第18話
本文中の英語は皆さんご存知、Go・・・極々一部は自分でやりました。
皆さんは決してゼミの英論文を和訳する際に多用しない事をお勧めします。私の友人は1文読んで、これ自分でやってないでしょ?と言われてしまいましたw
同日 17時11分 神奈川県 東京都道・神奈川県道6号線
東京都道・神奈川県道6号線は正式には東京都道・神奈川県道6号東京大師横浜線といい東京都の大田区と神奈川県の横浜市鶴見区を結ぶ主要地方道だ。途中4つの国道と交差するこの道路は産業道路と通商されるだけあり、トラックの往来が多い。更に17時を過ぎ、車の台数は増えている。その上、護たちも出動しているこの事件の影響で神奈川県警は県内各所で検問を実施していた。このため普段よりも道は混んでいた。
『パース2よりセイバー1-1、2-1。現在位置は?オーバー』
『こちらセイバー2-1。現在位置は鶴見の清掃工場付近。まだ特殊急襲部隊は発見できていない。オーバー』
「こちらセイバー1-1。現在位置は6号線上り車線の鶴見大橋を渡っているが問題発生。検問等の影響により車両での移動が困難です。ヘリを要請します。オーバー」
『セイバー1-1、こちらパース2。残念だが両機ともすぐには到着できない。30分以上かかる。先導役の県警の車両はどうした?オーバー』
「県警の白バイが2台先導してくれていますが、トラックが多いこの道路ではスピードを出せません。何とか民間車両を減らせませんか?オーバー」
『了解。何とかしてみる。セイバー1は現状を維持。セイバー2はそのまま現場へ向かえ。パース2、アウト』
「セイバー1-1、了解」
『セイバー2-1、了解』
護は通信を終えるとトラック等が渋滞している中、右に左にとハンドルを操作しながらトラックの間をギリギリ通って少しずつ目的地に近づいている車内から外へ目を転じた。完全に道路のキャパシティをオーバーしているように見える中、車列はマイクで前方の車両に道を空けるように言いながら進んで行った。
同日 17時50分 神奈川県 鶴見貯油施設付近
「ここを右折だ」
本来であれば車で15分程で到着するはずのところを倍以上の時間を使って神奈川県 東京都道・神奈川県道6号線を右折する場所まで来た。
「セイバー2-1、こちらセイバー1-1。あと100メートル程で踏み切りに到着する。そちらの状況は?オーバー」
『2-1より1-1。現在、貯油施設内への出入り口まで50メートル。連中鉄板を張り合わせて即席銃座を作っているが、これから突破する。アウト』
「1-1、了解。アウト」
「これだ!1-3、左だ。1-4、ついて来い」
『了解』
JR東日本鶴見線の安善駅のすぐ隣にある踏切から護たちのLANDCRUISER200はそのまま線路内へ乗り入れた。
「オールハンド、降車!」
敷地内に止めてあったタンク車の近くにある建物の裏手で車を降りた時、車載無線機に通信が入った。
ここで時系列を少し戻す・・・
同日 17時13分 日本 東京都 福生市 横田基地 地下作戦指揮所
本日13時頃に神奈川県で発生した炭素菌とそれに伴うテロの第一報から4時間が経過しようとしていた。偶然、米陸軍のキャンプ座間での会議に出席する為に中継地の横田に居た為に全体指揮を執ることになったアブラハム・アッパズ中佐は思わず、小声で言った。
「こんな時に・・・」
実はこの時、太平洋戦隊の陸戦ユニットの主力はチベット、ゴビ砂漠等の中国国内でICTO独自の作戦を行っていた。この作戦は中国国内でも殆ど人のいない場所にテロリストの養成キャンプらしきものが作られているのが確認されたのが発端だった。本来であれば偵察衛星や無人偵察機等で調査した後、巡航ミサイルによる攻撃か航空機からの爆撃で事は済むところだが、テロリストが装備していた対戦車ミサイルや車両の一部が人民解放軍から流された可能性があったため、陸戦ユニットの人員を派遣する必要があった。
ゆえに、この案件に対しICTOからの増援はなかった。アッパズが控えている地下指揮所には前段に10名程の支援要員がそれぞれのモニターで関係機関との調整や情報収集といった対応を行っており、前面の大型スクリーンには関東近郊と神奈川県の地図が表示されていた。そのスクリーン上でICTOの動きは勿論、警察や自衛隊の動きも分かる。
神奈川県警は既に各地へ警察官を派遣し、捜索と警戒に当たっている。更に警察庁を通じて関東圏の警視庁、千葉県警、埼玉県警等から機動隊や警察官を派遣してもらう手筈を整えている。一方で自衛隊の方はといえば、発生した際に機敏に反応したのは第1師団の第1特殊武器防護隊と陸上総隊直轄の中央特殊武器防護隊及び対特殊武器衛生隊といったNBC対応を担う部隊であった。
