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4-8:開戦

間に書かないといけない話を入れてしまったので、さらにテンポが悪くなってしまいました。難しい。

「サポートですか。たしかに会議の時も皆を加護すると仰ってましたね。」


 セラフィーナの一言に、騎士団の戦いを初めて間近で見たミリエラが相槌をうって。

 いくら気丈になったとはいえ、想い人が目の前で戦う姿はやはり不安があるようで。その表情は少し強張っている。


「ええ。皆様には今戦って頂いた感覚を分かって頂ければ、万が一にも油断はされないかと思いますわ。

 その上でわたくしの加護。アセリア様の強化魔法みたいなものですが、それを戦われる全員に施しまして。」



 あのアセリア姫が使う強化魔法。セティスを一次開放のシェルンに匹敵とまではいわずとも、かなり善戦できる状況まで引き上げたあの魔法を全員に。


 その言葉に、一部の者はけげんな顔をするが。


「先程はかなりの苦戦をされていた様子でしたので、ここから数百メートル先いる別の魔獣部隊と再戦しましょう。


 そうすれば、わたくしの加護がどのようなものなのか、皆様にもお分かりいただけますかと。」

 


 そう言って、瞬時にその場にいる全員を金色で包む。



「む、これは?なるほどこれはありがたい!」

「暖かい魔力。それにすごく優しく感じます。」

「あ、俺が今朝癒してもらった感覚と一緒の。」


 それぞれがその力を感じ、再度魔獣部隊へと挑み。



「なんか、ズルをしたみたいな気分だな。」

「まあ、そんな感じはするが。あれだけの差があれば、各小隊にそれぞれ一般兵を付けても戦いになりそうだ。」


 結果は圧勝に終わり、正直先ほどの戦いは何だったのかという感想で。

 セラフィーナの加護。身体能力だけでなく、魔力も魔法の火力も底上げされたうえに、常時体力と魔力が自動回復するというチート魔法は、防御面もぬかりなくシェルンのアクティブシールド簡易版を付与されて。

 そのうえで敵の弱点となる魔核を常時視認できるという出鱈目っぷりに、もう何か諦めたような感じで。


 あの魔法を可視化する術式、要らなかったじゃん!


