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第六話 成人

時が経つのは速いものだな。俺は遂に15を迎えることが出来た。そう、成人だ。この五年は今までとは違い有意義であった。まず、金属が見つかった。瑞樹(アルフレッド)が金属を持ってきてくれたのだ。何でも瑞樹(アルフレッド)も事故死の細工のために密かに動いており金属はその協力者から入手した物らしい。早速俺は父の料理に知られないように含ませていった。中々機会が訪れないため五年経った今でも病気の一歩手前までしか言っていない。それでも下痢、腹痛、下血、嘔吐、吐血などの病状は出てきている。最近では臥せりきっている。だが、金属中毒なんてこの時代の人間には分からないから父の年齢もあって老いと勘違いしてくれている。


因みに母は残念なことに二年前に病死してしまった。死の間際、俺の成人する姿が見たいと言っていたのは今でも昨日のことのように覚えている。…やめよう。悲しくなる。


そんなわけで俺は成人を迎えたパーティーを屋敷で行っている。パーティーには同じく成人した瑞樹(アルフレッド)とその家族や近くの貴族がお祝いにやってきてくれた。特に領地を接するセシル男爵家、ハワード子爵家は当主自ら参加してくれている。これは臥せりがちな父に代わって両家と縁を結んでいるからだ。


セシル男爵家はともかくハワード子爵家は領地が狭いためかなり四苦八苦していた。それを少し現代知識を与えて豊とまではいかないまでも今まで出ていた飢餓による餓死者はいなくなったという。


「今回は愚息の成人の儀に来ていただき感謝する」


俺が両家の当主と話しているとかなり辛そうな父が現れた。顔面は白く今にも死にそうな顔をしていた。…これは仕上げの段階に入ったな。


「父様、無理はしないで下さい」


「何を言う。バルバストルの当主は私だ。挨拶するのは当然であろう」


…やはり貴方は最後まで変わりませんでしたね。


「…では父様、私は他の方々に挨拶をしてきます」


俺は金属の入った父のグラスを確認してその場を離れる。父はしばらくすれば倒れるだろう。だが、もともと無理をしてこの場にいた。だから例え倒れたとしても世間は老衰と言うことで納得してくれるはずだ。


「よっ、順調に進んでいるか?」


そこへ瑞樹(アルフレッド)が話しかけてきた。今は家族と離れて一人みたいだな。


「こっちの実行日は決まった。五日後両親がガザルドに向かう。細工はその前に行う」


「そうか。意外と早かったな」


「たまには夫婦でゆっくり風呂にでも使ってきたらどうだ?と言ったら普通に信じてくれたよ」


「成程。俺の方もそろそろだな。しかし、十年は長かったな」


「全くだ」


俺の言葉に瑞樹(アルフレッド)は笑う。現在俺たちは前世も合わせれば32のおっさんである。生きていれば就職して結婚して家庭を作っていたかもしれないな。それはそれで幸せなのかもしれないが今の俺は次期領主だ。そんな幸せはないだろう。だが、夢はかなえられる。前世では絶対に出来なかった悪徳領主になれる。尤もそのための準備はかなり必要だが夢がもう目の前まで来ていた。


「それで?そちらの状況はどうなんだ?まあ、聞かなくても大体わかるが」


瑞樹(アルフレッド)がそう言うと同時にガラスが割れる音と何かが倒れる音が聞こえてきた。…ついに倒れたか。俺はゆっくりと振り返る。そこには仰向けに倒れる父とそれに駆け寄るパーティーの参加者たちの姿があった。俺は口元に笑みを浮かべて瑞樹(アルフレッド)に言う。


「御覧の通りさ」


俺はそれだけ言うと倒れた父のもとに向かう。


「父様!?…使用人!父様を急いで寝室に運べ!」


「は、はい!」


「セバスはグラスの回収を!毒殺の可能性もある!」


「かしこまりました」


俺はテキパキと使用人たちに指示を出していく。父の代わりに指示を出すことがあったため問題なく動いてくれる。俺は指示を出し終えると参加者の方を向く。


「この度は父様の容体の急変に伴いパーティーは中止する!参加者の方々には申し訳ないがしばらくここにいてほしい!毒殺したものがここにいるかもしれない!うかつに動くのは危険だ!」


動揺する参加者たちにそう伝えていく。今回パーティーには辺境伯とはいえ俺の成人のパーティーだったため参加しているのは辺境伯よりも低い地位の貴族や商人だけだ。多少ならこちらの指示に従わせることが出来た。俺としては毒殺の可能性は限りなくゼロに近いので呼び止める必要もないが外聞を考えるとこうした方がいいな。少なくとも暗殺者がいるかもしれない参加者を調べもしないで返すのは不味いからな。これなら親の容体を気になるのに貴族としての務めを果たしていると思ってくれるだろう。そうすれば俺への信用は上がる。今後の事をやりやすくなる。


本当父には感謝しきれないな。


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