日本は世界で初めて化学兵器を使ったテロが発生した国である。炭素菌という単語が防衛省に届いた10分後には統合幕僚長より、陸上総隊司令部に指令が飛んだ。司令官は直ちに引っつかんだ受話器を持ったまま通話を切り、上記の3部隊及び直近の第1普通科連隊や第32普通科連隊、自衛隊中央病院といった関係各所に出動待機命令を発令。さらに第1空挺団や即応レンジャー連隊、特殊作戦群等を含む関東近郊の全部隊に非常呼集が行われた。
最初の通報から2時間程が経過した現在は、警察庁から関東近郊の鉄道、高速道路、空港等の交通や電力、ガス、水道等のライフラインを管理する企業や監督官庁である国土交通省や経済産業省にも連絡がはいっていた。当然、ここまでの事態となると政府も黙っている訳にはいかない。既に国家公安委員長等の関係閣僚が官邸に入って首相と対策を協議している。
このような情報がスクリーン上や支援要員の報告によってアッパズの元に上がってきた。
「・・・今度は災害派遣じゃすまないぞ。伝家の宝刀を抜く事になるかもしれないが、果たして必要な時に鞘に引っ掛らないかな」
この時点で警察や自衛隊を含めた関係各所の人間は1995年に起こった地下鉄サリン事件を思い出していた。当時、陸上自衛隊は第1師団の第32普通科連隊が中心となり、除染活動に当たった。国家転覆を考えていたオウム真理教が起こした化学兵器テロに対し、32連隊が受けた命令は“災害派遣命令“だった。サリンが散布され、犠牲者が発生しており、さらに銃や爆弾によるテロが発生するかもしれない状況下で隊員たちは武器を携行出来なかった。これでは市民を護ることは出来ない。
自衛隊はその後の上九一色村の教団本部へ警察が捜索を行う際に反撃を警戒し、静岡県に駐屯している第34普通科連隊、第1戦車大隊、第1特科連隊が対処・支援する態勢が計画され、オウムのヘリからのサリン散布を警戒し、第1高射特科大隊と木更津の第4対戦車ヘリコプター隊所属のAH-1Sが対処する計画もあった。幸いなことにこれらは全て無駄に終わったが、だからといって次も無駄になるとは限らない。日本の安全保障・治安維持制度はこの事件に学ばなければならなかったが、20年が経過した現在でもこの教訓を生かして変化したとは言いがたい。
こうした複雑な事情がある事に内心ため息をつきながら、アッパズは目の前のスクリーンを睨んでいた。
「パース2、警察庁へ要請していた件が通りました。現在、待機中のMQ-1Lを上げます」
「ETAは?」
「約15分です」
大型スクリーンの脇にある小型のスクリーンの1つが管制塔からの映像に切り替わり、滑走路から“プレデター”の愛称とアフガニスタン等での作戦で有名になったMQ-1Lが離陸していく姿が映し出された。
ヘリならともかく、ある程度の高度を取る必要がある固定翼の機体を飛行させるとなると、羽田・成田両空港の管制と東北地方南部から中国地方東部の航空路管制業務や進入管制業務を管轄する東京航空交通管制部との調整が必要になる。このような事件が発生した以上、警察の航空隊や消防、場合によっては自衛隊等の航空機が現場上空に集まってくる。その空域に向かうまでのルートとその空域での優先飛行を行えるようにする為に、警察庁はあえて国土交通省を通じて要請を出した。
「15分か・・・」
「米海軍第7艦隊司令官よりホットラインです」
「こちらで受ける」
アッパズは自らのスペースにある受話器をとった。
「ICTO Yokota base Command Post.This is APPAZU Lieutenant Colonel speaking.(ICTO作戦部横田基地指揮所、アッパズ中佐です。)」
『It is Jonathan Darling. I got a contact from the Kanagawa Prefectural Police. approximately 20 minutes ago. Lieutenant Colonel, Does Tsurumi seem to be aimed at?(ジョナサン・ダーリングだ。中佐、20分程前、神奈川県警から連絡が入った。鶴見が狙われているようだね?)』
「It's affirmation, commander.The part of the terrorist seems to occupy facilities already.Currently, two of the assault team is in rushed to the scene.(肯定です、司令官。既にテロリストの一部が施設を占拠しているようです。現在、2つの強襲チームが現場に急行中です。)」
