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第16話

お久しぶりです。現実で忙しく更新が遅れてしまいました。お待ち頂いていた方がいらっしゃいましたらお詫び申し上げます。


途中、私の自己満足兼妄想の説明がございます。もしどうでもよいという方は飛ばしてご覧下さい。

8月中旬 10時41分 日本 千葉県 館山沖 5キロメートル 高度10000メートル


東京湾は東京都、千葉県、神奈川県に面しており、太平洋に向けて開けた湾である。東京湾はその湾内に京浜工業地帯や京葉工業地域が存在し、東京港、川崎港、横浜港、横須賀港、千葉港、木更津港等の国際貿易港又は工業港が存在する。その為湾口である浦賀水道は首都圏の海上交通の玄関口でもあり、要衝でもある。東京湾口航路は1日あたり約600隻、年間10000隻近くの船舶が航行する世界でも有数の海上交通過密海域で、湾内の港湾で取り扱う貨物は全国の港湾で取り扱うコンテナ貨物の約4割を占め、原油は約3割、液化天然ガス(LNG)は約5割を占めている。


 そんな東京湾の上空、10000メートルの高空に1機の航空機が飛行していた。太平洋戦隊航空ユニット第241支援航空団 第241輸送飛行隊に所属しているMC-130J コマンドⅡだ。この機体の詳細については前回説明したので割愛させていただく。


 第241輸送飛行隊は8機のMC-130J コマンドⅡによって構成され、その上部組織である第241支援航空団には第241輸送飛行隊の他に4機のC-17A グローブマスターⅢと2機のC-5M スーパーギャラクシーで構成される第242輸送飛行隊が存在する。この他に空中給油機、早期警戒管制機、電子戦機、通信中継・空中指揮機、無人偵察機の飛行隊が存在し、航空ユニットに存在する航空団の中で1番大所帯である。


護と希は6名の第2特殊作戦グループ航空隊の隊員達と共に飛行している機体の機内にいた。


「降下地点まで10分!」


 コックピットに程近い場所に居たロードマスターは機内(I)通話(C)装置(S)を通して左右の壁面に背を付ける向きで配置された座席に座っている地上戦闘員達に言った。護はそれを聞き、頷いて立ち上がり、隊員達に向けて言った。


「10分だ!スタンドアップ。装備最終チェック」


それぞれのバディの装備を確認し始める中、護は後部ランプドアに対して先頭に立っている希の前までいき、彼女の装備を点検し始めた。


「調子は?」


「上々。そっちは」


「問題無し。いつも通り」


「いつもより重いのに?」


「そういう意味では久しぶりだな・・・よし、異常無し。こっち頼む」


「了解」


今回の降下は高高度降下高高度開傘(HAHO)で降下した後海上に着水。そのまま海中を2キロ程泳ぎ、回収のために待機している11メートル級RHIBに収容される。つまり空挺降下と戦闘潜水を同時に行う。海上への空挺降下は当然陸上への降下よりも高い技量が要求される。海面に着水する寸前にパラシュートを引き起こし、パラシュート・ハーネスを切り離さなければならない。遅れれば、パラシュートが水を吸い込み沈み始める。逆に早く切り離してしまうと着水する際の衝撃で体にダメージを受ける可能性がある。


 ICTO作戦部の陸上戦闘員は年間の最低降下数が定められており、訓練と実戦でその回数が満たされていないと降下試験を受けなければならなくなる。降下回数の中に細かい基準が更にあるがその内の1つに年間の降下の内3回以上の戦闘潜水装備を装着しての降下が義務付けられている。


「よし・・・よし・・・よし。異常無し」


他の隊員の方を向くとと残りの6人も確認を終了していた。あとは降下するだけだ。


「降下地点まであと5分。気圧を外気圧と揃えます」


ジャンプスーツと潜水服を兼ねた物を着用し、ラムエア型のパラシュートを背中に、個人装備を入れた防水型の背嚢を股の前に、着水後の潜水に使用する閉鎖式の潜水装置を胸に取り付けている。その総重量は60キロを優に超える。


「3分!マスク確認してください。後部ハッチ開放」


今回、降下長を務める護とロードマスターは完全に解放された後部ランプドアまで歩き、そこから周囲の状況を確認した。お互いが頷き合い、ロードマスターはその位置に立ち、護は立っている7人の隊員達をランプドアに手招きして距離を詰めさせた。いかに高度に訓練された特殊部隊員だろうとこの状態では満足に歩く事は出来ない。まるでペンギンのように歩いた。


