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ドーナン(道南)・オブ・ザ・デッド!?  作者: 南野 雪花
第3章 ゲームというには生臭すぎる
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ゲームというには生臭すぎる 1


 バールが唸りをあげて飛ぶ。


 俺たちの身体能力だと、球速は時速三百キロくらい余裕で出せるらしい。

 まあ、バールは重いからそこまでは出ないだろうけど。


 そんなもんが当たったら死ぬ。

 たいていはね。


 が、ガイコツは受け止めちゃった。

 ぎゅっと。

 面白くもなさそうにバールに一瞥をくれたあと、ぽいっと無造作に捨てる。


「うん。やっぱり効果なかったか」

「予想できたのに武器を投げつけてどうしますの」


 みなみが呆れる。

 ゆーて、元々バールでぶん殴ったくらいで倒せるとも思えないし。

 遠距離攻撃が効果あるか、試した方が良いからね。


「そういうことは、先にいってくださいまし」


 みなみのPKブレイドが槍型へと変わる。

 便利だなぁ。


「距離を置いての戦いなら、こういうやり方もあるのですから」


 言うがはやいか、ぶんと投げつける。

 まさに投げ槍だ。


 さすがにこれを受け止めるつもりはないのか、ふうわりと大きく右に跳ぶガイコツ。

 すると、なんとPKランスが後を追うように曲がってゆく。


「すげっ! 誘導できるのかよ」

「念動力の槍ですもの。念動力で動かせますわ」


 ただ、けっこう疲れるらしい。

 二、三発撃ったら、普通の人が百メートルを全力疾走した程度の疲労がたまってしまう。

 つまり、実戦で多用はできないということ。


 逃げるガイコツを追尾したPKランスが着弾する。

 大爆発を引き起こす。


 すげえなPKランス。俺も欲しい。


「よしっ! やったかっ!」

「そのセリフはフラグですわよ」


 爆炎の中から、のっそりとガイコツが現れた。

 瞳もなにもない頭蓋骨が、しっかりとこちらを視認する。

 敵手であると認識したようだ。


「ほら。やっぱり効いてませんわっ」

「俺のせいではないけどねっ!」


 軽口を叩き合いながら、左右に跳ぶ。


 一瞬前まで俺たちがいた場所に火の玉が着弾した。


 ファイアボールとか、そういうやつだろうか。

 本気でファンタジーになってきやがったな。


「いきますわよ!」

「あいよ!」


 そのまま駆け出す。

 リッチなのか、他のなにかなのかはしらないけど、ガイコツに向かって。


 次々と飛んでくる魔法。

 石飛礫(つぶて)だったり、闇色の光の矢だったり。

 紙一重で回避しながら距離を詰める。


「見えるぞ! 俺にも敵が見える!」

「出典の判らないネタを使わないでくださいな!」


 さーせん。

 わりとテッパンかと思いました。


 ともあれ、身体能力の爆発的な向上にともなって動体視力も良くなっているらしい。

 攻撃を見切ることができる。


 動体視力に優れた犬たちには、人間の動きなどスローモーションに見えるというが、まさにその状態だ。


「せいっ!」


 繰り出される魔法っぽいものを回避しながら右の回し蹴り。

 難なく受けられる。

 ローブをまとったガイコツのどこにそんな筋肉があるのかさっぱり判らないけど、ぐいっとはじき返された。


「物理攻撃は効かない系かな!」


 二転三転とバク転して間合いを計る。


 ていうか俺、アクションヒーローみたいだよね。

 予備動作とか必要なしにバク転できちゃうんだよ。


 なんというか、肉体が完全に意志のコントロール下にある感じ。

 動きたいように動いてくれる。

 頭に思い描いた機動で。


「これならどうですか!」


 俺にかわってみなみが斬り込む。

 陽光にきらめくPKブレイド。


 やはりガイコツとしてはこれを受けるつもりがないらしく、どちらかといえば回避を主体に動いている。

 そしてときおり放たれる魔法。


 もちろんみなみだって、こんなもんを受けるわけにはいかない。

 PKブレイドで弾いたり、左右に跳んでかわしたりしている。


「千日手ですわ!」


 苦情を申し立てながら。

 ガイコツにしても俺たちにしても、決定的なチャンスが作れないのだ。






 戦いをはじめて五分ほど。

 ホテル側で動きがあった。


