6/9
since2021-6
「記憶障害の一種だろうって、先生が。
ただ…その日、時間にしたら30分もないくらいかしら、曖昧だけど受け答えをして、すぅっと目を閉じたかと思ったら、またこの状態。」
「……そう…ですか…。」
「えぇ……。」
そう言って、菜々子さんは、
彼女の柔らかい髪をゆっくりとすく。
僕はただ、その光景を見つめていた。
外から聞こえてくる鳥のさえずりだけが、
3人の病室を包む。
僕は言葉として表現できない
めちゃくちゃな感情を、
ただただもて余していた。
菜々子さんの手前、表には出さないよう
無表情を貫いたが、
内心はもう、まともではいられなかった。
ーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーー
どのくらいこうしていただろう。
気がつくと、舞香を挟んだ向こう側で、
菜々子さんが何かを発しようと息を吸い込んでは、
躊躇い、唇を噛みしめるを繰り返していた。
その仕草から、
僕に言いづらい【何か】を言おうとしているのが
安易に想像できる。
僕の視線に気づいた菜々子さんは、
覚悟を決めたようにゴクリと固唾を飲むと、
数秒目を閉じた後、まっすぐ僕を見据えて、
震える口を開いた。
「ねぇ、健くん。ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」