「30秒!降下用意」


先頭に立っていた希はランプドアの淵に立ち降下長である護に向けて親指を立てた。


「10秒!」


10秒後、希は護が下げていた右腕を外に向けたの確認して体を前に傾け、降下した。彼女に続き6人の隊員達が順に降下していく。最後に残った護はロードマスターに敬礼を送り続いて降下した。彼ら全員が安全に、確実に降下したのを見届けMC-130J コマンドⅡは後部ランプドアを閉鎖し、進路を変更した。





同日 11時05分 日本 千葉県 館山市 海上自衛隊 館山航空基地


先程の降下訓練は全員が問題無く終了させた。10000メートルから降下、予定通り9500メートルで開傘。そのまま降下し、パラシュートを切り離し着水した。すぐさま降下に使用した装備を切り離し、足首に付けていたフィンをつけ、閉鎖式の潜水装置のフルフェイスマスクを被り、背嚢を回収し背中に背負った。そのまま2キロを泳ぎ、訓練支援に来ている11メートル級RHIBに乗り込んで最寄の海上自衛隊館山航空基地にRHIBは向かった。


 基地では既に護達が降下に使用した装備を回収した別のRHIBが到着し、基地の設備を借りて装備の洗浄を始めていた。護達もマスクを外し、タンクと背嚢を持って洗浄と使用後確認に来た。


「今日も暑いな」


「今、36度だって」


「“水浴び”には丁度良かったかもな」


「早く洗ってデブリーフィング始めましょ。でもその前に昼食?」


「少し早いけど時間的にそうなるかもな。今日は金曜日だから“アレ”だよな」


「そうね。海自で金曜日の昼食といったら“アレ”よね」



ホースを持ってきて蛇口を捻り、潜水装置から洗っていると2人の航空隊の隊員が二言三言会話したと思ったら片方の隊員が逃げ出し、もう1人がそれを追った。何があったのかと近くの隊員に護は聞いた。


『いいか、必要な物を入れておくのは当然として余計な物が入っていないか確認するのも・・・』


『ジョイス・・・そこを動くな!』


『『『『ははははははは』』』』


「さっさと洗って金曜カレーを・・・ロバート何かあったのか?」


「アレックスの奴がジョイスの背嚢に規定以上の重りを入れてたみたいで・・・あいつそれに今まで気が付かなかったみたいで・・・ははは」


「全く・・・遊んでると昼飯食えないぞ」


苦笑しながら彼らを見ていた護に先に洗い終えた希が装備を担いで言った。


「護も人の事より自分の方を確認したら」


「え?」


「先に行ってるわよ」


意味深げな言葉と微笑を残して希はICTOが一時的に装備を纏めている場所まで歩いて行った。


「どうしたんだあいつは・・・なっ!?」


「どうしました大尉?あっ・・・」


防水加工が施された背嚢を洗い始めて護は先程の彼女の言葉の意味を理解した。護の背嚢の中にはジョイスの背嚢に追加で入れられた重りの倍の重さの物と以前、正人に買わされ、回し読みされてから護の下に返ってきたその手の本が入っていた。





同日 12時55分 日本 神奈川県 横浜市


その日の横浜の気温は37度を記録していた。その中、神奈川県内を管轄区とする神奈川県警察本部の通信司令室に1本の通報が入った。


「はい、110番神奈川県警察です。事件ですか?事故ですか?」


『・・・・・・』


「もしもし、どうされましたか?」


『一度しか言わない。横浜市内のいくつかの場所にBC兵器を設置した。それらはいつでも噴霧出来る状態にある』


「悪戯ですか?そういうことh--」


『ランドマークタワーにも設置してある。調べれば我々がふざけている訳では無い事が分かるはずだ』


この言葉を最後に電話は切られた。通報者の位置を確認すると県警本部の目の前にある公衆電話からの通報である事が分かり警察官を派遣したが、そこでは通報者と思われる人物は発見できなかった。


