3-21:王国の姫と騎士の成長。と、正体?
色々な説明が続きましたが、今回が3章ラストになります。
3章使って説明だけとか、どんだけこの焼き豚は物書きレベルが低いんだ。
(´・oo・`;)ピィピィ
ここまで読んで下さって、本当にありがとうございます。
まだまだようやく、主人公サイドの主要人物紹介が一通り終わっただけですが、今回分もお読みいただけて、このお話がいいな、続きが気になるなと思われましたら、評価やブックマークをしていただけますととてもモチベーション上がりますので、よろしければお願いします。
後書きには今後の予定を記載します。
聞いてしまったことに、ショックは受けたけれど。
聞いているときは、とてもつらかったけれど。
「シェルンさん。教えてくれて、ありがとう。」
だからこそ、この悲しい運命を背負わされた、なにも悪いことなどしていない、優しい侍女に感謝する。
そこには先日までの、弱い少女はもういなくて。
あの時のように、悲しい亡国の王女に涙した、泣きじゃくった。あの時のようには、もうならない。
私も、前を向いて行くから。だから。
「私からも少しだけ、お話させてください。
そして、お願いさせてください。」
セラフィーナ様と共に、私を、父を、レアニールを。
シェフィールドを救ってくれた、この方にも。
「私は数年前に母を亡くして。
先日まで父がおかしくなってしまって。
失意の底にあったんです。」
シェルンには、分かり切ったことを告げて。
「ところがそこに、とても強くて優しいお姫様が現れて、私を助ける、力を貸してくれると仰いました。」
セラフィーナ様に、窮地を救って頂いて。
「そのお姫様はとても素敵なのですが、どこか抜けているポンコツさんで、私も呆れることがいっぱいでした。」
ぷふっ、と、シェルンさんがちょっと笑う。
「お姫様の残念なところは、お姫様が大切にされている、とても有能な、お料理も得意なメイドさんが支えてて。」
ん。そうですよねー。って、小さい声が聞こえる。
「そのメイドさんは、私を元気づけてくれて、私の大切な人を助けてくれて、私の街を元に戻してくれました。」
はい。それがお役目なのです。と、また小さな声で。
「私はそのお姫様とメイドさんに、いっぱいいっぱい助けられて、大切なものを全部、取り戻していただきました。
だから私は、とても感謝しています。
どんなことがあっても、お二人への感謝は、ご恩は忘れません。そして私みたいな人は、きっと今までにも。」
今までにも、セラフィーナとシェルンは、本当にたくさんの火種を潰し、小さな幸せを護ってきた。
確かにみんな、感謝してくれた。
「このお二人が、素敵なお姫様とメイドさんが、支え合う二人が、これからもずっとずっと続いてほしい。
これが、私からのお願いです。」
ミリエラの言葉に、とても嬉しそうに頷いて。
「はい。ミリエラ様のお願い、承りました。
ポンコツなお姫様は、私がこれからも責任をもって、ずっとずっと、支えてまいります。」
いつもの、楽しそうな、人懐こい笑顔で。
「そういえば。お二人はこれからもずっとずっと、人々を助けて回るんですよね?」
「そうですねー。それが私達のお役目。責務だと。
私はセラ様の一部みたいなものですし。」
「なんか、<災厄の魔女>って最初に聞いたときは半信半疑なところもあったけど、お二人の事を知れば知るほど。
この名は合わないというか、間違っているというか。」
聞いてからずっと思っていた違和感。
お姫様も侍女も、決して人から恐れられるような、そんな人物でもなければ存在でもない。
「それもそうですねー。でもまあ、仕方ないのです。
そう認識されてしまったのは事実ですからねー。」
なんか、最初の頃と同じ、あっけらかんとした感じで。
「セラフィーナ様もそんな感じでしたけど。
それならまだ、クリスティアラの王女様ですって名乗った方が、私には合ってるように感じます。」
あの時の、アセリア姫に名乗っていた時のお姫様は。
本当に高貴で、まさにセラフィーナ様の事だと。
ずっと感じていた違和感が全くない名乗りだった。
「クリスティアラは遥か昔に滅亡しちゃってますから。
普通は通じないですね。
それに通じちゃうと逆に困ることもあるんですよね。」
「困る?」
「あー、今回もちょっとその可能性があるかもしれないんでした。それを知らせたくない相手がいるのです。」
そういえば、まだセラフィーナに報告してなかった。
アレが関わっている可能性。
セティス様が斬った、あの、魔獣のような。
しまったなー、という感じのシェルンと。
あの名は使えないのか―、という感じのミリエラで。
「あ、では、例えばそれっぽい称号とかは?
