動いた植田総裁
夏期講習は続く。
大変と言えば、大変。次の日までにこなさなきゃいけない宿題もたんまり出るから。
「塾の夏期講習なら、何万円も取られるんだ。タダで受けられるんだから、お前ら感謝しろよ」
と担任は言ってたけど、お金の話をされてもピンと来ない子たちが多いように思った。
あたしは、顧問が公教育とはありがたいものですよ、と言ってたことを思い出していた。
「本屋に行ってごらんなさい。社会人向けに学校の勉強のやり直し関連の本がどれだけあることか。そればかりか、それを教える教室やらネット講座だってある。それ、けっこうお金がかかったりするんです。高校じゃ全部普通に教えてることでも、学校卒業したら、全部自分のお金で習わなきゃいけない。高校生はね、実は特権階級なんですよ。国からタダで学ぶことを許されてる特別な人たち、それがあなたたちです」
とにかく課題をこなしなさい。
他のことはしなくていい、課題だけこなしなさい。
来る日も来る日も、言われたこと、出されたものだけを愚直にやった。
ちっとでもわからないことがあれば、繰り返し繰り返し課題を解き続けた。
生まれてこのかた、こんなに勉強したことない。
それにしても。
今年は暑い。毎日毎日毎日毎日、体温並み、体温超えが続く。
異常だけど、これがニューノーマルになったような感がある。
今年は蝉が多いようにも思う。
緑あるところでは、どこも騒々しいばかりの蟬しぐれ。いっそう暑さを感じる。
勉強勉強の日々を送っていても、市場は動く。
夏の決算発表が始まった。3月期本決算企業の場合、1Q決算が出る。それを見れば、今期の会社計画に対して順調なのかどうかが見えてくる。投資先を決める上でとても重要な決算だ。
だから、とっても気になる。
今週、あたしの持ち株ではサイバートラストとKOAが1Q決算を発表した。
サイバートラストは増収増益ながら、通期計画の伸び率からすれば1Qの伸び率が著しく低いと判断されたか、発表後に大きく売り込まれた。通期予想に変更はない。あたしとしては静観する他ない。
もう一方のKOAは、売上高が前期同期比マイナス9.0%の16,972百万円、営業利益が同マイナス67.7%の865百万円、純利益が同マイナス54.9%の1,058百万円だった。
今期の通期予想は、売上高がマイナス4.2%、営業利益がマイナス34.5%、純利益がマイナス24.0%だったから、1Qのマイナスには驚かないが、幅が大きい。
はたして、発表の次の日、KOAは160円を超す下げに見舞われた。
まだ買ってからひと月ほどしか経っていない中、順調に株価は上げていたのに、含み益が吹っ飛んだ。
はあっ。
KOA、中長期視点では、自動車の電動化に伴う成長が見込まれる。
なんだけど、あたしの目先はあと2ヶ月で終わる。それまでに買値を大幅に上回ることなどできる?
まあ、ムリやろ。
しゃあねえ。
自分でもイヤになるほどアホらしいことだけど、悶々と持っててもと思って、顧問に連絡を入れた。
「売るんですか?」
さすがに驚かれた。
そりゃそうだよねえ。
「その後どうするんです?」
それは決めていた。つーか、候補はずっと前から考えていた。残る限られた時間の中で確実に儲けを取りにいくなら、高配当の銘柄だと。
ひとつは都銀株。
ここは配当金だけではない。他に買う理由がある。
インフレが進む中、今後、日本だっていつまでも緩和政策を続けることはできないはず。金利が上がれば、銀行株は恩恵を受ける。
都銀株は既にずいぶん上がっている。
ひろこは三井住友フィナンシャルグループをずっと前に買って、もう五割ほどの含み益を持ってるはず。
でも、まだ序の口とあたしは踏んでいた。
もうひとつはリース株の三菱HCキャピタル。
20年以上に渡って、毎年毎年、増配を続ける会社だ。
配当金の他に、ここを買う理由は、低PBR株であること。要するに万年安値株からの脱却で、大幅な値上がりを期待できるのではと考えたのだ。
でも、結局、ここで新たな売買するのはやめた。
このわずかな期間でジタバタしたって、何になるだろうと思い直したから。
都銀株にしても、リース株にしても、詳しく財務諸表を見たわけでもなし、夏期講習に追われる身には、今から調べるヒマもない。
「やっぱり、そのままで」
と顧問に告げると、顧問は「それがいいでしょう」と言った。
とかなんとか錯乱した後の金曜日。
日銀の植田総裁が、金融政策決定会合で長短金利操作の修正に踏み切った。
長期金利の上限を1.0%に引き上げた。
これを受けて、長期金利は上昇し、為替は円高に振れた。そして、日経平均株価は暴落し、銀行株が上昇した。
たかが長短金利操作の修正程度で、銀行株がかくも簡単に上がるのなら、本当に金利が上がれば、どれほど上がるんだろう。
そして、金利は遠からず上がるはず。だって、コロナからの回復がアメリカでもヨーロッパでもインフレを引き起こし、物価高を抑えるために金利を急激に上げたのだから。遅れ馳せながらの日本のコロナ回復が欧米の後を追うなら、日銀だって金利に手をつけざるを得ないはず。
と、考えると、都銀株を仕込んでおくには、今からでも全然遅くないんじゃないかなあ。
7月28日現在、あたしのポートフォリオ
・2588 プレミアムウォーターホールディングス 100株 2022年5月2日購入 買値2,370円、現在2,733円、評価額273,000円、含み益36,300円、含み益率15.3%
・3661 エムアップホールディングス 200株 2023年6月2日購入 買値1,055円、現在1,120円、評価額224,000円、含み益13,000円、含み益率6.2%
・3695 GMOリサーチ 200株 2022年8月3日等購入 買値3,695円、現在3,240円、評価額648,000円、含み益▲91,000円、含み益率▲12.3%
・4380 Mマート 1,000株 2022年4月18日等購入 買値853円、現在1,446円、評価額1,446,000円、含み益593,000円、含み益率69.5%
・4498 サイバートラスト 200株 2023年4月26日購入 買値1,665円、現在2,603円、評価額520,600円、含み益187,600円、含み益率56.3%
・6777 santecHD 100株 2022年5月2日購入 買値1,220円、現在2,977円、評価額297,700円、含み益175,700円、含み益率144.0%
・6999 KOA 200株 2023年6月27日購入 買値1,760円、現在1,736円、評価額347,200円、含み益▲4,800円、含み益率▲1.4%
・9432 NTT 300株 2023年6月30日購入 買値172.7円、現在160.6円、評価額48,180円、含み益▲3,630円、含み益率▲7.0%
・現金 3,605円
・評価額計 3,808,585円、含み益808,585円、 含み益率27.0%
含み益がまた減った。
KOAもさることながら、サイバートラストの急落が大きかった。でも、目先の動きなど、どうでもいい。夏期講習が終わって、夏休みの勉強に目処がつけば、この2年余りの総括をしよう。