通信司令室長は同時にランドマークタワーへ付近をパトロール中のパトカーを派遣し、警察官と警備員が建物内部の避難誘導を行いながら不審物の捜索に入った。


約15分後、現場から無線が通信司令室に飛び込んできた。


『至急至急、横浜15から神奈川本部』


「至急至急、神奈川本部どうぞ」


『たった今ランドマークタワー地下駐車場で不審物発見。専門部隊の応援を願いたいどうぞ』


「神奈川本部了解」


直ちに専門部隊が出動し、不審物の収集を行った。神奈川県警は約1000人の警察官を動員して県内の公共施設等人が集まりやすい場所を重点的に捜索を開始した。



同日 13時15分 日本 千葉県 館山市 海上自衛隊 館山航空基地 食堂


『ーー次は速報です。つい先ほど、神奈川県横浜市にある横浜ランドマークタワーで不審物が発見され、現在封鎖されているとのことです』


基地の食堂でカレーを食べ終えた護たちは、デブリーフィングを行うために間借りした小会議室へ移動しようとしたところで設置されていたテレビがニュースを伝えていた。


画面はスタジオの司会者から現場のリポーターへと切り替わり、現場の様子を映し出していた。撮影された映像を見る限り、規制線が警察によって敷かれ、制服・私服問わず多くの警察官が行きかっていた。そんな中画面の端に白い非陽圧式の化学防護服とガスマスクで構成されるレベルCの装備を着用した機動隊員と青い非陽圧式の化学防護服と空気ボンベで構成されるレベルBの装備を、もしくは青い陽圧式化学防護服と防護服内の空気ボンベで構成されるレベルAの装備を着用した機動隊員たちが写りこんだ。


 護と隊員たちは装備からそれが神奈川県警の機動隊に編成されているNBCテロ対応専門部隊だと分かった。食堂にいた海自の隊員たちも皆が視線をテレビに向けていた。


「異臭・・・じゃあここまで多く展開しないよな」


「えぇ。悪い予感がするわ・・・」


その時、護が持っていた携帯端末が着信を持ち主に知らせていた。


「どうやら、悪い予感は当たったみたいね」


「そのようだ。当たってほしくないがな・・・もしもし・・・はいそうです。これからデブリフィーリングを・・・はい・・・はい、了解です」


護は目を閉じため息をついた。そして他の隊員たちが見守る中、ゆっくりと目を開けた。そこには先ほどまで皆と談笑していた時とは違う雰囲気を纏った特殊部隊員(オペレーター)が立っていた。


「横田に戻るぞ。戻り次第、装備を整え、A待機に入る。あと5分で迎えのヘリが来る。詳細については機内で説明する」


7人は頷き、すぐさま基地のヘリポートへと移動を開始した。途中、一番後ろを歩いていた護の隣に希がやって来て小声で聞いた。


「やっぱり横浜?」


「あぁ。しかも装備はG3、もしくはG2を用意しろとのことだ」


「なら、念のためG1も・・・」


「勿論そのつもりだ。準備させてる。当番隊も繰り上がる事になるし、マイクとパットも呼ばなきゃならない。そっちの交代要員も用意しなきゃならん」


「いつも通りね」


「おう、いつも通りだ」


外に出た2人が手でひさしを作りながら歩いていくと、個人の装備を持ち、6人の隊員が待機しているヘリポートに向けて横田から来たMH-60Mがアプローチに入っていた。



同日 14時32分 日本 東京都 福生市 横田基地


護たちは横田へ戻り、15分で再編成を行い、装備を整え、アダムスやミラーを加えた12人は待機室で即応待機体制に入った。しかし、1時間経過しても彼らが出動する事はなかった。


「まだ要請はこないのか!」


「アレックス、落ち着け」


「分かってる。分かっているよジョイス。俺たちは要請がないと動けない。だがーー」


待機室に備え付けられたTVで速報を見ていた隊員たちの会話を聞いて希も思わずつぶやいた。


「こういう時、大抵私たちに声はかからないものよね。いい事だけど」


「そうだな。向こう側の気持ちも理解出来ない訳じゃない」


ICTO作戦部に所属する隊員たちが行う主な任務は以下の通りだ。


・DA=Direct Action(直接行動や襲撃・待ち伏せ)


・SR=Special Reconnaissance(特殊偵察・戦闘前の事前偵察や諜報作戦の支援)


・UW=Unconventional Warfare(非在来戦やゲリラ戦・破壊工作)


・FID=Foreign Internal Defense(外国国内防衛・友好国軍への訓練)


・IO=Information Operations(情報戦)


・CWMD=Counterproliferation of Weapons of Mass Destruction(大量破壊兵器の拡散阻止)


・HR=Hostage Rescue(人質救出)


・CSAR=Combat Search and Rescue(不時着した航空機の乗員の救出)


・WOT=War on Terrorism または War on Terror(対テロ戦闘・テロリスト及びテロ組織への先制攻撃や人質救出)


・CT=Counter terrorism(テロリズムの損害を最低限にとどめることを目的とする、政府・軍隊・警察などの公的機関による行為・戦術・技術・戦略)