 正面に横付けされたバスに、避難者たちが乗車を開始したのである。

 とるものもとりあえずって感じになってしまうのは仕方がない。

 この状況はさすがに予測してなかったから。


 それでも、国岡さんをはじめ、非常事態には慣れっこの面々である。

 ホテルのロビーにゾンビが入ってきたと知った瞬間から、もう緊急脱出する腹づもりではいたのだろう。

 あとは全員がバスに乗って、出発するだけだ。


「それまで時間を稼ぐ」

「倒してしまってもかまわないでしょう?」

「なんだそのフラグくさいセリフは」


 つーか倒せるならとっくに倒してるって。

 それができないから足止めに終始していたのである。


 決定打が放てないんだよなー。

 ガイコツの魔法を受けるわけにいかないから、みなみだって、どーしても踏み込みが浅くなってしまう。


 俺が懐に入り込んで足を止めようとしても、そんなバレバレの作戦なんかすぐに見破られちゃう。


 で、俺とみなみがガイコツにかかりきりになっている間に、ゾンビどもはバスへと近づいていく。

 自衛隊とステラがしのいでるけど、さすがに数が違いすぎる。


 じわりじわりと戦線は後退している感じだ。

 けっこうストレスのたまる展開である。


「ぶっちゃけあっちも援護したいのですわ。私としても」

「そりゃ判るけどな」


 戦闘員って、たった七人しかいないのだ。

 自衛官が四名と量産型能力者(PA)が三名。


 そのうち二名の量産型能力者(PA)がガイコツにとられているわけだから、戦力の低下なんて言葉じゃ追いつかないほどだろう。

 とっとと倒して、味方の脱出を援護したいって気持ちは、みなみの専有物じゃない。


「大技でいきますわ」


 左右の手だけではなく、両足の爪先からもPKブレイドが出現する。


「セイバーダンス!」


 かっちょいい叫びとともに美少女が突っ込む!


 ある程度のダメージは覚悟で近接格闘戦だ。


 その動きは、まさにダンス。

 無骨なガイコツを相手どっての、剣の舞い。


 一瞬の遅滞もなく、一片の無駄もなく。


 フィッシュテイルフレアのスカートがひるがえり、白く美しい足が跳ね上がる。

 軌跡を彩るのはPKブレイドの青白い光。

 超高速で、四方八方、上下左右から繰り出される斬撃がガイコツを削ってゆく。


 もちろん敵もやられているだけではない。

 虚ろな眼窩に怒りの炎を宿して応戦する。


 みなみの体にも、小さな傷がいくつも刻まれ、可憐さを演出する衣服がボロボロになってゆく。

 ノーガードの削り合いだ。


 みなみは量産型能力者(PA)としての、ガイコツはアンデッドモンスターとしての回復力だけを防御手段として、ひたすら攻撃を続ける。


 と、そのときである。

 唐突にガイコツの膝が崩れた。


 なんの前触れもなく。

 まるで背後から膝かっくん(・・・・・)されたように。


 まるでっていうかされたんだけどね!

 俺の仕業だけどね!


 黙ってぼーっとみていたわけじゃないんだよ!

 こそこそと背後に忍び寄っていたのさ。


 みなみの猛攻に注意力のほとんどを割かないといけなかったガイコツは、容易に俺の接近を許してしまったというわけだ。

 そして、この局面で体勢を崩すってことは、すべてを失うのに等しい。


 ガイコツの体勢が崩れた一瞬に、猛然とみなみが斬りかかっている。

 俺が視認できただけでも、三十以上の斬撃を放ったかな。


 文字通り切り刻まれたガイコツが、どさりとアスファルトに倒れた。


「よしっ!」

「やりましたわ!」


 思わずハイタッチを交わす俺とみなみであった。


「おっとごめ」


 で、すぐに俺は背を向ける。


 なにしろみなみさんったら、ほぼ半裸。

 おしゃれ帽子はどこかに吹き飛んじゃってるし、コルセットスカートも九割ほど布地を失ってるし。


 そしてそれ以上に、白い肌はあちこち斬られたり刺されたり火傷したりして、とんでもないことになっている。

 まあ、もう回復は始まってるけどね。


「問題ありませんわ。私は戦士ですので戦闘中に恥ずかしがったりしません」

「そんなもんすかね」


 それでも背を向けたまま、俺は野戦服の上着を脱いで後ろ手に手渡す。


 戦士としてのみなみの覚悟は立派だけど、俺が目のやり場に困るんですよ。

 ほぼ下着姿の女の子に立たれてたら。



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