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4-12:それぞれの状況(フィルメリア)

セラ様のずるいバフは魔法使いに有利になるようです。

 司令本部から飛び出したアルヴィンスが、早馬で駆けその場に到着すると、そこには。


「アルヴィンス様!あれですっ!我々の力ではっ!」


 騎士団の騎士二人と、兵士はざっと20人。取り囲んではいるが近づいて攻撃することもままならない様子で。


「こいつはまた。なかなかっ!」


 馬を降り、剣を抜いて、ソレに正面から立ち向かう。


 ソレの、その威容は。



 まさに伝説のドラゴンのようで。


(こいつも魔法兵器というやつか。弱点の魔核はアレか!)


 そのドラゴンのような形状の頭頂部。そこに表出はしていないが、セラフィーナから譲り受けた魔力視は魔核をしっかりと浮き彫りにしていて。


 それどころかそのドラゴン型兵器・・・ドラゴン・・・から、何らかの魔力波のようなものが出ていて、周囲に張り巡らされたセラフィーナの魔力監視網、魔力の阻害効果も持っているそれにぶつかって、かき消されている様子までもが見て取れる。



 セラフィーナがフィルメリアに不在でも、その監視網兼魔力阻害網はいまだにその効力を保持していた。


 かなりいい感じでずるいデバフである。


「あの高さではそうそう撃ち込めんな。俺がやるよりクラリスのが得意なタイプか。」


 頭頂部。後ろ足二本で立ち上がるそのドラゴンの高さはおよそ10メートルほどだが、当然動く上にこちらが斬りかかるにはジャンプが必要。

 そもそもそれだけの高さまで跳べる騎士自体、人数が限られるし、相手は地に足を着いたまま、自由に反撃できる。


 そのドラゴンは定番ともいうべきドラゴンブレス、のような形の魔法を口から放射してきて。


 巨体から繰り出されるその炎は、前方に放射状に広がって草原を燃やし、目の前の兵たちは皆慌てて非難して。


 ドラゴンが炎を吐く瞬間、アルヴィンスは跳び、その頭頂めがけて突っ込んで。


 ギィヤオウ!という感じの咆哮が轟き、下方に火炎放射していた首は上を、跳びあがったアルヴィンスを見て。


 口を開き。


 ドゴォ! と、炎の塊を吐き出す。


 通称、火炎弾ロックファイアの魔法。の極大版。


 空中で避けられる場所など無く、一直線に自分に向かって飛んでくる岩石の塊を見て。


 アルヴィンスはニヤリと笑う。


斬風烈破ブラストスラッシュ!」


 裂帛の気合いと共に放つ、斬撃に重ねた魔法。


 アルヴィンスの騎士剣に瞬時風が纏われ、真空の烈風となり、斬撃と共に解き放たれて。


 それは激しい音を立て火炎弾にぶつかり、ドラゴンの口から放たれた巨大な燃える岩石塊を斬撃で真っ二つに断ち切って、解き放たれた烈風で粉々にして。

 さらに烈風は留まらず、砕けた岩石を巻き込みドラゴンの頭部に向かって散弾のように降り注ぐ。


 ギィィィィ!


 ドラゴンはまるで生き物のように声をあげ。これも魔法兵器を生物と思わせるためのプログラムだろうか?


 だが降り注いだ散弾を多数被弾してもその体は無傷。魔核さえ護られていれば行動に支障はなく。

 まだ空中で、頭頂に迫るアルヴィンスを睨みつけ、くるりと背を向けると横から猛烈な勢いでしっぽを振り。


 ギンッ


 アルヴィンスの剣が受け止め、だが巨体のしっぽは止まらずにそのまま振り切って、アルヴィンスを吹き飛ばす。


(こいつ。思ったよりも速いっ!)


 吹き飛ばされた状態でも冷静に、そのドラゴンの動きを見て、速さを見て。


「破ッ!」


 吹き飛ぶ最中、剣を横薙ぎに体をひねって振りぬき、そこから爆風を生み出して吹き飛ぶ勢いを殺し、逆方向へ加速して再びドラゴンに迫る。




 なんかセティス以外にも空中機動出来る騎士がいるような感じになっているが・・・。



 アルヴィンスはセラフィーナの加護を受けた自分の力量を試した時、得意とする風系の魔法威力がなんだかとてもおかしなことになっていて。

 それに気づいたアルヴィンスは事前に色々試して。


 バフがかかっている間の限定ではあるが、この元騎士団長は空中を剣戟である程度移動可能になっていた。



 そんなわけで空飛ぶアルヴィンスはまだ背を向けたままのドラゴンに接近し、だが後ろを向いていると油断せず。

 これは形状などあってないような魔法兵器だと、前日のコマンダー2号との戦闘でしっかりと把握して。


斬風重砲ブラストキャノン!」


 斬撃と共にまた魔法を放つ!