セラフィーナ様はクリスティアラのお姫様をずーっと続けてるんですよね?それが分かるような。なんか素敵な。
ずっとお姫様してるから、永遠のお姫様?
『エターナルプリンセス』とか?」
ミリエラの言葉を。
ちょっと考え事をしながら聞いていたシェルンだが。
「響きは素敵かもしれませんけど。
自分から『エターナルプリンセス』って名乗るのはちょっと恥ずかしいですよー。」
たしかに!
「でもセラ様は意外と、『素敵ですわ!』とか言って、使ってしまいそうな気がしますねー。」
苦笑いを浮かべながら。
そこにはもう、悲痛な笑顔の少女はとっくにいなくて。
ミリエラも苦笑を浮かべながら。
「そうかもしれませんね。」
―― エターナルプリンセス...お姫様の方は?
「まさか魔獣が、貴女の国を攻撃した兵器だったとは。
聞いただけでは信じがたいですが。
貴女の言葉である以上、私は信じます。」
思ったことを素直に告げる。
軍を預かるセティスにとって、魔獣に関する情報は軍を率いるうえで非常に重要であり。
セラフィーナ程の者が知る情報となれば、今まで未知だった情報も多岐にわたって当然だと考える。
「お話を元に戻しますが、セラフィーナ様は。
わたくしがこの、クリスティアラの力、と申せばよいのでしょうか。
これを使えるようになった理由のひとつが、あの疫病、いえ魔法を撃ち消す魔法を織りなしたこと。
ということなのでしょうか?」
「いえ。織り成したことは結果です。
使えるようになった理由は。
貴女が心から願い、それが世界に届いたからこそ。
ですがまだ、わたくしのように本質を理解しているわけではなかった為に、思考錯誤されたと考えてますわ。」
アセリア姫の問いに、否と応える。
この魔法は、自分が行使するものではない。
「わたくしも今では分かります。
シェルンさんに見せて頂いた、あの世界。
セラフィーナ様が使われた、信じられない程の地域を覆い尽くした、あの世界。
この力は自分の力として使うのではなく、世界に願い、助けてもらう、そんな力であると。」
次の言葉には、セラフィーナも頷く。
「その通りです。この魔力は世界の力、その一面。
そしてクリスティアラの血を持つものは、その世界と対話する力がある、というのがわたくしの解釈ですわ。」
世界の力の、その一面。
他の魔法は世界に満ちている魔力を、自身の力として行使する。魔力を使って、魔法にする。
この魔法は、世界にお願いして、魔法という結果を、魔法の効果を返してもらう。そんな違い。
「私も理解はできましたが。もうひとつ。
できればお聞かせ願いたいことがあります。」
セティスが改めて、といった形で問う。
「貴女があの時、ウィンストが悪事を働いたときに。
一瞬でしたが貴女が使われたと思う、あの白銀の魔力。
あの魔力はいったい、何だったのか。」
遠く離れた地にあっても、金色の光同様、一瞬だけあの力が満たされ、そして感じた感覚。
「あれは少し冷たい感じがしたと言いますか。
我々はあの金色の力が使えるようになった後も、あのような色の魔力は一度も見たことが無く。」
元はアセリア姫が金色の魔力を使える理由を聞いていた場ではあるが、セティスにとっては重要な。
人々を護る軍の者としては有用と感じた、戦う力と思われるあの力。おそらくウィンストを囲んでいたアレも。
「もし、あの魔力も貴女のお力でしたら。
そして魔獣から。いえ、悪意を持つものから人々を護る為に有用な力だとしたら、我々にも会得できないかと。」
その言葉を聞き。
セティスの考えに悪意はない。彼女のいうことはセラフィーナにもよくわかるし、間違っているわけでもない。
だが、あの力だけは。
真剣な表情で答えを待つセティスに対し、少しだけ困ったような微笑で答える。
「アレは。そうですわね、考えない方がよい、と申し上げたいのですが。そういうわけには参りませんわね。」
それから何か急に。突然、嬉しそうになって。
(アレは欲してはならぬものと、お二人に分かって頂くにはこの方法が一番かもしれませんわね。
わたくしの望みも叶いますし。)
「アセリア様、セティス様。突然なのですが。
わたくしとも、全力で戦って頂けません?」
「「え?」」
なんか、急に変なことを言いだした。
「えっと、それは何のために。いえ、我々の力を試されるというのでしたら、それは願っても無いことですが。」
シェルンにも試されたのだから、セティスとしてはそれで充分なのかと思ってもいたが。
確かにこの超常の方の力、見てみたい。
「わたくしも、シェルンさんにご指導いただいた結果。
今のわたくし達でどこまでできるかを。
セラフィーナ様のお力を。見てみたいです!」
アセリア姫もなんかやる気である。
(言ってみてよかったですわ~!
