~異世界にも法律はあります!~
「あんっ///らめぇ~、らすけて~///!!!」
おっと、これはどうすればいいんだ。
レイプしている輩(3人)たちの内、2人に向かってハンドガンを構えているが、今にも襲いかかってきそうな雰囲気を醸し出している。銃が危険なものだと分かっているらしい。
……殺してはいけない。
そんな考えが脳裏によぎった。十万人もの人間を殺してきたはずなのに、その考えが頭から離れない。
そういうわけで、銃をしまい、戦闘態勢をつくった。
「てめぇなめてんのか!」
2人が左右から殴りかかってきた。その腕を両手で掴み、少し回してみた。
ボキボキッという音が鳴り、2人共へし曲がった腕を見て絶叫している。
このくらいでそんな大声上げるか?普通。
残った1人が怯えながらも、ナイフを突き出し、突進してきた。そのナイフの刃に指が当たらないように親指と人差し指でつまみ、受け止めた。それと同時にナイフを破壊し、手刀をかました。あっけなく倒れたチンピラ共を、少し大きめの水溜まりを越えるようにして飛び越え、すぐさま女の子の元へ向かった。女の子の精神はもう限界に近いからだろうか、
「……き、鬼畜……」
そう言って意識を失ってしまった。
え?この子の俺に対する第一印象悪くね?普通ならここで好意をもった発言などをするはずなんだが……
俺の顔に表情がないからかな?
とにかく、この世界での病院の役割を果たしている場所に行かないといけないな。
そう思った刹那、あのガイドブック(?)が光りだした。
それは自分の目の前まで浮かび、ページが開かれた。
そのページには、地図が示されており、目的地までの最短ルートが載っていた。今でいうグ●グルの機能にそっくりだった。
それを理解した直後、目的地まで全力で走った。本が眩しくて逆に行きにくくなってしまったが、無事たどり着いた。
そこは、他の民家と同じような建物で、何の特徴もない家だった。その家のドアをノックし、
「すみません。この子が意識を失ってしまっていて」
「それは大変だ。さぁ、中へ」
優しいおじさんに感謝し、家の中に入った。
中には、ザ・異世界の民家的な家具があった。
当たり前だよな、だって異世界だから。
女の子をベッドの上に乗せ、
「で、なにがあったんだ?兄ちゃん」
「たまたま通りかかったところに犯されそうになっている女の子を見つけて救助したらこの有様です」
「なら赤子ができる体になってないといいんだが……」
そう話していた時、少女が目を覚ました。虚ろな眼で周りを見渡し、状況を悟った。
「大丈夫か?どこか痛かったりするところはないか?」
「は、はい。大丈夫です」
なんか避けられてる?ここでカッコよく決めないと。
「君の名前を教えてくれ」
「はい。アルテラと申します」
可憐な少女――アルテラはその紫がかった髪をなびかせて言い、紫紺の瞳を伏せ、頬を少しだけ赤らめながら言った。やがて、記憶が明確に戻ったのか分からないが、顔から煙が出る勢いで頬を赤らめ、俺にビンタをしてきた。
――やっぱり俺嫌われてる?
「すっ、すみません。あ、あの……私……」
「あぁ、大丈夫だ。ビンタする程の元気があるならよかった。あと、これから赤子は……」
「生まれませんっ!!」
きっぱりと言っているが、それは本当のことなのか、ただの照れ隠しなのか。
「あの……その……あ、あなたの名前を教えて下さいっ」
アルテラが照れながら言っている!?
これは好感度を上げるチャンスになりそうだ。
「俺は神谷翼って言うんだ。翼と呼んでくれ」
これまでの中で最っっ高のイケボで言ったのだが、むしろ逆効果だったらしい。眼がさっきよりも怖い。
アルテラも怖がっているみたいだ。
「は、はい。ツバサ……」
アルテラは照れながらそう言った。それをジト目で見てくるおじさん。いや、あなたに渡しませんからね。
これ、絶対フラグが立ったな。俺には見えるぞアルテラのフラグが!!!(嘘)
「アルテラ、何故君はあそこでレイプされていたんだ?」
「それはですね……あ、あの……私、魔法使いになりたいんですっ!」
アルテラがそう言った直後、家のドアが勢いよく破壊された。みんなが目を見開いて呆然としている。
「貴様が犯人だな。捕まえろ」
と、いうことで、王国の人につかまりました。この世界にも傷害罪はあるんだなぁ。
幸い、持ち物は取り上げられなかった。やはりこの世界には銃という概念そのものが無いらしい。
お金の入っているポーチの中を見た傭兵が目を見開いていたが大丈夫だったのだろうか?
ガイドブックの方は、傭兵が触ろうとすると大きな電流が流れたらしく、また障害罪がかさなりそうだったので、「いや、触った方がいけないんですよ」と言い逃れた。
裁判まで暇だったのでガイドブックを読むことにした。どうやらこの国――イシュタル王国では、魔法を使っていい国とみなされ、他の国は禁止されている。理由は、イシュタル王国に攻め込んでくる魔の軍勢があるらしく、魔法を使って追い払わないと占領されてしまうからだ。
ガイドブックには、後半から魔法陣(?)みたいなものが描いてあったが今から裁判なので読めませんでした。
「被告人は執行猶予4年とする」
なんか監視官みたいな人が付いてしまった。カタリナと言う名前らしい。緑色の髪と目、性格はきつそうだが結構な美人だ。あと巨乳。
俺達が署から出ると、一人の少女――アルテラが待っていた。
「おかえりなさい!」
俺が捕まってから三日間、アルテラはずっと待っていてくれたのか。
「あぁ、ただいま。あと、ありがとう」
そう言ったらアルテラはにっこりと笑った。
何故か心が温かくなった気がした。
「あっ!!」
アルテラがカタリナの存在に気づき、全てを悟ったかのように次の言葉を発した。
「そんなに早く女をつくるなんて……ケダモノですね」
「「違う」」