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3-12:血縁

今回はバトルなしのほんわかモードです。


慌ててるので、今回も今後修正入りそうです。

 空から舞い降り、トン、と着地する。


 眼前には先ほど見たのと同じ、透き通った金色こんじきの光を纏い、粒子をキラキラと振りまきながら、目の前に降り立った少女を見つめる騎士、兵士たち。


 少女がその腕にこの国の至宝と最強騎士を抱きかかえていることもあり、皆一様に信じられないといった表情をしている。


 彼等の注目を浴びつつ、両手でそれぞれ抱きかかえた、高貴なお姫様と高潔な騎士様をそっとおろして。



「しぇ、シェルン、さん。


 その。



 も、もうすこし、手加減頂きたかったですわ。」



 少し震える声で、何とか立っているお姫様と。



「そ、そうだな。これは少し、堪える。」


 何とか平静を装う、騎士団長様。



 二人は足がプルプルと震え、立つのがやっと、という風情になってしまっているが。


 決して二人は悪くなく、そもそもまだ飛び立ったばかりの二人に対し、超高速空輸という人外の所業をやってしまった戦闘メイドに、全ての責任があるはずで。



「お二人とも、そのうちご自分であの速さを超えるようになるんですよ?この位は慣れましょう。」



 だが、二人に色々と指導してくれたこの恩人は、実はものすごくスパルタかもしれなかった。


 そういわれてみれば、お姫様は戦闘中に自分も遅延術式に囚われてしまったし。

 騎士団長様は鍔迫り合いの最中にふっとばされたし。



 だが、今はそれどころではなく。


「それで、今騎士団の皆様が目の前にいるのですが。」


「あ。」



 とんでもない速度で、しかも生身のままで飛ぶという恐怖体験はさておき。


 これはまずい。セティスにとって、騎士団長として。

 このようなプルプルした状態を部下に見られる。これは非常にまずい。

 なんというか、沽券にかかわる。不可抗力だけど。



 その騎士団。ウィンストの選抜メンバーから外れ、外で待機していたごく普通の騎士、兵士の皆様は、一応姫様と騎士団長様にも気付いてはいるのだが。



 だが幸か不幸か騎士団の皆様の目は、頑張って平静を装っている王国最強騎士でも。

 産まれたての小鹿のように、その細い足をプルプルさせてかわいい感じになっている王国の至宝でもなく。



 先ほど見たのと同じ金色こんじきをキラキラと纏って、空から目の前に降り立ったメイドに注視していた。



 先程あのキラキラに包まれた瞬間。それは一般的な騎士や兵士である彼らにとり、劇的な瞬間だった。


 彼らは昨日から夜通しで、仮眠だけとってまた今日も深夜まで実施した、この地での探索業務の疲れも。


 目の前にある一瞬で形作られた魔女の居城、その人外の所業を見せつけられ、ショックを受けていた精神も。

 もっともこのショックに関しては、一部ピントがずれていたせいで、割と少なめだったのが救いだが。


 ともかくそう言った戦いとは違うもので受けたもろもろのダメージや疲労を、全て綺麗に回復して安らぎで包んでくれた、あの優しい透き通った金色。


 騎士団全員という範囲、いや見渡す限り一面に広がったあの金色を見たものは、それを神の所業と感じ取り。


 今はキラキラを消して普通な感じになっているが、それを自ら発して空を飛んでいた、そんな神秘的な少女が目の前にいるのである。



 そんなわけで騎士団の皆様にとってシェルンはなんだか女神様みたいな存在と誤解をされてしまい、姫様や騎士団長様を差し置いて、注目の的となっていた。



 そんな彼らの心境など知らず。

 なんか注目されてるなぁ、なんてのんきに捉えているシェルンはひとまず状況を動かす為。


「あー、皆様。色々気になるとは思いますが、もう少しお待ちくださいね。今からお城の中を見てきますので。」


 とりあえず、あなた方には何もしませんよーという無害アピールを軽くしておき。


「私の事は気にしないでくださいね。

 あ、それからもう少しお姫様と騎士団長様をお借りしますね。もちろん悪いようにはしませんので、そのあたりはご安心くださいねー。」


 これから城内に二人を連れていくことも、遠回しに皆様にお伝えして。

 それをいつもの人懐こい笑顔で伝えれば、なんとなくこれ以上は注目されなくて済むかなー?なんて期待する。




 そんな事を告げられた騎士団の皆様としては。


 なんかものすごくフレンドリーに自分達に語り掛ける、空から降ってきた女神の如き、メイド少女に。

 騎士団員たちはもう先ほどまでの光景と、目の前にある巨大な可愛らしいお城の心理的効果も含め。