シェルンと一戦交えたから、もういいですとか言われるかと思ってましたが。これはラッキーです!)
「それでセラフィーナ様。
先ほどの問いの。あの白銀の力については。
その戦いの場で見せて頂けるという事ですね。」
そう。セラフィーナとしては、二人との戦いを楽しみたいのもあるし、状況によっては色々教えたい。
おせっかいで教えたがりなのはシェルンと同じである。
「そうですわね。アレは人を相手に、あまりおおっぴらにお見せするものではないのですが。
お二人であれば、一度体験していただいた方が、アレについてしっかりご理解いただけるかと思いますわ。」
こうして戦うことになり。
(シェルン。大事なお話はだいたい終わりましたわ。)
(はい、わかりました。ティールームにもどり)
(いえ。お二人と戦うことになりましたので。今からまた例の無人島で少し楽しんできますわ。
シェルンはお留守番をお願いしますわね。)
(はい?)
(ですから、ちょっと城を開けますわ。ミリエラさんとレアニールさんの事、お願いしますね。)
(え?あの。それでは私への愛って一体。)
(あ、あれは。そ、そう、文字通りの愛ですわ!)
納得いかないんですけどー。
―― またあの無人島。
「それではお二人とも、ご自由に攻撃してくださいね。」
無手で二人に相対するセラフィーナ。
二人の、特にセティスの要望は別問題だが。
全力の二人と戦えますわー!なんて、その心の内はフィルメリアに来て以来、最大にうきうきしていて。
なんか、このお姫様はバトルジャンキーなんだろうか?
「で、では全力で参ります!」
「参る!」
即アセリア姫が強化魔法で二人を強化し。
戦闘前に剣と長杖のリンクも済ませて。
空間移動術式の使い方を理解したセティスが、シェルンと相対した時よりも更に速くなって、突撃して。
アセリア姫も追随して。
「遅延投影」
初手から言葉通り全力でかかる。
セラフィーナであれば本気で斬りに行っても大丈夫。
そう信じて、剣を振り下ろし。
キィィィィン!と、シェルンの時と同じような、透き通った音が響き渡り。
セラフィーナはクリスタルの剣を生み出して、セティスの重いはずの一撃を、左手だけで保持した一振りで防ぐ。
セティスはその一撃から鍔迫り合いに持ち込まず、剣戟を止めずに即次の一撃を繰り出し、影の斬撃を重ねて。
一次開放状態のシェルンは、この状態になったセティスの剣を全て切り払う事は諦めた。
二次解放では戦っていないからどこまで通じるかは分からないが、あの時以上に速く重い多重斬撃は、セティスにとっては今の時点で最強となる攻撃である。
「遅延して重ねた斬撃ですわね。いい速さですわ。」
嬉しそうに、楽しそうに微笑を浮かべ。
その場から一歩も動かずに、全ての剣戟を左手だけで持った剣ではじき返していく。
(くっ!この速さでも、片手だけでっ!?)
