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投資少女  作者: 雨後虹晴
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G7終わって

 広島のG7は、ゼレンスキー大統領とウクライナのための会合だったのかもしれない。

 G7なんて、なあんの関心もなかったし、世界中のお偉さんの親睦会くらいにしか思ってなかったけど、広島の集まりは、高校生のあたしにも「なんかすごかった」。


 岸田首相のスピーチは、素直によかった。

 平和に対する真摯な思いを自分の言葉でしっかり語っていた。

「世界80億の民が広島市民となったとき、この世界から核兵器はなくなるでしょう」


 かたや「オレの国には世界一多く核兵器があるんだぞ」と、臆面もなく広言するおっさんがいる。

 およそまともな人間なら、決して口にすることのない罵詈雑言を、広報官に語らせる国がある。

 脅せば通る、と考える幼稚な人たちに決して屈することはない。

 と、世界に向けて宣言した広島の会合。

 政治家って、すごいんだな。

 素直にそう思った。


 先週、一気に30,000円を超えた日経平均株価。今週も高値を維持してる。

「日本株は安値に放置されている」

「世界の中で日本株だけが出遅れている」

 株価が上がると、理由づけが語られる。

 そんな記事を見るたびに、「そうなのか」と思ったりもしたけれど。

 株式投資部に二年もいると、「本当にそうなのか」と思ったりする。


 株価が上がると、決まって出てくるコメントは。

「株価上昇はまだ始まったばかり。これからもっともっと上がる」

「株価は一見順調に見えるが、反落する恐れがある」

 どっちやねん!


 これも株式投資部に二年もいると、「そう言ってるだけ」としか思わない。

 様々な立場の人が、それぞれの立場で言ってるに過ぎない。

 だから、傾聴に値しない。とは言わないけど。

 傾聴してていいんだけど、盲信するのは避けたほうがいい。と思う。今は。


 ネットの掲示板に書き込まれたコメントは、いっさい無視だ。

 こっちは本当に傾聴に値しない。

 わざとマイナスの情報を書き込んで、株価を下げて安値で拾いたいと考えている。とか。

 わざとプラスの情報を書き込んで、株価を上げて高値で売り抜けたいと考えている。とか。

 そのときどきの感情をヒマに任せてただ書き連ねているだけ。とか。

 売り言葉に買い言葉で、誰かと熱を上げているだけ。とか。

 不平不満を発散したいだけ。とか。

 いずれにせよ、そこを見るのはムダと思う。


 株式市場は何が起こるかわからない。

 明日、株価が上がるのか下がるのかなんて、わからない。

 決算で好業績が発表されても、じゃあ株価が上がるかと言えば、そうとも限らない。

「材料出尽くしで株価下落」

 の一言でよく片付けられるけど、そう書いてる人も、本当はなんで下げてるのかよくわかってないから、そう書かざるを得ないのかもって思ったりする。


 今度の株高は、PBR1倍未満の企業が株価改善に向けた動きを本格化する期待が一因。なんだそうだ。

 だから、PBR1倍未満の企業の中で、体質改善が期待されている企業がこのところ物色されたりしている。

 NHKのニュースでも、PBRが出てたけど、株式投資などやったことのない人からすれば、「?」がいくつも並んだことだろう。


 PBR = PER × ROE

 だから、PBRを改善するには、ROE(自己資本利益)を改善することが必須になる。PERのコントロールはできないだけに。


 ROE = 純利益 ÷ 自己資本

 つまり、自己資本でどれだけの純利益を作ったかを表す指標だから、ROEを良くするには、分子の純利益を増やす、もしくは分母の自己資本を減らす、が求められる。


 純利益を増やす簡単な方法は、資産売却だ。

 持ってても仕方のない資産を売っぱらってしまえば、売却益を計上できる。

 ただ、これは一時的な話でしかない。売れる資産がなくなれば、それでおしまいだから。


 自己資本を減らす方法は、配当を増やしたり自己株を消却するなどで、お金を減らしてしまうこと。

 事業の維持や拡大のために使わない余分なお金は何も生まない。使いもしない現金を持っていても、意味はない。インフレになれば、なおさらだ。ただ銀行に預けているだけなら、自己資本の実質価値は目減りしてゆく。株主にさっさと返したほうがいい。本当は、次なる成長分野に投資するのが一番、なんだけど。


