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評価

作者: 池咲ゆき

 「お客様は神様です」

 この言葉が一人歩きし、謎の免罪符と化しているこのご時世に、その暴挙を一蹴するサービスがある店に導入された。


 通称「thanks割」と名付けられたこの制度は、レジの店員さんによる、お客さんへの評価割引制度である。簡単に言うと、レジの店員さんが「良いお客さん」と思った場合に5円引するという割引サービスである。

 「良いお客さん」の基準はレジの店員さん個人の判断に一任され、お客さんも会社側も口出しできないものだ。レジの店員さんの判断基準にクレームをお店側に言っても変えることはできないし、コレに着いてのクレームは謝罪などは一切せず、参考までに該当のレジの店員さんに伝えて終わる程度である。


 この制度を活用し、自身のレジに並ぶ固定客を増やすも減らすも、レジの店員さんの裁量次第である。

 従業員に我慢を強いるだけでは、接客の質を上げるのにも限界がある。お客さんの態度や応対の具合にも改善の余地があるという小売業界のタブーとも考えられるデリケートな部分に抵触し、客対従業員ではなく人対人としての平等性に回帰する抜本的な改革である。割引いた分収益に影響が出るが、辞めていく人が減れば採用や教育にかかる経費が小さくなる事を期待しての導入だ。より良い接客のできる従業員を店に定着させたい。


 また、店自体にもレジの店員さんにも言えることだが、やはり離れていくお客さん、新たに定着するお客さんは一定程度いる。今まで横柄だったお客さんが急に態度を変えてくる様なことも当然ある。

 しかし、お客さんも従業員も引いては会社も、それぞれに裁量権があり、「一方的」というのを減らすことができるのだ。互いに新規開拓可能なのである。


 そして、このサービス導入のもう1つの狙いは、店内の風紀向上である。トラブルやイレギュラーが生じた時、気分を害する人は意外と多いのだ。当事者だけでなく、周囲にいてその光景を見た人や待たされる等により間接的に巻き込まれた人等、1つの事象であっても、あまり良いとは言えない気分になる人は相当数いるのである。この嫌な雰囲気になってしまう事を減らせれば、気分を害する確率を下げられ、離れていくお客さんを少なくできるであろう。互いに感謝できる関係性を築くことが出来れば、誰もが快適な状況を作れて、客数を確保出来るのでは?というのが、もう1つの狙いなのだ。

 新規のお客さんを集客するのは大変に困難である。同業他社が星の数ほどあるこの業界で、相互に客取り合戦をしている状態では立ち行かなくなる日が来てしまうのだ。これを打開する一歩として、お客さんが離れてしまいそうな「ちょっとした事」を先に対処することが有効と思われ、その為にこのサービスが一役かってくれればと願っている。


 ワイドショーにも取り上げられ、ネットでも賛否両論を醸している今、話題性に乗っかって、早々に浸透すると良いのだが…いかに。

「お客様はお客様です、店員もただの人です」

互いのちょっとした思いやりが、物事を円滑に進める最大の手段かと。

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