したが、この二人にも、そして先ほどのテーブルにいたリッチェルとレアニールにも今後もずっと幸せを続けて欲しい。


 そんな願いで、まずは二人きりのライト夫妻の元へ。


「祝福ですか?それは一体?」


 ここでもかつて祝福をかけた二人と同じことを聞かれ、なんとなくやんわりと回答して。

 少し照れながら夫婦で手を組み向かい合う二人に、セラフィーナが祝福の魔法をかける。


 これもまた、今回集まってもらった理由のひとつ。関わった者の中に幸せな二人がいるのであれば、出来る限り祝福する。


「これは。凄い魔法ですね!暖かくて護ってくれるような。え?これ永遠に続く術式?そんなものがあり得るなんてっ!?」


 祝福を受け、自身の中に定着した瞬間にクラリスが驚愕する。アセリア姫を除けばおそらくフィルメリア内でも上位10位以内に入るであろう、王宮魔術師として通じる素質の持ち主。

 自身にかけられた魔法を解析しようとして、その圧倒的な性能に驚きを隠せない。


「さすがはクラリス様ですね。これはこんな術式ですの。」


 感じ取った効果からその魔法の解析をしていたクラリスに、直接手のひらの上に祝福の術式を乗せてしっかりと見せてあげる。

 幸せを呼ぶ魔法、セラフィーナにとって隠す必要などない、多くのものに使えるようになって欲しい魔法だが。


「う。これは、読めない。私には読めない部分があります。これはセラフィーナ様やアセリア様が扱われる、あの金色の魔力を使われてますね。そこが全く読めない。悔しいですが。」


 さすがに世界の力はわからない者には理解できないようである。この魔法を託せるとしたら、あとはアセリア姫とセティスか。

 セラフィーナは魔法を託すことは諦め、夫婦と少し魔法について談笑する。ラムザスの剣技を聞いて、一撃必殺を旨とする騎士ならばそれに合った魔法があると伝えたりして。


 自身もスペックは別として、二刀流の騎士である。普段は強すぎて使わないが、魔法剣技も色々と編み出しており、その内のひとつをラムザスにも伝授する。


「この力は人々を護る為に使ってくださいね。」


 と、微笑を浮かべてお願いも加え。


 なおクラリスにはアイシクルブリザードがおかしくなってしまった事を伝えられ、「それならこうすれば常態化できますわ。」なんて反則な魔法を教えてしまったので。


 クラリスは今後、瞬間凍結、即死魔法の使い手として、もちろんアセリア姫とセティスを除いてではあるが、フィルメリア王国騎士団最強の魔法騎士になってしまったりもする。


 こうして夫婦と楽しい時を過ごしたのち、今度はまだシェフィールド邸のテーブルで議論を交わしている者たちの元へ戻り、リッチェルとレアニールにも祝福を施して。


 その間シェルンは王族テーブルで、セラフィーナがいない間に色々と過去のセラ様ポンコツ伝説を皆に伝えて笑いを取り。


 もっともそれは後にちょうばつを受ける原因になるのだが。


 おおむね楽しく幸せなディナーは終了となり、皆はたくさん食べていい感じで落ち着いて。


 あとはもう、寝るだけ。というかんじで。



「皆様、お食事は楽しまれましたか?この後は大浴場がありますので、1日の疲れを癒してくださいね。」


 と、一部の者にしか伝えてないネタをいきなりぶっこんで皆を困惑させたりもする。


 だがここで、ひとつの問題というか、気にしていなかったことが顕在化する。


「あ、あの。私達お食事というお話は聞いてましたが、お風呂なんて聞いてなくて。その、着替えが。」


 そう、誰にも大浴場体験とかお泊りしてもらう事を明確には伝えてはいなかったので、誰も準備していなかったのである。


(しまったっ!これでしたわっ。何か忘れていると思っておりましたが、お泊りという事をお伝えし忘れておりましたわ!)


 言われてようやく気付いたセラフィーナ。当然お泊りとなると衣類は必須だし、たとえかつてお泊りしたメンバーには服を送っていたとしても、今日持ってきているはずもない。


「ご、ごめんなさいね。すっかりお伝えし忘れておりましたわ。この後大浴場で疲れを癒して、その後よろしければ、このお城にある客室でお休み頂こうと思っておりましたの。」


 直前になってとても大事なことをお伝えされて、困り果てる面々だが、確かに時間的には今から帰るのも微妙である。

 なにより普段は使えない大きなお風呂、出来れば入ってみたい。


「セラフィーナ様、また前みたいに服を創って頂いたりは出来ないんですか?」


 もはや勝手知ったるセラフィーナ、みたいな感じでミリエラが提案し、是非ともお泊り頂きたいセラフィーナは即案を採用し。



「ね、ねえ。ど、どうかな?」

「あ、ああ、すごくいい、と思う。」


 手渡されたお泊り用の服を自分の体にあてて、旦那に見せて意見を聞いているクラリス。

 その服はお泊り用の部屋着、セラフィーナが愛用しているような可愛らしい衣装のネグリジェである。

 というか女性陣は皆そんな感じの服を、男性陣はルームウェアとルームパンツを作った。

 もちろんサイズは皆ぴったりに作ってある。


 これでもう、お泊りを拒むものはないっ!


 セラフィーナの思惑通り、今日は皆がメルヘン城にお泊りになることが確定し、ここからは男女に分かれて大浴場へ。


 その前にまた、セラフィーナが要らないことをポロっと。


「ねえシェルン、お風呂上りにスイーツなんて可能かしら?」


「あー。できますよー。実はある程度作ってますよー。」


 主君の言葉に忠実な侍女が応えて。


 それはティールームにいる皆の耳に入り。


「ス、スイーツ、ですか?もしかしてシェルンさんが創られたスイーツがあるのですか?」


 セラフィーナと比べてずっと落ち着いている、アセリア姫がなんかおかしな反応を始めた。

 その横でシルヴィア王妃は「あちゃー」と言った感じの顔をしていて、セティスも国王クラードもなんか目を閉じ首を振り。


 スイーツ。魅惑の甘くておいしいお菓子。


 とても前向きで真面目、ひたむきなアセリア姫にとって、唯一ともいえる魔法以外のご褒美でもある、スイーツ。


 近しいものしか知らないが、アセリア姫はとても甘い物が好きであり、スイーツは大好物である。

 シェルンのコース料理でもスイーツを付けることはできるが、ここ最近はスイーツはない形で創っていたため、皆はまだシェルンが創るスイーツをしらない。


 唯一知っているミリエラは「そういえば、以前いただいたフィナンシェ、ものすごく美味しかったなぁ。」なんて幸せそうに反芻している。


「さ、さあ、お風呂に参りましょう。早くお風呂に入って、スイーツを頂きましょう!」


 なんか変なスイッチが入った感じのアセリア姫が、皆に強くつよくすぐにお風呂に入ることを薦め。



 ここからは男女に分かれて、お風呂で。



 そしてアセリア姫唯一の弱点、ではなく、甘い物好きのアセリア姫にとって最高のご褒美タイムが。



 その後で始まる・・・らしい?


3章ラストで書いたキャラ設定のひとつがようやく消化されそうです。


シェルン謹製スイーツを目の当たりにしたアセリア姫の明日は、どっちだ?


アセ「姉様!スイーツです!早くお風呂入って出ましょう!」

セテ「なあアセリア、お風呂はまずゆっくりとだな。」

アセ「はい!ゆっくりすぐに入りましょう!!」

クラ「アセリア様、スイーツの話になるとすごいですよね。」

ミリ「そうですよね。あんな感じのアセリア様見るの久しぶりです。」

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