 その魔法は先ほど放った魔法の斬撃と違い、高密度、超高速の風の砲弾。重砲。

 ドラゴンの頭部に向かって、先ほどドラゴンが吐き出した巨大な火炎弾に匹敵する、目にみえない砲弾が凄まじいスピードで打ち出され。


 魔力感知で気付いたドラゴンはさっと頭を振りよけるがよけきれず、ニアミスして。


 ギ・・・


 その頭を半分吹きとばして、頭頂部に隠されていた魔核が晒される。その巨大な、直径50センチほどの魔核が。


「アレを撃てっ!」


 アルヴィンスの言葉と共に、魔法を使える騎士がファイヤーランスを放ち、弓兵が弓を射って。


 ギー!


 半分吹き飛んだ頭もそのままに、魔力障壁を形成して魔核をガードする。

 その障壁に弓は弾かれ、ファイヤーランスは鎮火し。


 その間に間近に迫ったアルヴィンスが上段から一閃、魔核を断ち切ろうと剣を振り下ろして。


 ギィィィン!


 ドラゴンの外見を保っていたそれの短い前足が伸び、その斬撃を防いでいた。




―― シェフィールド領内


 魔獣部隊を各隊に任せたレイノルドは、自身の移動が最短となるようもっとも東に位置する敵を攻撃する部隊に自ら参加し、強化されたその能力を存分に揮っていた。


「狼は任せたっ!虎と熊は俺が斬るっ!あの男を抑えろ!何度も言うが爪には気を付けろよっ!」


 兵たちに指示を出し、一番雑魚である狼は任せて、最初に動き出す厄介な虎と熊を速攻で斬り伏せる。


 兵たちは三体の狼魔獣をそれぞれ三人ずつで相対し、出来る限り速攻で叩き伏せるが。


「はやい!さすがレイノルド様だ。」

「ウィンスト隊長だった時とは全然違うっ」


 自身が前線に出ずに戦っていた前大隊長と違い、最前線で隊の最高戦力として動く男は、兵たちの信頼を一身にうけて士気を最大に保ち、あっという間に魔獣部隊の指揮官以外を殲滅する。


「これは、やっかいな」


 平坦な、ゆっくりとした口調で指揮官、コマンダー二号のコピーされた量産機が戦闘態勢を取ろうとするが、そこへ。


「のんびりしてんじゃねーぞっ!」


 罵声のような言葉と共に、グラツィオが。レイノルドとしのぎを削る、隊の戦闘力ナンバー2が斬りかかる。


「うお。まずいか」


 かろうじて魔核を斬られぬように飛び避けて、ここまでで感じた圧倒的戦力差に撤退をしようと変形を。


「おせーよっ!」


 また、グラツィオが飛ぼうとする魔法兵器に蹴りのようなそぶりを見せて、足先から何かが飛んで。


 ドゴォォォン!!


 直撃して爆発する。そこには粉々になってキラキラと舞い落ちる魔核と、何もできずに敗北したコマンダー二号の体、魔法で構成されたそれが虚空に消えるのを見て。



「やっぱお前のソレ、すごいな。」


「オレは普段使える魔力量すくねーからな。」



 グラツィオの使う、爆発する攻撃。


 彼は保持する魔力量は魔法上位者と比較すると比べるべくもない程度だが、その魔法の素養自体は十分高く。

 アセリア姫程の大きさのものはとても無理だが、非常に小さく、そして密度の高い魔石を創生する能力を持つ。


 騎士団に入り、実際の戦闘中に仕える魔力量が少ない彼は自身の才能と、どうすれば戦力として有効に使えるかを考えて、極小の魔石に爆裂魔法を仕込んだものを、事前に大量に作っていた。


 その爆裂魔法が仕込まれた魔石は戦闘中に魔力を籠める必要は無い形で編み込まれ、彼はその魔石を弾丸のように使う事で、詠唱も発動も一切不要な、爆裂弾を使える騎士として戦っている。