 なんて数名心のどこかで思ったり思わなかったり。最もセラフィーナが去った後でもあの術式は使えるので、皆使えるようになって損することは何もない。


 これでアセリア姫と騎士団長のセティスが加われば、国土の二方面全域に展開している部隊は余裕で抑え込める。

 そう感じる者もいたが。


「できればアセリア様とセティス様には、わたくしと一緒に来ていただきたいのです。」


 という言葉で、二人も戦力から外される。


「はい、わたくしとセティス様はセラフィーナ様と共に。

 いくらセラフィーナ様がご自身の責務と仰っても、これはこの国への侵略。

 魔獣や魔人はともかく、敵首謀者への対応は、わたくし達がその目で見て決めるべき。そういうことですね。」


 アセリア姫の言葉に、少し悲しい笑顔で頷く。


 セラフィーナにとって、あくまでその怨敵は人々の敵であり魂を持たない兵器たち。使われるだけの、兵器たち。

 人々を殺す為だけに作られた魔獣と、それを使役する為に作られた魔人、魔法兵器。


 そしてここまでの話でも、ウィンストに対するセラフィーナの対応でも、アセリア姫にはこの方が決して人を裁かないということが分かっている。



 だが、今回はそれ以上に。



「セラフィーナ様。ありがとうございます。」


 セティスが深々と頭を下げる。分かっているから。


 この方は彼を。レナードを亡き者にした本当の意味での仇を、アセリア姫と自分に任せようとしているのだと。



 私たちの心を、汲み取ってくれているのだと。


 そうでなければこの魔獣の部隊に、民を護る戦いに、王国の誇る最高戦力を投入しないわけがない。



「これでわたくしから皆様にお伝えすること、お願いすることは全てになりますわ。

 明日はよろしくお願いしますね。」


 最後は慈愛の微笑で。皆に想いを託して。


 こうしてメルヘン城への緊急招集と会食、現状確認は夕刻前には終わり、緊急招集された騎士たちとアセリア姫を王宮へ送り。ミリエラとグライスは領主邸に送り届け。


 おそらく王都では既に、明日に向けての緊急部隊編成が行われている事だろう。

 一足先に帰っている国王は、今回の軍事行動について諸国へ説明をする算段を、先行して色々と行っているはずで。



 シェルンと二人、メルヘン城に残ったセラフィーナは、今朝の空間転移祭で始まり、怒涛の勢いで展開した物事を片付けて、ようやく落ち着けた時間を満喫するため。


 侍女にとても大事なお願いをする。



「ねえシェルン。鉱山のおうちに置いてきた諸々ですが、今からわたくしが引き上げてきますね。」


 なんか突然、思い出したように。


「あ、はい。時間がとれたら私が回収しますよ?」


 従者としては、お姫様がいきなり回収係を買って出る理由が分からずに。いや分かっているかもしれないが。


「いえ、荷物もそこそこありますから、わたくしの転移の方がずっと速いですわ。ですから。」


「ですから?」


 シェルンに向けて、とても切実な表情で。


「ですから!今日は久しぶりに、貴女の手の込んだ!


 とても美味しいおいしい焼き菓子を!


 お願いしますわ!」



 ものすごく、力強く。



(あーーー。最近食べてないから。)


 ちょこっと呆れたもあるが、納得もするシェルン。


 大事なお願い。メルヘン城に来てから色々な美味しいお食事は頂いたし、フルーツのカットだけでできるデザートや、とりあえず素材の良さでカバーしたチーズケーキはしっかりと頂いているが。


 手間のかかる焼き菓子や、焼き焼きシリーズの魔法だけでは作れないというか面倒なお料理をするための一式。

 シェルンが長年使って、色々な魔法を微調整して仕込み、改良し続けた、スペシャルお菓子作りセット。


 それが元々半年間住んでいた鉱山のおうちに置きっぱなしだったので、ここ最近は手間のかかったおやつが食べられてなかったのである。


 シェルンのお料理はどれも絶品だが、一度味わってしまうと忘れられない魔性の味。1800年以上勤めた侍女の歴史が創り出す究極の焼き菓子。


 そのくちどけ、しっとりとした中にも歯触りのよい食感としっかりしたバターの風味、そして見事な甘さ加減も相まって、一度食べればスイーツ好きは誰でも虜に!


 と、言う程かどうかは不明だが。


 セラフィーナが持つ無限の寿命、多くの者が自分より後に生まれ、関わっても必ず見送ることになるという人生。


 その中にあって、数少ない本当の楽しみのひとつ。食の中でも必需性は一切ない、本当に趣味嗜好としての楽しみ。


 それが最強メイドが誇るスイーツなのである。


 シェルンも長すぎる付き合いの中、本当に大切なことはさておき、自分の大切な主人が心から楽しみにしていることくらいはすぐに分かる。


「承知しました!私も久しぶりに全力で作るのです。」


 ニコニコ笑顔で答えて。


「ですのでこれから書く材料も、お願いしますね。」


「あ・・・」



 結局。鉱山のおうちから置きっぱなしになっていた諸々の移送はセラフィーナが行い、シェルンもついでに指定された街へ移送してお買い物をお願いし。


「では作りますので、少々お時間をくださいね。」


 キッチンに入り、その持てる能力を発揮し始めたシェルンを尻目に、セラフィーナはティールームのバルコニーへ。

 美しいシェフィールドの海岸線を眺め。


 セラフィーナの目にはしっかりと見える魔獣部隊。数日前まではそこに居なかった、ソレ。

 おそらくシェフィールドの件がああなって、そこから順次展開されたであろう、あの魔獣部隊。


 グラツィオが転落した崖の周辺は開けた場所だった。元々あのあたりに集結していて、シェフィールドの魔法陣消滅を機に部隊を展開させたのだろうか?


