第21章 群青の空
その後、舞踏会場で何が起こったのか王都まで情報が届くことは無かった。ウォルグレイブでの情報操作のせいか、死傷者等の報告も一切無い。それに加えて王都からパーティーへの参加者は無事に家路に着いている様だった。
セレステの結婚の儀が無事執り行われたのをエウロギウスが知ったのは、夏の休暇を終え、サピエンティアに戻った頃だった。
エウロギウスは、神学校のチャペルの屋上にある鐘の下にいた。そこからは聖都にある神学校のキャンパスと聖都全体、そして隣接する王都の王宮までが見渡せるのだ。良くアキレスと時間を共にする2人だけの場所だ。
「あれ、先客がいる。」
鐘の下に続く階段の下からアキレスの声がした。
「何黄昏てるの、エウロ。」
とわざと事情を知らないフリをしてアキレスがエウロギウスを励まそうとした。
「俺はもう、セレステに会わない。」
エウロギウスは決意した表情で言った。
「君も極端だね。お隣さんなんだし、顔を合わせる機会はこれからもあると思うけど。」
「男はケジメが肝心なんだよ。分かってないな、お前は。それにあの王子は信頼に足る男だと思ったのだ。」
「ふーん。」とアキレスが呟き、そのまま続ける。
「まあでも、エウロギウスはあの王子よりイイ男だよ。」
「あったり前だ。」
そう言ってエウロギウスは立ち上がった。正午を過ぎたサピエンティアの秋の空が、青々と青年達を照らしている。
エウロギウスは、セレステへの思いを断ち切るため、卒業に向けて鍛錬を続けようと決意を新たにした。
その後、エウロギウスはその言葉を守り、しばらくセレステに会うことは無い。
そう。全てが時既に遅い、その時まで。




