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ドーナン(道南)・オブ・ザ・デッド!?  作者: 南野 雪花
第2章 ホラー VS SF
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ホラー VS SF 6


 みなみが使っていたPK(サイコキネシス)ブレイド。

 あれは出せなかった。


 量産型能力者(PA)念動力(サイコキネシス)が使えるらしいんだけど、さすがに訓練もなしでいきなりできるものではないらしい。

 残念。


 PKブレイド二刀流とか、やってみたかった。

 ステラみたいに、槍ってのもいいなー。

 貫け! ゲイボルグ!! みたいに。


「まずは肉体を完全に自分の意志の支配下に置くのが先決ですわ」


 くすくすとみなみが笑う。

 ホテルの内部探索である。


 外を走ったおかげで、俺はだいぶ自分の体を把握することができた。

 力加減を間違える、ということはたぶんないだろう。


 けど、完全にすべて判っているわけではないし、ぶっちゃけると身体能力が爆発的に向上しただけで俺自身に格闘技やスポーツの経験がないって事実はべつにひっくり返っていないのだ。


 すげー足が速くて、すげー高く跳べて、すげー力があって、すげー耐久力のある素人。

 じつのところ、これが正確な評価になる。

 だから、まず俺は俺自身を使いこなせるようにならなくてはいけない。


「武器もなんとかしないとな」


 一部屋一部屋、マスターキーで開けながら森住二曹が言う。

 これもまた事実である。


 いま俺が肩にかけている自動小銃は、たぶんもう使う機会はない。

 撃っても当たるわけがないし、それだったら作業手袋グーパンチの方がずっと確実だ。


 もちろん、ゾンビにグーはちょっと嫌すぎる。

 木刀でも鉄パイプでもいいから、なんか手に入れたい。


「チョイスがヤンキーみたいですわね」


 呆れ顔のみなみだ。

 うん。

 自覚はしている。光の剣とか槍から、一気に所帯じみてしまった。


「ゆーて、日本刀とかバスタードソードとか、そのへんに落ちてるともおもえないし」

「その自動小銃とグーパンチでいいじゃありませんの」

「超能力者っぽくない」

「ワガママですわねえ」


 わがままではない。

 大事なことである。

 超能力者が自動小銃で戦ったら、もう超能力者じゃなくてただの兵士でOKじゃん。


 だいたい、こんなもん一連射か二連射で弾丸がなくなっちゃうじゃん。

 映画とかアニメとかではばかばか撃ってるけど、じっさいはあっという間に弾切れになるってきいたよ。


「めんどくさいですわねえ。二曹。なにかありませんこと?」

「コンバットナイフくらいかな?」


 腰に付けた鞘ごと、大振りなナイフを渡してくれる。

 ありがてぇ。


 礼を言って、俺は自分の腰ベルトにそれを装着した。

 どんどん大学生の格好ではなくなってる。


 シャツの肩と腹はざっくり裂けてるし、ジーンズも破れてるし。

 咬まれた怪我は完治したけど、服までは直らなかった。

 当たり前だ。


 で、肩には自動小銃をかけ、腰にはコンバットナイフ。

 なんかサバイバルな人みたいである。


「服なぁ……どうすっかなあ」


 新函館北斗駅の新幹線ホームに行けば、俺の旅行鞄が落ちているはずだ。そのなかに着替えが入ってる。

 あと、タブレット端末とかも。

 けっこう高かったんで回収したいけど、ゾンビ溢れる駅構内に取りに行こうと主張するのも、ちょっと気が引ける。


「国道五号線を函館方面に戻れば、しま○らがありますわよ」

「いや。これ以上戻るのはちょっと」


 国岡さんたちを新千歳空港まで連れて行かなくてはならないのだ。

 残念ながら、俺はもう東京への飛行機には乗れないけど。


「野戦服の予備をやるぞ」


 すっと救いの手を伸ばしてくれる森住二曹。

 いい人である。

 コンバットナイフといい野戦服といい、お世話になりっぱなしだ。


「そのかわりみなみちゃん。ちょっとステラちゃんに格好良く紹介して」

「わかりましたわ。私にどーんとお任せくださいな」


 なんか後ろ暗い取引をしている。

 いい人じゃなかった。


 なまら功利的だった。

 営利目的だった。


 ていうか、なんでみなみはステーキごときで籠絡されてるんだろうね。

