4-3:慌てすぎの緊急招集
ちょっと時間がなさすぎる状況で書いてるので、後日改稿するかもしれません。
あと誤字がいっぱいあったらごめんなさい。
赤い長く伸ばした髪を後ろで縛り、赤い目。
その顔、風貌、少し歪な体型。
あの時と違い、人の姿のままで魔獣特融の禍々しい魔力を纏ってはいるが、外見的特徴はアジトを襲撃して騎士団員達を傷つけた、あの男に相違ない。
「セティス様が斬られたのは、あの男なのですね。」
「はい。間違いありません。雰囲気というか、あの時はこんな妖気のような魔力は纏ってませんでしたが。」
セラフィーナの問いに応えるセティス。
すでに長い騎士剣を抜刀し構えており、その左右後方ではレイノルドとグラツィオも剣を抜いている。
三人に護られるような位置になっているセラフィーナ。
特にその陣形に文句があるわけではないが。
「俺を斬った、と言ったか。
そうか。あいつらを回収に向かったのに戻ってこなかったのは、お前が俺を斬ったからか。」
セティスの言葉に、相変わらずのゆったりした口調で状況を確認する、その男。
だがおかしい。斬られた自分のことを、戻ってこなかったと言った。それはまるで別人の様で。
「それにお前は、確かそこで突き落とした男だな。
生きていたか。なるほど。それでこの場所に来たか。」
言葉から、グラツィオが言った人型の魔獣。その存在については確認を取ることができた。
「セティス様が斬られた?
あの男、セティス様の前にも現れたのですか?」
まだいろいろと話を聞いていないグラツィオには、状況もつかめないが。だが悠長に会話している余裕はなく。
「まあいい。どちらにしてもこの国は終わる。
一足先に殺しておいてやろう。」
男の言葉とともに、魔獣の一部隊が襲い掛かる!
熊型の魔獣が雄叫びをあげるとともに、その周囲には魔法陣が7つ。グラツィオの報告にあった三本より多い。
同時に狼型3頭が前衛の三人に同時に襲い掛かり、狼型をおとりにするかのように、虎型が二頭、それぞれレイノルドとグラツィオに襲い掛かる。
熊型は魔法の発動と同時に自身も突撃し、正面にいるセティスへと突っ込んで。
対応しようと体勢を低くし、斬りかかろうとしたところで魔獣の後ろにいた男が魔法を放つ。
「グラウンドチェイン」
言葉とともに、相対する四人の足元に魔法陣が浮かび、その者たちの動きを阻害する、魔力の鎖が大地から飛び出してきてその全身を縛ろうとし。
その鎖は、セティスの剣閃で粉々に切り払われ、レイノルドは跳躍して躱し、グラツィオは大地そのものを切り裂いて鎖を根元から薙ぎ払い。
三者三様の対処で行動阻害魔法をものともせずに、飛び込んできた狼魔獣へと切りかかる。
そしてセラフィーナは。
魔法陣から鎖が飛び出した瞬間にはすでにその場にその姿はなく。
「む。消えた?どこだ。」
前衛三人がそれぞれ狼魔獣を切り伏せるさまを見つつ、赤い髪の男は消えたセラフィーナの姿を探し。
狼を切り伏せた瞬間を狙って、熊魔獣が放った7本の炎の矢がセティスに三本、レイノルド、グラツィオに二本ずつ迫り、同時に熊魔獣、虎魔獣も飛び掛かるが。
「遅い!」
それまで信頼している部下の働きを見るため、相手の様子を観察するために、あえて動きを抑えていたセティスが、すでに人外の域にあるその機動力を解放する。
自身に飛んでくる炎の矢だけでなく、残りの4本も高速機動で瞬時に切り払い、その機動で同時に、虎型、熊型の魔獣も瞬時に三頭とも斬り伏せていて。
「は、はやっ!マジですか団長!」
「団長!速すぎます!俺たちにも残してください!」
自分たちの出番を瞬時に奪われた二人は、今まで見たことのある、自分達を含む騎士団での大規模討伐に出ていた時とは段違いのセティスの動きに驚く。
