オリンピックとウクライナ
北京オリンピックが終わった。
平野歩夢や羽生結弦の新境地を拓く技にため息をつき、オールラウンドにトップ争いをする高木美帆にただただ感嘆し、どんな風にもぶれない小林陵侑のうつくしさに見惚れた。最後の最後、カーリング女子では予選敗退と思ったら決勝進出、銀メダルという波乱の展開に、選手とハートがシンクロした。
疑惑の判定やドーピング騒動、外交ボイコットなどいろんなことが言われた北京オリンピックだったけど、その舞台に立つ選手たちには、人のうつくしさやすばらしさが詰め込まれていると思った。
その五輪が終わったタイミングで、ロシアがウクライナに攻め入った。
親ロシア勢力が実効支配するウクライナ東部の一部地域を独立国として認め、その地域の安全保障のために軍を派遣する。ウクライナからすれば、なにを勝手にとなる。欧米諸国も一斉に反発した。かねて警告していた経済制裁に踏み切ると言う。
そうなればどうなる？
ロシアは資源大国。資源流通が滞れば、資源価格は上昇するはず。資源が高騰すれば、あらゆるところに波及するから、世界的に物価高は避けられないだろう。欧米各国はインフレ抑制のため金利を上げざるを得ない。インフレの進み方次第では、景気にも関わる。株価にはマイナスばかりだ。
天皇誕生日翌日の木曜日、株式市場は大荒れだった。
その日、ロシアがウクライナ各地にミサイル攻撃を加えたとのニュースまで流れた。
ただの脅しだという声もあった。攻撃は親ロシア勢力が実効支配するウクライナ東部に限るという声もあった。けれど、そんなことはなかった。
日経平均株価は結局、五日続落。26,000円を割り込んだ。
ところが、金曜日、ロシアがウクライナ全土を制圧しつつある中、日経平均株価は驚くべき動きを見せた。木曜日の暴落が続くのかと思いきや、大きく反発したのだ。下がり続けていた東証マザーズも暴騰した。
なんで？
「材料が出尽くしたってことじゃない？」
マリノさんがボソッと言った。
「？」
「だから、戦争も始まるまでは大変なことになるって思うから株価も下げたんだけど、実際に始まってしまえば結果も見えたってことで、安くなったのを拾ったってことじゃない？」
「結果が見えたって、まだ戦争は始まったところですよ」
「始まったところだけど、もう見えてるじゃん。誰があの攻撃を止められるのさ。アメリカもＮＡＴＯも結局は口だけじゃん」
「でも、経済制裁で資源価格は上がるって、それはまだこれからですよね」
「そこはまだ先の話でしょ。目先、値下がりの理由の結論が出たってことなんだよ、きっと」
「目先の理由・・・戦争が始まるかもってこと？」
「銃声が鳴ったら買え、って格言もあるらしいよ」
そうなんだ。。。
でも。
「遠い国の話とは言え、人の不幸で儲けたとか損したとかって、なんか複雑ですね」
「そうね、でも、戦争があっても人は生きて行かなきゃならないからね。当事者であろうとなかろうと。生きていくためには食べ物もいるし、エネルギーだっている。それを運ぶ人だって必要。結局、経済ってさ、生きていくからには絶対必要なんだよね。株式市場がなかったら、回るお金も回らなくなるからね。それにさ」
マリノさんはいつになく真剣な眼差しを向けた。
「遠い国の話って言ったけど、遠い国の話じゃないかもよ」
あたしはマリノさんをぼんやり見ていた。
「だって思わない？ 日本だって何かあったらどこの国がカラダ張ってくれるのかな。そりゃ、口では非難するだろうけど、でも、それで安全が守られるわけじゃない。それに、アフガニスタンだっけ？ ミャンマーだっけ？ 世界中が非難轟々で経済制裁とか国交断絶とかで懲らしめてるけど、でも、それで本当に困ってるのはその国で暮らす普通の人たちでしょ？ 制裁するから、苦しめられた人たちが余計に苦しむんだよね」
2月25日現在、あたしのポートフォリオ。
・1357 日経平均ダブルインバース 1,000株 12月8日購入 買値388円、現在444円、評価額444,000円、含み益56,000円
・1605 ＩＮＰＥＸ 100株 11月15日購入 買値1,200円、現在1,155円、評価額115,500円、含み益▲4,500円
・3964 オークネット 200株 8月13日購入 買値1,779円、現在1,559円、評価額311,800円、含み益▲44,000円
・7453 良品計画 200株 8月16日購入 買値2,301円、現在1,711円、評価額342,200円、含み益▲118,000円
・現金 693,531円
・評価額計 1,907,031円、含み益▲92,969円、含み益率▲4.6%
原油価格の乱高下がＩＮＰＥＸ株の乱高下にもつながった。
ダブルインバの値上がりで、あたしのポートフォリオは前週比で改善した。
金曜日の日経平均株価は反発した。ＮＹは木曜日、金曜日と高騰した。戦争が起こって景気減速懸念が出てきたため、金利上昇懸念が和らぎ、株価にはプラスに作用するからという。何だかよくわからない。けれど、これらがただの目先の動きなのか、長い動きの転機なのか、あたしには見当もつかない。
でも、だからこそ長い目を持つことが必要なんだろう。この流れがどうなるのか、よく見ておかねばと思った。それは単に株式市場云々に留まる話ではないだろうから。
土曜日、つけていたテレビが韓国の大統領戦を伝えていた。北朝鮮に対して、一方の候補は外交を尽くしてゆくべきだと言い、もう一方の候補は対抗できる確かな抑止力が必要だと言う。今のウクライナを見ると、抑止力が必要だという主張が勝るような気がする。軍拡競争が進む世界が広がるのかな。何だかイヤだな。でも、それが現実を見せつけられた人の感覚として素直な反応のように思う。
オリンピックで見た人の可能性とすばらしさ、多くの人たちを混乱と哀しみに落とす武力行使。なんなんだろう。気分が重い。