 ならばあの崖の周辺。そこから見える海。

 魔獣部隊は間違いなく、西の森で集められたはず。それをどこから国内に侵入させ、どこにいた?


 シェルンのスイーツを待ち詫びながら、現状を作り出したものたちの動きを想定し、計算し。


 そんな中。


「シェルン。少しお出かけしてきますわ。貴女はそのままスイーツをお願いしますね。」


「はい。行ってらっしゃいです。」


 気を付けてとか、どうされました?とか。シェルンはそういう言葉は掛けない。セラフィーナが突然自ら動くときは必ず何か理由があり。それに自分の主は心配という言葉とは一切無縁だと、侍女は心得ている。



 違う意味では、いつもとても心配しているが。



(セラ様。やらかしだけはしないでくださいねー。)




―― 領都シェフィールドを東の海上から望み


「ふむ。たしかにすべての魔法陣が消えている。部隊の配置は完了しているか。二号機の消息は。」


 赤い髪の男が変化したものと同型の鳥型の魔獣。それが東の海からシェフィールド内に侵入し、状況を確認しながらアジトを目指す。


 兵器名、自律型指揮装置。コマンダー二号。

 最大6体までの魔獣を指揮下に置き、小隊指揮および敵との交戦を主とする魔法兵器。

 鳥型ではあるが、その音声は明瞭で、魔獣化した時の狂気の思考回路も無いように見える。


 それ以上に、魔獣の鳥の姿でありながら、その体からは魔獣特有の妖気のような魔力を一切放っていない。


 そんな存在は彼らを起動し使役している少年の、荒い人使いにも文句をいうことはなく。ただ与えられたプログラム、組み込まれた術式のままに、任務を全うしようと飛び続け。



「お待ちなさい。」


 空中で声を掛けられる。


 それを鳥型の魔獣としてではなく、一体の兵器として。言葉を理解すると認識しているセラフィーナに。


 鳥型の魔獣形態を保つコマンダー二号。その一号機は、そのありえない状況において、行動パターンの定義が無く。


「は?」


 セティスに斬られたものと同じ、間の抜けたような声を発して、だがそのまま飛び続け。

 定義されていない行動を検知した場合疑問を呈し、それまでの行動を続行するようにプログラムされているらしい。



「ここで落としても街の方々が驚きますわね。では。」


 セラフィーナは飛び続けるその兵器に少し近づき、共に転移させてメルヘン城内へと帰還して。


「む。エラー。座標特定不能。状況確認。」


 人として振舞える範疇を超え、人としての姿に戻ることもなく、状況確認を開始して。



「あ、セラ様おかえりなさい。どうしたんですかそれ。」


 床に墜落しているような形で状況確認を行っている鳥魔獣を見て、普通に質問して。


「わたくしの監視網に外から入り込んできましたので、とりあえず捕まえましたの。位置的にはシェフィールドの領都ですわね。」


「あらら、まだ外からくるんですか。細かな位置ってどのへんかわかります?」


 お菓子をつくりながらシェルンも質問して。


「このあたりですわ。東の海から真っすぐここまで。」


 監視網の共有と同じ要領で、シェルンにマップを共有してその鳥魔獣の移動情報を共有して。


「位置特定完了。シェフィールド領ホルン岬。お前たちはなんだ?」


 位置特定が完了し、次の行動パターンに移ったらしく、二人の確認を始めるが。当然それは無視して。


「そのルートですかー。なんとなくですが私が潰したアジトに向かってそうですね。」


「なるほど。そういうことですか。ではあなたはシェフィールドの工作班を回収しに来た、という事ですね。

 兵器に聞いても答えは無いと思いますが、あなたを制御しているマスターはだれですか?」


 鳥魔獣に対して、確認するように。


「抵触事項を確認。敵と認定。攻撃をギ...」


「やはり兵器ですわね。決められたパターンに沿ってしか行動できない。憐れで悲しい存在ですわ。」