アセリア姫と二人の時しか披露してこなかった、その超高速機動。レイノルドは指南を受けている際にある程度までの早さは見ているが。
本気、ではない。まだ空間移動術式の補助を使っていない通常機動でさえ、その速さは圧倒的過ぎて。
「なん...だと?馬鹿な?」
その動きを見て初めて、赤い髪の男も驚愕する。
フィルメリア王国騎士団のレベル。確かにグラツィオ一人を突き落とすにも今男が率いて待機させていた魔獣六頭、連携させて全てを使ってはいたが。
男自身が動くことはなく、魔獣だけで抑え込めた。
突き落とすことができた。
だが今目の前にいる騎士の女。この一人だけは何か次元が違う、比較できる範囲にいない動きをした。
自分自身ですら、相対せば押し込まれる。おそらく普通に戦っても勝つことができない相手だと気付く。
「くくっ。これは面白いどころではない。俺が戦っても負けが見えているではないか。俺を斬ったのも頷ける。」
セティスの動きを見て。だが今の一瞬で自身の部隊を失ったにしては、余裕のある振る舞い。
そして解釈の難しいその言葉。
どうやらこの男に、相手の力量を見抜くほどの力はないようで、セティスとしても油断はしないが、ここからどう動くかを検討する余裕はできる。
あの時は狂気の魔獣となって部下の一人を危険に晒してしまったが、今は騎士団の中でも上位にいる男二人。
少なくともこの男の能力、戦闘力からみればこの二人は十分に強く、一騎打ちなら負けることはない。そう考える。
だがなにより。
セティスの圧倒的な強さに目を奪われた男は、先ほど自身が放った魔法でこの場から消え、探していた存在のことが頭から抜け落ちていて。
「これは、撤退するしかなさそうだな。
お前たちのことは覚えギギャ!?」
「わたくしがいるのに逃げられるわけがないでしょう。」
撤退と口にしかけた男が奇声を上げて。
その体は、白銀の光に包み込まれ、自由を奪われるだけでなく、その全身は激痛に見舞われているようで。
魔獣の上げる苦悶の叫びのような、歪な金切り声を上げて苦しみ続ける男に対し、セラフィーナはその表情から微笑を消して、手加減することもなく。
男の持つ体力も魔力も、白銀の光で包まれた直後に底をつき、完全に行動不能に陥る。
肉体だけでなく精神にもダメージを与える攻撃。男の存在の根源に干渉し、即時戦闘能力も完全に奪い。
金色の魔力同様、存在の根源への干渉。だがその性質は正反対で。自身と世界を一体と化し、世界の助けを借りてその存在を自由に動かせるような金色の魔力に対し。
その存在を世界から断絶し、すべての道を絶たれたうえで世界の恵み、慈しみからも切り離される。
セラフィーナから、世界から敵とみなされれば、その世界に留まることは許されない。
「今すぐ消すことは簡単ですが。あなたがどのような存在なのか、少し探らせて頂きますわ。」
周りの者、セティス達も一切口を挟めないほどの圧力。セラフィーナが有無を言わさず男を無力化した。その力。
「ギ、ガァ。ギザマ、イッタイ...」
セラフィーナを見て、歪な声で問うが。
問いには答えず、男の周りにはセラフィーナが編んだと思われる術式が展開され、取り囲み、解析していく。
「造られた、魂なき存在、複製。そうですか。そんな形で魔獣やあなたのようなものを作り出しますか。」
すこし嫌悪を感じているような顔で。
この世界に住まう者たちに悪意を向ける、作り出された世界の敵。
「隠蔽術式の強化。戦闘能力以上に隠密性。人知れず部隊を展開することに重きを置いてますわね。」
その男のことを、話をするでもなく、解析することで目的や役割を割り出していく。
「なるほど。この術式で時間指定で。シェフィールドの件を失敗した場合に起動するわけですわね。
