その4。
赤面しつつ、ふらふら大宮駅から板橋まで無事帰還してきた俺は、
自分の家のドアノブに手を触れた瞬間、隣の家から人影を認知することに成功した。
「隼人~!!デートどうだったー??」
美沙である。
一応幼馴染ということで、家も隣なのだ。
「あぁ、まぁ。楽しかったよ。」
「はぁ?何それ?よく分かんない。もっとこう…。文章力良く、分かりやすく説明してくれないと。…あぁ、でも無理かー。隼人には。一人で謝罪文を400字詰め原稿用紙1枚分も書けないんだしね。あれはびっくりしたよ。『このまえはごめんなさい。またあいましょう。』ってさー!!しかも平仮名にして文字数稼ごうだなんて幼稚園児でも思いつくようなバカな発想ブフォォッ!!な、何腹グーで殴ってんのよ!?」
「主人公置いといてペラッペラッペラッペらしゃべっている罰だ。」
「主人公が自分は小説の中の人間だみたいなことを言ってるよりはいいでしょ!?…で、どうだったの?美雪さん。」
「いや、許してくれたし、…ちょっと可愛いところとかも分かったし。」
「…。『悪女』じゃ無いんじゃないかー、みたいな?」
「いや、そういうの関係なしに、こう…。」
「ふーん…。」
さっきまでハイスピードで話が進んでいたのが嘘かのように、美沙は静かに間をあけた。
「ま、どっちにしろ、楽しかったなら良かったんじゃない?」
美雪さんの話をした後だけにする、いつもと少し違う笑顔を美沙はしてみせ、家に帰っていった。
◆◆◆◆
隼人が、美雪さんとかいう人に本当に恋をしているのかもしれない。
最初は『悪女』のようだと言っていたけれど。
失敗したんだと思っていたけど。
どうして、こう、
素直に応援できないのかな…?
いつも笑って、応援して、そして、友達で…。
私はどうすればいいんだろう?
美雪さんと上手くいってほしくないなんてワガママが自分を襲う。
あーあ。これじゃぁ。
美雪さんなんかより、
私の方がよっぽど悪女みたいじゃないか。