『We were out to pick in Yokosuka a helicopter from the Atsugi base.To call out FAST as the advance party.It has issued an instruction to cooperate with you guys when you arrive.(我々は厚木基地からヘリを横須賀に迎えに出した。先発隊としてFASTを出動させる。到着したら君たちに協力するように指示を出した。)』
「Just a moment please! US forces in Japan is do you intervene! ? that is···(ちょっと待って下さい!在日米軍が介入するのですか!?それは・・・)」
『Lieutenant Colonel, this'm decisions.Instruction is issued from CDRUSPACOM.It's already been contact to the defense minister.(中佐、これは決定事項なんだ。太平洋軍司令官から命令が出された。防衛大臣にも既に連絡済だ。)』
「Although the US military facility has become the target, it is the United States in the incident that happened in this country will be taken to that the fact that the intervention in Japan also start from under occupation, is it of the American intention?(米軍施設が目標になっているとはいえ、この国で起こった事件にアメリカが介入するという事は日本はまた占領下からやり直すという事になりますが、それがアメリカの意思なのですね?)」
『The Japanese government's right to protest, but would probably not change the White House policy. It now because of the President's idea that it is sufficient to to say around···Last one to me that we did not hear(日本政府は勿論、抗議したそうだが、恐らくホワイトハウスは方針を変えないだろう。今の大統領は周りの言うようにしていればよいという考え方だからな・・・最後のは聞かなかった事にしてくれ)』
「Yes,sir.Matter of cooperation, thank you.(分かりました。協力の件、ありがとうございます。)」
『Lieutenant Colonel, it is 20 minutes. There the units to arrive in 20 minutes. More than this can not be sent.(中佐、20分だ。20分でそちらに部隊は到着する。これ以上は遅れない。)』
「···thank you sir!(・・・ありがとうございます!)」
「Not want to become in such a thing Even me. We because of a long term relationship than you guys. In particular, the Maritime Self-Defense Force. Promptly so as to subdue the terrorists(私だってそんな事にはなって欲しくはない。我々は君たちより付き合いが長いのだから。特に海上自衛隊とは。速やかにテロリストを制圧するように。)」
「We will do everything.(全力を尽くします。)」
アッパズは受話器を置いた。
そして時系列は元に戻る。
同日 17時50分 日本 東京都 福生市 横田基地 地下作戦指揮所
アッパズは先ほどまでの第7艦隊司令官とのやり取りを思い出したながら、大型モニターにプレデターからの映像が映し出されるのを見ていた。
「MQ-1L、現場上空に到着」
「よし、映像を確認した。そのまま上空から現場一帯を監視できるように飛行しろ」
「了解」
現場にいる護に連絡した。
「セイバー1-1、こちらパース2。聞こえるか?」
『パース2、こちらセイバー1-1。感度良好。オーバー』