それまでは、出来る限り隠密で。敵戦力を秘密裏に確実にそげる場合だけ攻撃をすると。それと、これは。」
一人、解析結果を述べていく。その断片の言葉だけでもセティスやレイノルドはなんとなく、この特異な男の存在とシェフィールドの問題が繋がっていると理解できるが。
「また悪辣な。あなたを作り出したものは、わたくしとは全く相容れない考えのようですわね。
これは少し急いだほうがよさそうですわ。」
なにか、セラフィーナが嫌うような事が仕掛けられているようである。
「わかりました。もう、いいですわ。」
その言葉と同時、男は魔力の欠片となって霧散し、その存在は虚空に消え。
グラツィオに重傷を負わせたという、魔獣の一団との再戦は、あっけないほどの時間で終えて。
先ほどまで慈愛の微笑を常に浮かべていた人物が、別人のように冷徹な行動に出るさまに、セラフィーナに出会ったばかりのグラツィオはその認識を改めざるを得ない。
そんな考えが一瞬過ったが。
「すこし、怖いものをお見せしましたわね。先に簡単に説明しますと、今の男は人ではありませんわ。
人の形をして人の言葉を話し、魔獣と同じ魔力を纏って魔獣を使役するもの。」
セラフィーナは人を手にかけないと聞いていたセティスだけでなく、自分たちが知らない謎の魔法で瞬時に男を無力化し、解析したうえで容赦なく葬り去った様に、驚いていた二人にも目を向け。
「あれはかつての魔獣のように動物を改造してつくられた者でも、もちろん人を改造したものでもなく。
人の手で作り出された魂を持たない、人を殺すためのプログラムで動く、人型の攻撃、統率用生体兵器です。」
また、生体兵器。しかも今度は魔獣ではなく、人をかたどっているという。
こんなものが人に紛れて街に存在し、人に牙をむけば。
考えるだけでも恐ろしい光景が思い浮かぶ。
そしてひとつ、セラフィーナの言葉にある謎の単語。
「セラフィーナ様。先ほどの男は作られた兵器と。
この目で見てもまだ信じがたいですが、そういうことなのですね。そしてあなたの仰られた、プログラムというのはいったい?ほかにもいろいろ解析されていたようですが。」
セティスの問いに頷き。
「もちろん説明いたしますわ。ですが少し、フィルメリアにとっては危急を要する故。
わたくしの城で、アセリア様も交えて。いえ、もし可能であれば国王陛下もお呼びしたいですわ。」
陛下も呼びたい。王宮にこちらからうかがうのではなく、国のトップを直接呼びつけるというその言葉に。
さすがにグラツィオは反論する。
「いや、セラフィーナ様。いくら何でもいきなり陛下を呼びつけるというのは。どのような要件であってもまずはこちらから出向いて」
「グラツィオ、そこまでにしておけ。
お前はまだ知らない話だから仕方ないが、おそらくセラフィーナ様がお呼びとあらば陛下も即馳せ参じる。」
セティスが止める。
あの場を、アセリア姫がその名を聞いて即ひれ伏すという異常事態を知らない男には、何のことかわからないが。
だが騎士団長であるセティスがそこまで言う。
いったい、この方は何者なのか。つい先ほど合流したばかりの男には疑念ばかりが募るが。
「ともかく、わたくしの城に戻りましょう。そこでわたくしが把握したすべてをお話しますわ。
お昼時ですし、お食事をしながら皆様が分かるようにしっかりと説明いたしますわ。」
やっぱりお昼ご飯は外せないらしい。
―― いつか、どこか分からない場所で。
「ねえ。お前の二つ目はいつになったら帰ってくるの?あれからもう三日も経ったんだけど。」
子供っぽい男が問いかけ、
「あれは飛べるからこれほど遅くはならない。
来ないという事はトラブルだろう。
おそらく壊されたと思う。」
ゆったりとした口調で、赤い髪を縛った男が答える。
「あれ?お前結構強いよね。なんで壊れるの?
