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改札から出た僕達を待っていたのは、見るからに人の良い小柄なお爺さんだった。
颯爽と名刺を取り出した寳井さん。
いつもの社畜感は身を潜め、
“敏腕マネージャー”そのものだ。
「はじめまして。私、吉沢のマネージャーをしております寳井と申します。足元の悪い中、お出迎えいただきありがとうございます。今回はよろしくお願いいたします。」
「よろしくお願いします。」
寳井さんに合わせ、頭を下げた。
「こちらこそ。遠いところよくいらっしゃいました。私、旅館不忘の支配人を務めます、野上と申します。長旅でお疲れでしょうが、ここよりまた小一時間車で揺られることになります。休憩せずとも大丈夫ですか?」
「お気遣いありがとうございます。私どもは問題ありませんので。」
その言葉に合わせ、僕はにこりと相槌をうつ。
「では、雨足が弱い今のうちに早速参りましょう。お荷物は大丈夫ですか?」
「はい。キャリーは予め旅館へ直送させてもらっているので、手荷物だけです。」
「では、戻り次第確認してお持ちいたしますね。車はここから階段を下りて、すぐ右手に停めてありますので。ご案内します。」
「よろしくお願いいたします。」
野上さんと寳井さんが、
何やら話をしながら階段を下りていく。
その後ろを追い掛けながら、
窓越しの高層ビルを見上げた。
想像していたより随分と都会のようだ。




