7月の売り
高校野球の地方大会が始まった。
まだまだどんよりとした日が続くけれど、これが始まると、夏が来たあ! と感じる。
あたしたち3年生にとっては高校生最後の夏。あたしにとっては受験勉強もしなきゃいけない夏。
「セラちゃん、どこ受けるの?」
ひろこの無邪気な質問に
「どこがいいと思う?」
「えー、まだ決めてないんですかあ?」
笑うしかない。
「えー、志望校まだ決めてなくて大丈夫?」
大丈夫なわけないじゃん。だから困ってるんだって。
「看護師とかっていいんじゃない? どこでも食べていけますよ」
「看護師? んなの、ぜえったーい、ムリ!」
「どーして?」
「どーして? だって、あたし血見るの怖いんだもん」
医療ドラマでドバドバ血が出てくるシーンさえ、まともに見ることできないのに。本当にそんなところにいたら、血の臭いだけでアタマがクラクラするはず。そんな看護師、ごメーワクなだけだよね。
「えー、セラちゃん、かわいい」
ひろこはスプラッタなど平気なんだと。
「じゃあ、あんたこそ看護師なればいいじゃん」
「アタマが。お勉強しなくていいとこないかなあ」
「スプラッタが平気なら、屠殺場とか鮮魚市場とかどう?」
「えー、それ、朝早そう! ふかふかのお布団にずっとくるまっていたーい」
でも、こんなお人形さんのような子が包丁一本で魚とか肉をさばいてたら、それはそれで絵になるかも。
カレンの就職活動も始まった。学校に求人票が届いて、就職担当の先生との面談とかで部室に来ない日もあった。
「東証プライムの会社もあった?」
「けっこう、ね」
顧問によれば、カレンの成績はトップクラスだそう。あれなら、よりどりみどりでしょうとのこと。いいなあ。
成績順の発表などないから、自分が全体の中でどれくらいなのか、さっぱりわからない。けれど、定期テストの結果を見るかぎり、まあ、中くらい、なのかなあ。
「おまえの評定だったら、推薦ならこんなところかな」
進路相談で担任から示された大学の一覧。聞いたこともない学校名ばかり並んでいる。
「これは去年の指定校推薦だけど、今年も似たようなものだから」
「オススメってあります?」
「オススメ? まあ、このあたりにするんなら、今から勉強を頑張って、一般受験したほうがいいんじゃないか?」
一般受験、・・・かあ。
「株式投資部の、あれ、なんて言ったっけ?」
エリナさん?
「ああ、そうそう、あいつも評定は大したことなかったんだけど、勉強頑張って一般受験で行ったろ? 同じ部活にあんないい事例あるんだから、おまえも頑張ってみればどうだ?」
はあ。
頑張ってみたいけど、そもそもどこを目指せばいいのかわからないから、困ってるんだって。
6月に投打ともアメージングだったのが、月が変わったら途端にぱったりと快音が止まった大谷翔平のように、日本の株式市場も先月までの急騰が嘘のように止まった。
今年のように株価が急騰すると、資産全体の中で株式の占める割合が大きくなる。そうすると、全体のリスクバランスが崩れてしまうので、巨額の資金を運用する年金基金は、適正割合になるよう余分な株式を減らすのだという。
例えば、日本株が25%、外国株が25%、日本債券が25%、外国債券が25%となるようポートフォリオを組んでいたとしよう。急騰で日本株の割合が35%にまで高まったとすれば、10%分を売って適正割合の25%に戻すというわけだ。
今年は株価の上がり方が急で、その分、リバランスのための売却額も大きい。売り圧力がいつになく大きいので、株価の低迷に一役買っているそうだ。
あとは投資信託の配当金。これが7月に集中してるので、現金捻出のための売りも重なっているとのこと。
そうであるなら、いずれにせよ一過性のことなので、目先の低迷を気にしないことだ。
夏休みが近づく。
今年の夏は国内旅行の予約が好調なんだとか。
海外旅行は円安と世界的なインフレの関係で、コロナ以前に比べて低調らしい。
インバウンドは伸びている。
となると、今年の夏は国内がどこも人で溢れかえるはず。
運輸、宿泊、飲食はじめ観光関連の産業が盛況になる。売上高は上がるだろう。
利益はどうか。人件費や燃料費、仕入原価が上がるだろうが、今はインフレが定着した感がある。コロナから解放され、久々の旅行に出費を厭わない人は少なくないだろう。値上げが容認されるなら、利益が伸びる可能性は高い。
夏のボーナスも概ね増えているという。賃上げが広がっているなら、インフレ下とは言え、購買意欲は衰えまい。
半導体不足で売りたくても作れなかった自動車は、ようやく半導体不足が解消しつつあり、前より需要に対応できるようになってきたという。自動車の販売が回復すれば、景気にプラスになることは違いない。
てなことを総合すれば、国内景気は堅調に推移しそうだ。
世界はどうか。
やっぱり気になるのは、ウクライナとロシアの戦争だ。
物騒な出来事が増えている。膠着してる内は株価に関わることもないけれど、変化があれば市場は次を探る。
メガネくんに言わせると
「今のロシアのてっぺんにいる連中より、その下にいる連中のほうが怖いんじゃないすか」
「どーゆーこと?」
「あんな独裁国家、上の締付けが効いている内はいいでしょうけど、タガが外れたら何するかわからない連中がうじゃうじゃいると思うんすよねえ。そんな連中、核のことも全然わかってなくて、テキトーなことして大惨事になるってこともあり得るんじゃないすか」
制御不能になったら。
株式市場はリスクを減らすための売りが広がるだろう。
でも、仮にそれで暴落すれば、そこは絶好の買いチャンスとなるんだろうな。
7月7日現在、あたしのポートフォリオ
・2588 プレミアムウォーターホールディングス 100株 2022年5月2日購入 買値2,370円、現在2,542円、評価額254,200円、含み益17,200円、含み益率7.3%
・3661 エムアップホールディングス 200株 2023年6月2日購入 買値1,055円、現在1,110円、評価額222,000円、含み益11,000円、含み益率5.2%
・3695 GMOリサーチ 200株 2022年8月3日等購入 買値3,695円、現在3,205円、評価額641,000円、含み益▲98,000円、含み益率▲13.3%
・4380 Mマート 1,000株 2022年4月18日等購入 買値853円、現在1,569円、評価額1,569,000円、含み益716,000円、含み益率83.9%
・4498 サイバートラスト 200株 2023年4月26日購入 買値1,665円、現在2,731円、評価額546,200円、含み益213,200円、含み益率64.0%
・6777 santecHD 100株 2022年5月2日購入 買値1,220円、現在3,090円、評価額309,000円、含み益187,000円、含み益率153.3%
・6999 KOA 200株 2023年6月27日購入 買値1,760円、現在1,832円、評価額366,400円、含み益14,400円、含み益率4.1%
・9432 NTT 300株 2023年6月30日購入 買値172.7円、現在166.2円、評価額49,860円、含み益▲1,950円、含み益率▲3.8%
・現金 3,605円
・評価額計 3,961,265円、含み益961,265円、 含み益率32.0%
含み益が100万円を割った。
まあ、しょうがないわよね。売りが一巡するのを待つしかない。