 北海道人にとっては、べつに珍しくも有り難くもないと思うんだけど。


「世の中は肉ですわ」

「いやいや。さすがにもっと大事なモノはあるんじゃねーかな」

「海の街出身ですので、肉にときめくのですわ」

「他にときめくモノあるだろ」


 馬鹿話をしながらも、ホテルの部屋をチェックしてゆく。


 ホテル内で発見したゾンビは、全部で二十匹ほどだった。

 駅構内や外に比較したら全然少ない。

 しかも集団ではなく単体で現れるのだから、苦戦することもない。


 さくっと倒して死体は外に捨てるだけ。

 俺も何匹かはやっつけた。

 練習としてね。


 やっぱり銃よりナイフの方がぜんぜん使いやすい。





「このホテルって温泉があるんだな」


 調べていたら看板を見つけた。

 大浴場があって、日帰り入浴ができるらしい。

 あと、ランチバイキングとかもやっている。


「今日はここでゆっくり疲れを癒すのがよろしいですわね」

「だな。バスをまわしてもらえるかどうかも判らないし。焦っても仕方ないからな」


 二時間ほどたっぷり時間をかけてホテル内を調査し、ゾンビの脅威を取り除いた。

 新たに入ってこないよう入口を封鎖する必要はあるが、さしあたりの安全地帯を確保できるだろう。


 ここを拠点にして行動し、機動力が確保できしだい新千歳に向かう。

 こんな感じのプランが現実的だ。


「駐車場に停まっているバスが動かせれば、また違ってくるしな」

「ですね」


 森住さんの言葉に頷く。

 避難者を収容したあとは、自衛隊メンバーを中心にしてバスのチェックをおこなうことになる。

 キーが差されたまま車両があれば最高だが。


「さて、それじゃあそろそろ迎えに行ってくる」

「お願いします」


 そういって森住二曹が、ホテルをでて立体駐車場へと向かう。

 充分に警戒しながら。


 俺とみなみは、ホテルまわりを見張りながら避難者たちを受け入れる準備をするのだ。


 三人一緒に戻って、その間にゾンビがホテルに入っちゃったら台無しだからね。

 誰かが見張り番をしなくてはいけない。


 で、それは戦闘力をもってる人間でなくては意味がないんだ。

 もし俺が量産型能力者(PA)になってなかったら、森住さんと一緒に『なないろ・ななえ』に戻るか、ホテルの一室で待機ってことになっただろうね。

 けど、今は違う。


 奇しくも俺は戦士の一人になってしまった。

 尋常な経緯じゃないし、願ったわけでもないけどね。


「なっちゃったもんは仕方がないかなって」

「……後悔してますか? 拓真さん」


 少しだけつらそうな顔のみなみだ。


 ばかばかっ! 俺のばか!

 この子にそんな顔させたらダメでしょ!


「まさか」


 つとめて明るく言う。

 たしかに俺は望んで超能力者になったわけじゃない。失うモノだっていっぱいある。

 なにしろ、十九年間のこれまでの人生、まるっと全部捨てることになるわけだからね。

 そりゃ虚心ではいられないさ。


 でもさ、運の尽きっていうなら俺の命運はとっくに尽きてたんだよ。

 新幹線に乗って北海道にやってきた、そのときにね。

 ゾンビに食われておしまい。

 そんな死に様だったはずだ。


 運命をぐいっとねじ曲げてくれたのがみなみ。

 彼女が現れ、俺の冒険は始まったわけだけど、じつは命日を一日ばかり延ばしただけだった。

 結局、俺はゾンビに咬まれてしまった。


 ていうか、いままで咬まれなかったのが奇跡だよね。普通に考えたら。

 超能力少女と一緒にいるからって、俺まで無敵になるわけじゃないんだから。


「終わるはずだった俺を、二回も助けてくれたんだぜ。後悔したり恨んだりしたらバチが当たるさ」


 にかっと笑ってみせる。

 衷心からの言葉だよ。


 もう親にも友達にも会えないっては、ちょっと心残りだけど、どのみち死んでたら会えないわけだ。

 つまり選択としては、いろいろ不自由になるけど生きるか、死ぬか、なんだよね。

 何事もなく今まで通り、なんて選択肢は最初からなかった。


 そしたら、どっちを選ぶのかって、わざわざ訊くことかい?


「ましてこっちの選択肢には、美少女の師匠兼相棒つき」

「それを言わなかったら、好感度最高でしたのに」


 んべ、と、みなみが舌を出した。

 OKOK。

 好感度はこれから上げますって。



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