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群青と灰色のサピエンティア  作者: Sy
槍の王 第2部
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第12章 恋するエウロギウス

「流石に三大貴族の邸宅となると、この規模だよね。さっき門を潜ったと思ったのに、まだお屋敷に着かないなんて。」


とアキレスは驚嘆した。生まれを褒められる事など、エウロギウスには飽き飽きした事ではあったが、無二の親友からの褒め言葉は悪くなかった。


「気にするな。」


「いや、気にしちゃうよ。これ…」


そう言うと、アキレスは身だしなみが整っているか今一度確認した。サピエンティアからは割と近い王都の郊外に構えるエウロギウス11世の邸宅は豪華絢爛なものだった。屋敷内には様々な世界の彫刻品や美術品が並び、ガラスの箱の中に飾られた宝石に屋敷内の明りが反射してキラキラと輝いている。


アキレスはすっかり萎縮してしまい、来なければ良かったと悔やみつつあった。


(別世界すぎるよ、エウロ…)


「まあエウロちゃん!お帰りなさい!予定よりも早いじゃないっ。」


そう言って派手なドレスに身を包んだ貴婦人が2人を出迎えた。


「母上、今日はまたいつもより着飾っておいでですね。」


「うふふ、エウロちゃんのお友達がご一緒って言うものだから私も張り切っちゃったのよ。」


と談笑する貴婦人はとてもエウロの母親とは思えないほど若く美しかった。


「まあっ、なんて可愛らしいお友達。これがアキレスちゃんね!」


(ち、ちゃん…?)


そう言うと貴婦人は目をキラキラさせてアキレスの手を取った。あまりの距離の近さにまたアキレスは赤面してしまう。


「は、はじめまして。お世話になります。」


「きゃあ、まるでエウロちゃんに小さな弟が出来たみたいだわっ。」


エウロの母はその若い容姿とは裏腹に周りの人々を包み込むような包容力があった。それはアキレスを少しだけホッとさせた。こうしてるうちに、使用人達がアキレスの小さな荷物を手早く運び出した。


「あ、あのっ。自分でやります!」


とアキレスが言うとエウロが制した。


「それよりも会わせたい者がいる。行こう、アキレス。」


そう言ってエウロはアキレスの手を取って屋敷の外に飛び出した。


「ああん、もう行ってしまうの?夕食までには、帰ってらっしゃいね!」


と後ろで貴婦人の美声が響いた。



——————



アキレスにとって、エウロギウスの邸宅内や周辺は物珍しいものばかりだった。庭に森や小川のある家なんて今まで見たことも聞いたこともないと思いながら、前を勢い良く歩くエウロギウスについて行った。


(随分浮かれているけど、どこに行くんだろう…)


しばらくすると、エウロギウスの邸宅ほどではないが、また閑静かんせいで大きな屋敷が見えた。


「ここは?」


幼馴染おさななじみが住む家さ。」


そう言うエウロギウスの頬が少しだけ紅潮している気配がしたが、ここまで走ってきたのだから仕方のないことかとアキレスは思った。だがその理由はどうやら違う様だ。


「あら、エウロ。久しぶりね。」


その屋敷から現れたのは白銀の豊かな長い髪をした美しい少女だった。その蒼い瞳は引き込まれそうな程に透き通っている。アキレスはこのような美しい人を今まで生きて出会ったことがないとまで思った。


(人…、なのかな?そもそも…)


「久しいな。セレステ。」


「その方は?」


その少女の声は優しく、聞くものを自然と穏やかな気持ちにさせる。


「アキレスだ。俺とサピエンティアの寮で同室なのさ。無二の親友だ。」


そう言うと少女は気の毒そうに笑った。


「ふふ、それは大変ね。アキレス様、どうぞよろしく。お二人ともお茶でも如何かしら?」


「うむ、エドワード公にもご挨拶しよう。」


「お父様はいらっしゃらないわ。お忙しい方ですもの。」


それから2人は屋敷のバルコニーに通され、給仕が紅茶を注ぎはじめた。アキレスは人から給仕をされることに慣れていないせいか未だぎこちない。


「そう言えば、ソフィアがいないな。」


「今はお友達の所に。最近は学校が楽しくて仕方ないみたいなの。」


「マギアか。しかしあの跳ねっ返り娘が学校だなんて笑わせるな。」


マギア聖学院はサピエンティアと聖都にて教育機関の勢力を2分する王立の学校である。サピエンティアとは違い身分の高い貴族等しか入ることのできない敷居の高い学校だ。聖都と中央聖教会が管理するサピエンティアとは何かと対立するライバル校でもある。


「ふふ、エウロが神学校を選んだことと同じくらい可笑おかしいわね。」


そう言ってセレステは静かに笑った。だがエウロギウスにとってセレステの皮肉は心地よいものの様だ。相変わらず頬を紅潮させ昔話に花が咲いている。アキレスは又しても豪華な邸宅とその華麗に手入れをされた庭を眺めながらとりとめもなく2人の話を聞いていた。だが、その楽しい時間は、ある時一瞬にして凍りついた。


「エウロ。私話さなければならない事があるの…」


とセレステがおもむろに言い出したが、アキレスはその場を察してか退席しようとする。それを見てエウロギウスも立ち上がった。


「この夏はずっとここにいるつもりだ。また今度でもいいか?」


エウロはそう言って、アキレスと共にセレステの邸宅を後にした。アキレスはセレステの不安そうな眼差しを背中に感じ、気まづそうに後ろを振り返った。


彼女はまたいつも通りの微笑浮かべ、アキレスに手を振った。

第2部後半、ウォルグレイブ編になります。前半のガブリエルに続き、後半には第1部の主人公ソフィアが登場します!少女時代とのギャップを楽しんで頂けたら嬉しいです。

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