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投資少女  作者: 雨後虹晴
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投資の目的

 才能を持つ者に機会を与える

 それと投資がどう繋がってくるっていうの?


「資本がないため、ままならないことが多々あると認識している。資本さえあれば、機能することが少なからずあるならば、誰かが資本を投入する必要がある。思考や理念は、それがどれほど高邁なものであったとしても、意見や議論の内は力にならない。高邁な思考や理念は実現によって真の力となる。そのためには資本が必要。民主主義の社会では、多数が納得する事案に対してのみ公的資金は投入される。それらは公平性や多数決を意識するため、少数派が尊重されることは極めて乏しい。であるならば、少数派と雖も、社会にとって必要な、あるいは文化にとって必要な事案に対して、安定的な活動資金を提供する、もしくは事業化することで経済が回る仕組みを創造する原資を提供することには大きな意味がある。個人ができることには限りがある。私自身を鑑みるに、他者の鑑賞に耐え得る容姿、芸術的技能、身体的技能は有していない。であれば、それらを保有する才能ある者たちの支援をできる存在になりたいと思った。それが継続的に未来に向かって維持、発展する仕組みを構築できれば、将来世代の諸々に対してさえ貢献できる」


 あたしは、ショートカットの白い顔した小柄な女の子を、ぼんやりと見ていた。

「なんだか、すごいこと言ってない?」

「すごい? 私自身に人からすごいと言われるような才能はないが」

「もう少し、わかりやすく言ったらどうなる?」

「わかりやすく?」

「うん、わかりやすく」

「例えば、甲子園球場、宝塚歌劇場、歌舞伎座」

「?」

「これらは既にスポーツ施設や劇場の一ではない。これらを目標に数多の人々が日々の活動を行い、数多の人々が感動を求めて集まる。ここで使われる様式や道具のために、諸々の伝統工芸が生成され、継承される。そして、それらを維持する経済圏が成立している」


「つまり、志帆子ちゃんは、甲子園球場みたいなものを作りたい、ってこと?」

「具体的な施設が必要と認識するならば、そうする。しかし、形に拘泥するわけではない」

「どーゆーこと?」

「例えば、今、大学の若手研究者には資金が回らないために、研究を諦める者が少なくないという。であるならば、基金を作り、その運用益で研究者に存分に研究できる資金提供をすればよい」

「運用益で? それって、どれくらいの基金があればいいの?」

「上限はない。仮に1兆円で5%の運用益なら、年間500億円を生み出すことができる。仮に年間1億円を研究者に分配するなら、500人の研究者を支援することができる。無論、支援した者すべてが成果を出すことはできないだろう。仮にその内の1%が何らかの成果を出すならば、5人の研究者が社会に貢献する何かを生み出す契機となり得る」


 はー。

 1兆円ですかあ。そこまで資本を増やすにはどうすればいい? 果てしない、と思った。

「志帆子ちゃん、それって、何年計画で考えてるの?」

「何年計画・・・、そこはまだわからない。しかし、世界を見回せば、一代で何十兆もの資産を築いた者がいないわけではない。私には世界を変えるような研究をする能力はないと思う。しかし、能力ある者の支援なら、まだ可能性があると判断した」


 なるほど。

 でも、一代で何十兆もの資産を築くことと、世界を変えるような研究と、どちらの難易度が高いのか。

 あたしにはよくわからないけど、敢えて何も言わなかった。


 でも、と思った。

 家に帰る電車の中で。

 そういう壮大な目標があってもいいかも。


 投資って、ともすれば我欲の塊のようなところがある。

 いくらいくら儲かったなどと言ってると、不労所得のようで、ちょうど宝くじやパチンコか何かで当てたような気になることもある。パチンコなんてしたことないけど。。。

 でも、儲ける額が大きくなれば、社会に還元することで、新たな成長の礎としたり、困窮する人々の自立への一助とすることもできるはず。


 ちょっと気宇壮大。

 だけど、確かな事業は成長する。その一部を手にする。そこから富の再生産をする。

 なんだろう、そう考えると、ワクワクしてきた。

 あたしはまだ高校生。時間なら、まだまだ腐るほどある。

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