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ドーナン(道南)・オブ・ザ・デッド!?  作者: 南野 雪花
第2章 ホラー VS SF
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ホラー VS SF 2


 足の悪い人や老人を優先して、軽自動車でのピストン輸送を開始する。

 えらく貧弱な機動力だが、俺たちに残された()はこれしかないのだから仕方がない。


 運転は国岡さんが買って出てくれた。

 まあ、無免許の俺がドライバーというよりは、はるかに安全だろう。


 自衛隊の森住二曹は第一陣で道の駅に移動し、安全を確保する。

 俺は残留組である。


 森住さんが残った方が良いのではないかって意見も、もちろんあった。

 戦闘力を有した唯一の人だからだ。


 けど、結局のところ選ぶしかないのである。

 先発して安全を確保するか、ドライバーとなるか、殿軍(しんがり)を務めるか。


 軽自動車の中が最も安全なので、まず候補から外れる。

 走ってる車に攻撃を仕掛けられるほど、ゾンビどもの動きは速くないから。

 であれば、進むか残るか。


 じつは危険度は一緒である。

 が、いまのところゾンビの襲撃はないため、現在地の方がより安全である、と仮定することにした。


 俺とみなみが『なないろ・ななえ』に立ち寄ったのは昼過ぎで、そこから三時間くらい経過しているため、今も安全かどうか保証の限りではない。

 斥候を出したほうが良いのは間違いないのだ。


 だから、第一陣は偵察をかねて、逃げ足の速そうな人たちで行くことになった。

 で、俺が残留したのは、馬鹿馬鹿しいけど安心感のため。

 函館空港で大活躍した、と、思われてるからね。


 みなみが倒したゾンビを投げてただけなんですけど!

