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群青と灰色のサピエンティア  作者: Sy
槍の王 第2部
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第8章 マインドレイプ

『見せろ、お前の全てを。』


アキレスの顔面を掴(つか)んだアスタロットの握力がギリギリとアキレスの頭を締め付ける。


「くっ、離せ…」


だが左脇の痛みと砕かれた利腕のせいでアキレスには力が入らない。流れ出た血量のせいか、それともアスタロットの能力か、次第にアキレスの意識が霞(かす)んでいく。代わりに目前にアキレスの過去が映写機から投影されるフィルムの様に映し出される。



ーーーーーーーー



「燃えろ、燃えろ。


焼き払え。


全てが灰になるまで。」


少年はその日も、何度も見る夢から目を醒ます。


それは世界が燃える夢。少年の小さな世界が燃え尽くされる夢だ。


ベットから体を起こすと、少年は小さく胸が痛むのを感じる。それは実際の傷からではなく、胸の中から小さく、だが確かに響く痛み。


彼の世界は気付いた時には灰色だった。


その視界にある全てが、彼には灰色に見えたのだ。


それが何を意味しているのか、少年が理解するには幼すぎたのかもしれない。



ーーーーーーーー



アキレスの遠のく意識にアスタロットが語りかけた。


『つまらぬ、掘り起こせ。こんなものではないだろう。』



ーーーーーーーー



ある日、少年は陥(おとしい)れられ、ある女から木製の杖で殴られていた。


女に殴られる少年を眺めながら、また別の少年が少年を嘲(あざけ)った。


その黒髪の少年は酷く背が低く、また醜かった。その卑劣な笑みがその少年から幼い子供なら誰でも持っているはずの可愛らしさを奪っていた。


「お前なんか早く出て行け!」


その女が発した言葉を聞いた途端、少年は灰色の世界が涙に歪(ゆが)んでいく事に気付いた。


目の前にいる彼らは、一体誰であろう。


そう思うと少年は堪(たま)らなく悲しく、そして悔しかった。だが、抗(あらが)う術(すべ)など、幼い彼は知る由もなかった。


そして、あの小さな胸の痛みは次第に増していった。


不思議と少年が涙を流すと、あの黒髪の少年は嬉しそうに歪んだ笑顔を浮かべていた。


その表情から読み取れることのできる感情を、少年には到底理解する事ができないと思えた。


(ここから、この小さな世界から逃げ出したい。)


少年はそう願いながら、杖で殴られ続ける激痛で失神してしまった。



ーーーーーーーー



「や、やめろっ!僕の中に入ってくるな!」


アキレスは未だに前頭部を鷲掴みにして放さないアスタロットの腕を両手で掴み、懇願(こんがん)した。


その声色は裏返り、足元をバタバタさせながらアスタロットの腕を掻(か)き毟(むし)った。その腕からは魔族の血が滴り落ちている。


アキレスはアスタロットの掌から脳内が侵食されているかの様な、不快な感触に我慢できなかった。



ーーーーーーーー



『まだだ。隠伏(いんぷく)させているものを、我に曝(さら)け出せ。』


あまりの腕力にアスタロットの腕を振り払うことができない。アスタロットの爪がアキレスの頭に食い込み、赤々とした血が流れているが、その力は緩むことがない。


そしてアキレスは再び意識が飛ぶのを感じた。

ガルガーノ編も後少しです。これが終わると折り返しです。続けて読んで頂ければ幸いです。最近応援やアドバイスのメッセージをもらいました。とっても嬉しくて、そして参考になります。

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