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群青と灰色のサピエンティア  作者: Sy
槍の王 第2部
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第10章 誓い

『かの龍を打ち滅ぼしつるぎ、そのはかりやいば。我が名は『神の意志』。つき従え、天上の軍勢。』


エウロギウスが詠唱を終えると、両手に握る直剣が赤い光を帯び、炎の様なオーラがエウロギウスを取り巻いた。


そのままエウロギウスは高々と直剣を振り下ろし、アスタロットに斬撃を放った。


アスタロットはその斬撃をギリギリの所でかわすと、そのまま空中に消え去った。


汗ばんだ額を拭いながら、エウロギウスはホッとした顔を浮かべるとそのままアキレスに走り寄った。


「大丈夫か、アキレス。」


そう言ってエウロギウスはアキレスの上半身を抱き起こした。


「エウロ、やった…んだね。すごいよ。」


アキレスはそう言って力無く微笑んだ。


「まさか、追い払っただけだ。今の俺に出来るのはこれくらいだ。」


そう言いながらエウロギウスの法衣はボロボロに破れ、赤茶けた色に染まっている。その破れた法衣から見える無数の傷痕が、契約の儀式を物語っていた。そしてエウロギウスはきちんと回復魔法の学習をしてこなかったことに後悔しながら、自分でも使うことのできる低級の回復魔法をアキレスにかける。するとアキレスの表情は前よりも少しだけ好転した。


「すまない、アキレス。みんな俺のために、こんなに傷ついて。」


「大丈夫、みんな生きてるよ。」


アスラが意識を取り戻したのか、重たい体を起こし始めている。ガブリエルもなんとか息がある様だ。エウロギウスは自身のために死闘を切り抜けた友に深い感謝の念を感じ、涙を流した。



ーーーーーーーーー



こうして一同は無事、ガルガーノでの旅路を終え聖都に辿り着いた。


アキレス、アスラとガブリエルは聖都の病院へそのまま運ばれ、手当と回復魔法を定期的に受けている。アスタロットの蛇はやはり毒性があったらしく、その後遺症はしばらく3人を悩ましたが、身体は順調に回復していった。


エウロギウスは、ガルガーノでの公爵位を持つ悪魔の顕現について、数日に渡る聖教会からの審問を受けた。その内容は後に、悪魔学の教本に乗ることとなる。


そしてエウロギウスの大天使ミカエルとの眷属契約のニュースがサピエンティアと聖都全体に知れ渡り、エウロギウスは一躍時の人となっていた。


帰途に着いてから数週間が経った後、エウロギウスはアキレスを見舞いに聖都の病院を訪れた。


「あれ、今日は教皇様への謁見えっけんがあるんじゃなかったの?」


「もう済んだ。」


アキレスはほぼ全快に近く、数日後に退院を控えている。アスラとガブリエルは、病状がアキレスよりも軽かったため、一足早くサピエンティアに戻っていた。


「ちょっと出ないか?」と、エウロギウスはアキレスを外に連れ出した。2人は、聖都の病院の裏手にある小高い丘を散歩することにした。


「エウロ、あの時の事なんだけど。」


とアキレスは気まづそうに話し始めた。


「僕がアスタロットに捕らえられた時の事さ。あの2人は気を失っていたけれど、やっぱり君にはえていたよね。」


するとエウロギウスは察した様に言った。


「気にするな。誰にでも知られたくないことはある。それにあれはお前ではないのだろう。」


そう言うと、アキレスは安堵の表情を浮かべた。だがそれでも不安が消えることは無い様だ。


「それでもいつか…、僕はきっと裁かれる。」


不意にエウロギウスがアキレスの肩を抱いた。


「その時は俺がそばにいよう。お前は俺を、俺たちを救ってくれた英雄だ。」


エウロギウスはそう言って、優しく微笑んだ。


「それにお前は俺が教皇になるために必要な男だ。一蓮托生ってやつだな。誓ってもいいぜ。俺はいつもお前の味方でいる。」


アキレスは少しだけ躊躇すると、意外だなと言う様に微妙な笑みを浮かべた。


「ありがとう、エウロ。君は絶対的な正義の人だと思っていたよ。」


「それは俺が教皇になった後の話だ。俺はそのために金と権力、そしてお前が必要だ。」


そう言うと2人は声を上げて笑った。


「それなら僕も誓うよ、エウロ。僕が君を教皇にさせてみせる。」


アキレスの言葉に、エウロギウスは心を許した長年の友にそうする様に微笑んだ。


いつからであっただろう。エウロギウスがアキレスの光となったのは。


あの灰色の世界から、この男はアキレスを救い出してくれたのだ。

このままBL路線へ突き進むのか!とはなりません。残念ながら…。笑。と言いつつ第2部の後半は恋のお話へと進みます。

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