 ともあれ、俺がいることでみんなが安心できるなら、勘違いでもなんでも看板は利用させてもらうさ。


 軽自動車だから、運転手を除けば三人しか乗れない。

 十四名の人間を移送するには、どうやったって何往復もしないといけないのだ。

 まあ往復十分もかからないんだけどね。


 ぶっちゃけ歩いて移動しても、たいして時間はかからない。

 ただ、俺はともかくとして年配の人たちは、けっこう疲労の色が濃いから無理をさせるのは禁物だ。

 異常事態だもの。


 これで気分は上々って感じだったら、そうとうなもんだよ。

 移動を開始してしばらくすると、みなみから携帯端末に連絡があった。


『こちらは片づきましたわ、話はいちおう聴いていますので合流します』


 と。


 詳しくきいてみると、彼女たちの状況もなかなかにハードだったらしい。


 一号車の乗客二十五名のうち、咬まれてしまったのは十九名。

 大惨事だ。


 函館駅で保護された人たちだったんだけど、とうやらその中にいた子供が咬まれていたっぽいのだ。

 それを母親が隠していた。


 気持ちは判らなくもないんだけど、結果として最悪の事態を招いてしまった。

 バスの中で発症(・・)した子供に、まず母親が咬まれ、そこから連鎖的に感染が広がっていったわけだ。


 狭い車内である。

 逃げ場所もない。


 みなみが突入したときには、生き残りは八名。運転していた自衛官を含めて九人しかいないって惨状だった。

 そこからゾンビを全滅させるまで、さらに二名が犠牲になった。


 ステラの協力もあって、なんとか事態を収拾することには成功したものの、もうバスは長距離走行に耐える状態ではなくなっていた。

 まあ、みなみだって窓をぶち破って突入してるしね。


 生き残った人たちも憔悴しきっており、このまま新千歳に向かうのは無理。どうしようかって悩んでいたところに、二号車が強奪されたって連絡が入ったわけだ。


『踏んだり蹴ったりですわね』

「まったくだよ」


 ともあれ、死体だらけのバスは放棄するしかなく、生き残りの七名は装甲車に移乗して、みなみはステラのCRFにタンデムで『なないろ・ななえ』に戻ることとなった。


 つーか、一号車もダメかぁ。

 俺たちは、いよいよ機動力を失ったことになる。


 軽自動車は四人乗り、装甲車は十人までしか乗れず、バイクは最大で二人乗りだ。

 それに対して、自衛官が四名、超能力者が二名、俺を含めた民間人が十九名。


『自衛隊さんが、他の車両をまわしてもらえないか上にかけあってくれていますが、どうなるかはちょっと判りませんわね』

「だよなぁ」


 民間人の移送なんか、はっきりどうでも良い部分だ。

 現状を考えれば、という話では。


 ゾンビパニックは未だ終息しておらず、戦力は一人でも必要なのである。

 にもかかわらず、隊員が四人と超能力者二人っていうかなりの戦力をこっちに割いているのだ。

 ハードウェアにしても、装甲車一両とバスが二両。


 この上さらに人を出せ車を出せとか。もし俺が自衛隊の上層部だとしても、おいおいって思うだろう。

 そこまで手間をかけて民間人を移送しなくてもええんちゃうんか、と。

 騒ぎが収まるまでどっかに軟禁でもするべや、と。


『まあ、今うじうじ悩んでも仕方ありませんわ。合流しますわね』

「わかった。気をつけて」


 苦笑の気配を言葉に感じながら、俺は通話終了のアイコンに触れた。

 あー そろそろ充電しないとなぁ。





 夜が近づいている。

 俺が北海道にきて最初の夜だ。


 ものすげー美少女と一緒なわけだけど、残念ながら幸運を祝う心境にはなかなかなれない。

 なにしろちょっと信じられないような恐怖体験をしているからね。

 現在進行形で。


「拓真さん。なにを見ていますの?」

「いや、やっぱり話題にもなってないなと思ってさ」


 かけられた声に振り返ると、ビニール袋を提げたみなみが立っていた。

 袋の中身は、斜向かいのコンビニエンスストアから調達してきた食料だろう。

 コンセントに差したままいじっていた携帯端末をテーブルに置く。


「情報統制されていますからね」

「それは聴いていたけどさ、ホントにそんなことが可能なんだなって」

「日本国内で、日本政府にできないことはほとんどありませんわ」


 肩をすくめてみせる美少女。

 インターネットの力とか、報道の力を信じて疑わない人には業腹でしょうが、と、付け加える。


 まったくだ。

 俺はどっちかってゆーと、信じていた側である。


 けど、あらためて言われてみると、マスコミが命を賭けてまで真実を報道する理由なんてない。

 脅しではなく、喋ったら殺されるって判ってるのに、自分や家族の命を捨てて報道するやつがいるかって話だ。


「だからこそ、力ずくでルールを破れる存在を、政府は警戒するのですわ」


 それはたとえば、みなみのような超能力者である。

 殺そうとしたって、普通の警官とか自衛官だったら返り討ちにあうだけ。


 だが、だからこそ、政府は彼女たちみたいな超能力者のチームを作るのだろう。力ずくでルールを破ろうとする連中をなんとかする(・・・・・・)ために。


 法治国家としてどうなんだって思うけど、法で裁けない悪もまた存在するしね。事実として。


「けどまあ、さすがに怪物退治までは想定してないだろうけどな」


 自分の思考の軌跡を辿り、思わず苦笑する俺であった。


「いいえ? むしろ私たちはそのために作られた(・・・・)んですのよ? 拓真さん」

「いやいや。怪物退治は科特隊(かとくたい)に任せようよ」


 あ、日本の子供向け特撮番組のパイオニアたる『ウルトラマン』に登場する組織ね。科学特捜隊(SSSP)ってのは。

 主人公が所属していて、一般の警察などでは対応できない怪事件の捜査や侵略者からの防衛を主任務としているって設定だ。

 シリーズでは、だいたい似たような組織が登場してるね。


「むしろ、その解説必要でしたか?」

「さーせん。つい。好きなもんで」

「私の組織にも好きな人がいますので、解説しなくても判りますわよ」

「そういう意味の必要ないだったの!?」


 ひどい話である。

 超能力者集団、どうなっているのだろう。


「でも拓真さん。常識なんて脆いものですわ。怪異はすぐ隣にいるものですのよ」

「そいつは嫌ってほど実感したよ」


 肩をすくめてみせる。

 ゾンビが実在するとか、B級ホラー映画かよ。

 はい、と、袋を差し出すみなみ。


「食べておいてください。体力が保ちませんわよ」

「あ、やっぱり交代で見張りとか、そんな感じ?」

「若い者には、肉体労働が押しつけられるのですわ」


 みなみが笑う。

 どうやら、長い夜になりそうだ。


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