 その足、靴には弾丸となる小さな魔石を大量に装填し、脚の振りぬきひとつで敵に高速で蹴り飛ばす動きを身につけ、魔法が使えないことによるリーチの無さ、物理攻撃しかできない剣の弱点をカバーし、余りある破壊力を持ち。


 自分の才能を生かした戦い方は、魔力が少ない騎士や兵たちの参考にもなり、それぞれが独自の、型にはまらない独自の戦い方を考えるようになるいい見本となっていた。


「次行くぞっ!」


「おおぉ!」「はいっ!」


 こうして一番端から順に、魔獣軍団を抑えている自軍の兵たちに加勢というか、抑えさせておいて精鋭で各個撃破していくという形で、順調に魔獣部隊を減らしていく。



「意外といいペースだな。兵も善戦してくれている。」


「だな。やっぱセラ様のバフずる過ぎないか?」


「おまえな、セラ様って気安く。」


「ほら、シェルンちゃんもそう呼んでたろ。」


「シェルンちゃんって。それも気安いな。

 まぁ見た目はそんな感じだがな。」



 普段の軽いノリがそのまま出るグラツィオの、セラフィーナとシェルンを呼ぶその呼称に。



 二人の、いろんな意味での凄さを知っているレイノルドは少し軽すぎないかと思ったりもするが。



『でもレイノルド様。セラフィーナ様ってホント凄いけど、とてもおおらかだし、すごくポンコツさんなんだよ。』


 二人きりの時にミリエラが発した言葉を思い出し、ウィンストを制圧した時の圧倒的な能力と、そのあとの色々台無しにする大食い宣言や振舞も思い出し。



 メルヘン城とその中にあった牢を思い出し。



『確かに凄いけど、意外と可愛らしい人だよな。』


 心の中では幼馴染と恋人に賛同して。


 その後もレイノルドとグラツィオを筆頭にする、第二大隊殲滅チームは順調に敵を殲滅して西方へと進んでいき。


 シェフィールド領の敵は危なげなく一掃して第二大隊の隊員も皆引き連れて、自分の家が治める領、カーランドへと突入することになったのだが。



 そこには。




「いないな。」



「ああ、いないな。魔獣部隊はどうなったんだ?」



 トップを進む二人の前には、なぜかのんびりと休憩している第三大隊の防衛部隊員が居て。


 彼らが食い止めていたはずの、魔獣も魔法兵器も、それを隠す隠蔽魔法すらも何も見えず。というかいなくて。



 仕方なくのんびりしている第三大隊の兵士へ様子を聞きに行ったのだが。


「あ、いえ。ホント我々、やることが全然なくて。とりあえず今は全部隊待機ということになってます。」


 すごく気が抜けた風で。


 そこへ西から一人の兵が走ってくる。

 その様子は慌てているようで、


「レイノルド様!シェフィールドの状況を!もし余力があれば極精鋭だけの増援をお願いしたいのですが!」


 極精鋭だけ。つまり隊の中でも精々3名程度しかいない、ホントに群を抜いた者たちだけを求めるようで。


「どうした?なにがあった。」


 聞いてみるが。


「敵の総大将と思われる部隊があり、今アルヴィンス様が対応中なのですが!敵が巨大なドラゴンの様で!」


「ドラゴン!?いやそんなものいるわけ・・・魔法兵器がドラゴンになってるってことか!」


「レイノルド!俺は行くぞ!お前も隊を休ませたら来い!お前は案内してくれ!」


 グラツィオが即応し、レイノルドは責任者としての任を全うしてから、アルヴィンスの戦う場へ向かう。



 結局なぜカーランドの敵がいなくなっていたのかは聞く間もなく、緊急事態の報せを受け向かった二人は、そのまま知らぬ方が幸せな感じだった。



 そのくらい、この隊はズル・・・


 第三大隊の、誰か一人だけがすごかった。




―― カーランド領南西部



 レイノルド同様、各部隊に防衛を任せ、担当する領の最東端に位置する部隊から順次撃破していくクラリスは、この戦いにおいて最も多くの敵を殲滅している存在だった。


 というか、正直ずるかった。と本人も思う。

 これなら私一人で全て殲滅もできたんじゃないか、なんて割と本気で思っているし、その考えもそこそこ正しい。



 なぜなら・・・。




「アイシクル・ブリザード!」



