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群青と灰色のサピエンティア  作者: Sy
槍の王 第2部
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プロローグ

「君はどうして教皇になろうと思ったの?」


サピエンティア神学校にある大聖堂。そのチャペルの上にある鐘楼しょうろうから聖都を見渡す青年達が2人。


アキレスとエウロギウスの似通った容姿端麗な姿は、2人をまるで兄弟の様に思わせる。そしてエウロギウスが、その問いに答えた。


「父上の生き方。いや、この国の王族、そして貴族そのものの在り方を正すためだ。」


「それならば王に取り入れば良いのに。その方が君にとって上手な生き方だと思うけれど。」


鐘楼の窓際に腰を降ろしたアキレスが、エウロギウスを眩しそうに眺めながら諭す。だが、エウロギウスは遠く視界にとらえることのできる王の住む宮殿を見つめて答えた。


「王や貴族がその在り方を人々に知らぬ間に許容させ、ただ欺瞞ぎまんと堕落に満ちた生活を守るためだけに神の名を借りる。そんな事を何百年も続けているんだ。」


アキレスはため息をついた。それは憂いからくるものなのか、それとも鼓舞された心からくるものなのか。


「君ってやっぱり、実は賢いよね。」


「ふふ、お前がいなければ俺が首席だったろう?」


「夜遊びがなければ、きっとすぐに僕なんて追い越しちゃうよ。」


学生時代、2人はよくこの鐘楼で時間を潰した。アキレスは読書のために、エウロギウスはそんなアキレスを冷やかしに、そしてこの2人の住む世界を少し上から眺めるために。


「エウロ、君はきっと教皇になれるよ。その時は、僕もすぐそばにいよう。」


「俺が変えたいのは人々の心だ。この世界を形作っているものは結局その心まで行き着くのだからな。」


アキレスは王都にある宮殿を見つめるエウロギウスを眺めながら、友の志を創り出した真意を思い測った。


だが、その答えに行き着くことはそれほど難しいことでは無い様に思われた。


それほどまでに真っ直ぐ、エウロギウスは純粋に正義を追い求めているかに見えた。


その姿はアキレスにとって、木漏れ日から漏れる太陽の光の様に眩しく、そして優しかった。

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