ICTO作戦部が行う任務は主に2つに分類される。1つはICTO情報部が収集・分析した情報を元に独自に作戦行動を行う任務。もう1つはICTOの施設を国内に保有している国からの要請で作戦行動を行う任務だ。


 例としてあげるなら、護たちが3月下旬に東南アジア某国で行った作戦行動は前者に、つい2ヶ月ほど前に千葉県松戸市や秋葉原で行われた作戦とその後の北朝鮮での救出作戦は後者に分類される。


 後者の中でも国外で行われる作戦は基本的に要請国の陸海空軍、海兵隊、その他etc・・・が上部組織へ要請、そこから担当地域の戦隊に連絡が入り、実行動に移る。


 一方、後者の中でも国内での作戦は数少ない。ICTO創設当初、対テロ戦能力を持つ特殊作戦部隊を保有する国は数少なかった。しかし、ドイツやフランスのGSG-9、GIGN、イギリスやアメリカのSAS、デルタフォース等は諸外国が特殊作戦部隊を創設する際の参考にされながら自らの牙を研ぎ澄ませていった。月日は流れ、各国の軍や法執行機関に創設され、安全保障環境も世界情勢も変わり、自国で解決できる国は増加していた。1度そうなると、いざという時に様々な要因からICTOに要請しない事が多くなる。


 各国により細かな所は異なるが、日本国内での要請の場合はまず、要請があった時点で法執行機関、つまり警察や海上保安庁が出動しているか自衛隊が出動しているのか確認する。例えば警察が出動している場合には部隊が展開する現地の警察本部の本部長、その他の部長たちが要請についての賛成者が過半数を超えなければ要請の第1関門は出さない。第1関門を突破し、第2関門として日本警察の頂点である警察庁の長官、次長、官房長の3人が審査し、認められて初めてICTOは出動することが出来る。先ほど例に挙げた国内での行動はICTO側が要請した物という事もあり、時間を短縮する事が出来た。


しかし、ICTOの手を借りるという事は、自分たちが解決できる能力を超えているという事を1つの事実として認めるという事だ。ゆえに警察庁を含め、いい顔をしない者は多い。



「自分たちも出動している上での要請なら未だしも出ていないのに別の連中に声がかかったら・・・俺なら我慢できないね」


「今まで血の滲む思いでして来た事の意味が無いに等しくなってしまうものね」


その時、待機室に設置されていた固定電話が鳴った。護が電話に駆け寄ろうとするより早くアダムスが受話器を取り上げた。


「はい・・・はいそうです・・・おります・・・はい・・・了解。出動します」


受話器を置き、アダムスが護に向かって頷き、護は言った。


「出るぞ」


午前中一緒に降下訓練をした6人の航空隊のメンバーと護と希に加え、車両隊の6名とアダムス、ミラーの合計16名は個人装備を身につけ、2機のMH-60Mに分かれて分乗し、現場に向かった。




同日 14時56分 日本 神奈川県 横浜上空


2機のMH-60Mは巡航速度で飛行し、約10分程で横浜市上空に到着した。それぞれの機体には今回の任務で付与されたコールサインである“セイバー”チームが8名ずつに別れた隊員たちが搭乗している。セイバー1-1と1-2は護と希が、セイバー2-1と2-2はアダムスとミラーが担当している。


「ウルズ2、横田のパース2から通信です」


「了解。繋いで下さい」


5分ほどで着陸地点の神奈川県警本部に到着するというところで横田基地にローテーションで来ていたパース2こと、アブラハム・アッパズ中佐から通信が入った。護はラプター3ーー護たちが搭乗しているMH-60Mのコールサインーーの機長に通信を回して貰い、機内(I)通話(C)装置(S)のコネクターに射撃音など耳に有害な衝撃音のみカットするイヤマフを兼ねているヘッドセットから伸びるコードを差し込んで具合を確かめた。


『ウルズ2、ウルズ4、こちらパース2。聞こえるか?』


「パース2、こちらウルズ2。感度良好」


『こちらウルズ4。感度良好』


『状況が変わった。先ほど、赤レンガ倉庫にて何らかの有害物質が散布された。既に数名の負傷者が発生した模様だ。さらに横浜ベイブリッジで爆発物が発見された』


「散布された物質と爆薬の種類は?」


『まだ分かっていない。さらに両現場付近で武装した集団を見たという情報もある。悪いがベイブリッジと倉庫のどちらにも展開してくれ。担当はそちらに一任する』


『増援と交戦規則(ROE)は?』


『ICTOからの増援は無理だ。だが、警視庁の特殊(S)急襲(A)部隊(T)とJGSDFの習志野の連中に召集が掛かった。あと、NBC対応の応援としてJGSDFの第1師団第1特殊武器防護隊と陸上総隊直轄の中央特殊武器防護隊及び対特殊武器衛生隊が出動準備に入った。交戦規則(ROE)は都市部、民間人が多数存在するという事で現時点ではB-1を適用する』


