初めての機内食は、甘~いミュージカルに乗って♪
何でも巷の噂では、「小説家になろう」きっての神絵師様が機内食をご所望らしいです。食事は食事でも、ディナーでもランチでもモーニングですらなく……き、機内食ですか~?!
普段お世話になりっぱなしの大恩人様がご所望とあらば、ここは、七生も機内食の思い出を語らねば!
……というわけで、しばらくの間お付き合いくださいまし~♪
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それは、生涯初の機内食を食したときのことです。
確かに七生はコロナ流行前までは飛行機に乗ることもあり、国際線では人並みに機内食も食べてきた食いしん坊さんでした。(笑)
あ。でも、可愛いCAさん目当てに、どうでもいい用事で呼んだりしたことは無いですので! 皆さん、CAさんは忙しいのです。特に男性の皆さん、いくらCA様がお美しくても興味本位でのお近づき行為は控えましょう。
……ご、ごめんなさい。七生は少ししかありませんので、皆さん許して~!
でも、楽しくおしゃべりしてたくらいで、口説いたり、合コンしたり、付き合ったりとかはありませんので! これ、ホント命かけてないっすから! ただ、あの時は数時間のフライトがほんの数分に感じたのは内緒っす~♪ (ちなみに国内線)
こ、こほん。つ、つまりですね。今回は……そう、七生が初めて食べた機内食のお話でした。
それは初めて食べたカレー味の機内食。というか、初めて食べた機内食がカレー味。というかカレー!
学生時代、沢木耕太郎の『深夜特急』に憧れて、初の海外へと出かけたときのことです。懐に深夜特急を忍ばせて乗る航空機なんて、世界広しと言えども一択でしょう!
そうですよね皆さん! 当然チョイスするは、〇〇〇航空!
当時は、ピーチなどの格安航空会社が無い時代。その手の市場はこの〇〇〇航空が一社独占の様相でした。(笑)
で、初めての海外旅行で乗り込んだこの飛行機なんですが、なんだか妙に居心地がいい。あれ? この感じは一体なんだろうと、最初は少し不思議でした。が、しばらくの間この何とも言えないご近所さまのような感じの正体が分かりませんでした。
飛行機が伊丹空港を飛び立ち(当時関空路線はなかった!)しばらくすると、室内にしつらえられたテレビ画面から流れてくるのは、ミュージカル映画。主演俳優はひげを生やして満面の笑みで踊りまくります。
やがてヒロインやその周囲の女優さんも出てきたのですが、笑顔でくるくる踊りまくり。なんだか、ストーリーよりダンスが重要? 日本語の字幕もあったかと思いますが、初めて見るこの外国映画の内容は、最後まで頭の中に入って来ませんでした。
空調を押さえた機内にはねっとりとした熱気がまとわりついている様で、喉の渇きを覚えた七生は、ダッシュボードに据え置かれたジュースを口にしたのですが……。それは甘くて何だか生ぬるくねっとりとした食感。
そして、やや閉口しつつも最後まで飲み干した自分の目の前に、待ちに待った機内食が運ばれてきたのでした。
「フィッシュ オア チキン?」
「チキン!」
いつも同一金額なら、フィッシュ一択の七生なのですが、不思議なことにチキンを選んでいました。
今思えばチキンは確かに無難な選択です。何しろ世界中でチキンならブロイラーが出てくるでしょうが、フィッシュなら名前も知らないお魚が出てくることも覚悟しなくてはいけませんから。
「……フフフ♪」
人の好さそうな笑みを浮かべるCAさんから渡された機内食は、白い発泡スチロールの容器が二つ。それを七生の前に置いてくれると、紙コップにワインを注いでくれました。
で、逸る気持ちを押さえつつ、容器のふたを開ければ……。そこに現れたのは、タンドリーチキンとサフランライス。ライスの隅っこには野菜のカレー煮込みのようなものまで付いてます。
そして、口にしたこの味は……。そう。これは何だか懐かしいカレー味。かつて田舎のおばあちゃんの家で味わったり、子どもの頃海の家で食べたことがあるような……。
そのとき初めて七生の中でこの妙な居心地の良さと、もはやそれが当たり前のように皆が気にしていない、大きく破れてめくれ上がった機内の天井とが結びついた瞬間だったのでした。