可愛いは正義
ここまでで第一章 というかプロローグ的な漢字です
「待て待て待て待て」
「なによ」
「君は重大なことを忘れている」
彼女はキョトンとする
「俺の意志だ」
そういうと、なんだと言わんばかりの顔をして、
「そんなの必要ないわよ」
と言った
「なんでだよ!ここは俺の家で、そこに誰を住まわせるのかも俺が決めるんだよ!
いや、まあ正確には俺の親だが・・・ とにかく、お前が自由に決めていいことじゃないだろ!」
つい声を荒げてしまった。あまりに展開が早すぎて焦ったのだ。
すると彼女は、
「そう、あなたの意志は必要ないわ。あなたの親の意思が必要なの」
「なら、なおさらダメだろ」
そう言うと彼女はにやりと笑い、
「なら、試しに聞いてきなさいよ」
と言った。
俺は少し怖くなった 何を言っているんだ?
「・・・ああいいさ、聞いてくる 断られたら帰るんだよな?」
「ええもちろん。さ、行ってきなさい」
マフィンは余裕そうだった。
「なあ、母さん」
今の時間帯はまだ父は帰ってきていない。一階のリビングにいる母に聞くことにした。
「なに、どうしたの?」
「あのさあ、うちに女の子が住むって言ってるんだけど」
すると母は
「ええ?無理に決まってるじゃない」
と言った
俺はため息をつく ほらみろ。やっぱり無理じゃないか。
というか、俺も何を心配していたんだか。
そんなことを思った。すると母から予想外の言葉が出た。
「うちにはもうマフィンちゃんがいるんだし、これ以上は無理よ」
「そんなに息を切らして戻ってこなくても」
「おい、お前何をした!!」
彼女はまたにやりと笑った
「だから言ったじゃない。あなたの意志は必要ないって そう、私は留学生で、あなたの遠い親戚なの。だから日本にいる間ここに住まわせてもらう ってことになってるの」
「・・・は?マフィンちゃん?」
言い間違えではないか母に聞き直した
「そうよ だからこれ以上はうちでは無理」
俺は頭が真っ白になった 俺は何回驚けばいいんだ
「ええっと・・・ そういえばマフィンっていつからいるんだっけ?」
「そうねえ、ちょうど一カ月前くらいね」
一カ月 だからすでにうちに馴染んでいるのか
俺は事の真相を聞くため、急いで自分の部屋に戻った。
「はあ・・・」
俺は深いため息をついた もう驚き疲れてしまった
「私たちの転送装置は、転送後のことも考えられてるの。転送される者のことがきちんと考えられているのね。どうやって親の記憶が変わったのか、聞きたい?」
「いや、いい・・・」
そんなことまで聞く気力はない
しかしそこで俺は気づいた
「ん?ならなんで俺の記憶は変わっていないんだ?俺の記憶も変わっていればスムーズだろ」
「そういえばそうね。なんでかしら。まあ、あなたの記憶の改ざんは必要なかったってことでしょ」
それはなんだかムカつく。しかしもしかしたら記憶が変えられていたのと思うとゾッとする。
「じゃあ、そういうことだから。これからよろしくね、アキヒコ!」
彼女は屈託のない笑顔を浮かべた。
なんで名乗っていない名前を知っているのか。そんなことに気づけないくらい、可愛らしかった。