76.初めての出会い
翌日、至れり尽くせりの伯爵邸を後にした僕たちは、街の冒険者ギルドに来ていた。
もちろん目的は。ダンジョン『嘆きの迷宮』の探索許可だ。
とはいっても、クリプトン伯爵からは紹介状なるものを預かってるし、許可を得たのも同然なんだけどね。
一応これを冒険者ギルドに渡して、許可証を発行してもらうっていう流れみたいだ。
「次の方どうぞ――あら? あなたたちは昨日の……」
「こんにちは。今日は『嘆きの迷宮』っていうダンジョンに潜る許可をもらいに来ました!」
対応してくれたのは、偶然にも昨日セラフィの試験を受けた時に受け付けしてくれた人だった。
「『嘆きの迷宮』にですか? あそこはDランク以上が必須条件となっているのですが……」
「ええ、ですのでこんなものを預かってきました」
僕はそう言って、受付のお姉さんに伯爵からの紹介状を手渡した。
「はあ……? ――えっ! この印璽って伯爵家のものじゃないですか!?」
「そうそう、そうです。そこに伯爵からの――」
「大変! すぐにギルド長に報告するので、少々お待ちください!!」
「え? いや、あの――」
受付嬢は封蝋の印璽を見て目をまん丸にして驚き、僕が引き留めようとするよりも早く奥へと行ってしまった。
許可をもらいたいだけだから、ギルド長に報告なんてしなくていいんだけどな……。
まぁ、この街を管理する伯爵からの紹介状なら、受付嬢だけで対応するというのも無理な話かもしれない。
「――お待たせしました! ギルド長がお会いになりたいそうなので、こちらに来ていただけますか?」
「えと……はい」
ここまできたら断れないだろうし、僕は仕方なく頷くことにした。
「――ギルド長、入ります」
受付嬢がノックしながらそう言って扉を開くと、そこには妙齢の綺麗な女性が立っていた。
「初めまして。私は、ポタシクル冒険者ギルドの長を務めているバンナと申します。以後お見知りおきを」
「冒険者のソーコといいます。よろしくお願いします」
「どうぞ座ってください。――さっそくですが、紹介状の中身を拝見させていただきました。なんでも『嘆きの迷宮』に入りたいとか……」
「はい、そうなんです。少々事情がありまして、僕たちのランク的に基準には達していないと思うのですが、是非潜らせて欲しいんです」
「事情ですか……よろしければその内容をお聞きすることはできますか?」
バンナさんはギルド長として聞いておきたいんだろうけど、そこら辺は伯爵のプライベートなところを話さなくちゃいけなくなるから、
「すみません。守秘義務があるので……」
一応、僕は黙っておくことにした。
「そうですか……何か特別な理由があるのですね。わかりました。ですが、この街の冒険者ギルドを束ねるギルド長として、伯爵様のご紹介であったとしても簡単に許可を出すわけにはいきません。実力不足により帰らぬ者となっていった方々を私はこれまでに何人も見てますし、それを判断するのが我々の役目ですから」
どうやらバンナさんは、かなり正義感というか自分の仕事に誇りを持っているタイプの人みたいだ。
こういう人の場合は自分が納得しないと、たとえ権力者の言葉でもテコでも動かないだろうなぁ。
「でも、それはクリプトン伯爵のご意向を無視することになりますわ。いくらギルド長といえど、こちらも『はい、そうですか』とは引き下がれないですわ」
「もちろん、ただ拒絶するつもりはありません。Dランク以上の実力を示していただければ、こちらとしても許可証を発行いたしましょう」
「実力を示す、ですか。ちなみに、それってどんな……?」
「パーティーを率いる立場であるソーコさんと私との模擬戦闘にて判断いたしましょう」
「――!?」
マジですかっ!
なんとな〜く試験的なものはある気はしたけど、まさかギルド長のバンナさんと戦うことになるとは……。
まぁ、それが手っ取り早いといっちゃ手っ取り早いんだけどさ。
「私は武器を使わず魔法を主体としているのですが、ソーコさんはどのように戦われますか?」
「メインは剣を好んで使っていますけど……他には試験方法ないんですかね?」
「他ですか。例えばですが、こちらの指定した魔物の討伐や素材の採取というものを、いくつかこなしていただくといったものでしょうか?」
むむむ、それだと時間が掛かりすぎるなぁ。
そう考えると、やっぱバンナさんと手合わせしたほうが早いか……。
「……いえ、やっぱり模擬戦闘でお願いします」
「承知しました。では、さっそく移動しましょう」
バンナさんがそう言って立ち上がったので、僕はこっそりと《分析》で彼女のステータスを覗き見ることにした。
「――!」
「どうかされましたか?」
「い、いえ、なにもっ」
バンナさんのステータスを見て、僕は思わず声を上げそうになったがぎりぎりで耐えた。
なぜなら――、
【名前】バンナ
【種族】ダークエルフ
【レベル】101
【HP】17515/17515
【MP】3685/3685
【力】217
【耐久】165
【魔力】318
【器用】224
【敏捷】198
【運】69
【魔法】
火属性、水属性、土属性、風属性、闇属性
【スキル】
弓術Lv.3、体術Lv.1、魔術Lv.7、鑑定Lv.2、索敵Lv.3、回避Lv.1、採取Lv.5
――彼女は僕がAOLで1度も出会ったことのない、『ダークエルフ』という種族なのだった。
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『アラサーから始まる異世界無双ライフ 〜スキル『シャドウマスター』は最強でした〜』
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チートスキルを授かうも役に立たず、おっさんになってから覚醒する物語です!
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