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投資少女  作者: 雨後虹晴
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選挙

 岸田首相が就任したと思ったら、衆議院はすぐに解散して、今度は選挙。株価は堅調、といったところなのかな? 選挙があるから株価も上がる? よくわからない。

 与党も野党も口を揃えて分配分配と言ってるけど、国は借金まみれと聞く。給付金を増やすのはいいけど、そのために更に重ねた借金を誰が払うの? と考えたとき、今、高校生のあたしたち世代に全部そのツケが回って来るんじゃないのと思わざるを得ない。

 日本の賃金はこの三十年間ほとんど上がっていないのだそうだ。他の国では上がっているというから、日本人の購買力はどんどん下がる。普通に考えれば、購買力があって高く売れるところでモノを売りたいはずだから、世界の物価は高く売れるところを基準に上がるはず。そこにコロナウィルスが影響して世界の物流がストップしたものだから、必要なところに必要なモノが届かない。届かないからモノが不足して世界的に物価が上がった。給料が増えないのに物価は上がる。生活が苦しくなるのは当たり前だ。

 生活が苦しい国民が増えれば、税収は伸び悩み、福祉にお金がかかることになる。それでも借金を重ねてお金を払える内はいいけど、いよいよお金を出してくれるところがなくなったらどうなるの? 国としてにっちもさっちも行かなくなってから、あとは任せた!なんて言われても困る。

 でも。

 株式投資なら増えない給料を補ってくれそうだ。長期投資で企業の成長を買えば、その成長の果実を得られると顧問は言う。確かに長い目で見れば、成長する企業の株価は上がり、配当だって出るのだから、各党が言う分配にもつながるはず。

 金融所得課税強化は増えない給料を補う部分の税金を増やすことだから、富裕層からだけでなく、そうでない人にも増税することになる。増税が国民から株式投資を遠ざけ、結果的に成長する企業の後押しさえ弱めるのなら、肝心の分配機能も弱体化させることにならないか。このところ、ニュースを見ながら違和感ばかりが募っていた。


 投資先探しはずっと続けていた。

 狙いは一度使うとずっと使い続ける商品をもつ企業。おいそれと他が参入できない商品をもつ企業。そこでしか買えない商品をもつ企業。そして、成熟した業界でシェアを伸ばす企業。

 国内上場企業だけでも三千以上あるけど、丹念に見てゆくしかない。あたしはまだ高校一年生。時間ならある。

 決算発表に合わせて、株式投資部では手分けして中身を見た。


 ・3969 エイトレッド

 ・6146 ディスコ

 ・6999 KOA

 ・7949 小松ウオール工業

 ・9733 ナガセ


 ・2268 BーR サーティワン アイスクリーム

 ・5423 東京製鐡


 ディスコ

 何の会社か想像もつかなかったけれど、半導体素材の加工には欠かせない会社なんだそうだ。業績は景気に左右されるようだけど、長い目で見れば着実に成長しているし、利益率が半端ない。消耗品を提供しているから、ユーザは一旦使いはじめれば、ずっと買い続けることになる。

 PERは四季報予想では20倍程度。高くはない。ただ。株価が三万円を超えている。株式投資部の部員の手持ちは200万円から始まるので、とても手が出ない。せめて500万円から始められないかなあ。1,000万円からなら、もっとバリエーションも作れるんだけど。やっぱ、タネ銭はある程度まとまった金額がいるってことなんだな。

 もっとも、仮にお金があったとして、今この株を買うだろうかと考えてみた。あたしの判断はNOだった。買うならコロナショックのように市場全体が大きく下げたときだ。

「味噌も糞も一緒に下がる」

 顧問の表現で言えば、何年かに一度、そういう時が来るらしい。ディスコはそういうときに買う味噌のひとつだと、あたしは考えたのだ。


 ナガセ

 これまた何の会社かと思ったら、東進ハイスクールや四谷大塚など塾を運営する会社だった。

 少子化が止まらない日本、子どもの数が年々減っている中、学習塾市場は間違いなく縮小しているはず。にもかかわらず、この会社は増収増益だ。成熟した市場でシェアを伸ばしていると考えられる。

 パイが小さくなれば、やってゆけなくなる学習塾は増えるだろう。そこに通う子どもは他に移らざるを得ない。その受け皿となるのなら、この会社の成長余地はまだまだありそうだ。


 東京製鐡

 コロナショック後のモノ不足から需要が急増し、売上高も利益も急回復している。

 PERも一桁倍で、とても低い。もし、この回復のままに三年も五年も増収増益が続くなら、今の株価は激安だ。けれど、コロナショックのモノ不足はいつまで続くのだろう。モノ不足が収まれば、この会社の業績はどうなるんだろう。あたしにはまだわからない。以前、わからないものには手を出さないからと三井金属を見送ったことがあった。わかるようになるまで、覚えること、経験することはまだまだ途方もなくあるんだろうな。


 持ち株はオークネットが順調、日本航空もまずまずだったが、良品計画が週末に大きく下げて含み損を抱えてしまった。けれど、先週と違って、あたしは冷静だった。先々の高成長が見えているなら、目先の下げは嘆くことではなく、むしろバーゲン価格でお宝を仕入れるチャンスだ。そう考えるようになっていたからだ。


 10月22日現在、あたしのポートフォリオ。

 ・3964 オークネット 200株 8月13日購入 買値1,779円、現在 2,348円、評価額469,600円、含み益113,800円

 ・7453 良品計画 200株 8月16日購入 買値2,301円、現在 2,214円、評価額442,800円、含み益▲17,400円

 ・9201 日本航空 200株 7月30日購入 買値2,250円、現在 2,483円、評価額496,600円、含み益46,600円

 ・現金 734,000円

 ・評価額計 2,143,000円、含み益143,000円、含み益率7.2%


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