シェルンも異常に強かった。二人がかりの攻撃であっても全て通じず。だが今は通じないどころではなく。
まったく、相手にすらなっていない。
本気でかかっても敵わないのは前提だったが。
シェルンを見ていて、高速戦闘になる想定でいたが、全力の攻撃ですら、セラフィーナをその場から、一歩も動かすことすらできない。
そして何より想定外なのが。
アセリア姫が、同時に攻撃できていない。
同時に攻撃を仕掛けたはずなのに、援護も連携もなく。
アセリア姫は合わせて突撃した瞬間、何もない虚空にみえた場所からの攻撃を察知したまではいいが。
視えている魔法の構成、魔力量からその攻撃の重さを想定し、とても片手間で防げるレベルではなく。
全力で防御結界を張ってなんとか防いだが。
その直後には違う場所から同じ攻撃が撃ち込まれ。
その攻撃はどれも、物質化された非常に高速な魔力弾の射撃で、その方向に全力の結界を展開しなければ、防げない程の重い一撃で。
「こんな、攻撃で。姉様!」
魔力情報を論理的に視覚化して見えるアセリア姫だからこそ対応できている、この攻撃。
セラフィーナは二人の突撃に合わせて、ひとつだけ魔法を使っていた。
それはクリスタルでできた宝石のような形状の、空中を高速で飛び交う小さな砲台のような魔法で。
それが1つだけ。アセリア姫の周囲を高速移動しながら、姫が対応できるだろう速度で、あらゆる角度から射撃を繰り返している。
姫の春紫苑の輪舞を同時に射撃した魔法と、基本は同じ。
発射するのがあのレーザーだと姫は防げない前提で。
ちゃんと防げる実体弾で攻撃している。
「ふふ。お二人ともこの程度ではないとわたくしは思っておりますわ。さあ、もう一段上にいらしてください。」
余裕を見せ、二人は今でもまだもう一段登れると。
そんな風に言ってきて。
だが、あの時見せられたシェルンの二次解放は、そんな、簡単に登れるようなモノじゃなくて。
(この速さ、重さよりさらに上。どうすれば!?)
剣戟を続けながら考える。
(この魔法を防ぎながら、もう一歩。何をすれば?)
魔力弾を防ぎながら考える。
「お二人とも、今何をされているのですか?
そしてわたくしは今、何をしていますか?
そこを考えてみてください。」
(そんなこと、言われても。これだけ打ち込んでも)
(わたくしはいま、全力で攻撃を防いでいて)
(セラフィーナ様が何をしているかなんて)
(姉様と切り結んで、わたくしを攻撃して)
(アセリアを撃ちながら、私の剣を防いで)
((あ!?))
二人とも、気付く。
ひとつ、上。
シェルンが話してた時とは意味が違う、上。
二人は全力で相対しているが。
セラフィーナは二人同時に相手していて。
その同時というのが、全く別の形。つまり、剣戟と魔法攻撃のふたつを同時に行っていて。
少なくとも王国で並ぶものが居ない二人の速度。その戦闘中にさらに別の事を同時に。そんな事が出来るのか?
だが、目の前の人物は当たり前のようにやっていて。
「少し、思い当たったようですわね。
ではまず、アセリア様にちょっとだけヒントを。
わたくしは魔法使いであり、魔法遣いですわ。
つかうという意味を、考えてみてくださいね。」
(魔法使い?)
魔法使い。そんなことは分かっているが、だがあえて重ねて言われた、と考える。そしてつかうという意味。
魔法を使う。行使する。それは今の自分が行っている事であり、そのままの意味であり。
使うという意味は他に何があるか。
使う。つかう。利用する。お遣いする。使役?
「わかりましたわ!こうして!」
アセリア姫がまた、嬉しそうに声を上げて。
全力で攻撃を防ぎながら、一瞬の隙間時間を使って少しずつ、言われたことを汲み取った魔法を織りなして。
(セラフィーナ様は私に分かるように、意図的にこの魔法で攻撃されているのですね!)
自分への攻撃が、そもそもヒントだった。それに自分は既にひとつ、春紫苑の輪舞の、自動追尾という形で。
同じ考えの魔法を織りなしている!