そんなに強い奴、この国にいたっけ?」
「評判の騎士団長なら、あるいはあるかもしれん。」
「いやむりでしょ。飛べないじゃん。」
子供の方は少し苛立った様子で。
「むう。飛ぶまえに討たれた、と思う。」
飛べるものが討たれるなど、確かに考えにくい。
あるとすれば、その形態になる前に討たれるくらいしか考えられないのだが。
だが、その戦闘力はそれほど低くないはず。回収に向かった先の者であれば、戦力的には万が一も考えられるが。
いくら強いとはいえ平和ボケしているフィルメリアの騎士に、アレが討たれるとは考えにくい。
「もういいよ。どうせボクが動かせばあんな小国なんてすぐに消えちゃうし。お姫様だけは回収するように設定してあるから、すぐに起動しちゃおうかな。」
不穏なことを言う。どうやらシェフィールドの魔法陣が消える様を見ていたこの子供のような男が、今回の事の発端のようだが。
「そうなると、もう回収は無理か。シェリーヌ以外は道具に徹する者たちだから重宝はしていたが。」
「道具なら作ったやつらでもいいんじゃない?」
「あの魔法陣を敷設できるものは、作れない。」
男がすぐに切り返す。
「はあ。魔法ってなんで撃つだけのやつは簡単に組み込めるのに、術式の生成は組み込めないのかな。」
つまらなさそうに、めんどくさそうに。
赤い髪の男と話す、子供のような男。
その髪の色は赤ではなく、茶色で。
その出で立ちは、煌びやかな、王族のような青いタキシードとジャケットを身に着けて。
「まあいいや。もう少し回収待ってやるから、お前が行ってきなよ。ボクはつまらないのに飽きたから、プログラムの一段階だけ起動して遊んでるよ。」
見た目も子供のような男は、その行動原理もそのまま子供の様で。わがままで自分勝手なようで。
フィルメリアに仕掛けている何かをまたひとつ、実行させるようだった。
―― メルヘン城に帰宅して
「あ、セラ様、皆様。お帰りなさいー。
ごはんはもう少しです。さっき念話で聞いた内容がアレだったので、ちょっと派手にたくさん作ってます。」
シェルンがティールーム転移してきたセラフィーナ達に驚くこともなく、昼食作成の経過を伝える。
もしかしたら国王陛下も呼ぶかもしれない状況になったので、セラフィーナはその時点でシェルンに念話でお食事の分量大幅アップとたくさん人呼ぶかも?と打診し。
受け取った侍女は狩りで確保したお肉を半分使う予定だったのを全投入して、さらに簡単調理で食べられそうな海産物もすぐそこの海からサクっと仕入れてきて。
もうこのメイドに任せればとりあえず何でもできるという感じで、周りの者たちは皆目が点になっていて。
「アセリア様。少々込み入った話になりそうですの。
国王様とシェフィールド卿、それと騎士団の各大隊長の皆様もお呼びして、ここで会食がてら、わたくしが把握したすべてを皆様にお話ししようかと思いまして。
ですので、皆様をお呼びだてするためにお力添えをいただきたいのです。」
突然、とんでもないことを言いだす。
「セティス様には騎士団の方をお呼びするのに、いっしょに来てくださるよう先ほどお願いしましたわ。」
すでに騎士団長は篭絡、じゃなくて説得済みで。
「それは、この国にとって重要なお話なのですね。わたくしからもお願いしますわ。すぐに参りましょう!」
やはりこの国のお姫様は、ものすごく決断力があった。
そんなわけで、アセリア姫とセティスを伴い王宮へワープして。レイノルドとグラツィオはメルヘン城に残り、シェルンの指示でなんか食器類の準備に駆り出された。
騎士団上位の男性騎士なのに、給仕をするという経験のないお仕事に、二人は少し面食らっていたが。
シェルンの何とも言えない圧力というか脅迫というか、とにかく逆らっちゃいけないオーラを感じ、今はおとなしく会食の準備にいそしんでいる。
もちろんレアニールもそちらに参加し、キッチンは人外メイドの独壇場となって恐ろしい速度で食事が用意され。
使用人レベルは十分高いレアニールは、恐縮しながらも二人の騎士に食器類の配置を指示していて。
「なあ、レイノルド。お前結構大変な目に遭ってたんだな。俺だけがひどい目に遭ったと思ってたぜ。」
「ひどい目か。お前も重傷だったが、俺はウィンストのせいで後ろから斬られたからな。
それからもシェフィールドではほんと色々あったさ。」
グラツィオが知らないところで、本当に色々なことがあったわけだが。腐れ縁の二人は終わったことに苦笑しつつ、いや大変な目ってそういう事じゃないぜ、みたいな感じで。
仲がいいのはよいことである。
―― 王宮にて。
「お父様!すみません。危急の用があります!」
王宮、普段は謁見の間に王様が待機してるわけではないので、国王執務室で国王クラードに声をかけ、シルヴィア王妃は今日も今日とて押し寄せる書簡を、母の目で確かめると仕分け班に協力しているようで。