「1-1、パース2。いいニュースと悪いニュースがある。いいニュースは空域確保についてだ。先ほど、警察庁の長官官房から国交省の航空局を通して東京コントロールと羽田空港及び成田空港管制に我々と米軍、緊急性の高い航空機を最優先で飛行できるように要請が出て、許可が下りた。現時刻より上空からの監視及び支援を行う。悪いニュースは米軍があと20分程でそちらに到着する。横須賀にいたFASTの2個分隊がそちらに向かっている。オーバー」
『1-1、了解。今、米軍が介入したら・・・』
「そうだ。第7艦隊司令官から先ほど連絡があった。20分以上は遅れないとな」
『なるほど、そういう事ですか!』
「侵入したテロリストの制圧ならともかく、警備の増員なら一向に構わないからな。我々に与えられた時間は20分だ。出来るな」
『1-1、了解。現在ポイント088619、そちらから確認できますか。オーバー』
「セイバー1を今・・・確認した。ポイント087619に敵4名を確認。これをタンゴ1-1とする」
『了解。これより接敵する。アウト』
“プレデター”はボスニア・ヘルツェゴビナ紛争で初めて実戦展開した。その機体とシステムは改良を重ねられ、機体はMQ-1L、プレデターシステムはMQ-1Bと呼ばれている。TVカメラ、赤外線カメラ、 レーザー目標指示器等で構成されるMulti spectral Targeting System(MTS)が搭載されている。この機体は現在、米空軍等で運用されている機体からは取り外してしまった合成開口レーダーを搭載している。これを搭載した事により重量は増加したが、機体そのものの軽量化とエンジンの出力を上げる事によって速度と航続距離を以前の1.5倍にまで増加させた。
『パース2、1-1。タンゴ1、4名を排除。前進を再開します』
「1-1、2。了解。新たな敵を確認。ポイント090619からポイント089620に向かっている。恐らくそちらの側面を取るつもりだろう。この集団をタンゴ1-2とする。タンゴ1-2を排除次第ポイント091619より通路に侵入し、敵を挟撃せよ」
『1-1、了解。アウト』
アッパズは横田基地の地下に設置されている指揮所に居ながらにして上空から2個強襲チームと付近に展開している警察官、さらに現場区域に近づく様々な機関のユニットを把握出来ている。その中で的確に部隊に指示を出し、敵戦力を確実に撃破していく。地上で戦闘を行う隊員たちにとってこのような指揮統制と情報は心強く感じる。戦闘を行っている隊員たちは1人1人が自分で思考し、自分で判断する能力を持っているが、それでも第三者的な視点からより多くの情報を元に部隊の位置、進出方向、敵への攻撃のタイミング等を伝達される事により、能力は一層強化され、任務の達成率が向上するからだ。
同日 18時08分 神奈川県 鶴見貯油施設 地下通路
「これは・・・」
「死者が出ていないとはいえSATがここまで手酷くやられるとは」
「逆に9mmだけであの損害に抑えられた方が賞賛されるべきだろうな」
護たちが地下通路へ突入し、挟撃を行った事により敵は早く制圧する事が出来た。しかし、その抵抗は激しく、連絡の取れていなかった第2班の8名全員が重傷と判定される傷を負っていた。
特殊急襲部隊の装備はMP5と同じくH&KのUSPの9mmモデルを使用していた。対して、テロリスト側はAR-15やAUG、RPKのコピー品や多数の手榴弾、セムテックス等を持ち込んでいた。これらに加え、
「にしても、こんなものまで・・・」
「GM6 Lynx、最新型のゲパートなんてどこから手に入れたんだ?」
ハンガリーのMOMウォーターメジャリング・テクニック社製のゲパートファミリーは有名なバレット社のM82等と同様に対物ライフルとして設計された。1991年にゲパートM1がハンガリー軍に採用されて以来、M2、M3と進化し続けてきた。使用弾薬は12.7x108mm又は12.7x99mm。最新型のGM6 Lynxはブルパップ型を採用している等の理由により1080mmしかない。その上、重量は10.5kg。作動方式はロングリコイル方式のセミオートマチックなのでボルトアクションよりも素早く次弾を発射できる。小型軽量のため立射で連射も可能で、2秒で6連射できる。
想像してみてほしい、軽く、取り回しのいいセミオートマチックの対物ライフルを持った敵と対面した時の気持ちを。12.7mmにはプレートキャリアに挿入している防弾用のプレートはおろか、数センチのコンクリート壁も意味を成さないのだ。筆者なら回れ右したくなる・・・
これらの装備を揃えていた敵を相手にSATは数名の敵を倒し、損害を最小限に抑えていた。