「もう、少しで。紡げました!彼岸花の護り!」
姫が紡ぎ、その術式にイメージした名を付け、放ち。
今まで自分で展開していた防御結界の術式を解除して、セラフィーナへと突撃して。
そのアセリア姫を狙って、虚空に浮いたクリスタルから新たに魔力弾が撃ち込まれる。
新たに織り成された魔法は、その魔力弾を撃ったクリスタルのように自律的に、自動で検知して移動し。
検知した位置に自動で防御結界を展開して。
アセリア姫自身は何もせず、操作することもなく、全ての行動は魔法そのものが行って、魔力弾を防ぐ。
彼岸花の護り。術者の意思、願いを編み込まれ、独立して自律的に考えて動く。自動防御魔法。
今アセリア姫の周りには、彼岸花を模った魔法の花が三つ、姫の周囲を護るように、姫を中心にゆっくりと円周軌道を描いて動いていて。
向けられた攻撃に対し自律して動く花が個別に防御し、その結界の許容限界を超えない限り、最大三つまで攻撃を無効化する。そんな魔法。
セラフィーナがシェルンに与えているものと近い発想の自律防御機構。アクティブシールド。
「ふふ。お分かりになりましたね。
さすがはアセリア様です。」
嬉しそうに、自分に向かってくるアセリア姫を褒める。
セラフィーナの狙い。作業の、魔法の並列化。
魔法の同時行使と違い一度起動したこの魔法は、解除するまでその役目を自動で果たしてくれる。
複数の魔法を同時に発動するのであれば、単純に複数の術式に同時に魔力を籠めればいい。
一時に籠められる魔力量が多ければ、それだけ多くの魔法が同時に展開できる。
アセリア姫が48本同時起動した春紫苑の輪舞のように。
シェリーヌが二種類の術式に魔力を籠め、同時に放ったフレアバースト、カーズスネークのように。
ただしそれはあくまで、術者が放つ魔法。
魔法使いだからこそ、魔法を使役もする。
今まさにセラフィーナ使っている、アセリア姫に攻撃しているクリスタルの宝石は、魔力充填、高速移動、攻撃をすべて自動で行って、解除か破壊されるまで勝手に動く。
「姉様!私もっ!姫百合硬槍!」
ようやく接近できたアセリア姫はセティスと打ち合っているセラフィーナへ、光でできた槍の花弁を打ち込む。
シェルンとの戦いで、通常の魔法はクリスティアラの力を使われると通じないことは分かっている。
だからこの魔法もアレンジして、物質化して。
相対するセラフィーナは。
「アセリア様の魔法。全てお花を模してますのね。
とても素敵な織り成し方ですわ。」
嬉しそうにその魔法をみて。視て。
物質化されている事も理解して。
その右手に、もう一振り。
クリスタルの剣が虚空から現れて。
打ち込んでは再生成して無数に放たれる花弁の槍と、セティスの重なった連撃を、両手に持つそれぞれの剣で、その場で踊るように舞い、全て打ち払っていく。
クリスタルの剣の、二刀流。
それがセラフィーナの、近接戦闘スタイル。
先ほど自身を魔法使いといったはずなのに、手にしたそれぞれの剣で、二人の攻撃を全て薙ぎ払う様は。
その剣閃はセティスのように、洗練された無駄のない、流麗な美しい動きで、熟練の騎士の様で。
一歩も動かない状況ではなくなったが、二人の攻撃に合わせてその場で舞い踊るだけで、動かせていない。
「それではセティス様にもヒントを。
貴女は魔法騎士で、戦うのは魔法ではなくご自身です。
アセリア様のように魔法にお任せしても良いですが、まずは織り成された自分を戦わせてみましょうか。」
優しく微笑んで、難しいことを言う。
(くっ。私はアセリアのように即興で魔法は織り成せない。織り成された自分を戦わせる?どうやれば。)
魔法の素養が高いとはいえ、騎士がベースであるセティスにとって、魔法使い的な発想、行動は難しい。
その分身体的なスペックはアセリア姫を上回っており、近接格闘の戦闘であれば、姫を圧倒することはできるが。
そもそも世界基準では、非常に高度な魔法を短時間で即興で織り成してしまうアセリア姫の方がおかしい。
普通の魔法使いは、完成した術式に詠唱で魔力を籠め、力ある言葉、その術式に付けた名称を唱え発動するだけ。
口にする必要は無いが、より強くイメージする為口にして詠唱、発動するものは多い。
アセリア姫の魔法を織りなす能力、感性はセラフィーナにも通じるものがあり、本当にクリスティアラの直系であることを伺わせる。
セティスとしても、もちろん今までに自分で編んだ魔法は数多くあるし、使ってもいる。その中でも、魔力推進は自身で編み出した高機動戦闘の切り札だったし、魔力斬は近接格闘の破壊力で広域攻撃を行う強力な技である。
だが、戦闘中に隙を見て編みこむなど。
「ふふ。難しそうですわね。ではもうひとつヒントを。
セティス様は今、ご自身と、貴女が動いた過去の影の剣戟を重ねてわたくしと切り結んでますわ。
そしてクリスティアラの金色に願えば、対象の時へも干渉できます。」
言っている意味が、分からない。
過去の影。対象の時間への干渉。
過去の影への、時間への干渉?
この力、今は空間移動術式にしか使っていない力。
これが、対象の時へも干渉できる?
これを使って。いや違う、これに願って。
過去の陰に、時間の干渉を、願う?
