第16章 ウォルグレイブ城下町
ウォルグレイブは小国ではあるが、その堅固な石造りの城と城下町がその姿を映えさせる。夜になると点在する松明の灯りで城下町が照らされ、幻想的な雰囲気を醸し出す。その灯りのお陰か、城下町は活気よく人々で賑わっていた。
「それにしても、一体あのまま城内に忍び込んで何をするつもりだったのよ?」
そして城下町の宿屋に、アキレス、エウロギウス、ソフィア、ハヅキの4人が座り夕食を取っている。
「お、お前こそあんな所で何をしていたんだ。」
エウロギウスが苦し紛れにソフィアに詰問する。
「ふっ、下見に決まってるじゃないの。何処かに逃げ道になる隠し通路がないかとか、周辺の地形を把握していたのよ。日が落ちてからじゃないと動きづらいしね。まさかとは思うけど貴方達、あのまま城壁を登ろうとか考えてた訳じゃないでしょうね。」
とソフィアが疑いの目を向ける。宿屋に集合した時、ソフィアはいつものツインテールに髪を戻し、傍目から見ると育ちの良い町娘に見える。既にマント等の隠密行動に使う服や道具は荷物の中に閉まっている。その姿は自然と城下町に溶け込んでいた。
「あでも、アキレス様がそんな愚かな事をされるだなんて全く思っていませんわ。」
ソフィアが苦しい言い訳をするが、アキレスは苦笑して答えに困っていた。
「なんなんだ、お前のその手慣れた変装や行動力は。まさか、マギアから抜け出していつもこの様に遊び呆けてるのではあるまいな。」
冷静さを取り戻したエウロギウスが尋ねる。
「なっ、あなたに言われたくないわよっ!あなたが王都の花街でいーっつも獣人のお友達とチャラチャラ遊びまわっている事、知ってるんだからっ」
痴話喧嘩は終わる兆しを見せない。ハズキはその2人を静観しながら薄緑色のパフェをスプーンで掬っている。甘いデザートを口にするその表情は何とも幸せそうだ。
「まあまあ、とりあえず。ソフィア。君達と僕達の目的は一緒だと思っていいのかな?」
とついにアキレスが割って入った。すぐさまソフィアは顔をパアッと輝かせアキレスに向き直る。そして真剣な顔をして話し始めた。
「はい、アキレス様。私、今回のお姉様の婚約に納得行きません。年頃とは言え、余りにも急なお話。何か裏があるとしか思えないのです。本来なら今年の夏はハヅキの所で過ごすつもりだったのですが、こうして急遽実家に戻ってきたのです。もしここでお姉様にお会いして真意を確かめ、これがお姉様が望んでいない婚約でしたら力づくにでも王都に連れて帰ります。」
ソフィアの芯の強さにアキレスは感嘆の溜息を漏らした。
「でも具体的にはどうするんだい?」
「数日後に開かれる舞踏会に出席致します。そこで、王子ジェラルド様とお姉様のご婚約が発表される事になっているのです。家族である私も招待されていますので、そこでお姉様に直接会って話したいと思っています。」
「なるほど、君は大手を振ってセレステ様に会える訳だね。」
アキレスはソフィアの正統なプランに再び感心する。
「私はソフィアのお付きのものとして城内に入り、その後は給仕の1人として潜入致します。」
続けて「こういうのは慣れていますので。」とハヅキは小声で呟いた。「ふむ。」と頷きながら、アキレスは顎に手を当て考え込んだ。それならば、ソフィアの舞踏会の相手役としてエウロも潜入できる事として、自分は一体どうしようかと考えていたのだ。
「じゃあ僕もハヅキと一緒に変装して入り込もうかな。馬車の御者にでもなって、城内に入り兵士か何かにすり替わるよ。」
「そ、そうですね…さすがアキレス様ですわ!そんな器用な事、この男が出来るわけもありませんしっ。」
ソフィアが溜息と毒を同時に吐きながらエウロギウスを見つめる。
「お、おい。で、俺はどうするのだ?」
どうやらエウロギウスは話についてこれない様だった。
「どうせならアキレス様みたいな紳士にエスコートされてみたいものですが、今回はこのオタンコナスでいいとするわ。」
ソフィアの中でエウロギウスの株がダダ下がりである。
「くっ、お前完全に俺を舐めきってるなっ。」とエウロギウスは拗ねだした。
「とにかく、舞踏会でのお姉様次第では城内から救い出す事が必要になるかと。その時はアキレス様、ハヅキ、どうぞ力を貸してください。」
そう言ってソフィアは深々と頭を下げた。しかし同時にソフィアの腹がぐうっと鳴る。
「き、きゃー!今のは無し!アキレス様、耳を塞いでくださいっ!」
こうしてウォルグレイブ城下町での夜は更けていった。
第3部のプロット大体書き終えました。グフフ。予定通り『ミツキとラミエラの異国編』で何とかまとまりそうです(汗)。ふうっ(ため息)。とにかくまずは第2部!そろそろクライマックスも近いです。応援どうぞ宜しくお願い致します。




