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第十七話

可憐は無事に一年生を乗り越え、二年生へと進級した。

クラス替えは二年に一度である為、今回はない。

(あの人達と同じクラスではないし、今年一年は安心だわ、と思っていたのになぁ)

「良かったね、クラス替えが二年に一回で」

しつこいようだが、クラスは違えども、所詮は隣のクラスである。

可憐がため息をつきながら背後を振り返ると、悠貴が笑みを浮かべて立っていた。

そんな悠貴に可憐は鬱陶しいという視線を向ける。

「あら、有栖川様ではありませんか。人が幸せに浸っている時に水を差さないで下さいませ」

悠貴の目は、図星なんでしょ?と言わんばかりである。

やっぱりこの人苦手だわ、と可憐は再確認した。

「ところで、私に何か用ですの?」

「いや、別に特に用事があった訳ではなかったんだけどね。真也君がちょっと落ち込んでいるみたいだったから、相談しようと思ったんだよ」

「それだけでわざわざB組まで足を運ぶほどおヒマなんですのね、有栖川様?」

「親友を心配するのは、当たり前じゃないか。それに、別にヒマではないよ?」

この2人の間に火花が飛び散っているのに気

づいている人は、残念ながらいなかった。


「随分と仲よさげだな」と真也が2人の間に割って入る。

どうやら真也でさえ気がついていないようだ。

「仲良くなった覚えはありませんわ!」

(って、いつの間に来たのよ!)

「真也、おはよう」

「もう昼だが?」

真也の言う通り、現在はお昼休憩の真っ只中だ。

(だから、より一層よくないんだけど...)

可憐は遠い目をする。

なんせ、人が沢山いるところで、真也と悠貴(イケメン)可憐(一少女)に話しかけているのだ。

非常にまずいこと極まりない。

「きゃ〜、伊集院様と有栖川様よ!」

「こっち向いて〜!」

(なんじゃこりゃ)

アイドルかなんかかよ、とツッコミたい気持ちを必死に抑える。

その間も、周りの女子達(追っかけ)から、黄色い声援が飛び交っていた。

(おば様方の反応と一緒じゃん!小学生だよ?

しかも小学二年生!......もしかしてコレがジェネレーションギャップってやつなのかしら?)

確実に違う。

兎にも角にも、この状況をなんとかしないことには始まらない。

(新学年が始まって早々目立つのは避けたいんだけどなぁ)

可憐の胸の内とは裏腹に、周囲には人だかりができていた。

「真也様、B組(うちのクラス)に何かご用ですの?」

「いや、特に用事があった訳ではない」

悠貴と全く同じ答えが返ってきた。

(用が無いなら来るな!)

これが言えたらどんだけ楽だろうか、と考えてしまう。

「可憐、なんか疲れてないか?」

一体誰のせいか、と可憐は元凶の二人を睨む。

「西園寺さん疲れているみたいだし、そろそろ帰ろう」

「そうだな。しっかり休めよ」

「.........分かりましたわ」

(なんだろう、すっごく殴りたい)

可憐のそんな気持ちもいざ知らず、真也と悠貴は自分達の教室に帰って行った。


「真也。西園寺さんに会いに行ったなら、素直にそう言えばいいじゃん」

A組に戻った2人は、席に座って話を始めた。

「別にそう言う訳じゃ...」

「ふーん?」

悠貴はニヤニヤしながら真也を見る。

人の顔を見て笑うとは失礼だなと思うが、こんなヤツでも幼馴染みで親友なのだから、仕方が無いかと、真也は「はあ」と息を吐いた。

「何だその顔は?」

「いや、なーんにも」

ついにニヤニヤするだけでは耐えられなくなったのか、悠貴はお腹を抱えて笑い出した。

「だから何だ!」

「あははは〜、真也素直じゃ無いなぁ。あははは!あーお腹が痛い!」

「いい加減にしろ!」

こんな2人の言い争いは、先生が来るまで続いた。


瑠璃に後々聞いた話によると、真也と悠貴が可憐に会いに来たという噂は、この学園に留まらず、瑠璃の学校にまで及んだらしい。

全くもっていい迷惑だわ、と可憐はため息を吐いた。

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