 その表情は少し曇っていて。

 創り出されたモノは結局、使用者の意図通りに動くこと以外は何もできなくて。

 それが人に害をなすものであれば、破壊する以外に停めるすべがなくて。


 魔核のもっとも残念なところはそれ。指示、術式を組み込み完成させて、兵器として量産されたものは。

 魔核が書き換えられない。中を解析できても、変更はできない。


 だが、セラフィーナは気づいた。男、いや鳥型魔獣の中にある魔核を見て。解析しようとして。

 この魔法兵器は、今までのものと違う。書き換え不可能な魔核(ROM)ではなく、書き換え可能な魔核(RAM)で構成されていて。


 セラフィーナは気が付いていないが、今捕らえたこれはコマンダー二号のオリジナル。コピーされる前のもの。


 それに気づいたセラフィーナは。





「ひとまず処置が終わりましたわ。

 ではシェルン、今日の力作を。まあ!今日はキャトルカールですのね。久しぶりですわ。頂いてもよろしくて?」



 久々に、全力のキラキラ顔で。



 蕩けきったセラ様が、しっかり重厚なパウンドケーキをじっくり味わって食べる様は、それはもう幸せそうで。



「セラ様。気合い入れて4種類作りましたから。

 全部ゆっくり味わってくださいね。」



「素晴らしいですわシェルン!こちらはプレーン。定番のバターですわね。こっちはチョコレートで、上にアーモンドをトッピング。素敵な食感ですわ。」


 ひとつずつ、ゆっくり味わって。


「こちらはマーブルですわね。このお色にこの香り、紅茶を混ぜ込んでますのね。幸せな香りですわー。

 最後のひとつは。これはラム酒ですね。混ぜ込まれたフルーツに芳醇なラム酒の香りが。たまりませんわ!」


 もう、食レポなのか説明なのかよくわからないような状況で、とにかくたっぷり頂いて。



「シェルン、とても素敵でしたわ。愛してますわー。」




 満たしてくれた侍女に、何かズレた感謝をして。





―― 翌日。フィルメリア国内。


 その当日の準備も滞りなく進められ、フィルメリア全軍総数11823名が、北部、西部の戦線へと一日がかりで配備され、その夜。魔獣軍が動き出す夜を待つ。

 その全ての人員に、セラフィーナのチートな加護魔法を付与されて。劇的に強化されて。


 全体の配置が整った瞬間、魔獣部隊の起動を待たずにこちらから仕掛ける方針で。



―― 同日。フィルメリア王国西部。


 国境より外側。魔獣の森との緩衝地帯となっている平原のどこかに。その子供のような男は居た。

 見た目はあの少年と同じ。服装も同じ。

 だがその動きは、なぜかちょっとぎこちなく。


「おっかしいなぁ。ここまで近づいてもまだコマンドの応答が来ないや。もう直接見るしかないかなぁ。」


 首をひねりながら。絶対間違ってないはずなのに。


 彼は知らない。自分の発信しているコマンドが、セラフィーナの力で遮断されている事を。




 自分がそうとも知らずに手に入れた、クリスティアラを滅亡させた時に使われた力。


 その力に全てを奪われ、それ以上の力を手にしてしまい、世界とつながった亡国の王女が。



 それが監視網に入る時を待っていることを。




「結局コマンダー二号の初号機も帰ってきてないし。ふつう一日もかからないはずなのに。

 まあいっか。それもフィルメリアに行けば分かるよね。」



こうしてすべての準備は整って。




魔獣部隊とフィルメリア軍は、激突ずる。


開戦はしましたが、強化フィルメリア軍と魔獣軍はほぼ互角。

何度もあの魔獣軍の戦いを見たい人もいないと思うし、フィルメリア側も大半がモブ兵なので、激突しても細かな描写はありません。

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