「お母様!今日はこちらのお仕事は皆様にお任せして、わたくしと共にお越しください!」
こうしてアセリア姫のすごく真剣な面持ちと、そこに同行しているセラフィーナ、セティスという顔ぶれに、これはただ事ではないと即準備をして。
先日アセリア姫のメルヘン城滞在許可をいただく際に、セラフィーナは目通りしたうえで、アセリア姫の勧めでクリスティアラ第一王女であることを伝えており。
結果現国王と王妃からも、すでに特別な存在として認識されている。書簡を送った災厄の魔女本人?そんなことよりも娘の記憶の方がずっと大切だ!という話らしく。
「では、騎士団の方々にもお目通りを。」
「まずは第一大隊の所へ行こう。兄上は今日は詰所にいるはずだ。」
第一大隊詰所に向かい。
「兄上!いるか?」
「アルヴィンス!俺だ!」
セティスと国王クラードの二人が詰所入口で隊長を呼びつけるという、未曽有の事態。
それだけでも大ごとなのに。
「国王様にセティス。それに王妃様にアセリア様まで。
いったい何事ですか?」
移動をセラワープで時短しているというめちゃくちゃな状況なので、皆まとめて移動していて。
合流した皆様も伴って詰所に来るので、王族が詰所入口付近に集合しているという前代未聞の状況である。
もう詰所の騎士、兵士たちは大慌てで。
「兄上、細かな話はあとだ。大切な話がある。今すぐ出立の準備をしてくれ。ああ、武装はいい。会食になる。」
なんだかわけがわからないが、義妹がものすごく真剣な顔で訴えてくる。
「アルヴィンス、俺もよくわかってないがとりあえずついてこい。話を聞いてから判断しろ。」
なんか国王が分かってないのに動こうとしてる。
ほんとにいったい何なのだ?と思うが、とりあえず状況としては勅命に近いので、副隊長にあとを任せ。
「次は第三大隊だな。クラリス嬢は。」
「第三大隊、第一中隊は非番のはずだ。自宅にいるといいのだが、出かけていたら少し厄介だな。」
第三大隊の隊長はクラリスという女性らしい。
とりあえず自宅へ行き。
「クラリス様ですか?今日は確か久しぶりの非番なので、お買い物に行かれると仰いまして。」
いなかった!
「どうする。今から探すには時間が。それに買い物に行くとなると、どこの店かもわからないぞ。」
「わたくしが探してきますわ。
五分ほどお待ちください。」
なんだかお任せを!という雰囲気で、アセリア姫が名乗り出た。なんとなく行先に心当たりがあるようだ。
「わかりましたわ。お願いしますね。」
セラフィーナに頼まれて。この国のお姫様が、皆の前だというのに気にせず飛んで行った。
そのことに驚愕する両親とアルヴィンスだが、とりあえずもう緊急事態なのでやんわりと説明して。
アルヴィンスは何かこの場を取り仕切っているように見える謎のお姫様についてはまだ何も聞いていないので、とりあえず義妹に聞いてみる。
「セティス。こちらの方はいったい?」
「細かな話は追々。今はシェフィールドの問題を解決してくださった恩人とだけご理解ください。
兄上には後ほど私から説明します。」
シェフィールドの件は当然グライスから王宮に伝達もあるし、騎士団の各指揮官クラスにも話は通っている。
なのでその一言で、とりあえずは納得し。
「セラフィーナ様!クラリス様をお連れしました!」
少しの時間ののち、アセリア姫がどうやってかクラリスを見つけたらしく、一人の女性を抱いて飛んで戻ってきた。
「アセリア様、ありがとうございます。
ではひとまず、わたくしの城へ飛びますわ。」
こうして。
いや、いいのか。目立たないつもりじゃなかったのか?
などという疑問を持つものはすでになく。
とにかく本人の意向に関係なく、ものすごく目立ちまくっているセラフィーナは一切そのことに気づくこともなく、王族三人と騎士団のトップスリーを伴って、メルヘン城ティールームへと空間転移して。
「ミリエラさんとシェフィールド卿もお連れしますわ。」
すぐにそこから消えて、数分で戻ってきて。
「陛下!?それにシルヴィア様に、騎士団の皆様も?
これは何事ですか?」
驚きのグライス。何も説明せずに「危急の用ですの。」という感じでミリエラともども連れてこられたので、もう大混乱である。
一緒に到着したミリエラは、今ティールームにいる面々を見まわし、王族全員と軍部のトップ全員が勢ぞろいしているというこの状況を見て。
「そういえばセラフィーナ様。
以前表立って動かないと仰られてませんでした?」
至極当然な突っ込みを入れて。
確かにシェフィールド解放時は隠蔽してたし。
ちゃんと目立たないようにしてたはずなのに。
「ええ。もちろん表立って動くつもりはございませんわ。
今は大事なので皆様に来ていただいただけですわ。」
なんて、さも当然な感じで言って。
(セラフィーナ様。たぶん意味を取り違えてますよ。)
なんかもういいかー。みたいな気分のミリエラだった。




