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それは絶対にお断りしますわ  作者: ミカン♬
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後編

 黙って食事をしていた義父が話に参加してきた。


「リリアベル、このハリソン侯爵家は呪われていてね、決して本妻に子どもが授からないんだ」


「え、そんな話は聞いていませんが」


「君の実家はご存じだよ。分かっていて君を嫁がせたんだ」


 ショックだった、きっと両親は義父母に口止めされたんだろう。


「たとえ知っていても私はカインと結婚していました。でも愛人は認めません。夫を他人と共有するなんて気持ちが悪いです」

「ベル、大丈夫、愛人なんて持たないから」


「それなら出ていって貰おうか、私の子はまだ他に二人いるんだよ」

「僕は母の子ではなかったのですね」


「そうよ、侯爵に瓜二つな貴方を私の子として引き取ったの。今まで大事に育ててきたのに残念だわ。こうなる日を考えてリリアベルにも侯爵夫人としての心構えを教育してきたのに」


「だからずっと違和感があったんだ。僕は幼い時からお二人を家族と思えなかった」


「お前はこの家を守るためだけに生まれたんだ。愛人との間に子は授かる、直ぐにな。リリアベルと離縁したくなければ愛人を受け入れるんだ」


 廃嫡か愛人かカインは選択を迫られていた。


「そこまで言われるなら離縁しましょうカイン。その方が良いわ」

「そんなベル、僕を捨てるの?廃嫡されても僕はいい、君を愛しているんだ」


「嬉しいわ。その愛だけで充分です。愛しているから離縁しましょうカイン」


 凛として離婚すると告げるリリアベルを義母は冷たく突き放した。

「仕方ないわね。黙ってユラの子を大事に育てればいいのに」


「いいえ、それは絶対にお断りしますわ!」


「二人で話し合う事だな。良い報告を待っているよ」

「ハリソン侯爵家のために最善を尽くして頂戴ね」


 リリアベルを抱きしめて、二人の毒親をカインは無言で睨みつけていた。





 ────8か月後。


 ハリソン家の離れの屋敷でカインは愛人と今夜も甘いひと時を過ごしていた。


 結局彼は愛人を受け入れる選択をした。


「安定期に入ったね。もう大丈夫?」

「ええ、お手柔らかにね。浮気はしなかったですよね?旦那様」


「もちろんだよ、僕は良き夫、父親になるからね」

「もう一人欲しいわ」

「はは・・・まだ一人目が生まれてもいないのに?」


「うーん・・・できれば3人欲しいです」

 熱い口づけを交わすと二人はそっとベッドに倒れこんだ。


 リリアベルには悪いことをしたけど離婚して本当に良かった、父親が言った通り直ぐに子どもを授かった。数か月すれば我が子をこの腕に抱けると思うとカインは楽しみで仕方ない。


「本当にハリソン侯爵家は呪われていたんだね」

 カインは愛おし気に腕の中にいる愛人の、美しい金髪をクルクル弄び緑の瞳にキスを落とした。


「過去に何があったんでしょう?」

「さぁね、分からないけど、呪いのせいにして何人も愛人を持つ両親を僕は軽蔑するね」

「私以外の愛人は持たないで下さいね、旦那様」


 ずっとカインが好きだった、愛していた。その赤みを帯びた茶色の髪も目も、鼻筋の通った美しい顔も、全てが愛おしくて、そんな愛する旦那様の子どもを産める幸せを神に感謝した。



「旦那様、妻に戻れるのは5年先でしょうか?」

「3人望めばそれくらいかな?僕は2人でもいいけど」


 カインとリリアベルは話し合って離婚した。

 侯爵夫人の座も、世間の噂も気にしない、全て失っても構わない、リリアベルはカインの愛だけを切望した。


 そうしてリリアベルはカインの愛人となり離れの屋敷で暮らし始めたのだった。


 カインも愛するリリアベルと離れで暮らし、仕事する時だけ本邸に向かう。

 廃嫡するなどと言ったが、凡庸な父親は優秀なカインを手放せるはずは無かった。


 義父母はお互いに数人の愛人を囲っていた。


「子どもが生まれたら家督を継いで、あの二人には領地に籠ってもらうよ。愛人達とは手を切らせる」


「それが侯爵家の為の最善方法ですね。毒親は必要ありませんわ」


 カインの本妻の座は空いており、狙っているご令嬢も多いが、浮気してカインが他のご令嬢を本妻に迎える場合はリリアベルと生まれてくる子に財産を全て譲ると契約書も作成している。


 リリアベルがストレスを感じて、胎教に悪いユラは解雇して実家に戻した。


 再婚するまで子ども達は微妙な立場となるが、二人で愛情を注いで育てていけば理解してくれると信じている。

 離婚に慎重な貴族界では異例かも知れないが、これも愛の形だとカインとリリアベルは思うのだ。



 やがて無事に子どもは生まれて、ハリソン侯爵家の本邸では親子三人の幸せな家族が暮らし始めた。






最後まで読んでいただいて有難うございました。


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