「とは言え、PBR1倍未満の株なんていくらでもあるわよね。どの会社の株を狙えばいいのかしら」とカレン。

「単純にネットキャッシュの多い会社、じゃあダメなの?」

「それだけでいいのかしらって、思って」

「どーゆーこと?」

「ネットキャッシュって、負債を引いたお金のことでしょ。それが多いってことは、増配の余地も、自社株購入の余地も大きいから、それはそれでいいんだけど」

 ちょっと四季報を見ただけでも、ネットキャッシュが多い会社はいくらでも出てくる。手元の最新の四季報春号で見てみると。


 ・3055 ほくやく・竹山ホールディングス

 現金同等物 21,091百万円、有利子負債 16百万円、ネットキャッシュ 21,075百万円、PBR 0.25倍、時価総額 15,700百万円


 ・3396 フェリシモ

 現金同等物 10,704百万円、有利子負債 0円、ネットキャッシュ 10,704百万円、PBR 0.36倍、時価総額 10,000百万円


 ・4365 松本油脂製薬

 現金同等物 44,873百万円、有利子負債 0円、ネットキャッシュ 44,873百万円、PBR 0.68倍、時価総額 64,400百万円


 ・6797 名古屋電機工業

 現金同等物 7,363百万円、有利子負債 0円、ネットキャッシュ 7,363百万円、PBR 0.53倍、時価総額 10,300百万円


 ・6984 双葉電子工業

 現金同等物 20,582百万円、有利子負債 324百万円、ネットキャッシュ 20,258百万円、PBR 0.32倍、時価総額 23,800百万円


 ・7521 ムサシ

 現金同等物 18,495百万円、有利子負債 3,516百万円、ネットキャッシュ 14,979百万円、PBR 0.37倍、時価総額 12,000百万円


 ・7937 ツツミ

 現金同等物 38,257百万円、有利子負債 0円、ネットキャッシュ 38,257百万円、PBR 0.46倍、時価総額 30,600百万円


「すごいな、ネットキャッシュが時価総額より多いところまである」

「まったくね。会社を買ったら、買値以上の現金までついてくるってことだから」

「こんなことあるんだね」

「よっぽど会社の未来に期待がないってことなんだろうけど。借金してるわけじゃないから、潰れる心配はないわよね」

「お金持ちだからね」

「でも、キャッシュリッチの会社は四季報でもわかるけど、わかりにくいのは現金以外の資産だよね」


 そう、例えば不動産。

 企業が持つ不動産の価値がいくらになるかなんて、わからない。

 よく保有不動産の含み益がいくらあるなどの特集記事がネットや雑誌で出たりするけど、自分で調べる方法がまだわからないから、それを鵜呑みにするしかない。

 不動産以外の実物資産になると、もっとわからない。設備や製品在庫にどれほどの価値があるのか、バランスシートに書かれた金額に比べて多いのか少ないのか、まるでわからない。


 ただ、ひとつ言えることがある。

 インフレが進めば、不動産価値は上がる可能性が高い。現金同等物の実質価値は目減りするが、保有不動産の含み益は膨らむ可能性がある。

 一等地に保有不動産がある、保有不動産で新たなプロジェクトが始まったなどがあれば、その株は膨大な含み益を抱えているかもしれない。そうした株を安いうちに買っておけば、いずれ市場が価値を知ったときには株価も大きく上がる可能性がある。


「わからないものをわかるようにする努力も必要なんだろうけど、今はわかることで投資することの方が大事なんだと思う」

 カレンはそう締めくくった。

 でも、あたしの高校最後の投資先は、資産株にしようかな。


 5月26日現在、あたしのポートフォリオ

 ・2588 プレミアムウォーターホールディングス 100株 2022年5月2日購入 買値2,370円、現在2,458円、評価額245,800円、含み益8,800円、含み益率3.7%

 ・3695 GMOリサーチ 200株 2022年8月3日等購入 買値3,695円、現在3,110円、評価額622,000円、含み益▲117,000円、含み益率▲15.8%

 ・4380 Mマート 1,000株 2022年4月18日等購入 買値853円、現在1,389円、評価額1,389,000円、含み益536,000円、含み益率62.8%

 ・4498 サイバートラスト 200株 2023年4月26日購入 買値1,665円、現在3,155円、評価額631,000円、含み益298,000円、含み益率89.5%

 ・6777 santecHD 100株 2022年5月2日購入 買値1,220円、現在2,801円、評価額280,100円、含み益158,100円、含み益率129.6%

 ・7808 シー・エス・ランバー 100株 2022年4月18日購入 買値3,470円、現在3,230円、評価額323,000円、含み益▲24,000円、含み益率▲6.9%


 ・現金 306,526円

 ・評価額計 3,797,426円、含み益797,426円 含み益率26.6%

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