「え?」
願っていた。気が付いたら、できていた。
セティスの過去の影に、その時間に干渉したいと、漠然とした願いだったのに。
魔法の影が、今の自分の意思で動いて。動かせて。
攻撃だけでなく、移動も跳躍もできて。それだけでなく、影の自分が明確に知覚を持っている。
ちょっと思考速度と感覚が追い付かなくて、まだ2つが限界ではあるけれど、これは確かに。
「できましたわね。これなら一人で複数の相手でも。
個別に対応できますわね。」
個別に。そう、個別に対応できる。
今、セティスは自身と過去の影だったはずのもの。
二人になっていて。分身しているようで。
その二人のセティスが、セラフィーナを別の位置から、同時に個別に攻撃できている。
本体のセティスは残りの4つの影を相変わらず遅延した斬撃として。
もう一体、と言っていいか分からないが、操作できてしまった影だけは、別の動きをして。
「お二人とも素晴らしいですわ。
少しの時間わたくしとお話して相対しただけで、こんなにもしっかりと成長されている。」
二人のセティスと、アセリア姫のランス。
すべてに対して二振りの剣で対応しながら、どんどん成長する二人を喜ぶかのように微笑む。
まるで二人とも、まだまだ成長できると。
上を目指せるということが分かっているかのように。
「ではわたくしも。お約束しましたし、すこしだけ。」
セラフィーナの言葉と共に、狭い範囲。
といっても、無人島全体を覆う位の範囲が。
白銀の光に包まれて。
「あ。」「うっ。」
二人ともその場から、動けなくなる。
一歩も動けない、のではなく。
全身、全てが一切、動けない。動かせない。
二人の周囲に細い、糸のような、光の線が走り。
それは網目のように大量に走っていて。
二人はそれに、完全に囲まれていて。
ほんの少しだけ触れてしまった、セティスの鎧が。
アセリア姫の長杖の末端が。
音もなく、まるでチーズのようにスパっと。
切断された。
同時に魔法で構成されているセティスの影も、全て切り払われて、無効化されて。
その光の線は術者自身とアセリア姫、セティス本体、島の木々や自然はほぼ避けて走ってはいたが。
その光は二人が認識した直後消え。
二人の視界に入っていた、人の体と比しても三倍はある岩の塊をあえて避けないように張り巡らされていて。
光の線が消えた後、その岩は冗談のように小さなサイコロ状に切断されて、バラバラになっていた。
触れただけで終わってしまう。
いや、セラフィーナがそれを設置した場所にあれば、有無を言わさず細切れにされて終わってしまう、そんな力。
一瞬だけ、そんな力が周囲を満たした。
「セ、セラフィーナ様...」
「今のが...」
二人ともその一瞬だけで、恐怖に満たされる。
「これが、セティス様が気になされた力。
出来れば会得したいと、そう考えられた力。」
抑えることのできない震えを、必死で押しとどめようとする二人に、静かに伝える。
「この白銀の力は、アセリア様が継いだクリスティアラの、護り、癒し、救う力とは正反対の。
そこにあるもの全てを貫き、壊し、滅ぼす力ですわ。」
滅ぼす力。
この、優しく暖かい雰囲気ばかりの方が。
「これがわたくしの持つ、もうひとつの力。
かつて<災厄の魔女>が、数多の国を滅ぼした、破滅の力の一端、ですわね。」
この方が持っているとは思えない、そんな力。
「セ、セラフィーナ様。この力は。」
アセリア姫が震えの止まらない体を抱き、問いかける。
「これはかつて、クリスティアラが護っていた、封印されていたものが繋がってしまった、そんな力。
クリスティアラの血を引くだけでは使えない、わたくしだけが持っている、世界の力の、もう一面。
そしてわたくしは。
世界の力、そのものです。」
お話としては初めてセラ様がちゃんと?戦った感じですが。
強すぎるので王国最強の二人でも相手になりません。
なのでセラ様はほんとに倒さなきゃいけない相手以外はだいたい指南役になりそうです。
なお、読んでいただくと途中で出てきますが、今回をもって今までのタイトルが終了します。
明日からは、「エターナルプリンセス。って名乗るのはちょっと恥ずかしいですよー。」になります^^;
この作品をスタートするときに、お話の中でタイトルいじりをやりたいと思っててこうなりました。
次回からは新章、フィルメリアを狙ったものとの対決編に入ります。ながくなりそう・・・
でも新章最初はまだしばらくセラ様の力とか、アセリア姫のナゼとかのお話ですね。
あと三が日は更新できないかもです。
でも過去に更新できないかも詐欺してしまったので、何とも言えないです。