了解(コピー)。ウルズ2、アウト」


了解(コピー)。ウルズ4、アウト』


その後、二言三言アダムスと相談してから護はチーム内通信に切り替えてから言った。


「オールハンド、こちらセイバー1-1。先ほど、赤レンガ倉庫で何らかの有害物質が散布された。さらに横浜ベイブリッジで爆発物が発見された。散布された物質と爆薬の種類は現在まで特定できていない。両現場付近では武装した集団の目撃情報が上がっている。我々は両現場に展開し、現場の安全を確保。可能であれば武装集団を捜索・襲撃する。現場には多数の民間人が確認されている。交戦規則(ROE)はB-1。ウルズ4との話し合いの結果セイバー1はベイブリッジ、セイバー2は倉庫をそれぞれ担当する。よろしいか?オーバー」


“カチッカチッ”


護の問いに対し、人数分の了解の意味であるジッパーコマンドが送られてきた。


ここで上記の陸上総隊について説明したいと思う。


陸上総隊、Land Defense Commandは全国の陸上自衛隊実施部隊を一元的に運用する組織である。日本国自衛隊は2006年に陸・海・空幕僚監部に加え、統合幕僚監部が新設された。これの前身である統合幕僚会議と異なり、有事・平時、またはその部隊の数や規模を問わず、陸・海・空自衛隊の運用に関する防衛大臣の指揮・命令は陸上自衛隊の部隊のみの運用であっても、全て統合幕僚監部を通じることになった。


 これにより陸海空幕僚長の部隊指揮権は統合幕僚長に一本化されたため、統幕長が各自衛隊の実施部隊に命令を下す。その際に海上自衛隊は自衛艦隊司令官、航空自衛隊は航空総隊司令官に命令を下せばよいのに対し、陸上自衛隊は最大部隊単位の方面隊に、つまり北部、東北、東部、中部、西部の5つの方面総監に命令を下さねばならない。これは部隊の運用に影響を与えるため実施部隊を纏める組織が必要となった。こうして新設されたのが、陸上総隊である。陸上総隊は北部、東北、東部、中部、西部の5つの方面隊と陸上自衛隊防衛大臣直轄部隊を隷下におく。


 防衛大臣直轄部隊は以前、主に防衛大臣直轄の機動運用部隊や専門部隊を一元的に管理・運用する為に存在した中央即応集団に属していた部隊である。上記のNBC兵器によって汚染された地域の偵察及び除染を行う中央特殊武器防護隊とNBC兵器攻撃による傷病者の診断・治療を行う対特殊武器衛生隊もこの部隊に当たる。


他にも特殊作戦群や第1ヘリコプター団等5つの部隊が該当する。ついでと言っては何だが、5つの内の3つの部隊をそれぞれ簡単に纏めた。


・水陸機動団

水陸機動団、Amphibious Rapid Deployment Brigadeは陸上自衛隊の中で唯一と言っていい水陸両用作戦が可能な部隊である。主な任務は島嶼防衛である。


 この部隊は西部方面普通科連隊を基盤として発展・編成された部隊である。陸上自衛隊のヘリコプターを使用したヘリボーンやゴムボートを使用した水路潜入等を行い、潜入、遊撃活動を行う。部隊の隊員の殆どがレンジャーの資格を持っており、専門的な水陸両用き章、洋上潜入き章、艇長き章が存在し、中には海上自衛隊の潜水課程を修了した隊員もいる。


 部隊の規模は現在2個連隊+αである。本来であれば、3個連隊で編成完結となるが教育中の隊員が多数いるため、部隊としては完結していない状態である。それでも西部方面普通科連隊を基盤とした第1連隊とその後に編成された第2連隊の錬度は西部方面普通科連隊時代よりも向上している。


この部隊の任務の性質上として、高機動車、73式大型トラックの他にMV-22オスプレイとAAV7A1が配備されている。



・第1空挺旅団

第1空挺旅団、 1st Airborne Brigadeは陸上自衛隊唯一の空挺部隊である。陸上総隊直轄中央即応集団隷下として編成され、千葉県船橋市の習志野駐屯地に司令部を置く。