 恐れ多さと驚愕が、メルヘンで緩い空気で中和され。


 結局触らぬ神にたたりなしといった感じで、とりあえず皆一様にシェルンの言葉に頷いて。




 このとんでもない状況を、全力でスルーした。




―― そんなメルヘンなお城の中では。


 絶対者としての恐怖を振りまいたお姫様は、剣林の中で泣いて震えながらも、その刃に触れないように必死に体勢を維持している男達から視線を外し。


「ミリエラさん。本当にごめんなさいね。


 そしてそちらの騎士様、皆様にお怪我をさせてしまいましたこと、お詫び申し上げます。」


 言って、軽く頭を下げる。


 その姿、その表情に先ほどまでの怒りを感じさせる要素は全くなく、いつもの優しい穏やかな微笑で。


 正面から見れば、アセリア姫に匹敵するほどの美姫であることに驚き、少し緊張もするが。



 レイノルドたちにとっては、怪我をしたのはウィンストとその子飼いが悪いのであるし、目の前のお姫様は助けてくれただけなので、なぜ謝られるのかよく分からない。


「い、いえ。こちらこそ部下の二人共々命を救って頂き、本当にありがとうございます。

 それからミリエラが大変お世話になったようで。

 その点についても、私からもお礼申し上げます。」


 丁寧に礼を述べるレイノルド。一緒に部下の二人も頭を下げ、セラフィーナに対して謝意を示す。


「自分はフィルメリア王国騎士団第二大隊所属。

 副隊長のレイノルド・アル・カーランドと申します。


 以後、お見知りおきを。」


「ご丁寧にありがとうございます。

 わたくしはセラフィーナ、と申します。


 そして、こちらにいらしたという事はお分かりかと存じますが、わたくしが<災厄の魔女>になりますわ。」



 聞くものが聞けば恐怖の対象になる、その名を聞き。



「はい。先ほどミリエラからも聞きました。

 それに自分は騎士団長からも、あなたの事を聞き及んでおります。

 それでその、ミリエラを誘拐されたというのは、どういうことなのでしょうか?」



 大切な許嫁を攫った誘拐犯と対話するにしては、落ち着いて話を進めるレイノルド。

 ミリエラの態度と言葉、そして先ほど癒してもらったことからも、この人物は敵ではないと既に理解している。



「そうですわね。詳細をお話すると長くなるのですが、シェフィールドの問題を、アセリア様に見て頂くため。

 そのために偽装誘拐をしたというのが、簡単な説明になりますわ。


 その、あなたにとって大切な方を、とても心配させてしまったことは、申し訳ございません。」



 言ってまた、軽く頭を下げる。



「セラフィーナ様。そこは彼も分かってくれてますから、もう大丈夫です。

 それよりレイノルド様。今はご挨拶よりももっと大事なことがあるのですよね?」


 先ほど腕に抱かれていた時、レイノルドが部下たちと話していた内容をしっかりと聞いていたミリエラは。

 セラフィーナの言う「薄汚れ、染まり切った魂」の持ち主についての話を進めさせようと考える。



 だって誘拐の話を突き詰めたら、自分もそれに乗っかったことがバレちゃうし。まぁバレてもいいんだけれど。



 そんなわけで、レイノルドがウィンストの悪事を暴けるように、お手紙魔法のお話をしようとしたところ。


「それでレイノルド様とミリエラさんは。

 恋仲、という事でよろしいですわね。」


 突然セラフィーナが、毎度ながらのドストレートで二人の仲を聞いてきた。


「え!?あ、はい。それは。」


 先ほどしっかりギュー!っとしていたので、それは間違いなくバレてるわけだが。


「あの男のせいで、あんなことになってしまいましたが。


 お二人が再会をとても幸せそうにされてたこと、わたくしにもとても素敵な瞬間でしたわ。」


 まるで自分の事のように、二人の幸せを喜ぶ。


「その、ありがとうございます。」


 どう対応すればいいか分からないレイノルドは、とりあえず礼を述べておくが。


「それで、お二人にはぜひとも祝福をして差し上げたいと、そう思っておりますの。よろしいかしら?」


 祝福?


 なんだろうそれ?っと、知らないけれどなんか幸せになりそうな言葉に、頭の中で疑問符を浮かべるミリエラ。


「は、はい。その、祝福とはなんでしょうか?」


 実直なレイノルドはセラフィーナの言葉を素直に受け取り、分からないことは素直に聞いてみる。


「ふふ。それはですね。

 ひとまずお二人で、こう両手を繋いで頂けません?」


 ミリエラの手を取り、胸の前でしっかりと両手を握り合わせて見せて。

 それをレイノルドと二人で、目の前でやれという。


「あ、あの。セラフィーナ様?