 敵の部隊に対して、ひとつの魔法を発動する。


 クラリスは各属性の強力な攻撃魔法を扱える元王宮魔術師としての実力と、騎士としての身のこなし、剣技を身につけたオールラウンダーである。


 騎士としての単体戦闘力ではアルヴィンスやレイノルドに大きく劣るし、魔法抜きならグラツィオにも及ばない。


 そんな彼女だが、それでも大隊長の地位を賜るくらいには剣の技術も抜きんでている。だが。



 今回その剣の冴えは一切発揮されることも無く。



 それどころか、得意とする数々の魔法が披露されることも無く、使うのはアイシクル・ブリザード一択。



 猛烈な氷の吹雪を起こして、その中にある敵を冷気と氷の粒手による攻撃に晒す、かなり強力な魔法である。


 もとより魔力量も自然回復量も多いクラリスにとって、この魔法はそこそこの魔力消費量で範囲攻撃ができて相手も冷気で弱体化できるという、とても便利な魔法で。


 彼女は結構愛用しているが、王宮魔術師を含めコレを連発するような人間はあまりいない。

 そこそこの魔力消費量は普通の騎士団員には厳しいし、そもそも騎士団の騎士で使えるものが居ない。


 王宮魔術師は使える者もいるが、戦闘において敵のすぐ近くまで近づいて実行するのは難しい。


 そのくらいに射程が短く範囲も直径が最大でも6~7メートルほどと、範囲攻撃魔法の中ではそれほど広くはない。


 要するに前衛用の強力な小範囲攻撃魔法なのである。


 フィルメリアにおいて前衛を張れる魔法使いなどアセリア姫以外存在せず、それ以外は皆魔法騎士となるが、魔法騎士でもつかえるものは一人しかいない。


 実質的にクラリス専用魔法である。


 ちなみにアセリア姫は同じ局面になると極太レーザーをぶっ放すので、彼女には不要な魔法でもある。使えるが。


 過去第三大隊が討伐に出た時も、クラリスはこの魔法を敵のど真ん中で叩き込み、その一撃で傷を負い、寒さで身動きが鈍った魔獣たちを周りの兵で一気に制圧できる。


 そんな、とても使い勝手の良い魔法だった。



 ・・・だった。



 いままた、ひとつの敵魔獣部隊に向けて解き放たれたソレは、敵の部隊を丸ごと飲み込むサイズで。

 なんか直径20メートルくらいに広がってて。


 指揮官であるコマンダー2号をも巻き込む範囲のそれが発動すると、猛烈な吹雪がその領域に発生して。


 吹雪というか、氷の槍の乱舞というか。


 敵に打撃を与える氷の粒手が、一粒一粒が粒というサイズどころか長さ1メートル程の氷の槍になっていて。


 それが元の魔法と同じように吹雪として領域内に数えきれないほどに降り注ぎ、敵を串刺しにした。



 そこまでであれば、その領域から抜け出せば回避も反撃も可能な魔法、ということに一応はなるのだが。



 問題はむしろ冷気であり、その領域内を包む冷気は領域全体を急激に冷却して、領域内の湿度を大幅に高めて。

 生物の範疇に一応おさまっている魔獣と、魔核が実体であり生物ではない魔法兵器、コマンダー二号が。


 全てその場で一瞬で氷漬けになり、カチカチに凍ったところを氷の槍が大量に降り注いで粉々にする。


 冷凍された時点でコマンダー二号が動きを取ろうとしてもその瞬間に氷の槍が数多降り注ぎ、その魔核ごとあっという間に破壊してしまい、結果何もできず消滅して。


 こうして吹雪の魔法はセラフィーナのバフにより、無事その性質を急速冷凍、即死攻撃へと変化させ。


 敵の部隊間を移動しながら使う分には、クラリスならば自然回復で賄える程度の魔力消費であり、よって魔力が枯渇して使えないという状況も発生しないクラリスのそれは、一撃で敵一部隊を壊滅させ。



 発動→移動→発動→移動を繰り返しているだけで、全ての敵を殲滅していた。


 これは完全に、クラリスにとっても、それに従い移動している第三騎士団の騎士、兵士にとっても。

 ただの作業で。戦いと呼ぶものではなくて。




 もちろんこれは、王宮魔術師の中でも攻撃魔法に特化し、もとよりその威力が強力だったクラリスだからこそできた偉業であり、他の者が同じ魔法を使っても、けっして同じ効果にはならなかったはずである。ならなかったはず・・・。