 第1空挺旅団は元は第1空挺団として1958年に編成完了した。第1空挺団は航空自衛隊のC-1、C-130輸送機からの落下傘降下または、陸上自衛隊のヘリコプターを使って空挺作戦を行う能力を持っている部隊であり、各国の空挺部隊等と同様に精鋭部隊として位置づけされている。そのために正規軍相手の作戦以外にゲリラコマンドへの対応も行う。


 第1空挺団は陸上総隊が創設された際に陸自内の改変により第1空挺旅団に改編された。空挺団の際には定員が1900人だったのに対し、現在は2200人に増員されている。この増員の3分の2は空挺特科大隊と空挺後方支援隊等の後方部隊が対象である。


昨今は西部方面普通科連隊改め、水陸機動団や対馬警備隊、即応レンジャー連隊といった準特殊部隊や冬季戦技教育隊、特殊作戦群。更には海自の特別警備隊、空自の航空支援隊等の特殊作戦部隊との共同訓練も増えている。


・即応レンジャー連隊

即応レンジャー連隊、Readiness Ranger Regimentはそれまで陸上自衛隊中央即応集団隷下に編成されていた中央(C)即応(R)連隊(R)を改編した部隊だ。栃木県宇都宮市の宇都宮駐屯地に駐屯している。


 即応レンジャー連隊は元になった中即連ー中央即応連隊の略ーと同様に、国内においての災害、有事の際には各方面隊への増援部隊として。海外での国際平和協力活動等においては先遣隊として活動する事が多い。また緊急展開部隊としての役割も加えられている為、緊急即応中隊として1個普通科中隊が常に待機しており、命令が発せられて12時間以内に作戦出撃が可能となる。その為、第1空挺旅団とローテーションを組み、海外で邦人保護等の任務が発生した際には真っ先に駆けつける。


 このような任務に加え、特殊作戦群及び有事編成の冬季戦技教育隊が行う特殊作戦をサポートする任務が追加された。その為中即連では空挺資格とレンジャー資格を所持していない隊員も所属していたが、即応レンジャー連隊は後方支援職を除く全体の約8割がレンジャー資格と空挺資格を。一部の者は冬季遊撃レンジャー資格や水路潜入資格を所持している。現在、水陸機動団、第1空挺旅団と共に志願制をとっている。


 部隊の規模は約1100人。連隊本部及び本部管理中隊と6個普通科中隊で構成され、本部管理中隊には情報小隊、対戦車小隊、重迫撃砲小隊が編成されている。海外派遣等では先遣隊として派遣される事が多い為、軽装甲機動車、96式装輪装甲車(Ⅲ型)、ブッシュマスター輸送防護車といった装輪装甲車や防弾機能を強化した高機動車、73式大型トラックなど車両約150両が導入されている。


 また駐屯する宇都宮駐屯地は1700メートルの滑走路を持つ北宇都宮駐屯地の近くに存在し、緊急展開部隊である同連隊の戦略展開を容易にしている。




閉話休題



2機のMH-60Mはそれぞれ、高度を下げ、チームの降下地点に向かった。


「オールハンド、マスク用意。アトロピンとヨード錠剤は持っているな?」


皆が頷き、頭の上に上げていたガスマスクを装着し、OPS-CORE FAST MARITIME Helmetを被った。


『到着まであと1分!』


機上整備員(FE)が騒音の中でも聞こえるように声を張り上げる中、護はふと希の方を見た。彼女も護の視線には気がついたようで視線を合わせた。どちらからとも無く拳を突き出し、付き合わせた。


 一番最初に降下するアレックスは既にセーフティーランヤードを機体へ固定する場所から取り外している。彼を確保しているのは機付長だ。その時、ラプター3の機首がぐっと持ち上がり減速した。


 ぴたりと降下地点に合わせて機長が機体をホバリングさせるのとほぼ同時に側面ドアのすぐ脇にいるドア・ガナーが降下地点を覗き込むように体を乗り出し数回、腕を振り下げた。すぐさま彼は持っていたファストロープを機外へ投げ落とし、降下した。



何とか3年に進級できましたが、4年進級と卒業まであまり余裕が無い状態です。そして就職について考えなければならない歳にもなってしまいました。


次回の更新も遅れてしまうと思います。

私事で皆様にご迷惑をお掛けしてしまい申し訳ありません。

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