 その、少し恥ずかしいのですが。」


 このお姫様は、恥ずかしいことを全然そうと思っていないようで、ミリエラは困惑し。


「ほら、はやくなさって。」


 セラフィーナに急かされて、レイノルドは少し照れつつではあるが、ミリエラの前に行き、その手を取って。


「こ、これでいいでしょうか?」

「レ、レイノルド様っ!?」


 すでに赤いミリエラと、若干赤いレイノルド。


「はい。それでよろしいですわ。では。」


 そう言うと、手を握る二人の上に、自らの手を重ね。



 キラキラと、透き通った黄金こんじきが、そこから暖かく溢れ出して。


 ミリエラもレイノルドも、目を閉じてその温かさ、優しさに身をゆだねる。

 その感覚は、とても心地よくて、幸せで。




「はい。これで終わりです。

 お二人のこれからの人生に、幸多くあらんことを。」


 そう言って、手をどける。


「あの、セラフィーナ様。この祝福ってどのようなもの、効果があるのでしょうか?」


 やってもらったのでとりあえず聞くが。


「そうですわね。これからのお二人を、わたくしにも見守らせていただく、という事でよろしいかしら?」


 少し言葉を濁して、伝える。


 この祝福は、今後の二人を護り、病や不幸を避けて幸せを呼ぶ、そんな、魔よけのような魔法で。


 でも、言っても分かりにくいので、とりあえず、見守るという形で伝えて。



 これからも、末永くお幸せに。



 セラフィーナのひとつの願いを、託されて。




「セラ様、ただいまです。

 今回もすっごくメルヘンなお城ですね~。


 あ、あの力はこうなってましたか。」



 そんな感じで暖かくなっているところに。


 帰ってきたシェルンが、元気に話しかけてきて。

 城内に入りクリスタルの剣林を見れば、それだけでシェルンには何が起きたかすぐに分かる。


 やはりセラフィーナは、どれだけ怒りを露わにしても、やっぱり人の命は奪わないわけで。それもわかってて。


「この人たちが王国の膿ですか。

 うまいこと現場を押さえた感じですね~。」


 のんびりした感じで歩きながら話しかけるシェルンに。


「おかえりなさい、シェルン。

 お仕事の方はいかがで...し...」


 今日お願いした任務について聞こうとして。

 シェルンの後ろに、まだちょっとプルプルしながらついてきた二人を見て。


 その姿を見て、まず反応したのはレイノルドであり、その部下二人であり。


「ア、アセリア様!団長!お疲れ様です!」

「「お疲れ様です!」」


 まさかの王女と騎士団長登場である。団員としては即姿勢を正し、最敬礼で迎え入れる。

 外の人たちと違い、女神っぽく見えたシェルンは知らないので、これが当然の反応ではあるが。


「ん。レイノルド、みんな。ご苦労だった。」


「お勤めご苦労様です。このような時間ですし、皆様楽になさってくださいね。」


 全力でプルプルを抑え、何とか普通に振舞う姫と騎士。


 ただ、その反応よりもなによりも。

 もう一人のお姫様が、ものすごく何か言いたそうな顔で自分の侍女を見つめていて。


「ねえ、シェルン。どうしてお二人が、あなたと一緒にこちらにいらっしゃったのでしょう?」


 とりあえず、侍女に聞く。


「あ、これはですね。えっと、お役目中にバッタリお二人にお会いしまして、それから成り行きで。」


