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新幹線の窓に頬杖をついた僕は、
流れる景色を無感情に眺めていた。
「東北は緑色だね。」
「仙台を杜の都って言うくらいだからなー。
あれ?健初めてだったか?」
「んー。東京から北は全然。」
「そうか。まぁ実際わりと都会なんだが、今回の場所は駅からさらに車で40分の山奥だからな。一面見事な緑色だろうよ。近くにいい温泉があるのが社畜唯一の楽しみだ。」
温泉特集を片手に意気込む寳井さん。
興味のない僕は、外の景色をまたじっと眺めた。
あれから1ヶ月ーーーーー。
舞香に報告した映画撮りに入った僕は、
都内での撮影を終え、マネージャーの寳井さんと共に、次の撮影場所へと向かっていた。
ここから数週間は現地に缶詰めだ。
今の僕にうってつけの仕事だと思う。
あの日、菜々子さんの言葉をうまく消化出来なかった僕はここぞとばかりに仕事に逃げた。
舞香に会いたい半面、会って決定打をくらいたくない卑怯な自分が滑稽だ。
そんなクズに【吉沢健】という俳優の仮面は、非常に都合のいいものだった。
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降車のアナウンスが流れる頃には、
心地よい緑色が見慣れた高層物になっていた。