「セラフィーナ様が用意してくださった事前の交戦、全く役に立ってない気がしますね。」


 自分の魔法がバカ威力になったことに自分で呆れ、それを分かっているはずのセラフィーナがあんなに苦戦する相手と事前に戦わせた意味が理解できず。


「隊長が相性良すぎるんですよ。きっと他の大隊は苦労してると思います。」


 部下にそう言われ、魔法が苦手なグラツィオが何故か脳裏に浮かんで、


(クラリス様!それズルいっす!俺もう帰りますね。)


 なんて、全部を丸投げしてきそうな想像をして。


 内心でため息をつきつつ、この戦場では最強存在になってしまったクラリスは、他の隊への加勢もすでに予定に織り込み済みで、さらにその殲滅速度を上げて突き進み。


 当初セティスが懸念していた、西の防衛ラインを護る第一大隊、最強のはずの大隊が南北に伸び切るのを防ぐためにカーランド西に配置した部隊の仕事も取り上げて。


 じゃなくてそのあたりも速攻で殲滅していき。


 気が付けばクラリスは担当領域をレイノルドたちの三分の一くらいの時間で全て片付けて南のダーボンに入り。

 呆れる第一大隊の面々をよそにそこでも殲滅を続けて。


 その視界に、同様の戦術で第一大隊の最精鋭を引き連れた第一大隊副隊長ラムザスが入ると、その先にはもう、魔獣部隊は存在していなかった。



「クラリス!お前なんでここにいるんだ?」


 立場的には副隊長だが、同期のラムザスが少し呆れたような、困ったような顔で問いかけてきて。


「えっとね。カーランドとダーボン、カーランドの一番東から順番にね、全部殲滅してきたの。」


 いつもの生真面目な口調ではなく、柔らかいというか、安心というか、油断しきった口調でこたえるクラリス。


「は?」


 ポカーンと。開いた口が塞がらない感じのラムザスだが、クラリスがそんなアホな嘘などつかないことを一番よく知っている人物でもある。


「その、なんていうかね。私の魔法、セラフィーナ様の強化受けてからなんか、おかしくなっちゃって。」


「ああ、それは分かる。俺もこんなに違うなんて思ってもみなかった。だがそれでなんでこっちに来たんだ?」


 一番大事なところが、想定外すぎて頭から抜け落ち。



「だからぁ、全部殲滅してきたのよ。」


 生真面目な雰囲気がまるでないクラリスの言葉に。


 思考停止するラムザス。


 彼女の魔法については恐らく騎士団中で一番詳しいその男は、彼女の魔法が今回の敵にどのくらい通じるかもなんとなく見当がつく。


 確かにセラフィーナの強化は恐ろしく強力で、ラムザス自身も自分が信じられない位には強くなっていたが。

 魔獣部隊も、魔法兵器も斬り伏せてきたが。


「いや、速すぎないか?おまえカーランドの北も全部担当になるはずだし、第三大隊のメンバーでそんな実力者」


「第三大隊で、じゃなくて私一人で。殲滅しちゃった。」


 いつもの雰囲気がまるでないクラリス。その様子は少し甘えた感じもある女の子のような振舞で。


 公私ともに一番信頼している騎士団のメンバー。

 ラムザスに向かって。軽い感じで。



「お、おう・・・」



 驚愕としか言いようのない話をかわいい感じで伝えてくるクラリスを見て。


 なんかもう、今日の彼女には絶対逆らってはいけないと、何があっても絶対服従だと。


 第一大隊副隊長ラムザス・ライトは。

 クラリスの夫は、妻に対して、強く強くそう思った。



 その後当然、こちらにも伝令が来ることになるが。




 後日彼は、妻の圧倒的な活躍ぶりをしっかりと聞き、それを称え、お前の欲しいモノなりやりたい事があったら言ってくれと。出来るだけ叶えると言ったら。


「できればまた、シェルンさんのお料理が食べたいな。」


 あの二人と面識がないラムザスにとって、ものすごくハードルの高い要求が来たのだが。

 それがどうなったかはまた後日の話で。




 こうして意外と早いペースで魔獣部隊の殲滅は完了し、最精鋭たちはアルヴィンスの元へと合流して。




 シュタイムブルグとフィルメリア。


 それぞれの地で行われている戦いは。




 最終局面を迎える。


戦闘が分散していてあちこちぐだぐだですが、セラ様のお陰で無事クラリスさんも一時的に人外魔法が使えるようになりました。

お陰で雑魚戦はあまり書かずに済むようになりました。クラリスさんに感謝です。

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