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幸せになれなくたっていい

作者: ちゃこん

幸せになれなくたっていい。

それで周りが幸せなのなら。


*** *** ***


ーー自己犠牲。

ずっと、言われてきた言葉。

仲間達だって自己犠牲を果たして死んでいった。己を盾に。

だから僕も、そうするつもりだった。

次の戦場で、国のために、仲間のために。華々しく散るつもりだった。

だのに、終わってしまった。結局、僕は仲間を盾にして生き残ってしまった。


戦争が終わって、命の大切さが世間に広がって。

変わらず、自己犠牲の精神は美しいものと呼ばれた。

けれど、身を盾にして守ってしまわれた僕にとって、自己犠牲は忌まわしいものとなった。

あの時、僕を庇わずに逃げてくれていれば。自分から戦場に戻ってくることがなければ。

しかし、物心ついた時から言われてきた自己犠牲には、従うしかなかっただろう。

そうしてあの頃を悔やみながら、僕の時間は流れていく。


家が、燃やされていく。魔法が放たれていく。

あの国の残党が残っていたのだ。

皆一斉に逃げて行く。あの戦場で育った者など僕以外に此処にはいないから当然だ。

逃げる、逃げる、逃げる……。頭では逃げようとしているのに、体が動かない。

……ああ。そうだ、自己犠牲だ。

そう、頭が理解する。それと同時に、詠唱を始める。

我が身を代償とし、敵とみなしたモノを一掃する、僕にしか使えない術。

ただ、最期に思ったのは、僕も結局のところ、自己犠牲の暗示には逆らえなかったということだ。


*** *** ***


幸せになれなくたっていい。

それで周りが幸せなのなら。


そうして、この世界は巡っていく。

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