Since2021-4
2~3分の沈黙が続いただろうか。
菜々子さんは彼女の顔をじーっと遠い目で見つめると、何かを決心した顔で僕に視線を移した。
「‥‥‥‥もう少し時間大丈夫?」
「あ、えぇと、はい。あと一時間位は。」
「そう‥‥‥。じゃあ何か飲みながら話さない?」
「あ、はい。」
菜々子さんはニコっと力なく笑うと
「自販機行ってくるね」と、
そのまま部屋を出て行った。
閉じられた扉から目が離せない僕。
何かはわからないが、嫌な予感しかしない僕は、
おもむろに彼女の手をぎゅっと握った。
程なくして菜々子さんが戻って来た。
冷たいブラックコーヒーを僕に差し出す。
「ありがとうございます。」
菜々子さんは先程と同じ場所に座り、
僕と反対側の彼女の手を優しく擦りながら話し始めた。
「‥‥‥先週の金曜‥、今日で言うと6日前か‥‥何のね、何の前触れもなく舞香が目を覚ましたの。」
俯いていた僕は、あまりの衝撃に目を見開き顔を上げた。
「さっきみたいにね、花を生け替えていたら、視線を感じて‥‥ふと何気に横を向いたら舞香がこちらを見てた。」
僕は何も発せられず、
ただただ菜々子さんを見つめる。
「私もね、びっくりしちゃって‥‥。すぐにナースコールをして。揺すっちゃいけないかもしれないのに、『舞香!ママ分かる?』って取り乱しちゃって‥‥‥。
すぐにね、お医者さんが来て診てもらったんだけど‥‥。」
固唾を飲むとは、まさにこういう状況を指すのだろう。