 なんか、いつもハキハキしている侍女の態度が微妙に、長い付き合いのセラフィーナにとっては明確に。


 おかしい。


「バッタリ。ですの?ほんとうに?」


 すでに若干ジト目になっているセラフィーナ。


「え、えっとですね。その。」


 その目に狼狽える侍女だが、その後ろから二人のやり取りを見ていたこの国のお姫様と近衛騎士が、助け舟を出すように自己紹介を始める。


「貴女がセラフィーナ様ですね。はじめまして。

 わたくしはフィルメリア王国第一王女。

 アセリア・エル・フィルメリアです。


 突然の訪問をお許しください。そして」


「王国騎士団筆頭団長。

 セティス・エル・クレーディアです。

 シェルン殿からお話は伺っております。

 よろしくお願いします。」


 姫と騎士、二人にしっかり、ちゃんと挨拶されて。

 さすがに侍女に色々問いただす前に、ちゃんとしなきゃいけなくなったので、セラフィーナもとりあえず。


「アセリア様、セティス様。

 このような場所へようこそおいで下さいました。


 まずは改めまして、このたびはあのような書簡を送り付けました事、深くお詫び申し上げます。」


 一度、頭を下げる。そして。



「わたくしはセラフィーナ。いえ。」


 言葉を切り、少し目を閉じ、そして。



 改めてその空色の瞳で二人を見て、名乗る。



「聖王国クリスティアラ第一王女。

 セラフィーナ・プリム・クリスティアラです。


 今は亡き、いにしえの聖王国ですが。

 国家としては、存在しておりませんが。


 わたくしという存在として、今も。

 クリスティアラは、続いております。」


 この場に居た、殆どの者にはわからない、その名乗り。

 亡んだ国家。いにしえの聖王国。


 ミリエラは、なんとなくわかる。

 その国の名前自体は初めて聞いたが、あの時、セラフィーナに聞いた、邪神を封印していた国家。


 それが、クリスティアラという名前なのだと、ミリエラの中ではそう結論づける。


 ただ、まだ存続しているということについては、ミリエラにもよく分からなかった。




 だが、その名乗りを聞いた。




 聞いてしまったアセリア姫は、即、その場に平伏して。




 その突然の行動に驚くセティスをはじめ騎士団の者。



 剣林に囚われた者たちですら、アセリア姫が即平伏すなどという、王族としてありえない行動に驚き。




「アセリア様は、わたくしの事をご存知なのですね?」



 セラフィーナは静かに、平伏している姫君に問う。



「はい。はい!存じております!」


 伏したまま、まるで感極まったように。



「お顔を上げてください。

 よろしければ、お聞かせいただいても?」



 アセリア姫の元に歩み寄り、その少女の前にしゃがみ、優しく肩に触れる、もう一人の姫君。




「はい。わたくしは...」



 顔を上げ、その瞳には涙を溜めて。



「セラフィーナ様にあの時、王国滅亡の時に。

 命をお救い頂いた、聖王国第三王女。


 エルフィリア・クリスティアラの。



 あなたの、妹君の...




 その末裔に、なります。」

なぜアセリア姫が、セラ様の魔力を使えるのか。


当然ネタ的には分かりやすいものでしたが、ひとまずこれで血縁関係が明らかになりました。

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