「油断したら上半身と下半身が分断されるな。とりあえず、周辺はクリアだ。パース2からも現在のところ地上もクリアだと連絡が入ってるから負傷者を搬出しよう」
「同感だ」
護とアダムスは数名の隊員を残し、若本たちが負傷者を地上に搬出するのを手伝った。
地上では丁度、横須賀からFASTを乗せてやってきたMH-60Sがアプローチに入ろうとしていた。FASTとはFleet Anti-Terrorism Security Teamsの略で艦隊付対テロセキュリティチームといわれる部隊で、海軍および海兵隊基地に対するテロに対応するのが主な任務だ。MH-60Sはセイバー1-5、1-6の誘導の元、着陸すると、海兵隊員たちを降着させ、すぐさま離陸した。周囲に展開した隊員たちに指示を出しつつ、1人がバーガーに近づいて行った。
「We appreciate your cooperation. After that we will take over.(ご協力感謝します。あとは我々が引き継ぎます。)」
「Thank you sir. Workers who had been detained am in there.(ありがとうございます。拘束されていた作業員はあちらにいます。)」
近づいてきた指揮官は傍に控えていた副官に指示を出し、拘束されていた作業員の確保へ向かわせた。現場では周囲を海兵隊員やICTOとSATの隊員が警戒する中、次々とPCや救急車等の応援が集まっていた。
護は若本とアダムスから離れ、SATの負傷者の応急手当を手伝っている希とセイバー2-4の元へと向かった。
「どんな具合だ?」
「全員が2発以上被弾しています。全員がイエロー若しくはレッドです」
「レッドの中で1番ひどいのは?」
「今、1-2が診ている彼です」
セイバー2-4が視線を向けた先には手首に黒と赤を残して付けられたトリアージ・タッグを付けているSAT隊員の左足にNARPのCATをつけて止血処置している希の姿があった。
「どこをやられてる?」
「至近で手榴弾が爆発して全身に破片を浴びてる。顔と胴体と肩はバイザーとプロテクションギアで守られてるから大丈夫だけど、両手両足が・・・その中でもこの破片は左大腿動脈を傷つけている」
説明しながらもSATの衛星担当の隊員と共に生理食塩水で傷口を洗浄し、止血剤をふりかけ、包帯を巻いていく。
「救急隊が到着した。2-4と一緒に引継ぎと撤収準備に入れ。終わり次第、報告」
「了解」
希に指示を出し、セイバー2-4にも伝え、護はアダムスと若本の下へ戻った。
「セイバー2-1には伝えましたが、取り合えず周囲の安全は確保できましたので私は1度報告に行きます」
「お疲れ様でした」
「それはこちらの台詞です。ご協力感謝します。貴方方が居てくれたお陰で、損害を抑えられた」
「いえ、SATの能力を改めて実感しました。十分に高いスキルを持っている」
若本はこの場を離れ、その場に残った護とアダムスはOPS-CORE FAST MARITIMEヘルメットを脱ぎ、ガスマスクとレベルC化学防護服のフードを外した。
「できれば夏場にこの格好は遠慮したいですね」
「全くだ。汗が溜まってる」
『オールハンド、パース2だ。3分でそちらにヘリが到着する。一旦それに搭乗して横田に戻ってきてくれ』
2人が話しているとヘリのローター音が聞こえ、パース2から通信が入った。2人は勿論、その場で通信を聞いていた全員がある単語が引っかかった。
「2、1-1。了解。これより戻ります。アウト」
先ほどの米海軍のMH-60Sではなく、ICTOのMH-60Mが侵入し、着陸した。横浜へ展開した時とは違い、1機のみだったため、16名全員が乗り込んだ。護は機内の真ん中でセーフティーランヤードを固定し、機内通話装置のコネクターにヘッドセットのピンを挿して言った。
「中佐がさっき“一旦”って言ってたからまた何かあったって事だよな」
「まぁ、そうでしょう」
真っ先にガスマスクとレベルC化学防護服のフードを外し、同じように、機内通話装置のコネクターにヘッドセットのピンを挿していたミラーが返した。
「本命のお出ましかな」
「アンタのそういうの良く当たるんだから止めて」
「そういえば、こういうのをフラグを立てるというんだったな」
「まぁ、合ってなくは無いと思うけど。というより良く知ってたわね?」
「正人に教えてもらった。で、フラッグはどこに立ったんだ?」
「「「「「「「「「・・・・・・」」」」」」」」」」
少しは普通の17歳らしい事を言ったかと思えば、ずれていた護の反応に機内に居た15名と左右のガナー、機上整備員と正・副操縦士は頭を抱え、反応に困ってしまった。
だが、ミラーの言った通り護の言った事は的を得ていたのであった。